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明日へと続く記憶

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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ゴールデンタイム外伝 二次元くんスペシャル 

ゴールデンタイム 外伝 二次元くんスペシャル (電撃文庫 た 20-20)ゴールデンタイム 外伝 二次元くんスペシャル (電撃文庫 た 20-20)
(2012/06/08)
竹宮 ゆゆこ

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読書期間:2012/9/19~2012/9/28

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
ラブコメ
青春




 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 三次元に絶望した男――その名も二次元くん。本名は佐藤。大学一年生。
 大学でも三次元の女は完全スルー、脳内嫁(名前はVJ。セーラー服で日本刀を持って戦う14歳)との対話や自作小説の執筆に明け暮れていた。
 そんな彼へ三元からの刺客が現れる。
 中学時代の後輩――魔性の秋。雰囲気のあるある美少女で、思わせぶりな距離感で接してくる。大学の同級生――同人戦士・愛可。二次元に生きる者同士の共感を武器に二次元くんに迫りくる。
 はたして二次元くんは二次元への想いを貫けるのか!?竹宮ゆゆこ&駒都えーじが贈る二次元叙情巨編!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「ゴールデンタイム」シリーズ初となる外伝作品。
本編では脇役である二次元くんを主人公として一冊丸々描かれています。

いやー、二次元くんを舐めてましたね。
その名に相応しい完全に向こうの世界に旅立った漢でした。
ドン引きするぐらい重症ですよ、彼……。
脳内嫁の設定の細かさや、現実と妄想の境界線の曖昧さが危ないよ……。

共感できる部分があるだけに、情けないなぁと思ってしまいますね。
自分に言い訳しまくりなところが、身に覚えありまくりでかなりキツイです。
大学生で中二病を患っている姿が痛々し過ぎて、見ていて苦しい。
個人的に脳内嫁であるVJが全く萌えられなかったので、余計に引いた目で見てしまいました。

そんな引き返せない境地まで辿り着いてしまったオタクが、リアルの女の子とお近づきになる話。
あー、所詮二次元くんも二次元の存在だったか。
そう簡単に可愛い女の子が接近するわけないだろうがと叫びたくなりますよね、うん。

男を誘惑する気配を放つ後輩・秋よりも、己の信念を持つ腐女子・愛可の方が好きです。
傍目から見たら、二次元くんとの相性も良いですし、付き合うなら愛可をお薦めしたいなぁ。

この作者は、思考の生臭さを書かせたら一級品ですね。
妙なリアリティとラノベ的フィクションの融合性に毎度のことながら感心させられます。
例えば、ヒロインの一人である秋は、大人と子供の中間である高校生のフラフラした脳内と形態を実に見事に描いていると思います。
ラノベであれば、つい魅力的なキーワードでキャラ設定を埋めつくしたくなるところを、回避したくなるような厭らしさを付随させてキャラを立たせるんですから凄い。

二次元くんが二次元の世界に逃避するだけではなく、三次元の行動で示すところは良かった。
たとえ格好悪くても、もがいて打開しようと必死なところは、プライドが高いだけのオタクじゃないなと思わせてくれました。

妄想に逃避するオタクの心理描写が生々しい

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ゴールデンタイム  竹宮ゆゆこ  駒都えーじ  評価B 

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明日から俺らがやってきた2 

明日から俺らがやってきた〈2〉 (電撃文庫)明日から俺らがやってきた〈2〉 (電撃文庫)
(2012/07/10)
高樹 凛

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読書期間:2012/8/29~2012/8/31

【評価……C+
発想 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
青春
ツンデレ
SF


 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★☆☆☆☆☆
 … 5



 未来からやってきた“俺ら”の協力もあって、晴れて大学1年生となった俺・桜井真人。可愛い彼女・高瀬涼と一緒にこれから楽しいキャンパスライフを送っていけるんだ!と思っていたら……誰もが振り向く可愛さを持ちながらも性格最悪な台風少女・香坂伊織と知り合ってからは波瀾万丈な日々。そんな香坂を背負って、何故か深夜の街を徘徊するハメに……なんでこうなるんだ!?
 “俺ら”の関係にも新たな変化が――チャラ男の『推薦』&ガリ勉の『受験』に加え、高瀬のことが好きすぎる半ストーカーの『変人』が増えた。……ウソみたいだろ。全部、俺なんだぜこれ。一体どうなっちゃうんだ俺の未来……!?
 ちょっと大人になった“俺ら”とおくる未来系・青春ラブコメ「大学編」!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「明日から俺らがやってきた」のタイトルで説明が付くラブコメ作品、第2巻。
まさかの続編です。

なんというテンプレ的ラブコメ。
キャラも展開もどこかで見たことがあるようなものばかりですね。
それが前回はヒロインの可愛さで長所となっていましたが、物語的に出番が少なめで残念なことに。

代わりに用意されたのは、大学でぼっちのツンデレ娘・香坂伊織
人に対してついツンケンな態度を取ってしまうけど、本当は友達が欲しいという典型的なキャラですね。
彼女と仲良くならなければいけない理由が出来た主人公が、彼女と急接近したことで、ヒロインである高瀬涼との関係に暗雲が立ち込めるという先が読めるストーリーです。

主人公の桜井真人が複数存在する意味合いが変わってますね。
1巻の場合は、受験と推薦の選択に迫られた桜井が、未来からやってきた自分自身からアドバイスを受ける恩恵がありました。
2巻では、周囲から見えない存在だけが利点で、正直賑やかしにしかなっていません。
己が選択しなかった未来からきた、又は自分自身であるという設定の必要性が皆無なんですよねぇ。
無理矢理続けたって印象を与えてしまう作りになっています。

ラブコメ的にも美味しい実の部分は少なく、枝ばかりで構成されている感じ。
涼のクーデレが見所だったのに、魅力的なイベントはほぼありませんでした。
まだ出番が数ページしかなかった妹の優の方が萌えられたくらいです。

純情といえば聞こえが良いですが、大学を舞台とすると些か幼すぎると感じてしまいますね。
基本を押さえたラノベなので、それなりに面白くて読みやすいのは間違いありません。
でも、ただそれだけなんですよねぇ。

設定的にこれ以上広げるのは難しそうなので、次は新作に期待かな。

ぼっち気質のツンデレ娘が少しずつ心を打ち明けてくれる王道のラブコメ展開

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  明日から俺らがやってきた  高樹凛  ぎん  評価C+ 

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楽聖少女 

楽聖少女 (電撃文庫)楽聖少女 (電撃文庫)
(2012/05/10)
杉井 光

商品詳細を見る
読書期間:2012/8/10~2012/8/20

【評価……B
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
音楽
世界観
ラブコメ
ファンタジー


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★☆☆☆☆☆
 … 5



 高校二年の夏休み、僕は悪魔メフィストフェレスと名乗る奇妙な女によって、見知らぬ世界へ連れ去られてしまう。そこは二百年前の楽都ウィーン……のはずが、電話も戦車も飛行船も魔物も飛び交う異世界!?
 「あなた様には、ゲーテ様の新しい身体になっていただきます」
 女悪魔の手によって、大作家ゲーテになりかわり、執筆をさせられることになってしまった僕は、現代日本に戻る方法を探しているうちに、一人の少女と出逢う。稀代の天才音楽家である彼女の驚くべき名は――
 魔術と音楽が入り乱れる、めくるめく絢爛ゴシック・ファンタジー、開幕!

【感想】


19世紀初頭で巻き起こるクラシック・ファンタジー。

魅惑的な悪魔により200年前もの世界へと飛ばされてしまった主人公。
彼は本来の名前を奪われ、文豪ゲーテとして生きることを余儀なくされてしまう。
史実とは異なる世界に困惑しながらも順応する彼は、ある一人の音楽家と出逢う。
その少女の名は、ルドヴィカ・ファン・ベートヴェン
稀代の天才音楽家は、何故か可憐な女の子の姿をしていた――という導入から始まるストーリーです。

著者の音楽を扱った作品といえば、名作と名高い「さよならピアノソナタ」。
個人的には、キャラクターが肌に合わず、2巻で切ってしまった作品でした。
しかし、音楽の造詣は目を瞠るものがありましたし、音の表現方法も耳を澄ませば聞こえてくるかのような文章が秀逸だったと記憶しています。
不安もありつつも期待を込めて、この作品を手に取ってみました。

一言でいえば、面白かったです。
ただ一つ注文をつけるのであれば、味付けが好みではなかったかなという感じ。

これは「さよならピアノソナタ」ではなく、舞台が変わった「神様のメモ帳」ですね。
まるであえて真似ているのかというぐらい共通項が多いです。
ピンチからの脱却や起死回生の作戦などといった構成も似通っています。

主人公・ユキとヒロイン・ルゥが、「神様のメモ帳」に登場するナルミとアリスそのままです。
一見何も能力を持っていない受け身体質かと思いきや人を纏め上げたり指導することに長けたツッコミ役の主人公と、14歳という幼さを絶妙に残す年齢で傲岸不遜ながらも時々ツンデレを顔見せする口調が「~だよ」「~なのかい」の僕っ子ヒロイン。
キャラの描き分けが出来ない作家さんではないので、意図的なんでしょうね。
いくら好評を得たからと言っても、もう少し変化を見せてくれても良かったんですが。
おかげ様で、大半のやり取りが既視感を覚えるものでした。

本作の売りは、古典派時代の音楽家が意外な形で登場するところにあります。
ベートーヴェンが女の子だったというだけでなく、世界史の教科書に出てくる有名人が妙な設定を付随してゴロゴロと出てきます。
歴史上の偉人を面白可笑しいキャラに仕立てており、シュールかつコミカルな笑いに誘われます。

またタイムスリップ物としても優秀で、歴史を知っている優越感が味わえるのも良いですね。
主人公の知識量に驚かされますが、興味のある分野であれば有り得る話なのかな。
ストーリーのオチは、綺麗だったなと思います。

それだけに盛り上がりどころの異能バトルが浮き過ぎです。
悪魔メフィストフェレスからして何でもありみたいな能力を持っていますけど、だからといってこの作品にバトルは必要なかったのではないでしょうか。
燃える、熱い展開を描きたいのであれば、純粋に音楽で魅せて欲しかった。
それだけの技量も持っていますし、実際中盤では圧倒された場面もありましたから。

岸田メルさんの描くゴシック調のイラストは、作品との相性抜群ですね。
可愛い女の子だけではなく、彫の深い顔の男性も見事に描ききっていました。

文豪と作曲家で巡り合うことで生まれる新たな音楽とファンタジー性のある物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  楽聖少女  杉井光  岸田メル  評価B 

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バッカーノ!1711 Whitesmile 

バッカーノ!1711―Whitesmile (電撃文庫)バッカーノ!1711―Whitesmile (電撃文庫)
(2011/12/10)
成田 良悟

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読書期間:2012/8/4~2012/8/9

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
構成
期待感




 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8





 1711年、彼らはついに海に出る。新大陸に向け――。それぞれの心の中に吹き荒れる風を受けて――。
 マイザー・アヴァーロは探求の風。
 セラード・クェーツは野心の風。
 ヴィクター・タルポットは責務の風。
 ベグ・ガロットは研究心の風。
 東郷田九郎とザンクは義侠の風。
 グレットとシルヴィは逃避の風。
 ナイルは恩義の風。
 チェスは他人の風に吹き流されて……。
 多くの錬金術師が大海原へと旅立つ中、失意のヒューイ・ラフォレットは――。

 『不死の酒』を巡る馬鹿騒ぎ、“始まりの物語”の結末は――。
 中世を舞台にした異色作第3弾!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「バッカーノ!」シリーズ第17巻目。
ナンバリングされていないので分かり辛いですけど、ラノベとしては相当長編シリーズとなっています。

全ての始まり、アドウェナ・アウィス号。
船上で不死の酒を飲み交わした錬金術師たちが、いかなる理由でそこへ辿り着いたのか。
ここまで積み重ねてきた物語の原点ともいうべきエピソードが描かれた今回の内容。
面白くないわけがありません。

錬金術師オールスターといって過言ではない表紙からして豪華過ぎますね。
ヒューイが、エルマーが、マイザーが各々の想いと野望を抱き、船旅に出る経緯が遂に明かされています。
一体いつからここまで深く入り組んだ物語を頭に描いていたのでしょうか。
主要人物だけでも両手で足りない数いる中で、複雑に交差した人間関係を見事に綴っています。
この構成力は今更ながらに圧巻ものですね。

1930年代や2000年代の土台は、やはり1700年代に形成されたものでした。
全ては線で繋がっているとは、まさにこのこと。
その観点からすると、「バッカーノ!」の真の主人公はヒューイしか考えられませんね。
フェルメートがラスボス、エルマーがキーマン、ついでに言うとフィーロが第2作目の主人公って感じ。
エルマーは隠しボスになる可能性も秘めていますがね。
シリーズの決着は、馬鹿騒ぎらしく笑えるものだといいなぁ。

意外な過去が判明したキャラが何人かいましたね。
ヴィクターとセラードの乗船経緯は予想外でした。
そもそも二人に繋がりがあったことや、セラードが妙に現実派だったりしたことも驚き。
シルヴィの生い立ちも想像付きませんでした。
成程、ある意味変わっていないのはエルマーぐらいということか。
上手い見せ方ですね。

フェルメートの悪人っぷりと、エルマーの末恐ろしさが際立ちました。
イロモノ揃いである作品でも、飛び抜けて毒の強いのがこの二人ですね。
エルマーは特殊だとしても、フェルメートが天敵だと認識している対立関係が面白い。

ヒューイ、エルマー、フェルメートの3者から特別視されている彼女のその後が気になります。
哀しい結果にだけはなりませんように。

謎とされてきた登場人物達の心情や関連性などが次々と暴かれる過去編集大成

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  バッカーノ!  成田良悟  エナミカツミ  評価B+ 

