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明日へと続く記憶

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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神様のメモ帳8 

神様のメモ帳〈8〉 (電撃文庫)神様のメモ帳〈8〉 (電撃文庫)
(2011/09/10)
杉井 光

商品詳細を見る
読書期間:2011/10/18~2011/10/19

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ミステリー





 ★★★★★★☆☆☆ … 7






 年末年始、四代目を悩ませていたのは頻発する雀荘荒らしだった。なぜか麻雀打ちとして駆り出された僕は、雀荘で奇妙な男と出逢う。雛村玄一郎――なんと四代目の父親!
 緊迫する親子勝負の裏で、雀荘荒らしをはじめ、無関係に見えたいくつもの事件が結びついていき、やがてよみがえるのは一年前のあの悪夢。
 「あの事件をもう一度、完膚無きまでに終わらせるんだ」
 アリスが、テツ先輩と四代目が、そして彩夏までもが、赤い悪夢の残り滓に突き動かされて走り出す――加速するニートティーン・ストーリー、第8弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


ニート探偵物語、第8弾。
アニメ化真っ最中の時期に発売されたのは、偶然ではないでしょうね。

あー、読み応えあるなぁ。
アニメの内容は残念でしたけど、やっぱりこのシリーズは面白いです。

電撃MAGAZINEに掲載された「三代目襲来」に書き下ろしを2編加えた一冊。
各章ごとにある程度話がまとまっているため短編集のようにも感じられますが、最後に収束していく物語の伏線がしっかりと全体に張られているため、長編としても読めなくないですね。
全3章を無理矢理まとめたのではなく、あえて別々の形の話を組み合わせることで一つの全体像を表現してみましたという感じ。
コメディとシリアスのバランスがよく、満足度が非常に高い本でしたね。

原点回帰となる物語には、強烈な牽引力がありました。
終わっていなかったあの事件を今度こそ締めるために、暗中模索ながらも足掻こうとする彼や彼女らの心情が痛いほどに伝わってきます。
正しいことを選択しているつもりなのに、己と大切な人を傷つけ、衝突してしまう。
何もかもが上手くいくなんてことはなく、ただひたすらに悲劇を繰り返す。
それでも、真実を知ることで、過去と向き合い前に進もうとする彼らの姿が目に焼きつきました。

もどかしいほどに、本当にどうしようもなく不器用な人間達ばかりですね。
一人一人のスキルは、カタギとは比べ物にならないのに、頑なまでに心の柔らかいところを誰にも触れさせようとはしません。
いや、だからこそ独りで全て片付けようとしてしまおうとするのか。
そんな人間を繋ぐナルミは、ニート探偵団や平坂組にとって、切り離せない懸け橋となりましたね。
ナルミ自身、根本的な逃げの性格は改善されていませんが、初期のような情けないだけの人間ではなくなりました。

彼の両親と出逢う第1章のエピソードは、四代目の信念と優しさが滲み出るような良い話でした。
ナルミの発想は、強引過ぎるものでしたけど、それが許せてしまえる世界というのが凄い。
あと、想像していたよりも大阪人の血が濃い両親が面白かったですね。
このまま眠らせるには勿体無いキャラだなと思いました。

4巻以降出番が極端に減った彩夏に再びスポットが当てられたことが、何よりも嬉しい。
ヒロイン的なポジションを剥奪され、脇役というかモブキャラに近いものがありましたからね。
しかし、事ある毎に記憶喪失前の彩夏と比較してしまう自分がいます。
同じ人間なのに、一度死んでしまったんだなぁと、しみじみと痛感してしまいます。
ここまで明確なまでに書き分けられる技量は素晴らしいの一言ですね。

毎回楽しんで読んでいますが、そろそろ伏せられたままのアリスの事情が知りたいところ。
もちろん終わって欲しいわけではないんですけどね。

シビアな現実と向き合い、大切な人との絆を護ろうとする話

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  神様のメモ帳  杉井光  岸田メル  評価A- 

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アクセル・ワールド8 ―運命の連星― 

アクセル・ワールド〈8〉運命の連星 (電撃文庫)アクセル・ワールド〈8〉運命の連星 (電撃文庫)
(2011/06/10)
川原 礫

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読書期間:2011/10/4~2011/10/10

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
燃え
友情



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 「着装……≪ザ・ディスティニー≫」
 ≪ISSキット≫に侵された≪シアン・パイル≫ことタクムへ、自分の思いを伝えるべく対戦を挑んだハルユキ。しかし、破格の力を得たタクムの前に、為す術もなく倒れる。
 体力ゲージが残り数ドットとなったハルユキだが、謎の山吹色のアバターの誘いを起点に、≪加速世界≫最強の強化外装をジェネレートする。
 「……それが、≪災禍の鎧≫本来の姿かい?」
 光の力を得た≪クロウ≫と、闇の力に染まった≪パイル≫、二人の心意が強く共鳴し合い、そして、激突した。
 それぞれの想いが絡み合い、ひとつの大きな物語へと収束したその先にあるものは――!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


近未来のMMOを舞台としたSF系青春アクションバトル、第8弾。
「災禍の鎧」編も終盤に差し掛かってまいりました。

連鎖的に繋がっていた物語の種を、回収していくターンに入りましたね。
シルバー・クロウの浄化、アーダー・メイデンの救出、シアン・パイルの解放とドンドン目的がズレていきましたが、主題は忘れていなかったようです。
広げた風呂敷を折り畳みながら、綺麗にまとめられていました。

世間的には続きで終わるような話にせず、ちゃんと締めてくれという声が多いですが、ほとんど気にしません。
それよりも、ストーリー全体が低速である方が気になります。
このペースだと、完結するのは20冊ぐらい先になるのではないかと少し不安になります。
まぁ、面白ければ良いといえば良いんですけど。

心意システムは、作品内外関わらず多くの意見がありますが、個人的にはとてもいい仕様だと思ってます。
イメージが大切というのは、何事においても当たり前のことです。
それを尤もらしく説明付けているのが心意システムであって、現実世界でも似たようなものはあります。
精神状況におけるパフォーマンスの差というのは、確実に存在しているでしょう。
ただそれが、明確な形として見えやすいかどうかの違いでしかないんだろうなぁと思います。
我が身でも実感できることだからこそ、SF設定なのに共感も想像もしやすくなっていますね。

ひたすらネガティブなことを考え続けていたハルユキが、黒雪姫との出会いで日に日に成長していく過程は、眩しくなるほどに微笑ましく心が躍ります。
はっきりいえばマイナス地点にいた少年が、ここまで昇ってきたことに喜びを覚えますね。
今でも自信はあまりないようですが、仲間の窮地に惜しみなく勇気を奮う姿は、タクムが嫉妬するのも仕方がないと思えてしまいます。
本人は自覚ないでしょうけど、ネガ・ネビュラスの核となっているのはハルユキで間違いないですね。

リードの正体については、素直に考えていいものなのかな。
結局肝心な部分は伏せたままとなってしまったので、早いところ答え合わせをして欲しいなぁ。

ラストがまた気になる引きで終わっていますが、何となく予想は出来ていました。
次で「災禍の鎧」編も終了ということなので、どのように決着させるのか、楽しみです。

心に想い描いた願いを具現化する力で仲間との絆を深める話

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  アクセル・ワールド  川原礫  HIMA  評価B 

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偽りのドラグーンⅤ 

偽りのドラグーン 5 (電撃文庫 み 6-28)偽りのドラグーン 5 (電撃文庫 み 6-28)
(2011/07/08)
三上 延

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読書期間:2011/9/30~2011/10/2

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★★
 … 9
世界観
燃え
構成



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 セーロフ王国を巡る攻防戦は、レガリオン帝国軍が優勢のまま最終局面を迎えた。
 その頃、騎士学院では衝撃が走っていた。偽りの王子であることが暴かれたジャン。だが、彼は自分こそがヴィクトルであると主張する――偽物は自分が討つと宣言をして。それはジャン・アバディーンという名を捨てるということであり、二度と本当の自分に戻れなくなることを意味していた。
 そして、すべての決着をつけるべく、ジャンは驚くべき秘策を編み出す。その姿は神童と呼ばれたヴィクトル、そのものだった。物語はついにクライマックスへ!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


三上延氏による竜と騎士の物語、最終章。

ああ……終わっちゃった……。
物語のラストを読んだ時に湧き上がる虚無感は、名作であるほど抱く傾向がありますよね。
自分にとって、それだけ心のキャパシティを占めていた証拠ともいえます。
「偽ドラ」は、まさにその象徴たる例でした。

物凄く面白かったです……が、読了感は正直なところスッキリとはしません。
これほどモヤモヤした気分が残る最終巻を読んだのは久しぶりです。
あまりにも濃い動向に感情の整理が付いていき辛かったのが原因かもしれません。

打ち切りだろうと世間では噂されていますが、おそらく事実でしょう。
どうしても「勿体無い」という言葉が、最初に出てきてしまいますねぇ。
魅力的な舞台設定を作り、惹かれるキャラを用意し、物語を順調に重ねてきただけに、詰め込みまくりの最終巻が惜しいにも程がある。
残り1冊という状況から素晴らしく綺麗にまとめられているのは間違いないんです。
作者の力量には感心させられますし、良作だったと断言できます。
だからこそ、もっと巻数を伸ばすことが出来たならば……と夢を見てしまいます。
中途半端な解決などにはせず、回収できずに終わった伏線も残さないで完結出来たんだろうなぁ。

随所に頑張った感は見え隠れするものの、無理矢理さを感じさせないのはお見事。
特に、戦争の行方に関しては、王道的でありながらも揺れる戦局に胸が熱くなりっぱなしでした。
詰め込み過ぎというのは、逆に考えると、それだけ充実した内容だったともいえます。
段階ごとに加速する盛り上がりは、メリハリが効いていて夢中になりました。

主役はもちろん、脇役も含めてキャラクターの造形が映えていましたね。
サラやグングニル、ガートルード、ヴェルトフなど出番は少なくても、無駄なキャラは一切いませんでした。

