人見知り部は健全です
2012/01/10 Tue 23:58:57 [edit]
![]() | 人見知り部は健全です (電撃文庫 さ 12-3) (2011/09/10) 佐野 しなの 商品詳細を見る |
読書期間:2011/10/29~2011/10/30
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | ラブコメ 青春 エロ | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
高1の俺と幼なじみの明(♀)は、屋上へ続く階段でふたりぼっちなお弁当を食べる毎日。なぜかって?俺は“無表情すぎ”て、そして明は“あがり症すぎ”て、4月の自己紹介に失敗したからだ。 そんな俺たちの前に現れたのは、超絶美人さんなのに“発言エロすぎ”という残念な人、乃花先輩だった。 「ここらで人生を変えてみないかい?」 そして俺と明は、ほぼ強制的に「人見知り部」なる謎の部に入部させられることになる。コミュニケーション能力向上が目的らしいけど、無表情にあがり症に下ネタ好きetc――って、この部もしかして、青春不適合者の集まりじゃねぇか!?不健全系学園ラブコメ登場! |
【感想】
「リヴァースキス」「僕は彼女の9番目」を執筆した佐野しなのさんの新作ラブコメディ。
3年振りの新刊なので知らない人も多そうですが、個人的には毎回買うぐらい好きな作家さんの一人です。
おお、こりゃあ面白い。
買っておいてなんですが、パターン化されたラブコメが展開されるだけかもと思っていました。
作者独自の色がしっかりと出ていて非常に楽しんで読むことができましたね。
内容は「僕は友達が少ない」の系統に属する、いわゆる残念系ラブコメです。
とはいえ、種別が同タイプなだけで、作品の方向性は結構違いますね。
ぼっちだと喚くリア充達が青春を謳歌する作品ではなく、人見知りに悩む人間が集まって前向きに雑談するという作品です。
主人公やヒロインは洩れなくコミュニケーション能力に問題があり、それを改善するための部活動を行うもので、連作短編形式となっています。
ただし、極端に性格が破綻している訳ではないので、あるあるネタに共感できるところが特徴です。
主人公・寿藍人の抱える問題は、表情が作れないこと。
内心では喜んだり動揺したりしていても、顔に出ないので無表情キャラとして周囲から気持ち悪がられています。
結構切実な悩みですが、性格は歪んでおらず、暗くもないので、読者視点では凄くイイ奴に映ります。
そんな藍人が想いを寄せる相手が幼なじみの臼潮明。
彼女は彼女で極度のあがり症のため、見知った人間以外とはまともな交流ができないことに頭を悩ませています。
こちらも外部との交流の描写が皆無のため、表情がコロコロと変わる素直で賑やかな可愛い女の子にしか見えません。
その二人を「人見知り部」に勧誘した張本人が、表紙の裾ノ花乃花という先輩。
見た目は誰もが見惚れるような美人なのに、口を開けば昨今のエロ親父でも言わなくなったようなセクハラ発言満載で、エロいというより下品といった方が近い。
これは人を選ぶと思いますが、下ネタの親父ギャグが好きな人ならばハマると思います。
個人的には、ツボに入るとまではいかなくとも、終始楽しい気分になれましたね。
エロティックなお姉さまはよく見かけるキャラですけど、周囲から浮くくらい堂々とした立ち振る舞いは何だか新鮮に感じました。
ハーレム系ラブコメと異なり、藍人が明を一途に想い続けているのが良いなぁ。
本人は至って真面目に想いを伝えても、真剣には受け取ってもらえないというのが寂し過ぎるけど、友達以上恋人未満な間柄なのでイチャイチャしているようにも見え、悲壮感は薄く済んでいますね。
そんなカップル未満な二人を弄繰り回す乃花と、ツッコミを欠かさないオネエ系男子・大和倫太郎の計4人で織りなす構図が目新しい。
ただひたすら部室でダベる話なのに、ニヤニヤできる箇所が多くて、非常に楽しかったです。
藍人の妹・平和もまた兄同様に無表情の持ち主なんですけど、ちょっと不思議系少女で可愛い。
作中でも取り上げられていますが、やはりギャップから生じる萌えの威力は凄まじいものがあります。
話のネタになりそうな雑学が多く含まれており、単純に聞き手としても興味をそそられました。
ギャグが安っぽくて頑張りましたという雰囲気が伝わってくる時もあるんですが、嫌いじゃないです。
このままダラダラと続くのかと思いきや、後半で一転した時は不覚にもやられたと思いました。
伏線の張り方が雑だったので、オチが来ることは分かっていたんですけどね。
ネタバレに繋がるので触れづらいんですが、軽く感動してしまいましたよ。
イラスト担当は、笹井さじさん。
無表情の藍人の内面と外面の差を上手く表現していて、漫画でも読みたいなと思わせてくれます。
挿絵にも手を抜いておらず、キャラ付けをしっかりしているところは評価されるべきですね。
綺麗に締めくくられているので終わりかなと思っていただけに、続巻が出たことが嬉しかった。
明日2巻買ってきます。
▼ | 人見知り達が部室で駄弁る残念系青春ラブコメ |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 人見知り部は健全です 佐野しなの 笹井さじ 評価B+