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アクセル・ワールド11 ―超硬の狼― 

アクセル・ワールド〈11〉超硬の狼 (電撃文庫)アクセル・ワールド〈11〉超硬の狼 (電撃文庫)
(2012/04/10)
川原 礫

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読書期間:2012/7/24~2012/7/27

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
燃え
期待感



 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 ブレイン・バースト内を暗躍する謎の組織≪加速研究会≫。その総本山≪東京ミッドタウン・タワー≫の頂に鎮座する、≪大天使メタトロン≫。
 完全無敵の神獣級エネミーによって守護されている≪加速研究会≫を打倒するため、七王会議が開かれた。
 そこで導き出された秘策とは、シルバー・クロウの新アビリティ≪理論鏡面≫獲得作戦だった。
 メタトロンの放つ絶対即死極太レーザーにも耐えるアビリティを習得する命を受けたクロウだが、≪心意技≫がイマジネーションによって生み出されるのに対して、≪アビリティ≫は行動をトリガーに発現する。そのため、今までのハルユキの強いイメージだけでは、≪理論鏡面≫アビリティは習得できない。
 いっこうに糸口を見えないハルユキに対して、≪アーダー・メイデン≫こと四埜宮謡が哀しい過去を語り始め――。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「アクセル・ワールド」新章開幕。
長らく続いた「災禍の鎧」編を終え、新たな始まりを予感させる内容となっています。

いわゆる種蒔き回というやつですね。
何か大きな事が起きそうだという期待感は募りますが、伏線消化されるのは随分先だろうなぁ。
この巻だけでも楽しめないことはないんですけど、次への布石のための下積みという印象が強いです。
丁寧過ぎて展開が遅く感じてしまうのが、長所でもあり短所でもありますね。

これまで触れられてこなかったアビリティの設定について、細かく解釈が用意されていました。
しかし、ハルユキが未だに基本システムからして把握しきれていないのは、後出しで設定を追加しても問題ないようにするためなんだろうか。
そう疑ってしまうくらいに、都合がいいなと思ってしまいました。
もちろん、最初から考えていたことなんでしょうがね。

サブタイトルにもある通り、防御力がとてつもなく高いアバターが出現するのが今回の肝。
反則的な能力を有する新星に対して立ち向かうシルバー・クロウが、己を省みる流れが素敵でした。
自分自身が加速世界初となる飛翔アバターとして君臨した際に、周囲が抱いた羨望と嫉妬を本当の意味で理解出来たのは、今回が初めてのことなんでしょうね。
当時の自分を振り返ることで、更に一歩成長するハルユキが主人公として輝いていました。
「災禍の鎧」編に比べると、背負うものはなくなったことで、気楽に読める分、燃え要素も物足りなさを感じてしまったのは、仕方ないですかね。

それにしても、本道を真っ直ぐに進まない作品だなぁ。
感覚的には、RPGで主となる目的を達成するのに必要な情報をかき集めるために全く違うクエストをしているというイメージ。
このままでは≪大天使メタトロン≫戦は、きっと5巻くらい先になるのではなかろうかw

キャラクターは、七王会議に参加する面々に魅力があって良かった。
やはり王たるもの貫録が違いますね。
黄の王の皮肉屋っぽいところが結構好きだったりします。

アニメは終わってしまいましたが、おそらく原作の人気からして続編は作られるでしょうね。
その時のためにも、原作ストックを溜め込んで貰いたいなと思います。

少しずつだけれど確実に主人公の成長を実感できる丁寧さが売り

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  アクセル・ワールド  川原礫  HIMA  評価B 

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空ろの箱と零のマリア5 

空ろの箱と零のマリア〈5〉 (電撃文庫)空ろの箱と零のマリア〈5〉 (電撃文庫)
(2012/07/10)
御影 瑛路

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読書期間:2012/7/17

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★★ … 9
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
構成
緊張感
狂気



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 大嶺醍哉が手にした箱は、“罪と罰と罪の影”。
 人々の罪を可視化、それを取り込むことによって対象を傀儡化する“箱”を使い、彼は人間を『選別』していく。
 自身の信念に基づき邁進する醍哉。
 そんな彼を“敵”とみなす星野一輝は、醍哉を止めるため、箱“願い潰しの銀幕”の使用を決断する。
 そして醍哉は、気づけば無人の映画館の中に閉じ込められていた。ここが一輝が展開した“箱”の中だと気づいた醍哉は、対抗するための手段を模索する。
 “箱”VS“箱”。衝突する二人。
 果たして勝者は――?

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


2年振りに発売された待望「はこマリっ!」シリーズ、第5巻。
合間に別作品を挟んだことで、打ち切りかと危惧されましたが、無事に刊行されて本当に良かった。
今現在追いかけているシリーズ作品でも、指折りのお気に入り作品です。

さすがに忘れていることも多く、ややこしい設定などに思い出すのに苦労しました。
もしも期間を置いて読むのであれば、軽くおさらいしておくことをお薦めします。

物語は佳境に入り、遂に正面衝突となった一輝と醍哉。
互いの願いを遂げるために、互いの願望を潰さねばならない。
“箱”の使用者同士の争いは、苛烈を極めていく……。

そう、これを待っていました!
じっくりと読みこみたくなる面白さは、他では早々味わうことが出来ません。

醜悪な人間模様と突き抜けた爽快感が混在した作風は変わらず。
娯楽性の濃かった「怠惰なる遊戯」編と比べると、“箱”自体のギミックよりも、軸のしっかりしたストーリーに興味をそそられます。
タイトルに結びつけた構成力には、驚愕を覚えます。

えげつない話を書かせたら、著者の右に出るラノベ作家は存在しないのではないでしょうか。
残虐かつ非道な人間を描く際に、読者層を想定してオブラートに包まれるどころか、容赦のない表現で徹底的に虐め抜いています。
この手の残酷さが好きな人にとっては、堪らなくゾクゾクとするでしょうね。

抽象的な事象を具体的表現で置換する手法に長けているのが特徴ですね。
少し曖昧すぎてボカしている部分は見受けられますが、本筋には影響ありません。
“箱”という認識し辛い現象を的確に書き表しており、読者が想像しやすい配慮がなされています。
特に今回の場合、醍哉が手にした箱“罪と罰と罪の影”は、名称通り、人間の罪や罰を具現化しているので、描写のキツさが跳ね上がっているように感じられます。

醍哉をダブル主人公の片割れとして書いたというだけあって、5巻の主役は紛れもなく彼です。
ばら撒かれていたヒントを繋ぎ合わした解答編ともいうべき構成となっており、中学時代から大きく変化した醍哉の背景に迫るものとなっていました。
その一方で、従来の主人公であった星野一輝は、もはやラスボス化していますね。
いや、ダークヒーローと言った方が適正かな。

醍哉の思考には共感を覚えるところが多数あります。
どちらかといえば、一輝の方が異常だと感じるから、醍哉の方に寄りついた……というわけではなく、常日頃から醍哉のような考え方が根底にあるからです。
現実は、不条理で不平等だと痛感し、理解しているからこその願望でしょうね。
実現可能な方法が存在しないために諦めていたのが、突如“箱”という形で転がりこんできたら、賭けたくなるのも心情的に仕方がないことです。

3,4巻で登場した新藤色葉と柳悠里にも積極的な介入があるのが嬉しい。
両者ともに、ゲストキャラとするにはあまりに惜しい人材でしたからね。
清純派ビッチというワケのわからないキャラ設定が妙にしっくりくる柳悠里。
己の力量を正しく把握して如何無く発揮出来る強さを持つ新藤色葉。
どちらも非常に魅力的かつ刺激的で、ゲームを盛り上げてくれます。

元々安定していなかったイラストは、2年の時で更に変貌を遂げましたね。
口絵の一輝や醍哉を見て、誰だこれ?と思いましたよ。
個人的には、1~3巻頃の絵柄が好きですね。

さて、明確に埋められた伏線が、明かされるまま終わりました。
全てが引っくり返る可能性を秘めた仕掛けは、果たしてどのように動き出すのか。
次巻も目が離せませんね。

登場人物達の駆け引きが逆転の応酬でワクワクが止まりません

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  空ろの箱と零のマリア  御影瑛路  鉄雄  評価A- 

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青春ラリアット!!3 

青春ラリアット!!〈3〉 (電撃文庫)青春ラリアット!!〈3〉 (電撃文庫)
(2011/12/10)
蝉川 タカマル

商品詳細を見る
読書期間:2012/7/7~2012/7/10

【評価……B-
発想 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
青春
友情



 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 長瀬の悪魔の誘導術などに押され、自慢のナンパテクなるものを披露することになった黒木。そして、運命の出会いを果たしたのが――ゆかりだった。
 きっとお嬢様に違いない、と思うぐらいに、おしとやかで天然なゆかりに黒木は舞い上がる。だが、お約束なことに、彼女は記憶喪失という重すぎるオプション付きだった。下心むき出しに、一人暮らしの自分の家に誘う黒木。宮本たちも監視を兼ねて黒木家に滞在することに。
 月島と一つ屋根の下に舞い上がり暴走する長瀬など、黒木の家は大騒ぎ!一方で、ゆかりを捜す不審な影が宮本たちの周りに出現し始め……。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


恋に不器用な少年少女達による青春ストーリー、第3巻。

月島を差し置いて黒木が表紙に登場するとは思ってもみませんでした。
この第3巻では、その黒木が主役となった恋と友情の物語が描かれています。

面持ちなどから周囲に清楚な印象を与える女性・ゆかりは記憶を失っていた。
そうとは知らない黒木は、友人達との雑談の流れから勢いで彼女をナンパをしてしまう。
しかし、その時現れた謎の男達にゆかりは囲まれる。
宮本や長瀬も当然の如く巻き込まれ、またしても彼らは日常から外れた物語に首を突っ込むことになる。

懐かしささえ覚えるベタベタなお話です。
記憶喪失の女性、お嬢様を窺わせる佇まい、謎のスーツ服姿の男達、匿う主人公達。
ここまで出揃ったらもうストーリーの枠組みは決まりでしょう。
あとは本作のキャラをはめ込むだけで、一冊の本が出来上がります。

正直、新鮮味が薄いのは確か。
しかし、定番イベントをこなしているだけあって、安定感はあります。
雛型が完成されているストーリーなので、構成や話の緩急は的確。
甘酸っぱさとほろ苦さを感じさせる結末を期待させて止みません。
2巻で少し評価を下げましたが、3巻で持ち直しましたね。

記憶喪失に限らず、設定はご都合主義満載。
主人公やヒロイン達の行動と実際の生活が結びつかず、説得力に欠けます。
今後これらを伏線として使用するのであれば、違和感を与えたことは成功なんですけどね。

長瀬の精神的な口撃が控えめとなり、ギャグとして成立するようになったのも大きな収穫でしょう。
宮本が不憫というよりも、長瀬の性格の悪さに目が付くレベルでしたからねぇ。
代わりに黒木が虐められていたいような気もしますが、それは彼のキャラによるものですね。
それに、何だかんだ言いつつ宮本や月島が、黒木のことを認めていることを言外に匂わせるので、信頼関係の厚さを感じ取れて良いなと思いました。

バトル要素は……うーん、要らないかなぁ。
月島が戦うパートは、敵側のキャラもあって浮いて見えました。

タイトル通り、豪快な青春模様が楽しい内容でした。
今回ぐらいの水準であれば、買い続けたいなと思えますね。

普段はチャラいけれど熱い心を持った少年と彼を信じる友人達の絆が素敵

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  青春ラリアット!!  蝉川タカマル  すみ兵  評価B- 

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楽園島からの脱出 

楽園島からの脱出 (電撃文庫)楽園島からの脱出 (電撃文庫)
(2012/05/10)
土橋 真二郎

商品詳細を見る
読書期間:2012/7/3~2012/7/5

【評価……B-
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー
サスペンス
緊張感



 ★★★★☆☆☆☆☆ … 5
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★☆☆☆☆☆
 … 5




 高校生活最後の夏休み。無人島に集められた男女100人の生徒たちが、島からの脱出を目指して競い合う。校内のゲームサークル「極限ゲームサークル」主催の大規模イベント。表向きはレクリエーションとして開催されたそのゲームは、賞金が出るという噂もあり……。
 ゲーム名【ブリッツ】――鍵を握るのは、自身とのペアの“価値”!?そして、女子だけに与えられた謎の機器の持つ意味とは――?
 「極限ゲームサークル」から“変わり者”として注視される沖田瞬は、このゲームの本質にいち早く気づくが……。
 土橋真二郎が贈るノンストップ《ゲーム》小説、最新作!

【感想】


無人島を舞台に行われる高校生100名による脱出ゲーム。

夏休みに男女50名ずつの高校生が、とあるサークルのゲームに参加する。
内容は不明、場所も不明、ただし賞金が出るという噂だけが先行する。
そんな彼らが連れられてやってきたのは、無人島だった……というストーリー。

クローズドサークルとしては、今更珍しくもない設定でしょう。
過去の作品と同じく、主催者の意図などガン無視で、舞台装置と考えておくべきなんでしょうね。

著者の電撃文庫作品を読むのはこれが初めて。
電撃文庫より年齢層が高めであるメディアワークス文庫の作品を読んできたからなのか、それとも今回がたまたま作風的にそうなのか、本作を読んでいる間ずっと感じていたことは……ヌルイなぁということ。
舞台設定にゆとりがあって、緊迫感に欠けます。
わざとその雰囲気を醸し出しているところもあるんでしょうが、正直肩透かしを食らった感じでした。
狂気は見られず、生易しい展開に物足りなさを感じいてしまいましたね。
まぁ、血生臭い話が苦手な人にもお勧め出来る土橋作品という意味では、成功しているのかもしれません。

人間心理を的確に表した言動は、些か硬質なものの、やはり巧い。
固定観念に囚われた人物が多く、集団心理の厭らしさが存分に出ていました。
ミステリーとしてもサスペンスとしても微妙ですが、特殊な舞台で繰り広げられる高校生達の駆け引きは、説得力もあって面白いですね。
キャラの思考に偏りがあるので、リアリティは感じられませんけども。

それにしても、人数が100人いても活かしきれてないですね。
キャラ個性を強く印象付けるためにも、絞った方が良かったのではないかなぁ。
どっちにしろ主要人物10人ぐらいしか動いていないのも、その他がモブ感丸出しで不自然だと感じました。

会話が淡々としており、アクションも地味。
主人公もヒロイン勢も感情の起伏が乏しいので、盛り上がりに欠けますね。

ふゆの春秋さんのイラストは、一人一人は可愛いのに、集団だと似過ぎていて見分けがつかないです。
身体のラインがエロティックなのは素晴らしいので、あとは顔の描き分けを期待したいところ。

何だかんだ言って、いつも通りの作風ですね。
萌え系ラノベに溢れている昨今では、定期的にゲーム小説を出してくれるのは有難い存在。
ストーリーは途中の段階で続巻前提だなと分かったので、内容を忘れないうちに次を読むつもりです。

未知なる状況や極限の環境で人間が取る行動を心理学的に観察している感覚があります

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  楽園島からの脱出  土橋真二郎  ふゆの春秋  評価B- 

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乙女ゲーの攻略対象になりました…。 

乙女ゲーの攻略対象になりました…。 (電撃文庫)乙女ゲーの攻略対象になりました…。 (電撃文庫)
(2012/01/07)
秋目 人

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読書期間:2012/6/19~2012/6/22

【評価……B-
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
ラブコメ
構成




 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6





 なぜか乙女ゲームの世界に放り込まれた、俺。しかも攻略対象になってしまったようだ。てことは、もしや美少女たちにアタックされまくり!?ウヒョ!
 と喜んでいたのもつかのま、そうそう都合のいい話はないようで。どうやら攻略されると、俺の死亡ルートに突入するかもしれず……。死の恐怖におびえる中、誰もが憧れる美少女たちが、俺を落とそうと次々やってくるのだった。
 美少女か、命か。どちらを取るべきなのか?それはもちろん――!
 乙女ゲームという名の、ちょっぴり変わったデスゲーム・ラブコメが登場!