ジャンが兄の裏切りを知ったことによる動揺から立ち直る流れは、じんわりと痺れましたね。
叱咤されたりするわけでもなく、自ら答えを見つけ出した経緯が自然に描かれていました。
主人公の成長度合いが、目に見えて分かる素晴らしい演出だったと思います。
精神論で片付けずに不利な状況を打開しようと頭を巡らせる様は、見応えがありました。

クリスは、もはや誰が見てもデレデレですよね。
行動の指針が、全てジャンが基準となっていますもん。
この娘を男とだと勘違いするのには、無理があるんじゃなかろうかw
クーデレのティアナも可愛いんですが、個人的に女の子としての魅力はずっとクリスに軍配が上がってましたね。
恋の決着は、詳しく語るとネタバレになるので避けますが、満足の出来る内容だったということだけは断言できます。
ジャンの気持ちがいまいちハッキリしなかったり、ヒロインにもっと葛藤して欲しかったりと要望はいくらでもありますけど、限られた中でよくまとまっていたと思います。

ラフエッジマグノリアの関係は、これだけでも一本の作品が書けるレベルですね。
反則的な見せ方にやられました。

その一方で、ヴィクトルグロリアの描写が、もう少し欲しかったかなという思いはあります。
単純明快な敵役には留まっていないだけに、この二人にも熱いドラマが期待できたんですがね。
唐突ながらも、僅かに垣間見ることが出来たシーンには、切なさが詰まっていました。

誰よりも一貫としていたのは、アダマスでしょう。
ベジータ的なツンデレキャラだと信じていたのに、ほとんどデレを見せずに終わっちゃいましたよ。
半端ないキャラの立ちようで、珍しいポジションのキャラで良い味出していましたね。

惜しい気持ちは残り続けますが、綺麗な終わりだったとは思います。
椎名優さんのイラストも、最後まで乱れずに魅せてくれました。
「ビブリア古書堂の事件手帖」も好きですが、いつかまたこのコンビで電撃文庫に帰ってきてくれることを願います。

タイトル「偽りのドラグーン」の意味の重さを痛感させられます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  偽りのドラグーン  三上延  椎名優  評価A- 

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電波女と青春男 SF(すこしふしぎ)版 

電波女と青春男 SF(すこしふしぎ)版 (電撃文庫)電波女と青春男 SF(すこしふしぎ)版
(電撃文庫)

(2011/04/08)
入間 人間

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読書期間:2011/9/23~2011/9/28

【評価……B-
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ラブコメ
青春




 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 「地球は狙われている」らしい。
 布団ぐーるぐる電波女・藤和エリオは俺にそう言った。心機一転、都会で夢の高校ライフを過ごそうとしていた俺の青春って、一体どーなんの…………って、あれ?
 これなんか、前にも一回説明した気がするな……。こほん。あー。どもども丹羽真です。仕切り直して。
 さて今回のお話は、叔母である藤和家に居候することになった俺が、高校二年から転校した都会の学校、天然系健康少女やモデル系美人さんと出会い、そして我が家には布団ぐーるぐるな電波女がいて、俺の青春どーなんの……ってやっぱり同じじゃん!
 SF(すこしふしぎ)版。その意味はこれを読めば明らかに……なるといいなぁ。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「電波女と青春男」シリーズ、謎の番外編。
本来の最終巻である8巻と同時に発売されました。
タイトルやあらすじを読んでも内容がよく分からず、読んでみて初めて理解できました。

一言で表すと、要するに1巻の再構築版ですね。
シリーズを継続していくと、初期の構想からは想定していない方へ進んだり、設定に矛盾が生じたりしますが、それらを踏まえた上で、改めて一つの作品としてまとめてみましたという体裁です。
作者の云う劇場版的な感覚というのも何となく伝わってきますね。

ストーリーの流れは、1巻をベースにしているため、当然ながらほぼ同じです。
ただ、1巻では登場しなかった星中、ヤシロが登場していたり、主要キャラとの出会いに違いが見えたりするので、新鮮さが皆無というわけでもありません。
提示された選択肢を別のモノしてみたらどうなるのか?というギャルゲーっぽい面白味がありました。
次の展開が読めるというか知っているので、驚きはなかったですがね。

最も大きく印象を変えたのは、真の一人称から三人称への変化です。
入間さんの文章というと、パロディと比喩表現を巧みに使う独特の雰囲気が良くも悪くも人を選びます。
しかし、それは一人称の場合においてであって、三人称は正直微妙だと思っていました。
おそらく著者にも苦手意識があったのではないかなーと思っていますが、今回のSF版は格段に進歩を見せていますね。
入間節を残しつつ、文章は奇をてらい過ぎることもなく、読みやすく仕上がっていました。

キャラに変化はないと言いたいところですが、最初から一貫しているのは前川さんくらいですね。
初期のリュウシさんは、基本的には地味子さん(自称)で時々ボケる人だったはずなのに、いつの間にやら常時ぼけぼけ~とした性格と変わっちゃったし。
エリオと女々さんのマザコン&親バカ仕様は、2巻からの急激な変化でした。
リメイクするにあたって、本編8巻までの内容で整合性を取ったことで、こちらの方が「らしいなー」と感じられました。

挑戦的な試みとしては、評価したいところ。
でも、この本を出す必要性はあったのかという疑問は残ります。
それなりに面白いし、8巻とのリンクもありといえばありなんですけどね。

挿絵は、半分は1巻のものを流用しています。
描き下ろしの絵と混ざっているため、ちょっとゴチャゴチャしている感じ。
今のブリキさんの絵も嫌いじゃないんですけど、多忙のためか軽く描いている線が多いんですよね。
絵の上手さは別にして、描き込み量は1巻の時の方が上なので、新規絵が少々雑に見えちゃうのは残念だったかもしれません。

これは1巻の代わりに読むというよりも、最終巻を読んだ人が補完的に読む作品かな。
少々特殊ですが、あくまで番外編だと感じましたね。

パラレルワールド風の本編1巻リメイク作品

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  電波女と青春男  入間人間  ブリキ  評価B- 

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ゴールデンタイム3 仮面舞踏会 

ゴールデンタイム〈3〉仮面舞踏会 (電撃文庫)ゴールデンタイム〈3〉仮面舞踏会 (電撃文庫)
(2011/08/10)
竹宮 ゆゆこ

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読書期間:2011/9/20~2011/9/21

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
青春
リア充



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 はれて彼氏彼女の関係となった記憶喪失男・多田万里と、自称完璧なお嬢さま、加賀香子。
 幕が開けた二人のラブラブな日々は、天然だったりやっぱり完璧志向だったり。一方で、万里は過去の関係が白日のもとに晒されたリンダとは真っ直ぐに向き合えずにいた。
 そして凹んだ男が一人。柳澤光央は一年生会での盛大な自爆のため深く落ち込んでおり、そんな彼を励ますために万里の部屋でお泊り会的なイベントが発生するが――!?
 竹宮ゆゆこ&駒都えーじが贈る青春ラブコメ、第3弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


大人と子供の中間を捉えた大学キャンパス青春物語、第3弾。
妙に生々しくてリアルっぽいのに、二次元テイストが存分に盛り込まれている作風こそ売りですね。
これを、ゆゆこ節と呼ぶのでしょうか。

今回も面白かったです。
悪ふざけな下ネタはあっても、量産的なエロコメみたいなサービスではないのが素晴らしい。
恋愛を中心に添えた、これぞ真の意味でのラブコメだと思いますね。

入学式やサークル活動、講義、飲み会など大学生らしいイベント満載だった1,2巻と比べると、今巻は些か地味な印象を受けました。
主要人物が増えることもなく、キャラを掘り下げ、関係性を深めることに費やした一冊でしたね。
とはいえ、決して退屈だったわけではありません。
細かくネタを挟んでいることもあって、十分楽しく読むことが出来ました。

それを受けてのことなのかどうかわかりませんが、物語の進展は予想以上に早いですね。
2巻のラストで万里と香子がくっついてしまうとは思いませんでしたが、それ以上にこの3巻の締めには驚かされました。
そこまでが順当な話だったので、衝撃のラストを味わいました。
もしかして、そんなに長々と続ける気がないんでしょうか。
それとも早々に関係を熟成させて、昼ドラのようなドロドロした修羅場にさせたいのかな。
どちらにせよ、変に引き伸ばしさせる嫌いがあるより、テンポが早い方が断然良いですけどね。

やなっさんをストーキングしてた頃から分かっていましたが、香子の愛情って病的に重いなぁ……w
互いに受け止め合うことが出来るからとはいえ、付き合える万里って凄いと思う。
個人的にはリンダの方が可愛いと思いますが、今の万里には香子の方が合ってますね。
ただ、バカップルをやっているときは幸せだろうけど、今後の展開を考えるとガクブルもんです。

万里も香子も光央もリンダも精神的に弱い一面があるというか、ぶっちゃけヘタレ気味ですよね。
おかげで、岡ちゃんが物凄くデキた子に見えてしまいます。
見た目から幼さが残る無垢な少女と周囲の人間は捉えがちですが、実は一番しっかりしていると思いますね。
良キャラなだけに、もっと積極的に恋愛関係図の中に入り込んで欲しいなー。

リア充ライフを満喫するバカップルの大学ラブコメ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ゴールデンタイム  竹宮ゆゆこ  駒都えーじ  評価B+ 

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俺の妹がこんなに可愛いわけがない9 

俺の妹がこんなに可愛いわけがない 9 (電撃文庫 ふ 8-14)俺の妹がこんなに可愛いわけがない 9 (電撃文庫 ふ 8-14)
(2011/09/10)
伏見 つかさ

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読書期間:2011/9/14~2011/9/15

【評価……B
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
コメディ




 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8





 あのルリ姉に――好きな人ぉ?どーせ脳内彼氏でしょ?⑧巻の顛末を“妹”日向の視点から描いた『あたしの姉が電波で乙女で聖なる天使』。腐女子の妹を「世界一可愛い」と豪語する、もうひとつの“残念な兄妹”の物語『俺の妹はこんなに可愛い』。いくつもの“顔”を持つ沙織・バジーナの“ルーツ”に迫る『カメレオンドーター』。桐乃に“トラウマ”を植えつけた瀬菜の恐るべき行動とは?『突撃 乙女ロード!』。お兄さんが彼女と別れたのって、もしかして……私のせい?あやせのフクザツな乙女心と、加奈子のライブ楽屋裏の一幕『過ちのダークエンジェル』。ほか『真夜中のガールズトーク』『妹のウェディングドレス』2本を収録!さらにはアニメOP曲を歌ったClariSとのコラボなど、驚き満載の特別編!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