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この記事に対するコメント
続きます
この本を読んで、『ラノベ部』と『生徒会の一存』シリーズにあったようなよさを感じました。杉崎は、大好きな会長のことをいじり倒しますが、彼自身もまたいじられキャラで、みたいな。変態はステータスだと思います。ラノベ世界限定なら、僕は、常識的なお姉さんより変態なお姉さんの方に親近感を持ちます。 しかも下ネタがまたすごくて、いろいろと勉強になりました。普段聞かないようなちょっとした雑学が盛りだくさんでした。『生徒会役員共』に引けをとっていない下ネタレベルだったと思います。
乃花さんは、攻めるのは得意でも、攻められたら乙女な感じになっていました。その辺の描き方がもうちょっとどうにかなればよかったんですけど。
日常系の物語もずいぶん増えました。 一般的な学校には存在しない部活が舞台の作品を総称して、『部活系(特殊)』なんて呼びたくなります。
各キャラの特殊能力だとか、世界の秘密だとかを必要としないために、一見日常系は誰にでも書けるように見えます。 けれども、面白い日常系は、決して誰にでも書けるものではないと思います。 執筆にあたって、作者自身の人生経験がものを言うのは周知の事実ですが、その傾向は、日常系において一層顕著になるように感じます。佐野しなのさんの雑学知識は見事なものですし、佐野しなのさん自身が信じていないことは、作中に書かないようにしているような気がします。だから、「このくらいのことはあっていいんじゃないかな」で納まる範囲のことが概ね起こっているんじゃないかと思います。
テンポのいい作者さんだったらカットすると思われるような掛け合いまで、ボケとツッコミが続いていくようなことが時々ありました。
主人公は、エッチな心に忠実である方が望ましいと思いました。 ハーレム主人公はわりと紳士である場合が多いので、女の子の方が積極的にならざるを得ませんが、男の方が積極的で、女の子が逃げていく方が、自然の摂理にはかなっているような気がします。
挿絵における無表情さは、指摘されて初めて気が付きました。なるほど、表情が変えられないという弱点をしっかり表現していますね。
ついでに、同じ絵なのに、乃花さんの表紙と開いてすぐの絵で表す雰囲気が全然違うというギミックが面白いな、と思いました。
ハルヒが言った、「萌えって重要な要素だと思うのよね」を地で行っていると思います。臼潮明は、周りにいつもほんわか要素を提供している気がします。
楠幸村の時代がかった口調が好きな人は、妹の平和のことも好きになれるんじゃないかと思います。 無表情・ゆっくりな口調・語尾に『ゆえ』・ツッコミ・兄妹ならではの距離感・などなど……。合格点です。
もしアニメになった時、見た目はイケメン、中身はオネエ系という大和倫太郎はどんな風に表現されるんだろうなあ、なんて早すぎる心配をしたりしました。それよりも、今はまだ3巻が出るかどうかの心配をした方がいいんでしょうけど。
出遅れましたが、早速2巻を買ってきます。
URL | 紫電 #-
2012/01/12 20:43 * 編集 *
>紫電さん
マイナーだけど良作でしたね。
もっと注目を浴びてもいいのになーって思っていたので、仲間が増えて嬉しいです。
変態に親近感を持つんですか?w
自分の場合は、見ていて楽しい存在ですが、関わりたくはないなぁというタイプですねw
乃花の攻められると弱いというギャップは可愛らしいと思ったものの、あまりにも極端だったので何か裏があるのではないかと最後まで疑って読んでましたよ。
部活系ラノベという区分なら、ハルヒがブームを作って以来存在していますね。
仰る通り、日常系は物語を進行させにくいので、逆にネタに困ることになるので、書き手を選びそうな題材だと思います。
トリビア的な面白さが盛り込まれているところも楽しめました。
まだ読んでいないので何とも言えませんが、2巻で終了みたいな話をチラホラ聞きますね。
まぁ、2巻だ出ただけでも御の字だと思っていますけど。
マイナーだけど良作でしたね。
もっと注目を浴びてもいいのになーって思っていたので、仲間が増えて嬉しいです。
変態に親近感を持つんですか?w
自分の場合は、見ていて楽しい存在ですが、関わりたくはないなぁというタイプですねw
乃花の攻められると弱いというギャップは可愛らしいと思ったものの、あまりにも極端だったので何か裏があるのではないかと最後まで疑って読んでましたよ。
部活系ラノベという区分なら、ハルヒがブームを作って以来存在していますね。
仰る通り、日常系は物語を進行させにくいので、逆にネタに困ることになるので、書き手を選びそうな題材だと思います。
トリビア的な面白さが盛り込まれているところも楽しめました。
まだ読んでいないので何とも言えませんが、2巻で終了みたいな話をチラホラ聞きますね。
まぁ、2巻だ出ただけでも御の字だと思っていますけど。
URL | 秋空翔 #3huMpp/w
2012/01/13 18:13 * 編集 *
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