【感想】


気付いた時には乙女ゲームの世界に居た主人公がフラグをバキバキに折りまくる変則的ラブコメ。

完成度はもう一歩届かないけれど、意欲は買いたくなる作品でした。
男性読者の多いラノベ業界で、ギャルゲーではなく乙女ゲーに目を付けたところは新しい発想ですね。

あらすじが内容と微妙に一致していない部分があります。
よくあるゲームの世界に入り込んでしまったパターン化と思いきや、どうも様子が異なります。

高校生の日下部湊は、ある日、乙女ゲーム「フォーチュン・クラウン」をプレイしている妹と何気ない会話をする。
攻略対象のメンズの中に兄と同じ名前の武尊湊というキャラがいるらしい。
攻略難易度が激高で、個別ルートに入って選択をミスすると、即座に武尊湊は死んでしまうという。
そんな他愛のない話を含めた日下部湊の記憶が甦ったのは、武尊湊として十数年生きてきた後だった。
果たして、今はゲームの世界に入ってしまったのか。
はたまた日下部湊は妄想なり前世だったりするのか。
とにもかくにも、「フォーチュン・クラウン」女主人公こと宮河乙女に攻略されて死に近づくことだけは避けねばならないと、必死に逃げ回る逆転的なストーリー構成となっています。

何が真実なのかが不鮮明で、足場の不安定さが怖いですね。
ただし、この辺りの設定が本題になることはなく、あくまで副次的な物であるのが勿体無い。
次巻以降で消化してくれる伏線だといいのですが。

恋愛ゲームのイベント要素はあっても、ゲーム的空気はあまり感じられませんでした。
主人公に「前世?」の記憶がなければ、ただのラブコメに見えてしまうほどに。

理由は幾つかあるのですが、最大の要因は、湊が悉くフラグを回避しようとするからでしょう。
この手のキャラは、ちょっとお馬鹿で分かっていても地雷を踏むタイプが多い中、湊は顔に似合わず頭の回転が早い主人公だと言えます。
おかげで、上手い立ち回りを出来ているんですが、そのせいで美味しい場面も少なかったり。
乙女ゲーを題材にしているのに、何故かラブ少なめのコメディとなっていましたね。
あと、主人公が男であるため、どうしても「ヒロイン達からアタックされる=ギャルゲー」の図式となり、同じく攻略対象である男達が埋もれてしまっているのは設定を活かしきれていないなと感じました。
声フェチという設定も含めて、好感は持てるんですけどね。

男女ともに登場人物が多いため、一人当たりの見せ場が少なめ。
その限られた中で、最も輝いていたのは、ヒロインの一人である桜実琴だと思います。
乙女ゲーマー仲間が出来たと思って慕ってくる彼女は、仔犬っぽい可愛さがありました。
義兄がいるにも関わらず、血の繋がりのある兄のように懐いてきて、素直でたまらなかったです。

美声の持ち主である法条紗綾もまた個人的な好みになりそうな予感を漂わせているのですが、如何せん登場頻度が少な過ぎましたね。
金髪お嬢様の高埜倉レイアは、良くも悪くもテンプレ的なツンデレ。
本来のゲームでは主人公である宮河乙女は、それ故に派手な個性が乏しい印象を受けました。

イラスト担当は、森沢晴行さん。
好きな絵師さんの一人ですが、この作品においては6割程度の力で描いているように見えますね。
もっと気合を入れて欲しかったな。

一応、1巻でも締めくくってはいますが、続巻前提で練られた要素も多々ありますね。
土台を固めたことで、いよいよ物語の核心に迫る展開が期待できそうです。

死亡フラグ回避のためにヒロインからのお誘いを断りまくる逆走ラブコメディ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  乙女ゲーの攻略対象になりました…。  秋目人  森沢晴行  評価B- 

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はたらく魔王さま!5  

はたらく魔王さま! 5 (電撃文庫 わ 6-5)はたらく魔王さま! 5 (電撃文庫 わ 6-5)
(2012/06/08)
和ヶ原 聡司

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読書期間:2012/6/14~2012/6/15

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
コメディ
ラブコメ
ファンタジー
構成


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6



 修理の終わった魔王城(築六十年・六畳一間のアパート)が、まさかの地デジ対応に!テレビなど贅沢品と思っていた魔王だが、芦屋の反対を言いくるめ、ついに薄型テレビ購入に踏み切る。
 とはいえ家電に詳しくない魔王たちは、日本の社会人代表として、恵美の会社の同僚・梨香を誘い、大型電気店に向かうことに。なぜか異世界の聖職者・鈴乃もそれに便乗し、魔王一行の“お買い物ツアー”がスタートする。そんな中、魔王に恋する女子高生・千穂に、危機が迫っていた――!
 フリーター魔王さまが繰り広げる庶民派ファンタジー、緊迫の第5弾登場です!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


庶民派の魔王と勇者が織り成すファンタジーコメディ、第5巻。
いつもよりもシリアス成分でお送りしています。

今回の内容は、何と真奥が働く立場ではなく消費者側に立ったお話。
とはいえ、随所に現代社会で生きる上でのコツみたいな話も挿入されており、相変わらずなシュールな一面もあります。

やっぱり生活感溢れるパートが面白いなぁ。
異世界の人間達が金を捻出してテレビを買おうと意気込むだけなのに、何故こうも楽しいんだろう。
小ネタの解説が、無駄にタメになるトリビアなところも含めて堪能できます。

まだ地デジ化前の時代背景ということもあって、今とは些か違う部分もありますね。
今ならもっとテレビの値段は安くなっているよなーと思いながら読んでました。
その辺りも、しっかり把握して書いているので安心できます。
恵美を携帯電話会社のお客様センターに勤めさせたりと、家電知識に詳しい作家さんだなぁ。

物語的には、進展しているのか停滞しているのか。
伏線をばら撒くだけで終わったような感覚を覚えました。
専門用語が多めな上に、真実を隠されている感が強いので、無駄にややこしくしているように見えるんですよね。
決して全てが駄目だとは言いませんが、日常シーンが素晴らし過ぎるだけに、邪魔に感じてしまうのが悲しいです。

キャラクターが魅力的なシリーズだなぁと再認識しました。
真奥と恵美に限らず、脇役もキャラが立っています。

芦屋と梨香のロマンス展開が、思っていたよりガッツリ入ってきて驚きました。
軽く流されるだけの要素かなと思いきや、いやはや今後大きな焦点になってきそうじゃないですか。
果たして実るかどうか……。全く予想できません。

一見ただのプロニートにしか見えない漆原のスペックの高さは、作品内でもトップクラスですね。
天使としての地位の高さだけではなく、狡猾で先見の明に長けています。
普段のダメダメさ加減とのギャップが、妙な格好良さを醸し出していて、何だか卑怯に感じてしまうほど。

鈴乃は、恵美と比べたら意外と素直に真奥達と打ち解け合っているところがニヤニヤしちゃいます。
世間知らずでボロを出すと慌てふためくところが可愛らしい。
うどんに執着するところなど、彼女も良い意味で日本に染まってきたことを感じさせます。
魔王軍に力の制限があるため、パーティー内では貴重な戦力となっているところが巧いなぁ。

敵ボスが仲間になったら弱くなるのはRPGの定番ですが、実に面白いことに、この作品では逆なんですよね。
確かに、新たな強敵を見せつけるのに、以前の敵役がやられるというのは効果的なのですが、あまりにも表現として強力すぎるため、逆にチープな印象を与えてしまったり、はたまたインフレを加速させることに繋がります。
勇者が魔王を討伐するRPGをモチーフにしているだけあって、その辺りのバランス感覚は抜かりありませんね。
漆原や鈴乃が、これ程までに頼もしい存在になるとは思ってもみませんでした。

情報の小出し方法に説得力がないのが減点対象かなぁ。
回りくどい説明をしたり、時間がないと遮ったり、全体的に構成が甘いのかもしれません。

4巻の千穂に引き続いて、表紙の鈴乃に惹きつけられます。
必ず3人以上が登場して、物語性を感じさせる表紙が好きです。
あとイラストに関しては、中盤にあった漫画のカット絵にはテンションを上げさせられました。

ファンタジー方面で面白くして欲しいのもあるけれど、それ以上に日常パートの配分を多めにして欲しいですね。
勤勉な魔王を見て、複雑な気持ちを抱く恵美や鈴乃を見るのが何より楽しいですから。

テレビを所望する魔王と家計を預かる悪魔大元帥の言い争う構図が面白可笑しい

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  はたらく魔王さま!  和ヶ原聡司  029  評価B 

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ソードアート・オンライン9 アリシゼーション・ビギニング 

ソードアート・オンライン〈9〉 (電撃文庫)ソードアート・オンライン〈9〉 (電撃文庫)
(2012/02/10)
川原 礫

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読書期間:

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
世界観
構成
期待感


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 「ここは……どこだ……?」
 目を覚ますと、キリトは巨木が連なる森の中――ファンタジーの≪仮想世界≫に入り込んでいた。手がかりを求めて辺りを彷徨う彼は、一人の少年と出会う。
 「僕の名前はユージオ。よろしく、キリト君」
 この仮想世界の住人――つまり≪NPC≫である少年は、なんら人間と変わらない感情の豊かさを持ち合わせていた。ユージオと親交を深めていくキリトの脳裏に、とある過去の過去がよみがえる。
 それは、子供時代のキリトがユージオと一緒に野山を駆け回っている記憶だった。そしてそこには、ユージオともう一人、金色の髪を持つ少女の姿があった。
 名前は、アリス。
 忘れていけないはずの、大切な名前だった。
 ウェブ上で最も支持を得た超人気エピソード登場!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


近未来のMMO情勢を主とした現代SF物語、第9巻。
アニメ放送前に発売されたものとしては、これが最新刊にあたります。

舞台は新たなる世界へ。
アリシゼーション」と題された今回のゲームは、いつになく特殊です。
なにせリアルとゲームの区別がつかず、キリトが現状に陥った理由を全く分かっていません。
果たしては、何が真実で何が虚像なのか。
手探り状態で進む展開は、まさにRPGそのもののようでした。

うん、面白かったです。
ただ少々構えて読まないと辛い部分はあるかな。

タイトルにわざわざ「ビギニング」と付けたくらいですから、相当長いエピソードになるんだろうなと予想していましたけど、この内容は序章もいいところって具合ですね。
約400Pの厚みのある本でありながら、プロローグⅠとⅡに100P弱ずつ割いています。
要するに、半分はプロローグであり、物語は始まってもいません。
専門用語も大量に頻出するため、導入としては、かなり重たい。
前半に詰め込んでいるおかげで、後半の加速に繋がるんでしょうが、もう少しエンジンのかけ方を気遣って欲しかったです。

まさに新章突入と言わんばかりのカラーの見開き中表紙は、素晴らしい演出でした。
ああ、売れている作品は違うなぁと嫌な考え方をしていましたねw

物語の筋が理解し始めると、楽しみ方が分かってきます。
突然、見知らぬ土地に降り立ったキリトが、冷静に考察する流れは面白い。
明確なゴールの存在を把握できないので、可能性を徐々に潰していきながら推理する手法を取っているわけですが、これが結果的にキリトと同調することになっています。
第三者の視点でヒーローを眺めていることの多かったこのシリーズにおいて、主人公と同じタイミングで驚いたり、頭を働かせたりするのは新鮮な気分となりました。

珍しいことは他にもあり、何と男の仲間キャラが登場します!
AWもSAOも味方キャラの増加は常に女の子であり、男は最低限しか存在していなかった川原礫さんの作品において、これが如何に珍しいことか。
表紙にも登場している碧眼の少年・ユージオの活躍には胸を躍らせました。

キリトの能力がチートっぽかったり、口を開けば女の子を落としていたりするところは相変わらず。
ステージが変わろうが、レベルが1になろうが、スペック高くて卑怯臭いなぁ……w

非常にワクワクとできる冒険の始まりでしたね。
謎ばかりが残っているので、早く次が読みたいです。

壮大な物語が始まる予感を感じさせてくれる設定と舞台が丁寧に作られています

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ソードアート・オンライン  川原礫  abec  評価B+ 

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ゴールデンタイム4 裏腹なるdon't look back 

ゴールデンタイム〈4〉裏腹なるdon’t look back (電撃文庫)ゴールデンタイム〈4〉裏腹なるdon’t look back (電撃文庫)
(2012/03/10)
竹宮 ゆゆこ

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読書期間:2012/5/15~2012/5/16

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
ラブコメ
青春
恋愛
期待感


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7



 とある深夜、束の間だけかつての記憶が戻り、当時抱えていた想いそのままにリンダのもとへ駆けつけようとして見事にこけた多田万里。
 翌朝。万里は唇を腫らし超絶ブサイクになっていた。発熱までしてみんなの看病を受けることになるが、なぜかその流れから香子と夏に海に行く話が持ち上がる。先立つものは金!とバイトを探す万里だが、香子からは大反対され――。
 かつての自分が好きだったリンダといまの自分が好きな香子。二人の狭間で揺れる万里の心の旅路はまだ半ば?
 竹宮ゆゆこ&駒都えーじが贈る青春ラブコメ、第4弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