徐々にタイトルからかけ離れた内容となってきた俺妹シリーズ第9巻。
今回は京介ではなく、女の子達の視点から描かれる特別編となっています。

サクサクと読めて面白かったです。
もともと短編連作のような形式となっているため、雑多な短編集でも違和感はないですね。
それぞれに特色があるので、飽きることなく多様な味を楽しめます。

文章をかなり柔らかめに書いているので、噛みしめるどころか飲み干せてしまいそうです。
「機動戦士ガンダムUC」の原作者である福井氏が以前インタビューで「今のコンテンツはお粥化している」と表現をしていましたが、俺妹はまさにその筆頭ですね。
良し悪しもあるでしょうけど、中高生向けの娯楽小説の一つとしてはありなんじゃないでしょうか。
普段本を読まない人が手に取るライトノベルとしては、凄く入っていきやすいと思います。
他の作品を読んでいないので作者に文章力があるのかどうかまでは判断できませんが、狙って書いているであろうことは想像できます。

内容的には、恋愛編をまだ引きずっていますね。
8巻の補完的なエピソードもあるのですが、フォローというよりも言い訳っぽく見えるのは気のせいかな。
シリーズを継続するという大局的な建前を理由として考えないのであれば、黒猫の行動は道理に適っていないんですよね。
突然の別れ話や、沙織をハブっていたことなど、物語を魅せるために無視してきた要素が大きすぎました。
まぁ、ご都合主義で済まさずに、一応作中でツッコミを入れたことに関しては評価できますがね。

それを除けば、気楽に読めるラブコメで良かったと思います。
シスコン&ブラコン過ぎている高坂兄妹と赤城兄妹は、ないわーと思いつつもコメディとしては面白かったですし、五更姉妹は厨二病を発症する長女と無邪気な三女をオチする次女に和まされました。
大文字を多用するのは個人的にあまり好きではないんですけど、それだけ頻繁に笑い所があったといえます。
また、沙織メインの話は、他よりも真面目な路線でしたが、最終的には心がほっこりと温かくなりました。

一番良かったのは「過ちのダークエンジェル」。
語り手のあやせが、思っていた以上に京介に対してデレデレで驚きました。
セクハラをちょっぴり期待しているあやせが可愛かったです。

全部で7編あるのに麻奈美視点がなかったのが、何だか意図的に感じます。
初期の頃は、全4章のうち1つは麻奈美の話だったのに、いつの間にやらなくなっちゃいましたしね。
黒猫と付き合った流れで、微妙な関係になったままだし、本筋で取り上げてくれるのかな。
確かに黒猫は可愛いんですけど、カップリングとしては麻奈美とくっ付く方が自然だと思っているので、またあの熟年夫婦のような家族ぐるみの温かい雰囲気を感じ取れるような話を読んでみたいなぁ。

女の子達の視点から語られることで、京介の慕われ具合がよく分かる短編集

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  俺の妹がこんなに可愛いわけがない  伏見つかさ  かんざきひろ  評価B 

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はたらく魔王さま!2 

はたらく魔王さま!〈2〉 (電撃文庫)はたらく魔王さま!〈2〉 (電撃文庫)
(2011/06/10)
和ヶ原 聡司

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読書期間:2011/8/13~2011/8/18

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
コメディ
バカ
シュール
安定感


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 店長代理に昇進することになり、ますます張り切る魔王。そんなある日、魔王城(築60年の六畳一間)にご近所さんができる。隣の部屋に、和装の女の子が引っ越してきたのだ。魔王に恋する女子高生・千穂と、魔王の命を狙う勇者は、いろんな意味で心穏やかではいられない。
 時を同じくして、魔王が勤めるファーストフード店の向かいに、競合他社が進出してくる。売り上げで負けたら減給だと言われた魔王は戦慄し、店長代理の職務を全うするため奔走することになる。
 謎の隣人とライバル店の登場で、魔王城は大混乱!?フリーター魔王さまが繰り広げる庶民派ファンタジー、第17回電撃小説大賞<銀賞>受賞作第2弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


現代の日本でバイトに励む魔王の奮闘記?第二弾。

新人とは思えない安定っぷり。
設定はよくある魔王モノですが、よく練られていてクオリティ高いですよ。

基本的に、流れは1巻同様ですね。
魔王が拠点とする六畳一間のアパートの隣に、謎の和装美人・鎌月鈴乃が越してきます。
明らかに不自然な彼女が、新たな刺客なのか、それともただの偶然か。
展開が読めそうで読めない構成の妙がニクイです。

相変わらずシュールな状況となっているのは、勇者や魔王軍が日本に馴染み過ぎているからですね。
特に真奥はもう取り返しのつかないラインを突破しちゃっているような気がします。
恋愛事情には疎くとも、策略や参謀には鋭く気付くところはさすが魔王なんですが、行動の動機が悉く善良な人間のもので、威厳も何もあったもんじゃないw
甘いというよりも、ただただ優しくてイイ人すぎる。
ここまで来ると、エンテ・イスラ時代の魔王は何を考えていたのか逆に気になりますね。

勇者エミリアこと遊佐恵美も、負けず劣らず日本に慣れ親しんでいます。
テレビ番組をチェックしたり、仕事に精を出したり、お気に入りのコンビニ弁当を買ったり、誰がどう見ても現代日本のOLです。
その一方で真面目に働く真奥を観察して、思い悩むのがシリアスなんだけど笑ってしまいます。
まだ危機感を持っているだけ、真奥よりマシですけどねw

それにしても、彼女の真奥に対する態度が、徐々にツンデレにしか見えなくなってきた。
何となく「Steins;Gate」の牧瀬紅莉栖に通じるものがあるような。
基本的に嫌っていても、正しいことは悔しがりながらも認めるところは、冷静な考えを持っていて好きだなぁ。

安易な女キャラ増加は好まないのですが、新キャラの鈴乃のキャラは結構良かったです。
恵美や千穂などの女性陣と立ち位置が異なっていて、絡みが面白かったですね。
世間知らずな一面があり、何故か日本に詳しい真奥や恵美からツッコミを受けているが可笑しかった。
今後も必要なキャラの一人として期待できそうです。

主夫として優秀なあまり悪の幹部としては駄目さ加減が漂う芦屋、地味に活躍するけれどニートな漆原など脇役も個性的でキャラが立っています。
恵美の同僚である梨香にも挿絵があったのは嬉しかったな。

お気楽な日常パートと、後半のファンタジーバトルのギャップが大きいのも面白い。
二つの要素がバラバラにはなっておらず、巧みに融合させており、完成度の高さが窺えました。

驚く展開などはありませんが、良く出来たお話だったと思います。
これなら今後も安心して買い続けられそうですね。

世界よりも今の生活を優先する勇者と魔王の生活感滲み出るコメディ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  はたらく魔王さま!  和ヶ原聡司  029  評価B 

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ソードアート・オンライン7 マザーズ・ロザリオ 

ソードアート・オンライン〈7〉マザーズ・ロザリオ (電撃文庫)ソードアート・オンライン〈7〉マザーズ・ロザリオ (電撃文庫)
(2011/04/08)
川原 礫

商品詳細を見る
読書期間:2011/8/5~2011/8/8

【評価……B
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
感動




 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 キリトが巻き込まれた≪死銃≫事件から数週間。
 妖精アバターによる次世代飛行系VRMMO≪アルヴヘイム・オンライン≫にて、奇妙な騒動が起こる。新マップ≪浮遊城アインクラッド≫、その第24層主街区北部に現れる謎のアバターが、自身の持つ≪オリジナル・ソードスキル≫を賭け、1体1の対戦ですべてを蹴散らし続けているという。
 ≪黒の剣士≫キリトすらも打ち負かした、≪絶剣≫と呼ばれるその剣豪アバターにアスナも決闘を挑むのだが、結果、紙一重の差で敗北してしまう。
 しかし、そのデュエルが終わるやいなや、≪絶剣≫はアスナを自身のギルドに誘い始めた!?
 ≪絶剣≫と呼ばれるほどの剣の冴え。そこには、ある秘密が隠されており――。
 『マザーズ・ロザリオ』編、登場!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


次世代バーチャルネットゲームを舞台に生きる少年少女の物語、第7弾。
ヒロイン役であるアスナが主役となる一冊完結の話でした。

ALOの対人戦≪PVP≫で負け知らずのプレイヤー≪絶剣≫がいるという噂が流れる。
突如ALOの世界にやってきた彼女は、あのキリトすらも打ち破ったらしい。
にわかには信じられないアスナは、自らが≪絶剣≫にデュエルを挑むことを決意する。

良く言えば王道。悪く言えば安直。
お涙頂戴の感動路線が肌に合うかどうかがポイントになってきます。

あらすじを読んだだけで、ほぼ最初から最後の展開が読めてしまいました。
キリトが負けるという時点で、≪絶剣≫の抱える秘密に気付きますし、そうなると話の流れる方向も容易に想像できます。
嫌な言い方をすれば、アスナはイイ子っぷりを発揮して、キリトは貫録を損なうことなくヒーローを演じるテンプレが完成されているために、驚きはありません。
作者もあとがきにて触れてますが、ご都合主義があざといと感じてしまうのは仕方がないと思うんです。

しかし、それがつまらないというわけではありません。
創作物として考えるならば、これほど正しい選択はないと言ってもいいぐらいでしょう。
主人公とヒロインが活躍し、バトルあり感動ありのシリアスストーリーが展開されるんです。
ライトノベルの購入年齢層からすると、大正解だと思います。
個人的な意見をいえば、イイハナシダナーと思ったものの好みから多少外れますがね。

