カミオロシ弐 ~人形供養の儀~
2012/05/17 Thu 23:59:45 [edit]
![]() | カミオロシ〈2〉人形供養の儀 (電撃文庫) (2012/02/10) 御堂 彰彦 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | ミステリー ホラー ラブコメ 構成 期待感 | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
人形が持ち主の下に帰ってくる。生徒たちの間で囁かれる噂。玖流は同級生の皐月から人形供養について相談を受ける。燃えるゴミの日にでも出しておけと、玖流は取り合わなかったが、皐月は二階から転落。異様に人形に怯えているという。 玉響神社――地元では人形供養で知られた古社である。結局、皐月は供養に訪れたはずなのだが。事故だと切り捨てる玖流に、神社に問題があるのではと憤る美古都。美古都に無理やりお供を命ぜられた玖流は渋々神社へと向かうのだった。 神社の説明に不審点はなかった。だが、何か違和感を覚える。そんな玖流たちを待っていたのは皐月の死だった。何かあると探り出した玖流と美古都は、恐るべき秘密へと辿り着くのだが!? |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
オカルトホラーとミステリーが相まった、シリーズ第2巻。
明らかに面白くなったなーと感じました。
作者が本領を発揮したということもあるんですけど、読者側の心構えが出来たことも大きいかな。
1巻を踏まえて読んでいるので、ファンタジックな境界線を何処に引けばいいのか大体目星がつきます。
頑なに否定するわけではなく、神という存在があり、超越的な現象が存在することを頭に入れておけば、どちら側に流れても納得が出来ますし、ストーリーも把握しやすいですね。
その意味では、元から信仰心の強い美古都や、過去に神と関わっていた玖流よりも、ごく一般的な思想を持った御厨の方が同調できるというのが面白い仕組みだなぁ。
彼は、将来的にトリックスターとなるような予感がしますね。
登場人物を絞って、主要人物に焦点を当てたおかげで随分と読みやすくなりました。
キャラが少なくなればなるほど、ミステリーは予想しやすくなるものですが、今回の事件については、終盤まで真実が見えませんでしたね。
それだけ練られたストーリーと、巧妙な構成だったと思われます。
前巻のラストで予想はしていましたけど、早くも迫られた選択がシビアで、かなりキツイ。
厳しい現実から逃げること許さないのが、御堂彰彦さんらしい作風だなぁと思います。
しかし、これがまだ序の口だというのが散々フラグを立たせていることから分かってしまうんですよね。
まぁ、現状で仮に美古都とスナオを天秤に掛けた場合、読者側からするとスナオに対する思い入れが少ないので、何かしらのエピソードを挿入してくるんでしょう、きっと。
容赦なさに期待する一方で、一体どれほどの痛みとなるのかという恐怖も覚えます。
ううん、二律背反だなぁ。
玖流と美古都の掛け合いに、デレ要素が若干ながら増えたようが気がします。
普段いがみ合っているのに、本当は大切にしているんだなというのが傍から感じ取れる二人の関係が頬が緩くなっちゃいますね。
クールな装いで玖流に絡み意地悪してしまう美古都が活き活きしていました。
冗談っぽくからかう発言に本音を混ぜたり、たまに演技を忘れてしまうところが可愛らしいですね。
この作品の凄いところは、雰囲気が出過ぎていて、オカルトチックな内容が罰当たりじゃないかと不安さを抱かせるところにあると思います。
人形の不気味さも表紙から滲み出ていますしね。
総じて素晴らしかったのですが、惜しい点も少々。
ミステリー本筋に矛盾は感じられませんでしたが、細かいところでミスが見受けられます。
例えば、324Pの2行目に対する145Pとか。
160Pで一香と連絡先の交換を今朝したとあるにも関わらず、149Pを見ると一香は寝ていたり。
199Pの文字数が増えているという話も、文字でも音でも同数だったり。
編集さんのチェックが甘いんですかねぇ。
ああでも、描写不足気味だった文章は改善されていました。
刊行ペースは決して早くない作者だけに、次が待ち遠しいですね。
▼ | 大切な人の代わりとなる切なく哀しい人形物語 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 カミオロシ 御堂彰彦 さらちよみ 評価B+| h o m e |