記憶を失った男が過去と現在で想いを寄せる相手が違うことに苦しむ青春物語、第4巻。
恋にバイトにサークルにと多忙を極める大学生達のキャンパスライフが舞台です。

衝撃のラストだった前回から引き続く展開が待っている……と思っていたんですが、何だろうこの全体的にボカし気味な感じは。
直接的な騒動は局地的で、ほとんどが万里の脳内が混乱している模様に終始しているためか、物語が進んでいるようで進んでいません。
いや、きっと万里の中では決着をつけているつもりなんでしょう。
でも、この程度で完結できるような簡単な事柄だったら、そもそも悩まないでしょうに。

香子とリンダへの想いが共存し、どちらも嘘偽りないもので、だからこそ万里の抱える苦しみが圧し掛かります。
リンダが自然体であればあるほど、万里と親密な仲だったことを想起させ、切なさが増してきます。
十中八九、最終的には香子とくっ付くんだろうなぁと思っていますが、希望はリンダルートを見てみたい。
きっと作中内外で相当荒れ狂うだろうなぁ。

香子も悪くないんですけどね。
ウザったいだけの女に終わらず、彼女なりの純真さや想いの力強さなどが魅力的に描かれています。
ちょっと(?)世間知らずな一面もありますが、それもまた愛嬌ってもんでしょう。
彼氏のバイトぐらいは許してやれよと思いますがね。
まぁ、正直二次元なら楽しめますけど、三次元なら絶対関わりたくない人種だよなぁ……w

まどろっこしくも濃い文章は相変わらず。
人を選ぶ文体で、たまにコメディのノリに置いてけぼりをくらいますが、個人的には好きです。
他にはない生々しさが癖になりますね。

地面にある不発弾を認識しながら、その上に着々とピースを積み重ねていく展開が恐ろしい。
一体いつ爆発して、築いてきた想いの欠片の重圧に屈するのか。
早めの時期の方が傷は浅く済むのに、もう手遅れのところまで来ているという意識なんだろうなぁ。
これから更にとんでもないことになると思いますし、そうなることを期待します。

エンターテイメント性を狙い打ちする傾向があるライトノベルという分野において、内面を重要視し、物語の進行方向が不透明なこの作品は非常に珍しいと思います。
分かりやすい面白さを求めるのであれば、お薦めできないシリーズですね。

甦りつつある過去の想いの大きさに動揺を隠せない主人公が痛々しい

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ゴールデンタイム  竹宮ゆゆこ  駒都えーじ  評価B 

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ミニッツ ~一分間の絶対時間~ 

ミニッツ―一分間の絶対時間 (電撃文庫)ミニッツ―一分間の絶対時間 (電撃文庫)
(2012/04/10)
乙野 四方字

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読書期間:2012/5/12~2012/5/14

【評価……B
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
青春
ラブコメ




 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6





 私立穂尾付学園高校一年一組、相上櫻。
 一分間だけ相手の心を読める『ミニッツ』能力の持ち主。
 “一年生にしてこの学園の生徒会長になる”――そんな大それた野望を持つ櫻は、この『絶対時間』を利用し、クラス内で“頼れるが妬まれない、愛嬌のある委員長”という絶妙な立場を演じていた。
 しかしある日、ふとした事がきっかけで、自身の秘密を生徒会副会長の琴宮遥に知られてしまう。
 櫻は、遥の弱みを握り返すため、彼女が提案する心理ゲーム『馬鹿と天才ゲーム』に挑む――。
 第18回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>受賞!トリックとロジックが交差する、学園騙し合いラブストーリー!

【感想】


第18回電撃小説大賞<選考委員奨励賞>受賞作。
今年の受賞作品の中で、最も購入前の期待度が高かった作品です。

確かにこれはこれで面白かったけれど、思っていたのと全然違う本でした。
これは、あらすじ紹介が詐欺っぽくて印象を悪くさせちゃっていますね。
下手に期待させなければ、もっと評価されたかもしれないのに勿体無い。

てっきり生徒会会長の座をかけて選挙活動に励む、または『馬鹿と天才ゲーム』と呼ばれるロジカルな推理対決が始まるのかと思っていたんですが、どうも話の進行方向が違う。
他人の心を一分間だけ読める能力を持った主人公・相上櫻による知略バトルが主軸ではありません。
それは数あるサブ要素の一つに過ぎず、本当のメインは、環境により偏ってしまった思考を持った少年少女が人間関係に思い悩みながらも心を交わしていくハートフルストーリーです。

発想は良く、素材はかなり優秀だと思います。
ただ詰め込み過ぎた設定のせいで、全体的にぼやけてしまっているのが残念。
伏線を張っているにも関わらず、何だか超展開に見えてしまうのは、複数混ぜ込んだ題材が衝突しあって長所を消してしまっているのが原因でしょうね。
それこそ知略バトルでもいいし、生徒会役員選挙でもいいし、異能系でもいいので、絞って書くべきではなかったかなー。

ヒロイン役である生徒会副会長・琴宮遥が、思っていたほどスペックが高くなかったのは、ある意味ギャップが効いてて魅力的に感じられました。
櫻と皮肉めいた表面上の会話を繰り広げる様相が、まさしく腹の探り合いで面白い。
距離が縮まって憎めない存在になっていく中盤の展開は、ベタだけど一番楽しく読めた箇所でした。
一歩踏み外してしまうと崩壊してしまう緊張感の中で行われる駆け引きにドキドキさせられます。

遥以外にも女の子を中心に数名キャラが出てきますが、そのほとんどが今回の話に関係ありません。
無駄に登場人物を増やして軸をブレさせるぐらいなら、出てこない方が良かったと思います。
続巻で出しても遅くはないんですから。

慣例通り編集があらすじを書いているのであれば、これは担当が悪いですね。
内容に沿った説明にしておかないと、反感を買うだけです。
ひたすら遥と駆け引き巡りを繰り返していれば、俺得だったんだけどなぁ。
心理ゲームに特化した内容で読んでみたかったです。

ナルシスト気味な主人公と完璧なお姉さん系ヒロインによる弱点の曝け出し合いが見所

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ミニッツ  乙野四方字  ゆーげん  評価B 

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明日から俺らがやってきた 

明日から俺らがやってきた (電撃文庫)明日から俺らがやってきた (電撃文庫)
(2012/02/10)
高樹 凛

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読書期間:2012/5/8

【評価……B
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
青春
クーデレ
SF


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★☆☆☆☆☆
 … 5



 推薦入学で大学デビューして女の子にモテようか、それとも将来のために上を目指して大学受験しようか。通路に悩む俺、高校3年生・桜井真人の前に突然、未来から“俺”が時間を超えてやってきた!しかも二人も!!チャラ男とガリ勉の桜井真人……って本当に俺かよ!?でも俺の秘密(エロ本の隠し場所)を知ってるし……どうやら本物。そして、どちらの未来を選んでも最悪の人生らしい……。
 そんな中、クラスメイトで同じく進路に悩む『氷の女王』こと高瀬涼と仲良くなった俺は高瀬の未来も不幸らしいと聞いてある決断をすることになるが……。
 ちょっと大人の“俺ら”とおくる、未来系・青春ラブコメ!(……なのか!?)

【感想】


第18回電撃小説大賞<電撃文庫MAGAZINE賞>受賞作。

誰しも一度は「過去の自分に助言をしたい」と思ったことがあるはず。
未来から自分自身がやってくるという題材ならば古今東西溢れ返っていますが、別々の選択をした己が二人同時にやってくるギミックは新たな面白味が生まれていました。

主人公・桜井真人は、大学進学の手段として、受験と推薦の二択で思い悩んでいた。
推薦を選び、時間を有効活用して大学デビューを果たすべきか。
それとも受験を選び、より上の大学へ進学して堅実な就職を目指すべきか。
人生の岐路に立たされた彼の前に、突如として数年後の桜井真人が二人も現れる。
推薦を選んだ彼は受験を、受験を選んだ彼は推薦を勧める。
どちらを選んでも苦難が待ち受けていることに絶望した彼が選ぶ道は、とある女の子がキッカケだった……という青春ラブストーリー。

シンプルイズベター、というべきでしょうか。
あっさりと仕立てられたラブコメは、単調ながらも女の子の可愛さが引き立つシチュエーションを大切に描かれているので、素直に面白いなーと受け取ることが出来ました。
女の子さえ可愛ければ、テンプレ通りのお約束をなぞる展開は長所となりますね。

ヒロインの高瀬涼は、一見クールな美少女で近づき難い雰囲気を漂わせていますが、その中身は優しい心を持った年相応の少女でした。
人付き合いが苦手で壁を作っているだけで、接してみるとイイ娘だというのが分かる典型的なタイプですね。
リアリティなどはありませんが、純真さが非常に魅力を感じさせました。

登場頻度が少ないながらも、妹の高瀬優も可愛らしかったです。
少々出来過ぎていて、裏があるんじゃないのかと疑ってしまった自分は汚れてしまいましたねw
まぁ、そう思ってしまう程に出番が限られているのも問題と思うわけですが。

主人公を含めた三人の桜井真人による絡みは楽しめたものの、タイムスリップの必要性は薄かったかな。
SF設定の整合性や理屈などは、おざなりにしている部分が目立ちます。
時間移動モノとして読むと、物足りなさを感じてしまうでしょうね。

一方で、人生経験が異なる二人の自分自身と問答するのは面白く、パラレル的な意味合いでは成功していました。
進路に迷う主人公が、未来の自分の助言を得て、自らが決心する流れは良かったと思います。
ちょっと頼りないところもあるけれど、最後の選択を誤らない彼は、高校生なのに立派ですよ。

イラスト担当は、ぎん氏。
描き込み量が絵によって結構違いますけど、女の子はみんな可愛くて惹き込まれました。

オーソドックスな青春モノで、個人的にかなり好みの内容でした。
ハーレムが基本となりつつある昨今において、懐かしささえ覚えるようなヒロインが確立したラブコメでしたね。
綺麗に完結していますが、これ続くんですよねー。
蛇足とならないといいんですが、読むからには期待してみたいなと思います。

好きな女の子と自分のために頑張れる主人公が若々しい青春物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  明日から俺らがやってきた  高樹凛  ぎん  評価B 

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はたらく魔王さま!4 

はたらく魔王さま!〈4〉 (電撃文庫)はたらく魔王さま!〈4〉 (電撃文庫)
(2012/02/10)
和ヶ原 聡司

商品詳細を見る
読書期間:2012/5/5~2012/5/8

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
コメディ
安定感
ラブコメ
ツンデレ
ファンタジー

 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6


 バイト先のファーストフード店の休業で、職を失った魔王。さらに住居であるアパート、ヴィラ・ローザ笹塚も、ガブリエルとの戦いで壊れた壁を修理するため、一時退去しなくてはならなくなってしまう。
 職と魔王城を同時に失い失意の魔王は、大家・志波の勧めで“海の家”ではたらくことに。その店は、志波の姪だという女性・天祢が経営しているらしい。しかも、魔王に恋する女子高生・千穂や、魔王の命を狙う勇者・エミリアまでもが魔王を追って海の家にやってきて――!?
 夏で海でも仕事です!な、庶民派ファンタジー第4弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


庶民的感覚が根付いてしまった魔王と勇者のファンタジーコメディ、第4巻。
またもや現代日本を舞台にして巻き起こるドタバタ模様が繰り広げられます。

バイト先の改装による一時閉店と、アパートの改修が重なり、職と住居を同時に失った魔王。
路頭に迷う魔王達に、大家から救いの手が差し伸べられる。
大家の親戚が経営する海の家で住み込みバイトを募集しているという。
かくして、舞台を海に移し、魔王たちの夏が幕を開けます。

題して「海の家ではたらく魔王さま!」編です。
そのまんまですけど、そうとしか言いようがない内容となっているので仕方がありません。

いやはや、着実に面白さを増していますね。
期待度がますます上がってしまって大変です。

魔王がボロボロの海の家を再建させようと知恵を絞りだし、奮闘する様がメチャクチャ楽しい。
とにかくアイデアが素晴らしく、飛び出す案がどれもこれも感心させられます。
とても営業出来るような状態ではなかったのに、この説得力のある変化はスゲー。
さすが魔王さま、半端ねえ!
海の家で切り盛りするパートは、終始ワクワクさせられっぱなしでしたよ。

窮地を切り抜けようとがむしゃらになる姿が、下手な戦闘シーンよりも燃えました。
ルシフェルにも活躍の場が与えられましたしねw

真奥と恵美の間にアラス・ラムスが入ると、途端にアットホームな雰囲気となるのが和みます。
普段いがみ合っていても、教育だけは熱心なお父さんとお母さんって感じで、微笑ましい。
ツンデレを地で行く恵美が、徐々に態度を軟化させつつあるのも色々と美味しいですね。

ヒロイン的には、きっとちーちゃんこと千穂の方が人気高いんだろうなー。
個人的には、恵美=鈴乃>千穂って具合なんですがね。
千穂も良いキャラだとは思うんですが、恵美と鈴乃が好き過ぎて相対的に評価が下になっちゃいます。

お仕事に励むパートが秀逸な一方で、魔界と天界の動きは怪しくなってきました。
バトル展開よりも、日常生活に四苦八苦している魔王たちを見る方が圧倒的に面白いので、物語の主軸に関心が鈍くなっちゃうのが如何ともしがたいところ。
専門用語が頭に入ってきづらく、日常シーンとの隔たりを感じました。
一概に悪いとは言えないんですけど、もう少しシンプルでもいいかなと思いましたね。

029さんのイラストは、初期と比べると女の子の肉付きが良くなってきましたね。
表紙のちーちゃんのスタイルには、正直目を奪われました。
海といえば、もちろん水着の出番もあり、女性陣は期待通りの可憐さで、目の保養になりました。

伏線が埋め込められた印象の強い回でした。
シリアス路線に走るよりも、このままコメディ調で駆け抜けて欲しいなぁ。

数々の工夫で海の家を再建させようとする魔王の手腕に感服させられます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  はたらく魔王さま!  和ヶ原聡司  029  評価B+ 

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俺の妹がこんなに可愛いわけがない10 

俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈10〉 (電撃文庫)俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈10〉 (電撃文庫)
(2012/04/10)
伏見 つかさ