話は戻りますが、ご都合主義について。
締め方については、葛藤があったようですが、これで良かったと思います。
詳しく書くとネタバレになってしまうので避けますが、良いエンドでした。

問題は中盤。
SAOではいつものことなんですが、感情の移行が拙い。
順序をすっ飛ばして急に仲良くなったり、又はその反対で険悪になったりと、挿入されるべき描写が足りずに簡素となってしまっています。
おかげで、何故そこまでするのかという動機に繋がっておらず、リアリティに欠けます。
設定等にリアリティを持たせる必要性があるかどうかは作品よって異なりますが、キャラの感情については、仮に精神的に病んでいたりしても、納得できる推移が必須だと思うんですよ。
一目惚れならそれはそれで理由になりますが、著者の場合は、不自然に間が空いているように感じます。
これさえなければ、もっと素直に読めるんですがねぇ。

そういえば、逆手に取ったネタが仕込まれていましたね。
キリトの強さが、VRMMO世界上に轟いていて、あまりの規格外に「これだから……」とモブキャラから突っ込まれているのには思わず笑ってしまいましたw
真面目にプレイしている他の人間からしたら、たまったもんじゃないよねw
廃人というほど必死になっているわけでもないのに超人的な強さで、可愛い女の子達に囲まれている訳ですから、そりゃあ妬まれもするでしょうw

強き想いを胸に秘めた少女と出会い、己を顧みる女の子の物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ソードアート・オンライン  川原礫  abec  評価B 

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神様のメモ帳7 

神様のメモ帳〈7〉 (電撃文庫)神様のメモ帳〈7〉 (電撃文庫)
(2011/07/08)
杉井 光

商品詳細を見る
読書期間:2011/8/2~2011/8/4

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ミステリー
家族愛




 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 クリスマスが近づき、探偵事務所のそばにあるホームレス公園の改装工事が始まろうとしていた。そんなある日、事務所にやってきた依頼客は、なんと売り出し中のアイドル歌手。子供の頃に失踪した父親そっくりのホームレスをその公園で見かけたのだという。
 父親捜しの過程で浮かび上がる、エアガンで武装したホームレス狩り集団。そして、なぜか探偵団を離脱する少佐。
 「これは自分ひとりでかたをつける」
 やがて――事件が起きる。僕が探偵助手として体験した中で、最も奇怪なあの事件が……戦慄のニートティーン・ストーリー、第7弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


自称ニート探偵、第7弾。
アニメ放送開始直後に刊行されたところをみると、狙って出したようですね。
売り上げは期待したほど伸びなかったようですけども。

今回は、ちょっと雰囲気が違う話。
ニート探偵団と交流のあるホームレスたちの中に、失踪した父親がいるという話が舞い込む。
その話を持ってきたのは現役のアイドルだった。
ナルミは二人の中を取り持とうとするが、そんな時に事件が起こる……という流れ。
これまでと異なるアットホームな温もりと哀しい冷たさを感じる物語でした。

元々このシリーズのストーリーは、スカッとするものは皆無です。
全てが丸く収まるハッピーエンドなんて見たことがありません。
アリスは死者の代弁者と名乗り、墓を暴くことを自虐的に捉える傾向がありますけど、重くのしかかる哀しみの中で、僅かな希望を見出してくれる大事なキッカケだと思います。
救われるとまではいかずとも、しばらく歩みを止めた後、またもう一度歩き出すことが出来るのは、ニート探偵やその助手のおかげでしょう。

ヤクザとか中国マフィアとかクスリといった、きな臭い話が関わっていないのが何とも珍しい。
ニート探偵団で唯一メインを張っていない少佐のターンがやってきましたが、立ち位置が微妙ですね。
父娘の親子ストーリーと、少佐のルートが別々すぎて、溶け込み合っていません。
もう少し積極的に絡み合う物語だと良かったんですけどね。

内容的にも、もどかしさが募るもので、ストレスは感じませんけど、モヤモヤとしました。
心情的に理解は出来ても納得は出来ない類ですね。

それにしても、ナルミの次なるターゲットはアイドルですか。さすがッス。
この天然ジゴロ、着々と人脈を開拓していってますね。
下っ端から兄貴と呼ばれるのも似合ってきたように感じますよ。

岸田メルさんのイラストは、初期から随分とテイストに変化が見られます。
好みの差はあるでしょうけど、今も昔も魅力的な絵だと思いますね。
ただ、アイドルの衣装が古臭いのは気になりましたけど。

優しさと残酷さが入り混じる結末に、複雑な想いが胸を埋めつくします

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  神様のメモ帳  杉井光  岸田メル  評価B+ 

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AHEADシリーズ 終わりのクロニクル6<上> 

終わりのクロニクル (6上) (電撃文庫―AHEADシリーズ (1175))終わりのクロニクル (6上) (電撃文庫―AHEADシリーズ (1175))
(2005/11)
川上 稔

商品詳細を見る
読書期間:2011/7/20~2011/7/29

【評価……B-
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
世界観





 ★★★★★★☆☆☆ … 7






 マイナス概念の活性化により、世界が崩壊するまで、あと5日――。
 だが、“軍”の元9th-G将軍ハジが糾弾したLow-Gの罪とTop-Gの存在が、思わぬ波紋を呼んでいた。そして、Top-Gの存在を秘していたLow-Gに対し、各Gは疑念を抱き、全竜交渉は最大の危機を迎えることに。
 そんななか、佐山と新庄は一つの答えを求め、再び出雲と堺へ向かう……。
 果たして、全ての謎は解き明かされることになるのか!?各Gの疑念はどんな結論を導くのか!?
 シリーズ完結に向け、物語はいよいよクライマックスを迎える!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


終わりのクロニクル第6章、開始。

今巻あわせて残り3巻となりましたが、クライマックスが近いとは感じられませんでした。
なーんかイマイチ盛り上がりに欠けるんですよねぇ。
タイムリミットが迫っているのに、緊迫感はありません。
軍の襲撃という山場を乗り越えて、のんびりしているようにさえ感じます。

派手な展開から一転して、地味な内容に移ったのも大きな理由でしょうか。
責任追求する材料を得て喜ぶ他国UCATがウザったい。
まさに現実の政治を見ているかのようです。
関係のない外野が、でしゃばってくると腹立たしいのは、フィクションでも共通ですね。
ま、そういう輩を正論で捻り伏せられると実に爽快ですが。
京かっけーっす。

一方で、全竜交渉を終えたはずのGとの再衝突が避けられなくなってしまった問題は、各Gの体裁もあって面倒臭いことに。
プライドを賭けた戦いは、バトルそのものよりも組み合わせや場外戦が面白かったですね。
貧乳ならまだしも枯胸は酷過ぎる……w

登場人物が多い中、今回一番輝いていたのは飛場竜司だったと思います。
ややエロだった彼が、もはやエロい本質を隠すことなく晒すまでに……って、それは前からかw
竜司も十分力を持っているはずなんですが、強力な仲間に囲まれ、対峙する相手が化け物クラスばかりということもあり、どうしてもヘタレなイメージが付きがちです。
しかし、だからこそ超人的なキャラとは異なり、劣等感に共感し、成長が嬉しく感じられます。

軍の再始動も垣間見られる中で、果たしてどのように締めにかかるのか。
盛り上がりに期待したいと思います。

各々が再び歩み出すための整理を行う回

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  終わりのクロニクル  川上稔  さとやす  評価B- 

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ゴールデンタイム2 答えはYES 

ゴールデンタイム2 答えはYES (電撃文庫)ゴールデンタイム2 答えはYES (電撃文庫)
(2011/03/10)
竹宮 ゆゆこ

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読書期間:2011/7/13~2011/7/15

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
青春
期待感



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 圧倒的なオーラを放ち、自称完璧、その実ちょっと残念なお嬢様、加賀香子。彼女は独自のシナリオによって定めし幼馴染との運命の結婚が破綻して傷心気味。
 一方、同じサークルの気さくないい先輩、リンダ。彼女は実は万里の高校の同級生で、しかもどうやら浅からぬ仲だったようで、それをひた隠しにしていた。
 記憶喪失男、多田万里の心はそんな二人の狭間に立たされて千々に乱れる。万里が二人に向けた問いかけの、その答えははたして――?
 竹宮ゆゆこ&駒都えーじが贈る青春ラブコメ、待望の第2弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


大学生のキャンパスライフを描くリアル系ラブコメ、第2巻。
ラノベとしては新機軸と言ってもいいぐらい珍しい舞台設定ですね。

感嘆させられるほどに面白い。
本当にこの作者のラブコメは質が良くて素晴らしい。

1巻を土台作りとすると、2巻は物語の流れを作る重要な回といえます。
どのように展開させるのかワクワクしながら読みましたが、思いのほか進み具合が早いですね。
この辺りが、青臭い高校生と大人としては未熟な大学生の違いか。

昨今のラブコメブームのおかげで、テンプレ化が激しいため、ストーリーの楽しみが減っている中、こんなにも先が読めない恋物語は貴重です。
いや、おそらく最終的には万里と香子はくっ付くと思うんですよ。
しかし、そこに至るまでに荒れ狂う模様が繰り広げられるのは、確定的でしょう。
今はまだ大人しい人間関係が、いかにして亀裂が入り崩れていくのか、はたまた絆を結び直すのか、期待に胸が高まります。

大学生の生々しい生活スタイルを見事なまでに表現できており、想像が容易いです。
履修登録や飲み会の会話は、たとえ経験がない人であってもリアルっぽく感じるでしょう。
もちろん、大学に通ったことがある人ならば、あるあると共感できることは間違いないはずです。

設定もさることながら、文章の効果が絶大ですね。
口語と文語のミックスが新しい文章を生み出しています。
知識を身につけても書けるものとは思えませんし、きっと天性のものでしょうね。
合う合わないは人によって異なるでしょうし、文章力が突出しているわけでもありませんが、ラノベ作家の中でもセンスは抜群ですよ。

妙に賢い割に恋愛関係には鈍感な主人公ばかりのラブコメ作品において、多田万里のようなキャラは珍しい。
必要最低限に相手を思いやることはできていても、やっぱり何だかんだいって自分が一番大事で、自己中心的な考えを持っているところや、微妙に頭の弱いところなど、まさによく見かける大学生そのままです。
正直、恋愛観に関しては、香子は言うまでもなく、万里もまだまだ子供っぽいところがあります。
堪え性がないところが、今後多大な影響を与えそうな気がします。

1巻ではカラーイラストのみだったのに、2巻では挿絵も描かれていますね。
マッチしてはいないんですけど、絵のレベルは高いので、挿入されているだけでも嬉しいです。
表紙絵の香子の服の質感は目を奪われました。

癖の強い作品なので、万人にお薦めできるわけではありません。
ただ、ハマれば「とらドラ!」の時のような破壊力もあります。
続きが非常に気になりますね。

大学生活が始まって間もない頃の人間関係が絶妙な距離感で描かれています

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ゴールデンタイム  竹宮ゆゆこ  駒都えーじ  評価A- 

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あなたが泣くまで踏むのをやめない! 

