ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~
2012/05/18 Fri 23:59:14 [edit]
![]() | ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫) (2011/10/25) 三上 延 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | ミステリー 安定感 恋愛 構成 | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細めるのだった。 変わらないことも一つある――それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。まるで吸い寄せられるかのように舞い込んでくる古書には、人の秘密、そして想いがこもっている。青年とともに彼女はそれをあるときは鋭く、あるときは優しく紐解いていき――。 |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
古書店に持ち込まれる本を巡って紡がれる人と人と繋ぐ物語、シリーズ第2巻。
今やシリーズ発行部数200万部となり名実ともにメディアワークス文庫の看板作品となりましたね。
本屋大賞8位入賞は伊達ではありません。
やはり安定した面白さを提供してくれる作家さんですね。
雰囲気も質も1巻と変わりないので、安心して読むことが出来ました。
前回同様に短編連作となっており、多様な物語を楽しむことが出来るのが嬉しい。
古書と持ち主に関わる背景を見通すかのように言い当てる栞子の推理が実に爽快です。
これは本格ミステリー小説をあまり読まない人間だからなのかもしれませんが、ミステリーの難易度が適度に感じられます。
ある程度予想が付くけれど、最後の核心の部分までは読めない微妙さ加減。
一般とラノベの中間に属するレーベルとしては、この中途半端なヌルさがベストだと思いますね。
例えば、第一話・アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』。
栞子が隠している内容は、態度から途中で分かるんですが、何故秘密にしているのかまでは拾えなかったんですよね。
読み返してみると、なるほどなと思わせてくれる構成となっており、物語の畳み方に唸らされます。
第二話・福田定一『名言随筆 サラリーマン』も良かった。
大輔と栞子の絶妙な距離感に、第三者を入れることで僅かに進展する様が楽しい。
もうひたすら焦れったくて、モヤモヤとして、しかし微笑ましい二人の関係が大好きです。
そして、ストーリーとして秀逸だったのが、第三話・足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』。
栞子の推理力は異常過ぎる部分はありますけど、それをフィクション上でも納得させてくれるだけの力強さはあったと思います。
シリーズ化が決まっていない1巻で一応の区切りをつけるのは、新作を書く上で当然のことです。
なので、これだけの大人気シリーズとなった今、ここから本格的な長期シリーズとなるための伏線が仕込まれていくことになるわけです。
是非ともダレることのない物語を作り上げて欲しいものですね。
伏線といえば、表紙の栞子が1巻と2巻で若干違うように描かれているのは気のせいなのか、それとも……。
作中の描写からすると、もしかしなくても、あれはそういうことですよね?
ううむ、越島はぐさんもさすがの仕事っぷりですね。
あー、栞子さんと一緒に働きてぇなー。
確かにキャラ造形が出来過ぎ感がありますが、あざとい面も含めて可愛いと思ってしまいます。
人見知りではあっても頑固なところがあったり、鋭いくせに恋愛に関しては疎かったり。
こういうギャップに弱いんですよねぇ。
▼ | 古書に関わる人々の過去と想いを紐解く女店主の推理と合間に挟まれるロマンスが見所 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ビブリア古書堂の事件手帖 三上延 越島はぐ 評価B+
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この記事に対するコメント
2巻も絶好調
1巻完結型から長期シリーズへの移行は上手くいっていると感じます。『時計じかけのオレンジ』は、とても興味深い変遷をたどった作品を紹介されているなあ、と感心しました。
国民的作家である本名福田定一さんのことは僕だってちょっとは知っているつもりでしたが、そこでも作者さんにあっさり上をいかれてしまったので脱帽です。
この話では、回想の中でお父さんがちょっと残念そうな顔をしていたところが印象に残っています。
栞子さんのお母さんについて興味が出てきました。 お母さんと栞子さんは違う人間であるということを踏まえつつも、『血は争えない』っていう部分を見せてくれたら、僕のツボにはまります。
何はともあれ、正当に評価されて人気シリーズとなるのはとてもいいことだと思います。続刊で極端にクオリティが下がることは考えにくいですし、メディアミックス化によるひどい改悪も考えにくいです。 著作の売り上げに苦しんだ時代の長かった三上延さんも、これからは陽の当たる舞台で輝いていってほしいと思います。
URL | 紫電 #-
2012/05/27 22:49 * 編集 *
>紫電さん
言ってしまえば、作家にとっても出版社にとっても金の成る木ですからね。
しばらくは調子に乗っちゃってガンガン出してしまえばいいと思います。
まさか1巻の表紙絵が栞子の母親だったとは、さすがに気が付きませんでした。
確かに、1巻の内容だと病室にいるはずなのに、おかしいなーと思っていたんですよね。
そこまで考えて可能性を残していたんだとすると、計算しつくされていることに驚くしかありません。
栞子と母親のエピソードで、どこまで話を広げられるのか、お手並み拝見ですね。
メディアミックスといえば、漫画版が2作品始まっていますね。
雑誌で読もうとは思いませんが、単行本化された際に、ちょっと読んでみたいなーと思っています。
言ってしまえば、作家にとっても出版社にとっても金の成る木ですからね。
しばらくは調子に乗っちゃってガンガン出してしまえばいいと思います。
まさか1巻の表紙絵が栞子の母親だったとは、さすがに気が付きませんでした。
確かに、1巻の内容だと病室にいるはずなのに、おかしいなーと思っていたんですよね。
そこまで考えて可能性を残していたんだとすると、計算しつくされていることに驚くしかありません。
栞子と母親のエピソードで、どこまで話を広げられるのか、お手並み拝見ですね。
メディアミックスといえば、漫画版が2作品始まっていますね。
雑誌で読もうとは思いませんが、単行本化された際に、ちょっと読んでみたいなーと思っています。
URL | 秋空翔 #3huMpp/w
2012/05/28 02:57 * 編集 *
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三上延 「ビブリア古書堂の事件手帖2 栞子さんと謎めく日常」
JUGEMテーマ:読書感想文  ◆ビブリア古書堂シリーズ   篠川栞子の母親のことが少しづつ解った来ましたね。   本の虫だけでなく、聡明で大胆な推理と   人に対して容赦ない対応。ちょっと怖い人です?...
こみち
2012/06/16 11:27
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