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読書期間:2012/5/1~2012/5/4

【評価……B
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
コメディ




 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 あのバカがしばらく一人暮らしをすることになった。受験勉強に集中するためってのと、あとひとつ、お母さんが最近あたしと京介の仲がよすぎることを変に疑っているらしい……。あたしと京介がそんな関係に――なんて、あるわけないじゃん!
 で、まあ、責任の一端は、ちょっとだけあたしに……あるみたいだし、あいつもどうせコンビニのお弁当とかばっか食べそうだし、仕方ないから、あたしが面倒見てあげようかと思ったんだけど……。
 ちょっとあんたたち、なに勝手に京介の家で引越し祝いパーティ開こうとしてんの!?発案者の地味子はいいとして、黒いのに沙織に、あやせに……加奈子まで!ていうか、あんたたち知り合いだったの!?えっ?地味子と仲直り?そんなのあとあと!あーもー、ひなちゃんは言うこと聞かないし!こんなんじゃ京介が勉強に集中できないじゃん!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


テレビアニメ第2期が決定した俺妹シリーズも大台となる10巻に突入。
相変わらずのシスコンとブラコンによる日常系ラブコメ模様が繰り広げられています。

鈍感なヒモが女の子達を囲んでハーレムを堪能するために一人暮らしを始める話。
……あながちこの説明で間違ってはいないと思いますよ、ええ。

物語の流れに納得がいかない。
妹の桐乃と仲が良過ぎる関係を訝しむのは両親として当然でしょうが、その対応が突飛すぎる。
何故大学受験間近の高校生を一人暮らしさせた挙句に、食事の用意を他の女の子達に用意させている事実はスルーするのか。
京介も両親も容認しているのが解せません。

つーか、自分より年下の女の子にセクハラまがいのことしすぎ。
シスコンを拗らせた京介は見るに堪えませんね。
良いところがあると理解しつつも、普段の言動などが許容範囲を超えているので、桐乃は好きになれません。
家族だから、妹だから仕方がないという原理で手助けをしていた頃の京介は、共感を覚えたんだけどなぁ。

しかしながら、コメディとして読むと面白いから悔しい。
設定の整合性などを無視すれば、キャラの掛け合いは楽しく笑えます。
会話主体で成り立つ文章なので、行間を読む必要性がまるでありません。
良くも悪くもまどろっこしさがなく、テンポよく読み進めていくことが出来る点は、普段本を読まない層にとって好印象なのではないでしょうか。
コメディなんですから、下手に難解な用語を混ぜるのは、作者の独りよがりでしょうしね。

恋愛編が幕を閉じたと聞いていたのに、ラブコメが加速している件について。
とりわけ今回は、あやせのターンでした。
彼女がいつの間にかに京介への想いを募らせているのは、前回の短編などで明かされていましたが、ここにきて怒濤のプッシュが押し寄せています。
女の子的な意味合いでは、黒猫の次に好きなので、個人的には楽しめましたね。
しかし、あやせの場合、もう少しデレ要素が少ない方が萌えると思うのは異端でしょうかw

黒猫とあやせの邂逅は、火花を散らすバトルに突入して面白かったです。
この二人や桐乃に好意を抱く京介って、根っからのMですね。

ハーレム要因として加わった加奈子も何気に見せ場が多く用意されていました。
可愛いとは思いますけど、正直お腹いっぱい。
キャラを増やし過ぎた感は拭えませんね。

アニメ2期の最終回に合わせて原作も終了するのかなー。
さすがにこのままダラダラ続いていても、京介のタラシ具合が悪化するだけですし、そろそろ締め時かも。
売り上げ的にこのまま終わらせるのは惜しいと思っていそうですがね。

京介に気のある女の子達が集合しハーレム度が急上昇しています

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  俺の妹がこんなに可愛いわけがない  伏見つかさ  かんざきひろ  評価B 

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AHEADシリーズ 終わりのクロニクル7 

終わりのクロニクル〈7〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)終わりのクロニクル〈7〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)
(2005/12)
川上 稔

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読書期間:2012/4/9~2012/4/24

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
燃え
世界観



 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 2nd-Gの概念化で命刻の攻撃を受け、危篤状態に陥った新庄……。
 一方、その命刻は詩乃を抱え、かつてTop-Gで新庄の両親が作り上げた、概念創造機械ノア=バベルへと向かった。
 そして、マイナス概念の活性化により、全てが喪われる運命の日――。
 佐山たち全竜交渉部隊は、己の全ての力と想いを込め、最後の戦闘を開始する!
 果たして、彼らは滅亡の危機から世界を救うことができるのか!?
 全竜交渉は、未来への道を拓くことができるのか!?
 オールキャストが揃い、「終わりのクロニクル」、遂に感動の完結!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


終わりのクロニクル、最終章。
長く続いたAHEADシリーズは、ここで一つの完結を迎えます。

まず最初に語らねばならないのは、内容ではなく厚さでしょう。
電撃文庫初となる1000ページ越えは、噂に違わぬ重量感で鈍器と呼ばれる所以を身を持って体感しました。
確かに最初から最後までクライマックスが続くのですが、一冊にまとめる必要性があったのかと問われると、ただ読みにくかっただけだと思います。
改行が多くて、紙面に載る文字の割合が少ない。
本の値段は安くなったのかもしれませんけどねぇ。

そんなわけで四苦八苦しながら読み進めました。
物事を段階的に捉えた書き方をする特徴は、とうとう最後まで変化ありませんでしたね。
話が盛り上がるところと単調なところの差が激しく、一定のペースで読むのは難しいです。
作者のアクが強い文章が、全てを同じ彩色にしてしまっているような印象がありますね。

登場人物が増えれば増えるほど、一人当たりの見せ場が減るはずなんですが、この方は万遍なくレギュラーメンバーに機会を与えています。
だからこその量で、面白いんだけどゲップが出てしまいますね。
もう少し直接的かつ簡略的に書いてくれると、ページをめくる手も早く動いたんですがね。
メリハリが足りなかったかな。

川上節のおかげで、キャラ造形が似通っており、人数の割には幅は狭く感じました。
良キャラ揃っているし皆好きだと思う反面、お気に入りキャラは特になく。
強いて言えば、口が立つ佐山かなぁ。
そして、彼が本気で動揺すればするほど物語的には面白かったですね。
中盤で気持ちの整理をつけようとする佐山は、普段見ることが出来ない哀愁を漂わせていて、珍しく直に心を触れたかのような感覚でした。

ギャップという意味合いでは飛場竜司の活躍は嬉しかった。
10代の癖して妙に達観している面子の中で、がむしゃらさが輝いて見えました。

至とsfの関係性は、もはや一種の様式美とさえ言えると思います。
幾度となく繰り返してきた禅問答により作り上げられた二人だけの距離感が良かったです。

全竜交渉と大々的なことを掲げながら、争いの種は限りなく個人的な事柄が発端なのか。
結局のところ、それが人の動機や指針となるのかもしれませんけど、如何せん小物っぽく感じてしまいました。
世界を巻き込んでおいて、命刻は詩乃に比べると覚悟が足りなさ過ぎます。
全竜交渉部隊の面々もそうですが、死人が出ていることを頭で理解していても感情は麻痺しちゃっていたのかなぁ。
第1章の頃は、そうではなかったはずなのに。

その一方で、身近な人物や親、過去に護国課に携わってきた者たちの想いは余すところなく引き継いでいます。
それは素晴らしいことなんですが、その熱意をちょっとでも端役に分けてやって欲しかったな。
まぁ、シリアスなはずの場面でギャグで流されることが常の作品では、野暮ってもんかもしれません。

さとやすさんの絵は安定しているなと思っていましたが、1巻と7巻を見比べるとまるで違いますね。
気付かないうちに、相当腕を上げていたことに驚かされました。
ラノベでエロの限界に挑んでいるかのようなモロな絵が多かったのもビックリしました。

さすがに達成感はありますね。
通算14冊で1冊単位のページ数が半端じゃないので、本当に長かったです。
すぐさま「境界線上のホライゾン」に取り掛かる気力は沸きませんが、いつかまた挑戦してみたいなとは考えています。

長距離を短距離走のスピードで駆け抜けるかのような最終決戦

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  終わりのクロニクル  川上稔  さとやす  評価B 

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バッカーノ!1932-Summer man in the killer 

バッカーノ!1932‐Summer―man in the killer (電撃文庫)バッカーノ!1932‐Summer―man in the killer (電撃文庫)
(2011/06/10)
成田 良悟

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読書期間:2012/4/4~2012/4/8

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
構成





 ★★★★★★★★☆☆ … 8






 その夏、死を恐れる新聞記者は殺人鬼と出会い――死にたがりの少年は、不死者と出会った。

 1932年、NYの街を恐怖に陥れていたのは、『アイスピック・トンプソン』が現れるのは決まって雨の日。アイスピックを凶器に何度も何度も突き刺され、雨が血を流していく――。
 DD新聞社をはじめ、連続殺人鬼の記事や話題で持ちきり中、警察はグラハム・スペクターという不良少年に疑いをかける。一方、NYを訪れていたエルマーも殺人鬼にあたりを付け始め、グラハムと出会うことに。そして、自分の関係者が殺されていくガンドールたちも、徐々に事件の中心へと近づいていき……。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「バッカーノ!」シリーズ通算16冊目。
1930年代でも時系列はまたまた遡って、2冊目となる1932年のエピソードになります。

元々、アニメDVDの特典として執筆された話を加筆して出版したものらしいです。
以前にもドラマCDの特典を通常販売されていましたが、この配慮は非常に有難い。
限定版などを買い揃えている人からすると、納得がいかないであろうとは思いますけどね。

連続殺人鬼が出没した街を舞台に、表と裏で多数の組織が関与し、思わぬ方向へと話が流れていきます。
思惑が入り乱れた結果、誰もが予想だにしない結末へと展開する構成は、もはやお手の物。
作者らしいパズル的な物語構造は、先が読めそうで読めないバランス加減が面白く、単に物語を受け止めるだけではなくて、楽しませて貰っている気分になれます。
さすがに、これだけの数を読んできたら、無闇に死人を作らず、哀しみを悲劇ではなく喜劇に変える作風が得意だというのは百も承知です。
おかげで、読了感が良く楽しめますね。

既存キャラで物語の中心に存在するのは、表紙にも登場するエルマーとグラハム。
登場人物が多過ぎる作品ですので、もはやどこで交流があるのか覚えきれなくなってきました。
最初、この二人が出逢っていたことに驚きましたが、考えてみれば気が合いそうな性格してますよね。
異常気質を持った人間同士、共感する部分があったようです。

しかし、どちらかといえば、彼らは傍観者というか付添人みたいな感じかな。
殺人鬼を軸として、新キャラが物語を動かしています。
ただでさえ、一部キャラ背景を忘れつつあるのに、これ以上増やされると、理解が遠のいてしまいそう。
人物関係図が欲しくなってきました。

一つの事柄に集結していくのではなく、小刻みにどんでん返しがあるような印象でした。
推理する楽しみもあると思いますけど、バカ騒ぎに乗っかって、まんまとミスリードに騙されるのも楽しくなります。

残すところ「バッカーノ!」シリーズは3シーズンだそうで。
これだけ撒き散らした伏線と相関図をどのように回収してくれるのか。
期待したいと思います。

断片的な情報で紡がれる得意の群像劇が先の展開を渇望させます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  バッカーノ!  成田良悟  エナミカツミ  評価B 

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アクセル・ワールド10 ―Elements― 

アクセル・ワールド〈10〉Elements (電撃文庫)アクセル・ワールド〈10〉Elements (電撃文庫)
(2011/12/10)
川原 礫

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読書期間:2012/3/13~2012/3/21

【評価……B-
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
燃え




 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6





 『遠い日の水音』――西暦二〇四六年、秋。新生≪ネガ・ネビュラス≫の一員となったシルバー・クロウことハルユキだが、とある過失でバーストポイントを急激に減らしてしまう。窮地に立ったハルユキに、タクムは加速世界の≪用心棒≫を雇うことを提案する。
 『最果ての潮騒』――西暦二〇四七年、春。新入生・能美征二の策略によって、かつてない危機に陥ってしまったハルユキ。時を同じくして、黒雪姫は修学旅行先の沖縄で、奇妙なバーストリンカーに≪対戦≫を仕掛けられていた。
 『バーサス』――西暦二〇四七年、春。ハルユキはブレインバースト内で、黒い剣士の姿をしたアバターと出会う。次元の壁を越えて、二人の主人公が激突する!
 待望の特別編!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「アクセル・ワールド」10巻にてシリーズ初の短編集です。
収録されているエピソードは、いずれも時系列的に随分前の話ですね。

遠い日の水音』は、1巻と2巻を繋ぐお話。
アニメ放送前に文庫化したかったんでしょうね、きっと。
レベルアップにポイント消費することを知らなかったハルユキが、バーストリンク消失の危機に陥り、用心棒の力を借りてポイントを安全圏まで回復しようという展開。
リアバレの恐怖を作中で散々説いておいて、この流れは不自然だと思いました。
というか、もしハルユキが逆の立場ならば、タクムの提案をそっくりそのまましたでしょうし、仲間に助けを請うことは何ら恥ずべきことではないんですから、二人で協力して苦難を乗り越えればいいのに。
その割には、用心棒ことアクア・カレントを安易に信頼しすぎだしなぁ。
己のポリシーを貫くことも立派ですが、時と場合によるでしょう。

最果ての潮騒』は、3,4巻のダスク・テイカー編の裏で黒雪姫に起きた事件が描かれています。
ハルユキのピンチに颯爽と天馬に乗って現れたことから、何かあったんだろうなとは思っていましたが、思ってた以上に濃い時間を過ごしていたんですね。
ただ、これまた設定的に無理があるような気がします。
前々からこの作者は、面白そうな世界観を作り上げ、緻密な設定があるように見せかけて、希望と勇気とノリで破壊してく傾向があるんですよねぇ。
これで燃えたり感動したりするか、矛盾を感じて楽しめないかは人次第なのでしょうか。
基本的には面白いだけに、強引さは目立ちます。
良かったのは、珍しく味方サイドにクリムゾン・キングボルトという男性アバターが出てきたこと。
まぁ、女キャラはそれ以上に出てきていますけど。

最後は、川原礫さんが書くもう一つの大作「ソードアート・オンライン」とのコラボ作『バーサス』。
AW4巻直後辺りのハルユキと、SAOの主人公・キリトのデュエルが描かれた内容です。
両作品とも読んでいる身としては、お祭り的なSSとして楽しめました。
まぁ、何だか相手側をべた褒めしているのが自画自賛っぽく映ったのと、実力拮抗しているのに違和感を覚えましたがw
二人が勝負するということだけは知っていたので、夢オチとかifストーリーとかパラレルワールドとか、色んなパターンを妄想しました。
結果としては、ジャンプ系アニメの劇場版みたいな感じでしたね。
しかしながら、SAOを知らない人にとっては微妙だったでしょうから、人を選びますね。

一応伏線もばら撒いてはいますが、いかにも番外編といった一冊でした。
そういえば、初めて黒雪姫ピンの表紙から、ヒロイン勢3人になっていますね。
楓子も謡も作中に出てきませんから、本当にサービス以外の何物でもありません。

物語の合間や裏側を補間する意味合いの強い短編集

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  アクセル・ワールド  川原礫  HIMA  評価B- 

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カミオロシ弐 ~人形供養の儀~ 

カミオロシ〈2〉人形供養の儀 (電撃文庫)カミオロシ〈2〉人形供養の儀 (電撃文庫)
(2012/02/10)
御堂 彰彦

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読書期間:2012/3/6~2012/3/9

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー
ホラー
ラブコメ
構成
期待感

 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8


 人形が持ち主の下に帰ってくる。生徒たちの間で囁かれる噂。玖流は同級生の皐月から人形供養について相談を受ける。燃えるゴミの日にでも出しておけと、玖流は取り合わなかったが、皐月は二階から転落。異様に人形に怯えているという。
 玉響神社――地元では人形供養で知られた古社である。結局、皐月は供養に訪れたはずなのだが。事故だと切り捨てる玖流に、神社に問題があるのではと憤る美古都。美古都に無理やりお供を命ぜられた玖流は渋々神社へと向かうのだった。
 神社の説明に不審点はなかった。だが、何か違和感を覚える。そんな玖流たちを待っていたのは皐月の死だった。何かあると探り出した玖流と美古都は、恐るべき秘密へと辿り着くのだが!?