あなたが泣くまで踏むのをやめない! (電撃文庫 み 8-8)あなたが泣くまで踏むのをやめない! (電撃文庫 み 8-8)
(2011/07/08)
御影 瑛路

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読書期間:2011/7/9~2011/7/12

【評価……C+
発想 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
設定 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
物語 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
ロリ
ギャグ
ラブコメ



 ★★★★☆☆☆☆☆ … 5
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★☆☆☆☆☆
 … 5




 『このあたしにせーてきこーふんを抱くのはやめてもらえる?』

 現状を報告しよう。
 俺は自分の部屋で、四つん這いになり、小学生女子(9歳、名前はアリス。ちなみに胸は皆無)の人間椅子になっていた。しかも、あろうことかお尻をペンペンされていた。ガツンと言うつもりが、むしろ俺がしつけられていた。
 何この現実?
 高飛車小学生の馬乗りプレイのせいで、俺は自己紹介すらままならない。亭主関白系男子であるはずの俺が、なぜこんな捕食系ドS幼女と一緒に住むことなった?
 詳しくは、本編を読んでくれ。

【感想】


背徳的な人間描写に定評のある御影瑛路氏の新境地。
まさかの萌え系ラブコメシリーズ開幕です。

あー……、予想通りの微妙さ。

違う作者が描いたのであれば、タイトルと表紙で判断して買うことはなかったでしょう。
最初から過度な期待はしていませんでしたが、それでもやっぱり残念だと感じてしまいました。
それは、作者の筆力を知っているからこそ、平凡な萌え系に走った内容に落胆してしまうんでしょうね。
ダークで緻密な深層心理を描く作風からファンになったがゆえに、特にそう思うんだと思います。

逆に読者の新規開拓という意味合いでは、ありなのかもしれません……が、果たしてこの本を購入した人が既存シリーズを買ってくれる可能性はあるんでしょうかね。
作品の雰囲気がまるで異なるので、逆サイドから見ても手に取り辛いような気がします。

内容は、悪い意味であらすじ通りです。
ツンツンとしたドS幼女・アリスの要求する命令を主人公・岩下寿也がこなしていくという、極一部の性癖を持つ人には受けはいいでしょうが、その他多くの人にとってはドン引きしてしまうようなものでした。
生意気な小娘ほど可愛いと感じる人がいるのも分かりますけど、基本的にロリにもドSキャラにも興味がない自分には辛い。

後半のシリアス展開は、重い題材の割に中身が軽過ぎる。
ラノベとしては正しいのかもしれませんが、これじゃあ心に響きません。
一昔のドラマのようにベタベタで、今更感が拭いきれませんでした。

ぶっちゃけ、アリスやその家族以外のキャラは面白くて良かったんですけどねぇ。
例えば、サブヒロイン的な位置付けにいる自虐系少女・黛千代子、通称チョコちゃん。
可愛い容姿を持ちながら破滅的なまでに逆走する姿は、嫌味を覚えるどころか好感を持てます。
もっと自分に自信を持てよと内心突っ込みながら、軽快な会話に笑ってしまうシーンは少なくありませんでした。

一見完璧に見える委員長・河内亮の趣味も面白可笑しくて、寿也とのやり取りは楽しかったです。
出番が少なかったのは残念でした。

もともと特殊な性格のキャラを描くのには長けている方ですので、ラブコメに合わないってことはないと思うんですよ。
だからこそアリスのようなテンプレキャラは、避けて欲しかったですね。

nyanyaさんのイラストは、作品としては合っているんじゃないでしょうか。
表紙のパンチラどころか、パンモロの挿絵ばかりなのは、どうかと思いますけど。

作者らしいエッセンスが混ざっていなくもないですが、現在刊行しまくっている量産型ラノベの一つでしかありませんね。
土台が引っくり返るような大どんでん返しもありませんし、良くも悪くも普通です。
他の作家では書けない「空ろの箱と零のマリア」のような話を期待したいので、こちらの道に進んで欲しくない。
なので、続巻も約束されているようですが、次は買いたくないというのが本音です。

ところで、俺妹作者である伏見つかささんが帯にコメントを寄せています。
その関係で伏見さんのブログにて記事があるんですが、そこに主人公が作者そっくりだという話が……。
まさかパクメン(亭主関白系男子)を目指す野望をお持ちだったとは。

亭主関白を夢見る男子高校生が、幼女に好き勝手に弄ばれる話

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  あなたが泣くまで踏むのをやめない!  御影瑛路  nyanya  評価C+ 

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カミオロシ ~縁結びの儀~ 

カミオロシ―縁結びの儀 (電撃文庫)カミオロシ―縁結びの儀 (電撃文庫)
(2011/06/10)
御堂 彰彦

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読書期間:2011/6/21~2011/6/22

【評価……B-
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー
ホラー
期待感



 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 神社にまつわる恋愛成就のおまじないの噂。その神社に課外活動で訪れた生徒たち。その中に玖流緋澄と識読美古都はいた。学年で双璧をなす秀才、才媛の二人だが、顔を合わせば皮肉の応酬となる間柄。おまじないとは無縁の二人だった。
 神社に訪れたほかの生徒たちは奇妙な顔ぶれだった。おまじないを信じ、互いを意識する生徒たち。だが、そんな浮ついた空気は一変する。
 他愛のない恋愛成就のそれが、次々と死をもらたらしていく。それは呪い、それとも――。謎に迫ろうとする緋澄と美古都の二人が知る真実とは!?伝承系ファンタジックホラーの登場。

【感想】


「付喪堂骨董店」シリーズが評判の御堂彰彦氏による新作。
ミステリー&ファンタジーという得意ジャンルに少々のホラー要素が混ざった意欲作です。

1年3ヶ月振りとなる新作でしたが、独特の雰囲気は変わっていませんね。
暗く地味だけど、気になるトリックと惹きつけられる人間模様は、引き継がれています。

勉強が出来るという意味だけではなく、本当の意味で賢い頭脳を持った二人が主役。
クールで冷静な判断を下せる玖流緋澄は、少年漫画系作品のアンチテーゼとも言える存在で、成長途上の知的系キャラです。
凡庸なキャラや、熱血硬派な主人公とは異なり、あくまで自己中心にした周囲のみを気遣うスタイルで、個人的に共感を覚えました。
フィクション的な主人公補正で助かっているのに、理想を語るキャラは山ほどいますが、玖流は違います。
自分の限界や引き際が分かっている人間は、好感が持てますね。

ヒロイン役の識読美古都は、玖流同様に頭の切れるタイプで、はぐらかすのが巧みな含み笑顔が似合う女の子です。
いや、女の子ってのは何となく似合わないかな。
玖流と同い年の幼馴染なんですが、幼い面を僅かに残したお姉さんっぽいキャラですね。
前作「付喪堂骨董店」のヒロイン・舞野咲を彷彿とさせるクーデレの香りが漂っています。

良くも悪くも互いのことなら大体分かる関係で、挑発的な言葉を掛け合うものの、ほぼ無意識的に大切な相手と認識している間柄という美味しいシチュエーションが楽しめます。
とはいえ、まだまだ描き切れてはいないので、これからに期待でしょうか。
またビターチョコレートのような苦味のある甘さを味わいたいものです。

しかし一方で、ストーリーはちょっと雑だったかなぁという印象を受けました。
ファンタジー要素があるおかげで、どこに境界線を引けばいいのか悩むミステリーとなっていて、作品全体が曖昧になっているように見えます。
もっと主人公勢が関わる事件内容にしないと、導入しては弱いかなーと思いました。
展開にも無理があったり、強引さが目立ちます。
2巻目以降ならまだ良かったんでしょうが、キャラ紹介を兼ねた1巻としてはインパクト不足ですね。

基本的には美麗な文章ですが、時々描写が飛ぶといいますか、説明が足りない箇所があるように感じました。
エアポケットに入ってしまったかのように、部分的に違和感があるんですよね。
舞台が現代のわりに、オカルト的要素に対して許容がありすぎるでしょう。

ミステリーについては、それなりに読み応えがありました。
ガチガチの推理モノと比較すると粗はあるでしょうが、十分楽しむことが出来ました。

さらちよみさんのイラストは、思っていたよりも良かったです。
特に美古都は可愛い絵が多くて楽しめました。
イラスト指定のポイントが、ちょっとどうかなとは思いましたけど。

現時点では、そこそこ楽しめたものの、微妙なところです。
しかし、今後に期待は持てそうなので、じっくりと腰を据えて追いかけたいなと思います。

オカルト色が濃いホラー系ミステリー

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  カミオロシ  御堂彰彦  さらちよみ  評価B- 

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バッカーノ!1710 Crack Flag 

バッカーノ!1710―Crack Flag (電撃文庫)バッカーノ!1710―Crack Flag (電撃文庫)
(2010/04/10)
成田 良悟

商品詳細を見る
読書期間:2011/6/16~2011/6/20

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
構成
世界観
ロマンス



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 全ての発端は1707年。
劇作家でもあるジャンピエールが、友人のマイザーを通じてフェルメートという錬金術師に出会ってしまったことがきっかけだった。
『不老不死』という言葉に釣られ、マイザーはベグやチェスと知り合い錬金術に魅入られていき、ジャンピエールは自分のファンというフェルメートに魅入られていった。
 そして二年後の1709年。
未だ錬金術を学ぶヒューイは、過去に囚われつつも徐々にモニカとエルマーに心を開き始めていた。
だが、この街の異物を探ろうとする使節団の来訪とジャンピエールの書いた新しい劇によって、ヒューイたちにも暗い過去の影が忍び込んでいく――。
 馬鹿騒ぎの始まりに迫る異色作第2弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「バッカーノ!」シリーズ通算15冊目。
1700年代としては、2冊目になります。

