明日へと続く記憶

アニメ、ゲーム、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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ヴァンダル画廊街の奇跡 

ヴァンダル画廊街の奇跡 (電撃文庫)ヴァンダル画廊街の奇跡 (電撃文庫)
(2010/02/10)
美奈川 護

商品詳細を見る
読書期間:2010/3/6~2010/3/12

【評価……C+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★☆☆☆☆☆☆
 … 4
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
感動
世界観




 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★☆☆☆☆☆
 … 5





 人は誰もが、
 心の中に一枚の絵を持っている――。

 統一された政府により、様々な芸術が規制を受け始めた世界。しかし、そんな世界各地の壁面に封印されたはずの名画が描き出される事件が起こる。
 『Der Kunst Ihre Freiheit!』(芸術に、その自由を!)
 絵とともにそう書き残していく<アート・テロリスト>を、人々は敬意をこめて「破壊者(ヴァンダル)」と呼んだ。
 政府を敵に回すという危険を冒してまで彼らが絵を描く理由とは。そして真の目的とは――?
 第16回電撃小説大賞<金賞>受賞作!

【感想】

第16回電撃小説大賞<金賞>受賞作。

戦争終結後に結成された世界政府が、<プロパガンダ撤廃令>と呼ばれる、戦争を連想する芸術作品を規制する法を制定した近未来。
そんな世の中で、禁止された絵画を壁面に復元させるテロ行為を行なう「ヴァンダル」という組織が現れた。
目的や素性が謎に包まれた彼らは、また世界のどこかで絵を描く――というストーリー。

最初に思い出したのは「図書館戦争」でした。

この手の設定は時々ありますが、現実味がまるで感じられないんですよね。
いやまぁ創作なんだからリアリティは必要ないのかもしれませんけど、現実をベースにした世界観の確立をするときには、納得できる理由が欲しくなります。
しかし、文化規制をするには理由が弱すぎるし、実際にそんな状態となっては絶対に暴動が起こると思うんですよね。
平和目的のはずが、むしろ戦争の種にしか見えません。

近未来とはいえ、オーバーテクノロジーに溢れているのも引っかかります。
もっと設定を煮詰めて、物語に絡めて欲しかった。
突飛な設定が明らかに浮いていて、その度に興醒めしてしまいます。
この辺りが作品の主題ではないとはいえ、話の規模が大きいだけに、雑に感じてしまいました。
無理にラノベっぽさを出さない方が、良かったんじゃないでしょうか。

さて、本題です。
絵画を見ることで人の心に与える影響の大きさを表現したい、という作者の狙いが分かりやすくて良いですね。
メインテーマが明確となっていて、非常に素晴らしかったと思います。

核となるのは、序章や終章を除く5編からなる短編連作。
前半は脇役視点から、後半は内側から「ヴァンダル」を描いています。
渇いた心に一滴の水を投じ、人々に活気を与えるヴァンダルの活動は痛快かつ感動を得ることができました。
多少、淡白ではあるものの、透明感のある綺麗な物語で、好きな人が多そうだなと思いました。

ただ、見せ方がちょっと甘いかな。
文面から絵画の魅力を引き出すためには、もう少し言葉を重ねるべきだったかと思います。
あっさりしているのは悪くはないんですけど、その分、感動も薄めになってしまい、勿体無かった。
「文学少女」シリーズにて作中で紹介される文学作品のように含蓄を垂れろとまではいいませんが、絵画に興味や知識のない人に対しても実物を見てみたいと思わせる牽引力が足りなかった。
美術作品の知識に乏しい自分でも知っている有名作が多かったので想像はできましたし、正直分からなくても問題はなかったのですが、逆に言えばそれは、絵画である必要性がないとも言えるんですよね。
少々マニアックになってもいいから、絵画について掘り下げていたら、作品の深みが大きく異なったかと思われます。

外堀から埋めていったこともあってか、全体的にキャラが弱いのもマイナス点。
イラストレーターさんも個人的には嫌いではないけれど、作風とは合っていませんね。
雰囲気は良くても、惜しいところが散見される作品でした。

しかし、この作者の方が受賞したのは何となく分かる気がします。
まだまだ荒削りですけど、磨けばイイお話を書いてくれそうな気配がありますね。
このシリーズを追いかけるかどうかは悩み中ですが、次回作や今後には注目したいと思います。

絵に込められた想いが、束縛する人の心を優しく解く物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ヴァンダル画廊街の奇跡  美奈川護  望月朔  評価C+ 

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