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


オカルトホラーとミステリーが相まった、シリーズ第2巻。

明らかに面白くなったなーと感じました。
作者が本領を発揮したということもあるんですけど、読者側の心構えが出来たことも大きいかな。
1巻を踏まえて読んでいるので、ファンタジックな境界線を何処に引けばいいのか大体目星がつきます。
頑なに否定するわけではなく、神という存在があり、超越的な現象が存在することを頭に入れておけば、どちら側に流れても納得が出来ますし、ストーリーも把握しやすいですね。

その意味では、元から信仰心の強い美古都や、過去に神と関わっていた玖流よりも、ごく一般的な思想を持った御厨の方が同調できるというのが面白い仕組みだなぁ。
彼は、将来的にトリックスターとなるような予感がしますね。

登場人物を絞って、主要人物に焦点を当てたおかげで随分と読みやすくなりました。
キャラが少なくなればなるほど、ミステリーは予想しやすくなるものですが、今回の事件については、終盤まで真実が見えませんでしたね。
それだけ練られたストーリーと、巧妙な構成だったと思われます。

前巻のラストで予想はしていましたけど、早くも迫られた選択がシビアで、かなりキツイ。
厳しい現実から逃げること許さないのが、御堂彰彦さんらしい作風だなぁと思います。

しかし、これがまだ序の口だというのが散々フラグを立たせていることから分かってしまうんですよね。
まぁ、現状で仮に美古都とスナオを天秤に掛けた場合、読者側からするとスナオに対する思い入れが少ないので、何かしらのエピソードを挿入してくるんでしょう、きっと。
容赦なさに期待する一方で、一体どれほどの痛みとなるのかという恐怖も覚えます。
ううん、二律背反だなぁ。

玖流美古都の掛け合いに、デレ要素が若干ながら増えたようが気がします。
普段いがみ合っているのに、本当は大切にしているんだなというのが傍から感じ取れる二人の関係が頬が緩くなっちゃいますね。
クールな装いで玖流に絡み意地悪してしまう美古都が活き活きしていました。
冗談っぽくからかう発言に本音を混ぜたり、たまに演技を忘れてしまうところが可愛らしいですね。

この作品の凄いところは、雰囲気が出過ぎていて、オカルトチックな内容が罰当たりじゃないかと不安さを抱かせるところにあると思います。
人形の不気味さも表紙から滲み出ていますしね。

総じて素晴らしかったのですが、惜しい点も少々。
ミステリー本筋に矛盾は感じられませんでしたが、細かいところでミスが見受けられます。
例えば、324Pの2行目に対する145Pとか。
160Pで一香と連絡先の交換を今朝したとあるにも関わらず、149Pを見ると一香は寝ていたり。
199Pの文字数が増えているという話も、文字でも音でも同数だったり。
編集さんのチェックが甘いんですかねぇ。
ああでも、描写不足気味だった文章は改善されていました。

刊行ペースは決して早くない作者だけに、次が待ち遠しいですね。

大切な人の代わりとなる切なく哀しい人形物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  カミオロシ  御堂彰彦  さらちよみ  評価B+ 

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あなたが踏むまで泣くのをやめない!! 

あなたが踏むまで泣くのをやめない!! (電撃文庫 み)あなたが踏むまで泣くのをやめない!!
(電撃文庫 み)

(2012/01/07)
御影 瑛路

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読書期間:2012/3/3~2012/3/5

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
ロリ
ギャグ
ラブコメ
構成


 ★★★★☆☆☆☆☆ … 5
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7



 ある日、クラスメイト(で可愛くて俺の女神でそして巨乳)のチョコちゃんに、一緒に部活見学をして欲しいと誘われた。
 なぜか我が家に居候し続けるドS幼女も連れて向かった先は『ポジティ部』。
 ゴクリ……。
 嫌な予感しかしねぇ。
 案の定、その部活はポジティブどころか、頭のネジが外れたネガティブなやつらの集まりで……。しかも『リア充耐性』をつける活動だとか言ってる。
 残念系乙女なチョコちゃんのトラウマを克服するため、亭主関白系男子の俺が立ちあがる……!波瀾万丈の第二弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


残念系少女たちと繰り広げる痛快ラブコメディ、シリーズ第2巻。
タイトルでシリーズ物と判断できないのは、不親切だと思いますね。

意外と良かったというのが率直な感想です。
前巻が好みから外れていたため、過度な期待をしなかったのが良かったのかもしれません。
買おうか悩んでいましたけど、読んで正解だったなと思いました。

1巻と比べて楽しむことが出来た最大の要因は、まず間違いなくヒロイン役の交代にあります。
ひたすらネガティブ思想に走るチョコちゃんこと黛千代子のおかげで、ラブコメが数段面白くなりました。
この娘の逆走は、あまりにも全力疾走なので、ギャグとして笑えるのがいいですね。
帯にある「わたし、ほぼ生ゴミですもんね」という台詞を始め、どこからそんな発想が出てくるんだと感心してしまうほどです。

そんな彼女がネガティブな性格を直すため、ポジティ部と呼ばれる同好会に入部するという話。
レイ部長ニーナ先輩マスクと個性的なメンバーと共に、人見知り体質な彼女たちが勇気を出して人並みの活動を行う様は、シュールな笑いと微笑ましさが生み出されています。
特定層のトラウマを掘り返すようなネタが多いのですが、しっかり笑いに繋げられているところは素晴らしいですね。

後半は、チョコちゃんの過去を知った寿也の行動が焦点となるのですが、シリアスな展開もまた面白かったです。
ラブコメであろうと人間の負の部分を曝け出させるところが、ザ・御影瑛路と感じました。
堕ちるところまで墜ちても、チョコちゃんは可愛かったです。

それにしても、サドな幼女に支配されて喜ぶなんて趣味はないので、アリスには好感を抱けませんね。
ぶっちゃけ、邪魔臭いと思っているぐらいです。
社会的に寿也を追い込もうとする白波瀬の面々が気に入りません。
大した説明もせずに何でもかんでも寿也に任せるのはおかしいでしょう。
家庭の問題に首を突っ込んだのは寿也自身ですが、たかが一高校生の彼にそこまで責任を負わせる理由があるんでしょうか?
あくまで一例ですが、アリスに残された時間が少ないといった理由のように、重大であればあるほど、なおさら所詮他人の寿也に任せる理由が希薄となるんですよね。
ここから、納得できるようなどんでん返しを見せてくれるのであれば嬉しいんですけどねぇ。

会話の応酬は、それだけで笑ってしまうぐらいセンスを感じます。
ただ、テンポを重視しすぎているのか、その場に複数人いても個々の対話となっています。
何故横から話に入ってこないんだろうかという不自然さが隠せませんでした。

最終章の展開は衝撃的でしたね。
しかし、これだけでは何とも判断が付きませんね。
果たしてどう続くんでしょうか、これは。

自虐系少女と急接近するラブコメ模様にニヤニヤさせられます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  あなたが泣くまで踏むのをやめない!  御影瑛路  nyanya  評価B 

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アクセル・ワールド9 ―七千年の祈り― 

アクセル・ワールド〈9〉七千年の祈り (電撃文庫)アクセル・ワールド〈9〉七千年の祈り (電撃文庫)
(2011/10/08)
川原 礫

商品詳細を見る
読書期間:2012/1/31~2012/2/3

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
SF
燃え




 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 「許さない。お前を殺す――バーストポイントが全部なくなって、加速世界から消えるまで、殺し続ける」
 再び≪クロム・ディザスター≫となってしまったハルユキは、≪アッシュ・ローラー≫を痛めつけていたアバターたちを鬼神のごとき力で瞬殺する。そして、深部まで完全に≪災禍の鎧≫と融合してしまうのだった。
 滅ぼすべき敵を求めて≪加速世界≫を飛翔するシルバー・クロウ。そして彼は、次なるターゲットとして、≪ISSキット≫とその制作者たる≪加速研究会≫に憎悪の矛先を向けた。
 誰も制止不能の狂戦士。そんな彼の前に、一体のアバターが立ちふさがる。
 その名は、≪グリーン・グランデ≫。
 最強の大盾≪ザ・ストライフ≫を携える絶対防御の≪緑の王≫と、呪われた狂気のアバターが激突する――!
 ≪災禍の鎧≫編、完結!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


現在アニメ放送中である近未来SFアクション、第9巻。
帯にてアニメ化決定の文字が印字されている通り、発売したのはもう半年も前となります。

5巻から続いた「災禍の鎧」編も遂に完結。
2巻で初登場した際に仕込まれていた種が、ここまで大きく実をつけるとは思っていませんでした。
ブレインバーストのメインストーリーから外れる内容にも関わらず、これだけの巻数を消費するんですから、最終回を迎えるのは当分先になりそうですね。
レベル10となりゲームクリアを目指すという明確なゴールが提示されているのに、辿り着くまでの道が果てしなく長く、なおかつ脇道も全力で描くものですから終わりが見えてきません。
後出し情報の多さなども含め、何だか「ONE PIECE」を彷彿とさせますね。

少年ジャンプ系の王道で面白かったです。
ただし、結局振り返ってみると「災禍の鎧」編は冗長だったかなぁと感じますね。
説明に文章量が多くなってしまう癖と、作品上の時間軸で詰め込み過ぎる構成のおかげで、事件や出来事は頻発しているのに進行が鈍く感じるという不可思議な状態となっています。
以前あとがきで仰っていましたが、物語を畳むのを苦にしている部分が影響しているんでしょうね。
結末は綺麗で良い終わり方だったなと思うんで、あとは見せ方かな。

新キャラ・日下部綸の正体は、ぶっちゃけ察しが付いていました。
世間的には衝撃を受けた人が多いようですけど、おそらく予測できた方も結構いるはずです。
アノ人と親しい間柄という時点で、おかしいなと。
敵役は男ばかりで、味方は女キャラばかりとなる偏向が酷い作者ですから、予想はつきました。

大人しそうに見えて想いは直球で伝えてくる女の子は可愛いと思います。
設定的にも、なるほどと思わせる理屈付けがありました。
ですが、この展開は正直避けて欲しかった。
ご都合主義全開のハーレムが、無理矢理過ぎて興醒めしてしまいます。
読者視点からするとハルユキの良さも理解できますが、それと説得力があるかどうかは別物です。

いつにも増して表紙の黒雪姫がエロい。
布生地の少ない服装で横乳と尻を大胆に見せつつ、棒状のものを股に挟むなんてけしからん。
個人的には、特別女の子として惹かれるわけではないので、ただ買い辛かっただけですが。

ひとまず落ち着くところに落ち着きましたね。
随分と否定的な感想となってしまいましたが、楽しんで読んでいるのは間違いありません。
そろそろ情報を小出しにして驚きを与えるのではなく、システムを前提とした燃えバトルを見てみたいな。

憎しみと哀しみが作り出した「災禍の鎧」完結編

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  アクセル・ワールド  川原礫  HIMA  評価B 

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人見知り部は健全です2 

人見知り部は健全です 2 (電撃文庫 さ)人見知り部は健全です 2 (電撃文庫 さ)
(2012/01/07)
佐野 しなの

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読書期間:2012/1/19~2012/1/20

【評価……B-
発想 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ラブコメ
ツンデレ
エロ



 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6




 発言エロ過ぎ残念美人・乃花さん率いる『人見知り部』の活動も、あがり症、オネエ言葉、無表情……と、相変わらずのメンバーで二年目に突入。そして人見知り部のお陰(?)で、晴れて幼なじみの明とつきあうことになった俺は、青春まっただ中!……のはずが、明との仲は進展せず、それどころかちょっとぎくしゃくしている始末。
 そんなある日、人見知り部に執事をつれた高飛車お嬢様・礼香がやってくる。彼女の目的は部をつぶすことだというが、どうも彼女からも“人見知り”のにおいがして――!?
 乃花さんと青春不適合者たちが贈る不健全系学園ラブコメ、第2弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


人見知り達が集ったコミュニティの楽しい部活動を描いたラブコメ作品、第2巻。
題して『バカップルは不健全です』の巻。

面白かったです……が、よくあるラブコメ作品との違いがなくなってしまったなぁ。
僅か4ヶ月で2巻を発売したことから、1巻入稿直後から構想に取り掛ったのだと思われます。
短期間で仕上げるためには、安直なパターンに持ち込むしかなかったのかなぁ。