ロットヴァレンティーノの街で起こった一連の「仮面職人」事件から数年後。
ヒューイモニカエルマーの3人は少年少女から青年へと成長しつつあった。
そんな彼らに、不穏な影が舞い込む――というストーリーです。

これまでで最も異色であり、タイトルの馬鹿騒ぎに偽りのある回でした。
刊行順に読んでいれば、ヒューイとモニカの辿る運命は既知と言ってもよくて、覚悟して読んだ人も多いかと思います。
とんでもないことをあっさりと描かれる傾向がある作品ですが、この巻は重かったです。

ヒューイって、こんなに人間味溢れる性格をしていたのか。
1930年代の彼を見ていると、感情はあっても無機物的でしたからね。
モニカとの関係も、もっと機械じみた理論の結果なのかと思いきや、随分と情熱的で驚きました。

だからこそ、分かっていてもこの結末は哀しくなりますね。
胸に鋭利な刃物が突き刺さるかのような痛みがあります。
作者が堪えるぐらいですから、相当ですね。

それにしても、フェルメートの外道っぷりには、嫌悪しか抱きません。
犯罪に手を染めたり、人を簡単に殺めたり、馬鹿な連中は山ほど出てくる作品ですけど、コイツの場合はタチが悪過ぎる。
チェスとの一件を思い出してみても、ヒューイが可愛く思えるぐらいの悪役ですよ。
裏から掻き乱す存在なので、物語を面白くしてくれるのは確かなんですが、感情的には胸糞悪いという複雑なキャラです。
最終的には、きっと盛大に転ぶのでしょうが、フェルメートが痛い目を見る想像がつきませんね。

マイザーベグチェスなど後に不老不死を手に入れる錬金術師たちの若い頃の姿もあり、どのような流れで踏み込んで行ったのか、少しずつ暴かれていく過程も興味深いですね。
特に、マイザーの変貌ぶりは急激でした。
これはまた今後に裏エピソードが挿入されそうな予感がしますね。

久しぶりに読んだ1700年代ということもあって、すぐには思い出せない内容もありました。
ここが「バッカーノ!」シリーズ最大かつ唯一明確な欠点ですね。
構成が入り乱れているのが面白く興味をそそられるのですが、通して読んでいないと忘れてしまいます。
読みなおせよと言われればそれまでなんですが。

次の1700年代は1711年らしいですが、いよいよ錬金術師が結集する話になるっぽいですね。
どう考えても仲良くやれるわけがない面子が、いかにして揃ったのか気になります。

人を信じることができない人間が芽生えた愛情に戸惑いながらも大切にしようとする物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  バッカーノ!  成田良悟  エナミカツミ  評価B 

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アクセル・ワールド7 ―災禍の鎧―  

アクセル・ワールド〈7〉災禍の鎧 (電撃文庫)アクセル・ワールド〈7〉災禍の鎧 (電撃文庫)
(2011/02/10)
川原 礫

商品詳細を見る
読書期間:2011/6/9~2011/6/11

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
燃え




 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 黒雪姫率いる≪ネガ・ネビュラス≫は、シルバー・クロウを≪浄化≫するため、≪アーダー・メイデン救出作戦≫を発動した。
 難度の高いミッションの中、決死の覚悟でシルバー・クロウはアーダー・メイデンと接触するも、≪帝城≫を守護するエネミー≪スザク≫の火炎ブレスにより、禁断の不可侵領域――≪帝城≫内部に突入してしまう。絶体絶命の危機に陥ったハルユキだが、彼はそこで不思議な≪夢≫を見る。≪クロム・ファルコン≫と≪サフラン・ブロッサム≫。二人のアバターが望み、砕け散ってしまった≪災禍≫の物語を――。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


大切な仲間との絆を描いた正統派SFアクション、第7巻。

良い意味で、先の読める分かりやすい作品ですね。
ベタベタなところが逆にイイ!といえる近頃では希少なシリーズかもしれません。

話の主軸がどんどんズレていくのだけれど、結果的には一周している構成が憎らしいですね。
最終目的のために必要なキーアイテムを探す過程で、別のお使いをさせられるRPG展開のようでした。
長ったらしいと面倒臭くなる気持ちも芽生えますが、比較的巧く繋いでいると思います。
冒頭から唐突に始まった過去編が、予想外の文章量だったのには少々戸惑いましたがね。

その≪災禍の鎧≫が誕生するキッカケとなるエピソードは、切なさと憤りを覚えました。
サイドストーリーの挿入時期としては、ここで相応しかったのか判断付きませんが、語られるべき内容であったのは間違いありません。
練り込んだ設定から察するに、決して思いつきではなく、初期の段階から考えていた伏線なんでしょうね。
≪災禍の鎧≫一連の流れに深みを与える秘話でした。

本題は、ハルユキの浄化のはずなんですが、加速世界ではそれ以上に怪しい影が動きつつあります。
熱く燃える少年漫画の王道を行く展開に、興奮しました。
それだけに、口絵のネタバレ度が高過ぎたのが勿体無かったなぁ。
口絵を見るだけで、今巻の半分ぐらい理解出来てしまうのは、さすがにやりすぎだと思います。

タクムに出番があったのは嬉しいのだけど、こういう形を希望していたわけではないんだ……。
1巻の衝突では全てが昇華されず、燻っていた陰が残されていたのは、前々から描写されていましたけれど、もっと前向きな解決編となることを望んでいました。
その辺りは、能美征二とのバトルで見せたことになっているのかなぁ。

ちなみに、またしても良いところで次回へ続くとなっているわけですが、まぁいいんじゃないでしょうか。
確かに非常に気になるシーンではありますけどね。
妙にこの作品だけは切り方が酷いと言われ、作者も気にしているようですけど、卑怯なぐらい引っ張ってくれた方が楽しみになれます。

友のために自分が出来る最大限の頑張りが熱く胸を打ちます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  アクセル・ワールド  川原礫  HIMA  評価B+ 

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AHEADシリーズ 終わりのクロニクル5<下> 

終わりのクロニクル5〈下〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)終わりのクロニクル5〈下〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)
(2005/07)
川上 稔

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読書期間:2011/5/27~2011/5/31

【評価……B
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
世界観
燃え
期待感



 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 UCATが回収を急ぐ10個目の概念核。それを持つ、7th-Gとの全竜交渉が始まった。
 だが、それと同時に、UCATに集められた概念核を奪取するため、9th-Gの元大将軍ハジの率いる“軍”が、遂に攻撃の準備を終え行動を開始する。
 果たして、それらを相手に全竜交渉部隊はどのような判断を己に課すのか!?佐山の下した重大な決断により波紋が生じた、全竜交渉部隊の行方は!?そして奥多摩に向かった佐山と、堺を訪れた新庄が出会った、それぞれの過去とは……!?
 世界の崩壊まで後一ヶ月。いよいよ佳境を迎えるシリーズ第5話、完結!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


終わりのクロニクル第5章、完結編。

気が付いたら、上巻を読んで一年以上が経っていました。
内容は、しっかりと覚えていたので、そんなに間が空いていたとは思いもせず。
今回も楽々と500ページを超える分厚さで、どうしても読むための気力が必要になるんですよね。

遂に軍との衝突が始まり、戦闘シーンが連続する流れに燃えました。
秘められし事実が次々と明るみとなり、根底を引っくり返された驚きがあります。
しかし、まだまだ隠し玉は幾つか残されているようで、今回は一部を放出した感じですね。

そのためなのか、何だかあえてセーブして書いているかのような印象を受けました。
戦闘の規模は過去最大級なので、もっと盛り上がってもいいはずですなんですが、思ったよりも小さくまとまっています。
まぁ、きっと今後に爆発的な展開が待ち受けているでしょうから、期待度は高まります。

上巻で随分とプッシュしているなぁーと思っていたら、何という風見無双。
下巻こそ風見が表紙を飾るべきだったのではないかと思うほどです。
落として上げる手法は、古典的ながらも効果絶大で、その幅が大きければ大きいほど勢いが増します。
風見周りの伏線回収も巧く、実に魅力的なキャラとして仕上がっていました。

多数いるキャラ全員に見せ場を作ろうとしているから、こんなに厚くなっちゃうんですかね。
本当にどいつもこいつもやたらと濃いからなぁ……w
まぁその中でも、主人公の佐山はさすがに目立っていました。

さとやすさんの絵は、枚数が多いのに安定した描き込みで見応えありますね。
拘り派の著者との相性の良さをひしひしと感じます。

全竜交渉が開始した段階で、ここまではある意味予想通りでした。
次回から、どのように物語が進むのか、さっぱり分かりません。
だからこそ、ワクワクしますね。

心の叫び声をぶつけ合う全力バトルが燃えたぎります

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  終わりのクロニクル  川上稔  さとやす  評価B 

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俺の妹がこんなに可愛いわけがない8 

俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈8〉 (電撃文庫)俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈8〉 (電撃文庫)
(2011/05/10)
伏見 つかさ

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読書期間:2011/5/18~2011/5/19

【評価……B
発想 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
リア充




 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 「私と付き合って下さい」新たな局面を迎えた恋愛模様そして――
 「きょうちゃん。――――おこるよ?」
 「貴様等、そこに並んで正座しろ!」
 「恋人ができたそうですね。お兄さん」
 俺の全方位土下座外交が幕を開けた。
 幼馴染みに三年振りのマジギレ予告をされたり、あやせに火あぶりにされかけたり――「五更日向です。――こっちは末っ子の珠希」新たな登場人物も加わって高校生活最後の夏休みは毎日が大騒動だ。
 そんなある日、黒猫が『運命の記述』と題された予言書を見せてきて……?
 予言書に秘められた少女の“願い”とは!?兄妹の関係に一大転機が訪れる、シリーズ第8弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


電撃文庫看板タイトルの一つにまで成長した、俺妹シリーズ第8弾。
アニメ効果もあってか、売り上げが相当伸びたらしいですね。

黒猫が可愛すぎる……!
痛々しいまでの厨二病のくせに、極度の恥ずかしがり屋という二面性がギャップを生み出しています。
京介の軽いちょっかいに、顔を真っ赤にする彼女は破壊力抜群でした。
これは萌える。

ドヤ顔で攻撃的な台詞を吐くこともあっても、素顔がボロボロ出すところがいいんですよね。
京介と目を合わせられず、そっぽを向いてしまったり、俯いてしまったり、照れる様子が分かりやすくて何ともいじらしい。
桐乃のようなウザったいツンデレが好きな人もいるでしょうが、個人的には黒猫派ですね。

まぁ、今回の桐乃は悪くなかったと思いますがね。
これまでがアレだったので、違和感は覚えましたが、良い立ち回りでした。

衝撃のラストだった前回。
7巻の感想でも書きましたが、初めから嫌な予感はしていました。
どう見てもフリにしか見えませんでしたからね。
そして迎えた8巻、ストーリーは概ね予想通りで、正直に言って結果には落胆しました。
コンテンツとして捉えた場合、この手法を選ばざるを得ないのかなとは理解はできますが、心情的には納得し辛いものがあります。
ご都合主義な展開で、読了感は微妙でした。

ただ、過程を見るならば、ラブコメとしてシリーズ随一の質の良さだったと思います。
以前は、コメディとして読んではいても、恋愛要素はさほど重要視していませんでした。
今までとは趣が異なる内容となっていて、なるほど、恋愛編と銘打っただけのものはあります。

今回の京介は、終始ヘタレてるなぁ。
ハッキリ言って客観的に見れば、キモイぐらいのシスコンで、彼氏としても情けない奴でした。
オタク色に染まっておらず、知識はなくとも情熱は理解してくれる頼れる兄貴の姿は、見る影もないですね。

初期の頃は、兄と妹のリアルっぽさに、たびたび共感したものですが、今ではありえません。
好き嫌い以前に家族であるという絆を描いた物語が良かっただけに、いわゆる二次元的なツンデレ同士の兄妹になってしまって残念です。

あと、黒猫の好意に対して、受け身体質なのもいかがなものか。
本当に恋愛感情を持っているのかと、問い質したく気分になりました。

そういえば、久々に麻奈美の登場シーンが多かったですね。
作者が語りたいがためのメッセンジャーみたいと感じたのは、自分だけでしょうか。
もっと良い意味で、どこか抜けている女の子のイメージだったんですけど。

文法的には、強調点や引用を多く見られるのが気になりました。
好意的な目で見れば、普段ラノベを読まないアニメ視聴者に対して分かりやすく強調したともいえますけど、何だかレベルを落とした書き方と感じてしまいましたね。

シリーズ内で、一番面白くもあり、一番期待外れだった回でもありました。
凄く楽しく読めたんですけど、しこりが残っているような感じと言いましょうか。
評価が難しい巻ですね。

付き合い始めたばかりの初々しいカップル模様に悶えます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  俺の妹がこんなに可愛いわけがない  伏見つかさ  かんざきひろ  評価B 

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電波女と青春男8 

電波女と青春男〈8〉 (電撃文庫)電波女と青春男〈8〉 (電撃文庫)
(2011/04/08)
入間 人間

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読書期間:2011/4/13~2011/4/15

【評価……B-
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ラブコメ
青春




 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6





 リトルスマキンが襲来した。
 具体的には、ミニマムサイズの布団ぐーるぐるな存在が、俺と藤和エリオの前に現れた。
 うん、この展開。本来だったら「この地球外生命体みたいなやつの目的とは!?」なんて気張るところなんだろうが、このリトルスマキンにそんな期待(?)をしても意味がなさそうだった。
 しかし、俺はこいつと出会って思い知ったことがある。青春ポイントの低下要因であったはずの藤和エリオ。俺は彼女に、どれだけ依存していたかってことを。
 今回のお話で、俺は宇宙人たちに終わりをコールする。
 なんだかんだあっても。
 俺たちは、相変わらず青い空を眺めて、遥か宇宙を目指すんだ。
 だって、地球人だから。
 以上。丹羽真でした。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


絶賛アニメ放送中の不思議系青春ラブコメディ、完結。

最終巻にして、最も微妙な内容でした。
いやぁ、これで終わりはねーよといった感じ。
みーまーの時もそうでしたけど、長期作品の締め方が雑過ぎませんかね、この作者。
嫌々とは言い過ぎかもしれませんが、無理矢理続けましたという印象の受けるあとがきもあって、何だかすごく残念でした。

謎のリトルスマキンの襲来。
青春ラブコメとして落ち着きつつあった世界でしたが、またもや電波に満ちることに。
1巻を彷彿とさせる展開ですね。

伏線が多く取り残されたのが、読了感をスッキリさせてくれない原因となっています。
あえてボカすことで、不思議な空気を表現するのは良いんですけど、明かされない謎が多すぎます。
生温かい日常で物語を締めること自体は、むしろ賛成派なぐらいなんだけどなぁ。

しかも、その青春模様も文章量が半減しちゃっていて、全然物足りない。
新キャラのリトルスマキンとの絡みばかりで、肝心のリュウシさんや前川さんの出番が少ないのは致命的。
前川さんが照れる姿は、そりゃもう破壊力抜群なんですが、さすがにそれだけではねぇ。

エリオの成長という観点でいえば、なかなか興味深いものはあります。
まさに過去の自分ともいうべき存在が現れたわけですが、もう道を踏み外す気配は見えません。
真でなくとも、父親的な目で見守りたくなる女の子ですね。

こうしてみると、6巻の大掛かりなエピソードは、最終巻に相応しかった気がします。
7巻のifストーリーは、オマケ的な後日談としてピッタリですしね。

商業的に走り過ぎるのも困りものですが、それでもアニメ化と同時に終わらなくてもいいのに。
捻くれたところが作者らしいといえばらしいのですけどね。

初期と比べると、各キャラの成長や変化を実感できるあっさりとした終幕

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  電波女と青春男  入間人間  ブリキ  評価B- 

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ソードアート・オンライン6 ファントム・バレット 

ソードアート・オンライン(6) ファントム・バレット (電撃文庫)ソードアート・オンライン(6) ファントム・バレット (電撃文庫)
(2010/12/10)
川原 礫

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読書期間:2011/3/31~2011/4/2

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
燃え
緊張感



 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 銃と鋼鉄のVRMMO≪ガンゲイル・オンライン≫で発生した≪死銃≫事件を調査するため、≪GGO≫へえとログインしたキリト。
 一見超美少女キャラと見間違えるアバターにコンバートされるトラブルに遭った彼だったが、スナイパーの少女・シノンのナビゲートにより、全ガンナーの頂点たる対人トーナメント≪BoB≫に無事参戦を果たす。
 キリトは、銃が支配するこのゲームで唯一≪光剣≫を駆使、≪BoB≫を勝ち進む。その奇抜な戦闘スタイルが話題となり、徐々にゲーム内での知名度は上がっていった。
 そして≪BoB≫決勝。数多の強敵がひしめく≪バトルロイヤル≫の中、ついに≪死銃≫が姿を現す。果たして≪死銃≫とは何者なのか。本当に≪仮想世界≫から≪現実世界≫へ影響を及ぼすことができるのか……キリトは単身、≪死銃≫へと挑む!!
 『ファントム・バレット』編、完結!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


近未来SF世界におけるMMOを舞台に繰り広げられるアクションバトル、第6弾。
≪ファントム・バレット編≫完結編です。

うん、これは面白かった。
巻数を重ねるごとに少しずつ微妙なところが増えていたため、不安な一面もあったのですが、久々に不満点よりも満足感が上回る読後でした。

やはりオンラインゲームの死がリアルの死に直結する状況は、緊迫感が半端ありませんね。
VRMMO≪ソードアート・オンライン≫の物語が描かれた1巻に惚れこんで追い続けることになった身としては、死銃による殺人事件の恐怖は、あのデスゲームを彷彿とさせる内容で手に汗握りました。
巧みな文章により一層に、命の重さを感じ取ることができる点も秀逸です。

≪ガンゲイル・オンライン≫のPv大会≪BoB≫の模様が熱くて良かった。
戦闘は、迫力あるシーンの連続で、見応え抜群です。
相変わらずキリトの強さが際立ちますが、今回は敵味方ともに見せ場がありました。
不自然なまでの一騎当千よりも、拮抗したバトルロイヤルの方が断然燃えるに決まっています。
まぁ、プレイし始めたばかりのキャラが、対人のスペシャリスト達の集う大会の本戦に出場している時点で、リアリティなんて皆無なんですけどね。

物語の展開は、良く言えば王道、悪く言えばテンプレ通りの同じパターン。
分かりやすい面白さを目指しているのかもしれませんが、勧善懲悪ばかり描かれても、またかと思うだけで心に響くものはありません。
死銃の正体なんかもう想像通りすぎますし、犯人のキャラ造形も一辺倒でつまらない。
主人公は最強に格好良くてはならないと考えているかのような、無双っぷりも苦手です。

こういうところが、きっと中高生には受けるんだろうなー。
自分が中学生の時に出会っていれば、きっと素直に称賛していたのではないかなと思いますよ。

死銃のトリックについては、ギミックとしては面白味がありますが、ちょっと拙い気がしますね。
オチを知ると、今まで気が付かなかったことに不自然さを感じます。
盲点というには反則的で、前巻より続いた謎の解明としては、何だか狐につままれた気分で、スッキリしません。
あれだけ実行不可能という難題として提示しておいて、これはないなーというのが正直な感想。
着眼点は素晴らしいだけに、もうひと捻り欲しかったなぁ。