新キャラである年下の金髪碧眼ツインテールお嬢様・一条礼香は、設定からして既視感バリバリ。
ですわ口調で高飛車で、しまいにはツンデレというテンプレもいいところ。
素直になれない彼女が、人見知り部の面々と触れ合い、心が紐解かれていくストーリーに目新しさは皆無です。
同時進行される寿藍人と臼潮明のすれ違いもまた読者にはバレバレで、意外性はありません。
定番といえば聞こえはいいですけど、もう少し捻りを生み出して欲しかった。

藍人の無表情や、明のあがり症設定が置いてけぼりにされている感があります。
仲良くなった面子では壁を作らなくなったということなのかもしれませんが、せっかくの独自性を蔑ろにしています。
唯一、乃花の親父的下ネタ雑学は相変わらずで楽しめました。
たとえ話をするたびに、エロ方面で直結させる話術は素敵です。
しかし、礼香に出番を奪われ、物語的のも外野にいたために、絡みが著しく減少してしまったのは痛かった。
ぶっちゃけ、執事の波佐宮は惜しいものの、新キャラを出さずに既存キャラだけで構築した方が良かったと思いますね。

なにしろカップルが成立してイチャイチャしているシーンが面白かっただけに、余計にそう思います。
明の初々しさは反則級ですよ。
一般的に男性が好む女キャラに興味が持てないことが多いのですが、明は別ですね。
257Pの甘さは、熟した苺が一粒で口内に広がってくるかのように甘々でした。

妹の平和は、登場頻度が限られますが、キャラが濃くて印象に残りますね。
無表情ながらも感情が見えた1巻と比較すると、キャラがコントしているように見えました。

表紙が礼香ではなく、明で嬉しかったです。
八の字眉毛に三角形の口をした困り顔が可愛いなー。
笹井さじさんのイラストは、トーン張りが丁寧で好感が持てますね。

2巻で完結なのは残念ですけど、ネタ切れ感も漂っていますし仕方がないかな。
また3年間待たされるのは困りますが、じっくりと練った新作を期待しています。

付き合い出したばかりのカップルがツンデレ少女に邪魔されながらイチャつく話

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  人見知り部は健全です  佐野しなの  笹井さじ  評価B- 

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トカゲの王Ⅰ ―SDC、覚醒― 

トカゲの王 1 (電撃文庫 い 9-22)トカゲの王 1 (電撃文庫 い 9-22)
(2011/07/08)
入間 人間

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読書期間:2011/12/9~2011/12/23

【評価……C+
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
物語 ★★★★☆☆☆☆☆☆
 … 4
人物 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
構成





 ★★★★☆☆☆☆☆☆ … 4






 俺はこんな所で終わる人間じゃない。その他大勢が強いられる『普通の人生』から逸脱した、選ばれし者なんだ。
 俺に与えられた能力『リペイント』は、インチキめいたまがい物。でも、俺には世界を“塗り替える”資格がある。このインチキこそ、俺の力なんだ。
 どこまでもなにもかも騙し抜く。
 まず手始めに、俺自身も騙す。
 そして、目の前に立ちはだかる不気味な殺し屋どもから必ず逃げ延びてやる。
 だって、俺は。
 『最強』なんだから。

【感想】


入間人間氏の新境地となる異能系バトル、開幕。
一冊丸々かけてのプロローグとなっています。

これまで著者の本は刊行順に全て購読してきました。
独特の文体ながらも安定したクオリティを生み出す作家さんだと思います。
しかし、今作は残念ながら微妙だったと言わざるを得ません。

瞳の色を変化させられる能力を持った主人公・五十川石竜子
異能の力を持った彼は、非現実的な出来事に憧れを持っていた。
己の力に未知なる可能性があると信じる思春期真っ盛りの彼だったが、実際に本物の異能者たちの騒動に巻き込まれることで、大きく心境が変化していく……といった内容です。

印象としては、入間人間版『とある魔術の禁書目録』。
元来ラノベや漫画において異能系バトルは人気ジャンルの一つで、ここ10年で急激に需要と供給が高まった分野だと思われます。
その多くは、主人公の成長や覚醒を起点として物語が始まりますが、そんな過去の異能系バトル作品のアンチテーゼともいえるモノを書きたかったのかなと感じました。
『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』を執筆した作者らしい、生々しく厭らしい描写がふんだんに盛り込まれたものとなっていて、作風としてはアリだと思います。

ただし、相変わらずエグい書き方をしますから、お世辞にも万人に薦められる文章ではありません。
状況的に緊迫した状態が続くため、合間に挟まれるパロネタやギャグも少なめなのが一層読み辛い。
また、叙述トリックは、面白さよりもシコリが残るだけで、読み難さの方が上回ってしまいました。

それ以上に問題なのが、物語が単純につまらないという小説における致命的な弱点です。
厨二病を発症した主人公が痛い目をみる発想は良いと思うんですけど、そこから先が何もなかった。
次巻以降で盛り上げていく算段なのかもしれませんが、惹かれる要素が少な過ぎます。
みーくんみたいに嘘やハッタリで騙ることが出来れば、ガラッと見方も変わったんですけどね。

ヒロインの巣鴨涼もまた癖のあるキャラで、好感は正直抱き辛いです。
インパクトを与えたという意味では成功していますから、こちらはまだ今後に期待できますがね。

作家買いならともかく、ブリキさんの肉つきのエロい絵で釣られた人には、厳しい内容だったかなと思います。

中途半端な能力を持つが故に調子に乗った少年が酷い目に遭う話

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  トカゲの王  入間人間  ブリキ  評価C+ 

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桜色の春をこえて 

桜色の春をこえて (電撃文庫)桜色の春をこえて (電撃文庫)
(2011/11/10)
直井 章

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読書期間:2011/12/3~2011/12/5

【評価……B-
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
青春
友情
構成



 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★☆☆☆☆☆
 … 5




 「あたしの家にくればいいよ?それで全て解決でしょ」
 高校入学とともに一人暮らしをはじめるはずが、手違いにより部屋を失った真世杏花に救いの手が差し伸べられる。
 救い主の名は澄多有住。杏花の同級生でもある彼女は、かわいい名前に反してぱっと見は不良、低学歴アリ。一緒に暮らし始めても無愛想でわがままでおまけに生活能力もない。杏花は折り合いをつけるのに難儀するが、時折ちょっとした優しさやかわいげが垣間見え……。これってもしかして、ツンデレ?
 二人の少女が織りなす、感動の同居×青春ストーリー。

【感想】


春の淡い雰囲気が漂う、女の子の爽やか青春ジュブナイル。
典型的なガールミーツガールです。

不動産屋の手違いにより入居するはずの部屋を出なくてはならなくなった少女・真世杏花
路頭に迷う彼女だったが、隣に住む同級生の女の子・澄多有住から同居の提案をされる。
半ば強引に決まった共同生活から始まる女の子の友情物語です。

ラノベよりも一般向けに近い雰囲気のある小説ですね。
登場人物が女子大生だったら、メディアワークス文庫から発売していたと思われます。
電撃文庫ではたまにサブカルチャー色のない作品が出てきますが、この類のものは結構好みです。

精細な下書きを用意しても、安易なキャラ付けでベタ塗りしてしまう昨今のラノベにおいて、素朴な味が楽しめる貴重な作品だと思います。
家庭環境に問題があった少女たちが、衝突し合いながらも徐々に絆を深めていく流れは、90年代の青春ドラマを思い出しました。
素直になれない性格故につい言葉が汚くなってしまう女の子が、心を許すと途端にじゃれてくるのは、何だか子猫みたいで可愛いですね。
意外と重い背景を抱えているんですが、前向きになれる内容で、読了感は悪くありません。

ただ、難点もいくつかありますね。
設定は良いと思うんですけど、上手く物語を膨らませられなかった印象を受けました。
何ていうか例えるのが難しいんですが、もっと空気を入れれば綺麗な張りのある風船になっただろうになーという感じ。
一冊完結のため、最後はしっかりと締めないといけませんから、多少こぢんまりとしてしまうのは致し方がないと理解は出来るんですけどね。

文章は、ちょっと古め&堅めで読みやすくはありました。
しかし、全体の構成を考えると、バランスが悪さが見受けられましたね。
無意味に中盤まで秘匿された設定のせいでキャラ背景が把握しづらかったり、地の文の説明量に大きく差があったりと推敲が足りていないのかなと感じました。

これらの不満点を抱きながら読んでいたわけですが、あとがきを読んで納得。
物語にしろ文章にしろ、圧倒的に書いてきた量が少ないんでしょうね。
逆に言えば、センスだけでここまでの内容を仕上げたわけですから、相当な力量を持った作家さんともいえます。
伸び代はありますから、今後の執筆活動に期待したいところです。

ふゆの春秋さんの挿絵は、質は高いと思いますが、キャラだけで背景が皆無だったのが惜しい。
カラーの桜吹雪や風になびくスカートなどは良かったんですけどね。

同居生活から得られる家族的な優しさが沁みる女子高生友情物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  桜色の春をこえて  直井章  ふゆの春秋  評価B- 

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ソードアート・オンライン8 アーリー・アンド・レイト 

ソードアート・オンライン〈8〉アーリー・アンド・レイト (電撃文庫)ソードアート・オンライン〈8〉アーリー・アンド・レイト (電撃文庫)
(2011/08/10)
川原 礫

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読書期間:2011/11/29~2011/11/30

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
SF
世界観
ミステリー



 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6




 『圏内事件』――≪SAO≫中階層で、一人のプレイヤーが殺された。その殺害現場は、決してHPが減るはずのない≪安全圏内≫だった。これはプレイヤー・キルだと仮定するも、その殺害方法に全く見当がつかず……。奇怪な事件を、キリトとアスナが追う。
 『キャリバー』――≪ALO≫伝説の聖剣≪エクスキャリバー≫。その獲得クエストがついに始まった。守護するモンスターたちの強さから一度は獲得を諦めていたキリトだったが、これを機に再び争奪戦に本格参戦する。しかし、このクエストには壮大な裏イベントがあり……。
 『はじまりの日』――≪SAO≫正式稼働初日。茅場晶彦によるデスゲーム開始の声明を受けた直後。キリトが決断した、このゲームを生き抜くための最初の一手。それは、ベータテスト時に攻略経験のあるクエストを真っ先にクリアし、初期装備よりも強力な剣を獲得することだった――。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


次世代MMOで文字通り生きる少年少女を描いた現代SF、第8弾。
2巻以来の短編集となっています。

今回は素直に面白いと思えました。
過去の感想で何度も書いていますが、この作品、些か抵抗を覚える要所があるんですよね。
ネットとリアルの切り離しが出来ていない考え方や、主人公キリトが強過ぎるご都合主義など、物語に入る前段階で引っかかって楽しめないことがあります。
それが、この8巻では最小限で抑えられていたので、気にならなかったのが大きかったです。

個人的には、上記の点を短所と捉えていますが、俺TUEEEという話が好きな人もいるでしょう。
もとより設定の組み上げ方や、物語の牽引力に関しては実力のある作家さんですからね。
評判がいいのも納得できます。

内容は、3本のエピソードが収録されています。
ちょっと短めの長編といってもいい中編2本あるので、読み応えは相当なものがありました。

中でも『圏内事件』が良かった。
SAO時代、キリトとアスナが親しくなるキッカケとなったミステリアスな事件を追う話です。
やっぱりデスゲームとしてのSAOは、緊迫感がまるで違いますね。
PKが出来ないはずの街中でプレイヤーが死んだことで、更に不安感が増大しています。
ミステリーのオチとしては、提示されていない情報もあるため反則気味ですけど、伏線はしっかり張っていましたし、何よりゲーム的なロジックの利用が非常に巧みだったので一本取られたと感心させられました。

同様にSAOの最初期を描いた『はじまりの日』も、前から読んでみたかった話でした。
ゲーム内の死をリアルの死と直結したくなくても意識せざるを得ないプレイヤーたちの焦燥感が苦しくなるほどに伝わってきます。
過酷な状況に追い込まれた中で、人を信じることが如何に難しいかを痛感させられます。

ALO伝説級の武器獲得クエストを描いた『キャリバー』は、最も戦闘描写があったにも関わらず、随分と平和な話に感じられました。
ただ仲間が集まってゲームを遊んでいるだけですから、当然といえば当然ですか。
このエピソードは、どこもかしこも「シノンさん、マジかっけぇ――!」という感想ばかりですね。
確かに、美味しいポジションで、ヒロイン勢の中でもキャラが立っていた印象を受けました。
個人的には、ハーレム阻止やツッコミ役などで活躍するクラインの存在の方が貴重で有難いなと思いましたがね。

挿絵は、絵の描き分けが素晴らしかった。
雰囲気重視だったり、キャラを映えさせたり、コミカルな笑いを誘ったりと惹き込まれる絵が多かったです。
表紙は何故か野郎二人になってますが、これはこれでありかと。
白背景に女の子が一人デカデカと飾ることが多い昨今のラノベにおいて、快挙ではないでしょうか。
一体何なんだこのキリト推しは……w

デスゲームの緊迫感を再び味わえるSAO時代の短編が秀逸

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ソードアート・オンライン  川原礫  abec  評価B+ 

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AHEADシリーズ 終わりのクロニクル6<下> 

終わりのクロニクル (6下) (電撃文庫―AHEADシリーズ (1176))終わりのクロニクル (6下) (電撃文庫―AHEADシリーズ (1176))
(2005/11)
川上 稔

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読書期間:2011/11/19~2011/11/26

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
SF
世界観
構成



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 “軍”の元9th-Gの将軍ハジの糾弾により全てのGの信頼を失ったLow-G。それに対して、各Gは概念核の返却を求め行動を開始し、全竜交渉部隊に再び高いを挑む。
 一方、出雲へと向かった佐山と新庄はそこで8th-Gの全竜交渉を行い、更にはTop-G崩壊の鍵となった新庄の母親・由紀緒の過去を知るために堺へと向かうこととなった……。
 その後に佐山が取り行おうとしている“最終手段”とはどのようなものとなるのか、その場で明かされる衝撃の真実とは!?全竜交渉の結末は!?
 次巻、「終わりのクロニクル」シリーズ、遂に完結!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


終わりのクロニクル第6章、後編。

これは来た。
これだけ面白いと感じたのは第1章の上下巻以来でしょうか。

今更言うまでもありませんが、非常に癖の強い作家さんですよね。
物事の運ぶための手段として文章が並べられていて、機械的な印象を受けます。
それは冷たいイメージがあると言っている訳ではなく、緻密で正確であるということです。
物語を描くというよりも、世界を作っているという感じ。

絶妙なバランス感覚で重ねられた事柄を、必要なタイミングで開示する構成力が素晴らしい。
緻密な設定を矛盾させずに綴ることができるのは、それだけで一種の能力だと思います。

今回何と言っても見所は、各Gとの交渉でしょう。
シリーズの特徴ともいえるんですが、それが読み応えたっぷりとなる量が詰み込まれています。
いかなる不利な状況下でも、口達者な佐山が打破していく展開が楽し過ぎます。

作品の性質上、戦闘描写が多いのですが、細か過ぎて逆に分からないことが多々あります。
動き全体を説明するのではなく、個々の動作を繋げていく文章は、時折見失ってしまいます。
ギャグを織り交ぜたセンスは、好みの差はあっても、優秀であることには違いないでしょうね。

毎度ながらラノベトップクラスの量を誇るさとやすさんのイラストに惹かれました。
R指定入っちゃうエロい意味ではないですよ?
まぁ、まさかの○○解禁には驚きましたけどw
そうではなく、各G代表の絵や最終章のカットが見事だった章題のことですね。
コミカルな絵柄が目立ちますが、シリアスな表情も息をのむ完成度です。

物理的に長かった物語も遂に次でラスト。
とうとう伝説の鈍器に手が届くところまできました。
あの物量だと、丸一日費やしても読み切る自信がありません。
続きが気になる最後だったので、時間を見つけては読み始めてみたいと思います。

会話の組み立てが面白い交渉術が存分に味わえます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  終わりのクロニクル  川上稔  さとやす  評価B+ 

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青春ラリアット!!2 

青春ラリアット!! 2 (電撃文庫 せ 3-2)青春ラリアット!! 2 (電撃文庫 せ 3-2)
(2011/07/08)
蝉川 タカマル

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読書期間:2011/11/10~2011/11/14

【評価……C+
発想 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
青春
友情



 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6




 全治一ヵ月のはずが、一週間で退院してきた月島。バカの超回復力に宮本は眩暈を覚え、長瀬は大喜びする。
 こいつらが揃えばロクなことはない。今度は月島を仇と狙う少女が現れ、大騒ぎに!?少女が可愛かったせいか、色々なことにキレて青筋を立てる長瀬だった。
 揉め事を嫌う宮本と、とにかく女性を月島に近づけたくない長瀬。二人はあの手この手で、月島に気づかれぬ内に事態を収めようとするのだが、話はこじれにこじれ!?
 話題沸騰の青春ストーリーだ、コノヤローッ!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


年下の女の子に恋の手助けを強制される男子高校生の青春ラブコメ、第2巻。

んー、ぼちぼち。
面白くないわけではないけれど……。
感想を書くと、良いところよりも悪いところが挙がってしまうタイプの作品ですね。

基本的な流れは1巻同様で、親友の月島のために宮本と長瀬が奔走するという展開。
ただ、内容が似ているというよりも変わり映えしないと感じられるため、少々退屈でした。
進展らしきものも見られないので、もう少し捻りが欲しいかなぁ。

一方的に長瀬が宮本を口撃するのも既にパターン化していますね。
笑えるシーンもありますが、逆に横暴過ぎて引く場面もあります。
理不尽系ヒロインは、あまり好きじゃないんですよねぇ。
宮本に対するデレが圧倒的に足りません。

一応主人公である宮本に小学生の彼女がいるのは、目新しい設定でいいと思うんですが、随分と出し惜しみをしているのが気になるところ。
2巻でも出なかったということは、シリーズ終盤まで都子は出てこないんだろうなぁ。

それにしても、格闘技ネタが続いていますが、これを売りにしていくのだろうか。
作品名がラリアットだからといって、縛られなくてもいいと思いますがね。
月島が超人すぎたり、バトルが日常場面と比べて浮いていたりしますし。

あと、相変わらずキャラの名前が覚え辛いというか、視点が分かり辛い。
この作品、三人称よりも一人称の方が合っていたんじゃないかな。

ちょっと芝居ががっているけれど、宮本と月島の友情は熱くて良かった。
惜しむらくは、物語が1巻と比べてパワーダウンしてしまっている点。
ストーリーの説得力が薄い部分があって、ご都合主義を感じるところがありました。

今すぐシリーズの購読を打ち切るとまではいきませんが、微妙なラインにはなりました。
ずっと同じ調子なら飽きてしまいそうです。

親友のことが好きな少女のために罵倒されながらも裏で奮闘する青春ラブコメ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  青春ラリアット!!  蝉川タカマル  すみ兵  評価C+ 

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はたらく魔王さま!3 

はたらく魔王さま!〈3〉 (電撃文庫)はたらく魔王さま!〈3〉 (電撃文庫)
(2011/10/08)
和ヶ原 聡司

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読書期間:2011/11/1~2011/11/2

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
コメディ
安定感
ラブコメ
ツンデレ
家族愛

 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6


 魔王城(築60年の六畳一間)の庭に、異世界からのゲートが開く。そこから現れた小さな少女は、魔王を“パパ”、勇者を“ママ”と呼んだ!まさか二人がそんな関係だったなんて……とショックを受ける芦屋や千穂。だが、一番混乱しているのは魔王と勇者だった。
 少女は魔王城で預かられることになり、真の意味で大黒柱になった魔王は、子育てに挑戦!さらに、親子(?)三人でのおでかけもあったりで、恋する女子高生・千穂は、やっぱりヤキモキしてしまうワケで――?
 フリーター魔王さまが繰り広げる庶民派ファンタジー、波乱必至の第3弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


庶民的な生活で日々を暮らす魔王と勇者のファンタジーコメディ、第3弾。
毎度のことながら生活感が半端ないです。

うわー、面白いなぁ……と思わず唸ってしまうほどの出来でした。
元々新人に似つかわしくない安定感を持ち合わせていましたが、ワンランク上がりましたね。
着実に作品の質を高めた作家さんは勿論のこと、伸びしろがあると見抜いた電撃小説大賞の選考委員もさすがだと思います。

異世界からやって来た謎の幼児が、魔王と勇者とパパとママと呼び、一同大混乱するというラブコメにありがちなベタな話。
いきなり子育てをすることになってしまった魔王たちは、当然ながら大苦戦。
しかも、犬猿の仲である魔王と勇者に子供が入ることで、擬似的な夫婦のようなシチュエーションが生まれ、嫉妬に駆られる千穂や、苦悩する芦屋が入り乱れるドタバタ劇へと繋がっていきます。

ストーリーの大部分は、予想通りなのにも関わらず、キャラの反応が楽しくて仕方がありません。
子はかすがいを地で行く展開で、いがみ合っている真奥と恵美のやり取りが物凄く好みです。
勇者という立場的な問題から安易に魔王に心を許そうとしない恵美の葛藤が、ツン成分多めのツンデレにしか見えなくてニヤニヤ。
普通だったらウザったいと思うレベルでも、勇者の特権なのか、言い訳が正論にも聞こえるため、恵美が頭を痛めれば痛めるほどに楽しい気分になってしまいます。
ラブコメよりコメディとして読んでいるため、恋愛的に特別くっついて欲しいとは思わないんですけどね。
この絶妙な関係は維持して欲しいなぁ。

千穂も魅力的な女の子になってきましたしね。
これまでは、女の子的な可愛さよりも、物語中の都合の良さが微妙だなと感じていました。
ラブコメ的には一番美味しい存在で、喜怒哀楽の表情が簡単に想像付きます。
真奥を翻弄させたり、恵美を羨ましがったりする彼女の存在が、物語を充実させてくれました。
ただの脇役だと思っていた恵美の同僚である梨香も良い感じに絡んできましたし、登場人物たちの関係図の変化にも目が離せなくなりそうです。

騒動の中心にいる幼女アラス・ラムスは、素直に可愛いと思いました。
萌えとかそういうのではなく、純粋に子供の愛らしさが伝わってきましたね。
見た目的にも中身的にも『To LOVEる』のセリーヌに見えてしょうがなかったですw

そのアラス・ラムスの育児をすることになった真奥や芦屋の奮闘っぷりが面白可笑しい。
1巻から貫徹していることですが、現代日本で生活する描写に手を抜かないところが特徴ですね。
急に赤ちゃんの世話をすることになったという作品なら数え切れないほどありますが、省いても本筋には何ら影響のないところで妙に詳細な説明に入る作品は少ないと思います。
わざわざ保険や経口補水液のくだりを綴るラノベなんて、他に見たことがありませんよ。
こういった丁寧な切り口があるからこそ、庶民的でギャップが面白くなるんでしょうね。

悪魔だとは全く見えない真奥の過去が少し垣間見ることができ、ストーリーも進展がありました。
あえて見せつけるかのような伏線の張り方も上手く、先が気になります。
これだけ面白いと次巻のハードルが上がってしまうのも致し方がないですね。

029さんのイラストも良かった。
ラストの挿絵は何度も見たくなるカットでしたね。

育児に挑戦することになった魔王と勇者の庶民派コメディ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  はたらく魔王さま!  和ヶ原聡司  029  評価B+ 

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人見知り部は健全です 

人見知り部は健全です (電撃文庫 さ 12-3)人見知り部は健全です (電撃文庫 さ 12-3)
(2011/09/10)
佐野 しなの

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読書期間:2011/10/29~2011/10/30

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ラブコメ
青春
エロ



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 高1の俺と幼なじみの明(♀)は、屋上へ続く階段でふたりぼっちなお弁当を食べる毎日。なぜかって?俺は“無表情すぎ”て、そして明は“あがり症すぎ”て、4月の自己紹介に失敗したからだ。
 そんな俺たちの前に現れたのは、超絶美人さんなのに“発言エロすぎ”という残念な人、乃花先輩だった。
 「ここらで人生を変えてみないかい?」
 そして俺と明は、ほぼ強制的に「人見知り部」なる謎の部に入部させられることになる。コミュニケーション能力向上が目的らしいけど、無表情にあがり症に下ネタ好きetc――って、この部もしかして、青春不適合者の集まりじゃねぇか!?不健全系学園ラブコメ登場!

【感想】


「リヴァースキス」「僕は彼女の9番目」を執筆した佐野しなのさんの新作ラブコメディ。
3年振りの新刊なので知らない人も多そうですが、個人的には毎回買うぐらい好きな作家さんの一人です。

おお、こりゃあ面白い。
買っておいてなんですが、パターン化されたラブコメが展開されるだけかもと思っていました。
作者独自の色がしっかりと出ていて非常に楽しんで読むことができましたね。

内容は「僕は友達が少ない」の系統に属する、いわゆる残念系ラブコメです。
とはいえ、種別が同タイプなだけで、作品の方向性は結構違いますね。
ぼっちだと喚くリア充達が青春を謳歌する作品ではなく、人見知りに悩む人間が集まって前向きに雑談するという作品です。

主人公やヒロインは洩れなくコミュニケーション能力に問題があり、それを改善するための部活動を行うもので、連作短編形式となっています。
ただし、極端に性格が破綻している訳ではないので、あるあるネタに共感できるところが特徴です。

主人公・寿藍人の抱える問題は、表情が作れないこと。
内心では喜んだり動揺したりしていても、顔に出ないので無表情キャラとして周囲から気持ち悪がられています。
結構切実な悩みですが、性格は歪んでおらず、暗くもないので、読者視点では凄くイイ奴に映ります。

そんな藍人が想いを寄せる相手が幼なじみの臼潮明
彼女は彼女で極度のあがり症のため、見知った人間以外とはまともな交流ができないことに頭を悩ませています。
こちらも外部との交流の描写が皆無のため、表情がコロコロと変わる素直で賑やかな可愛い女の子にしか見えません。

その二人を「人見知り部」に勧誘した張本人が、表紙の裾ノ花乃花という先輩。
見た目は誰もが見惚れるような美人なのに、口を開けば昨今のエロ親父でも言わなくなったようなセクハラ発言満載で、エロいというより下品といった方が近い。
これは人を選ぶと思いますが、下ネタの親父ギャグが好きな人ならばハマると思います。
個人的には、ツボに入るとまではいかなくとも、終始楽しい気分になれましたね。
エロティックなお姉さまはよく見かけるキャラですけど、周囲から浮くくらい堂々とした立ち振る舞いは何だか新鮮に感じました。

ハーレム系ラブコメと異なり、藍人が明を一途に想い続けているのが良いなぁ。
本人は至って真面目に想いを伝えても、真剣には受け取ってもらえないというのが寂し過ぎるけど、友達以上恋人未満な間柄なのでイチャイチャしているようにも見え、悲壮感は薄く済んでいますね。
そんなカップル未満な二人を弄繰り回す乃花と、ツッコミを欠かさないオネエ系男子・大和倫太郎の計4人で織りなす構図が目新しい。
ただひたすら部室でダベる話なのに、ニヤニヤできる箇所が多くて、非常に楽しかったです。

藍人の妹・平和もまた兄同様に無表情の持ち主なんですけど、ちょっと不思議系少女で可愛い。
作中でも取り上げられていますが、やはりギャップから生じる萌えの威力は凄まじいものがあります。

話のネタになりそうな雑学が多く含まれており、単純に聞き手としても興味をそそられました。
ギャグが安っぽくて頑張りましたという雰囲気が伝わってくる時もあるんですが、嫌いじゃないです。

このままダラダラと続くのかと思いきや、後半で一転した時は不覚にもやられたと思いました。
伏線の張り方が雑だったので、オチが来ることは分かっていたんですけどね。
ネタバレに繋がるので触れづらいんですが、軽く感動してしまいましたよ。

イラスト担当は、笹井さじさん。
無表情の藍人の内面と外面の差を上手く表現していて、漫画でも読みたいなと思わせてくれます。
挿絵にも手を抜いておらず、キャラ付けをしっかりしているところは評価されるべきですね。

綺麗に締めくくられているので終わりかなと思っていただけに、続巻が出たことが嬉しかった。
明日2巻買ってきます。

人見知り達が部室で駄弁る残念系青春ラブコメ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  人見知り部は健全です  佐野しなの  笹井さじ  評価B+ 

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