エピローグは、丁寧過ぎると言うか冗長だったというか……。
ご都合主義なところも目に付きますし、何かと惜しいですねぇ。
面白いんだけど、気に食わない点が多々あるように感じるのは、相性なんだろうか。

とはいえ、過去最高の分厚さも気にすることなく、ガツガツと読み進めることができました。
質の高い良作であることは、間違いないでしょうね。

リアルとゲームが交差する状況で行われる命を賭けた戦いが熱く燃えます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ソードアート・オンライン  川原礫  abec  評価B+ 

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神様のメモ帳6 

神様のメモ帳〈6〉 (電撃文庫)神様のメモ帳〈6〉 (電撃文庫)
(2011/02/10)
杉井 光

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読書期間:2011/3/25

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ミステリー
世界観




 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8





 高校の文化祭が押し迫る晩秋、ラーメンはなまるにやってきたのは、チャイナマフィアの後継者兄妹。なんとミンさんの親戚だという。ミン父・花田勝の引き起こした事件をきっかけに、なぜか持ち上がるミンさんの縁談。それに憤然と立ち上がったのは、ヒロさんだった。
 「おれからの依頼。この婚約、ぶっ壊してくれ」
 ヒモのくせして、ついにミンさんに本気!二転三転の結婚騒動を描いた「電撃MAGAZINE」掲載作に、ヒロさんの師匠初登場の書き下ろし短編『ジゴロ先生、最後の授業』を加えた、大ボリュームのニートティーン・ストーリー第6弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


ニート探偵第6弾。
帯にてアニメ化が発表され、これから活気づくことが期待される人気シリーズです。

今回は、ニート探偵団のうちの一人であるヒロさん、そしてラーメンはなまるの現店主であるミンさんを主軸に置いたお話……であるのは間違いなのですが、それだけでは終わりませんでした。
冒頭やあとがきで語っている通り、これはある一人の男の物語でした。

熱い、切ない、楽しい……作品を評価する上で、色々な形容詞がありますが、この本の場合、面白いというシンプルな言葉が一番ピッタリときます。
どっぷりと漬かることのできる物語は、読了後の充実感が素晴らしく、とても良い時間の過ごし方をしたなぁという満足感を得られます。

ヘタレ気味のナルミが致命的なミスを犯し、終盤で起死回生の案を提示する流れは、もはや様式美。
今回はミステリー要素は少なめで、伏線が分かりやす過ぎたので、途中で作戦なども予想がついてしまいましたが、最後のオチは死角から殴られたようにガツンと来ました。
ううむ、これは何とも言葉にし辛い。

ニート探偵団を始めとしたキャラクターの立ち具合は、まさにお見事。
登場人物が纏う空気さえも感覚的に伝わってくるほどに、明確に色付けされた描写が凄い。
ナルミなんて、高校生活を送っていることに違和感すら覚えるほどニートが様になってきましたしw

アリスのデレ期がますます加速していて、ナルミに対する挙動が取り乱すことが多くなってますね。
相変わらず犯罪的なまでの鈍感っぷりを発揮しているナルミですが、彩夏推しの立場ということもあって、あまり腹が立ちません。
本人は無意識の天然系ジゴロになりつつありますが、果たしてこれは成長と呼べるんでしょうかw

彩夏をもっと絡めた青春模様が見てみたいなぁ。
今となっては、どちらもほとんど意識していないようで、寂しい気持ちになります。
アリスが妬くような展開になれば面白いんですがね。

書き下ろし短編である「ジゴロ先生、最後の授業」も良かったです。
ヒモも、ここまで来ると屑を通り越して立派に見えるというのが、よく分かりましたw

岸田メルさんのイラストは、塗りが丁寧で惹きこまれます。
微妙にリアルらしさも入り混じっていて、無二の絵師さんだなぁと思わされます。

さて、次は順番で行けば少佐の番なのかな?
アニメ直前に発売されるそうですが、待ち遠しいですね。

ミンさんの結婚騒動の裏で泥臭く躍動する男達の格好良さに惚れます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  神様のメモ帳  杉井光  岸田メル  評価A- 

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ゼペットの娘たち2 

ゼペットの娘たち〈2〉 (電撃文庫)ゼペットの娘たち〈2〉 (電撃文庫)
(2008/11/10)
三木 遊泳

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読書期間:2011/3/12~2011/3/16

【評価……B-
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ほのぼの
家族愛




 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 意志を持ち成長する《機鋼人形》の少女ハリケーンの願いは、彼女をつくった機鋼人形師の少年・サツキのそばに居ること。でも機鋼人形整備の仕事に夢中のサツキはそんな彼女の想いにはまるで気が付かず、ハリケーンに“最高のご主人”を見つけようなどと言い出す始末。そんな二人を、イヌ機鋼人形型のトルネードは、生温かく見守るのだけれど……。
 今回のハリケーンはタマゴ料理の修業に燃え、サツキは人形型機鋼人形の改修に萌え、トルネードは尻尾をパタパタ振りつつハリケーンにあること無いこと吹き込みます!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


丹精込めて造られた人形達のアットホームな心温まるストーリー、第2巻。

あったかいなぁ。
この作品は、絵本や童話に通ずる優しい温もりを感じさせてくれますね。
ほのぼのとした雰囲気が文面から伝わってきて、とても穏やかな気分になります。

登場キャラが、みんな優しいんです。
好きな相手に笑っていて欲しい、喜んで欲しいといった心の清らかさが、透き通るように綺麗。
生まれて間もないハリケーンの無垢なところや、トルネードの偉そうな挙動など、どれもこれも可愛らしくて愛おしくなります。

そういう意味では、主人公のサツキの浮きっぷりは、確かに変態的ですね。
仕事に対する情熱というか、人形そのものへの愛情が大きすぎて、一度夢中になると周囲の目に気が付きません。
表情だけ見たら、完全に危ない人の領域に入っています。
しかし、それもまた面白可笑しいコメディタッチになっているため、何だか微笑ましくなっちゃいます。

不満点を挙げるとするならば、物語でしょうか。
ゲストキャラのエピソードが多く、少々物足りませんでした。
普通に良いお話だとは思うのですが、1巻の時点で魅力的なメインキャラが揃っているので、腰を据えて読んでみたかったなぁと思ってしまいます。
2巻以降が発売されていないだけに、余計に。

イラストとの相乗効果は抜群で、作風にぴったりです。
少女の幼げな可愛さと、ちょっぴり大人びた可憐さの描き分けが素晴らしい。
特にカラーページの出来栄えが良かった。

伏線を残したまま今巻は閉じていますが、次巻はまだ発売されていません。
イマドキの味付けの濃いラノベとは違い、古びた香りが漂うところが珍しいので、是非続きを読んでみたいなぁ。

淡い雰囲気に合う優しさに溢れるほのぼのコメディ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ゼペットの娘たち  三木遊泳  宮田箏冶  評価B- 

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バッカーノ!1931 臨時急行編 Another Junk Railroad 

バッカーノ!1931 臨時急行編―Another Junk Railroad (電撃文庫)バッカーノ!1931 臨時急行編
―Another Junk Railroad (電撃文庫)

(2009/01/07)
成田 良悟

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読書期間:2011/2/26~2011/2/28

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
構成





 ★★★★★★★★☆☆ … 8






 【マンハッタンで待ちます。何時までも貴方を待ちます。どうか探してください】
 発端は大陸横断特急の屋根に刻まれたシャーネの言葉だったのか、グラハムが兄貴と慕うラッドが列車から落とされた瞬間だったのか、もしくは意外な不死者が乗車していた事実に気付かなかったことだったのか――?
 そして終点は本当にニューヨークなのか、DD新聞社副社長のボヤきなのか、不良少年達の友情物語なのか、それとも――実は始まりに過ぎなかったのか?
 ジャグジーたちと共に暮らすことになったシャーネと彼女を探し続けるクレア。
二人が出会う幻の『1931 回想編』に、多数の後日談を大幅加筆して登場!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「バッカーノ!」通算14冊目。
ドラマCDの特典「回想編」に100ページほど加筆された内容となっているそうです。

2,3冊目で描かれた1931年代のフォローをするエピソードが挿入されるとは思いませんでした。
フライング・プーシット号事件は、構成やキャラ配置が見事で、印象深い回だったんですよね。
その後の話や、あの列車にまつわる隠された物語を読むことが出来て、素直に嬉しいです。

何故このタイミングに1931年代なのかというのは、読む前に想像した通りでした。
随分と長い間、伏線を張り続けていましたねぇ。
ただ、まだあくまで触りの段階なので、やはり1935年代に突入しないと本当の意味で開花はしません。

それよりもこの巻の醍醐味は、クレアとシャーネの再会でしょうね。
いかにしてクレアがシャーネを落としたのか、遂に明かされます。
何というかもう自由というか、何でもアリだよなぁ、この男はw
そういうところが大好きですが、パワーバランス崩壊しすぎだろうw

グラハムは、この時代から関わっていたのかー。
アニメやドラマCDはスルーしていたので、この巻の口絵を見るまで知りませんでした。
独特の台詞回しが耳に残るキャラで、初登場時からお気に入りのキャラです。

懐かしい人物も再登場したりしていて、補足的な意味合いでは満足度は高めです。
シナリオ自体に大きな進展があるわけではないものの、人間関係の繋がりを読むのが楽しいシリーズなので、たまには遡ってみるのもいいのではないでしょうか。

「バッカーノ!」シリーズを読み始めたのが、この巻が出る数ヶ月前でした。
2年以上かけて、ようやく当時の最新刊まで追いついたわけですが、当然その間にも新刊は出ます。
まさか、あれから2冊しか新刊が出ないとは予想していませんでしたね。
次巻で追いついてしまうのが、ちょっぴり寂しいです。

1931年代の流れで読むとネタバレを食らうので、発刊順に読むことをお薦めします

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  バッカーノ!  成田良悟  エナミカツミ  評価B 

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青春ラリアット!! 

青春ラリアット!! (電撃文庫)青春ラリアット!! (電撃文庫)
(2011/02/10)
蝉川 タカマル

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読書期間:2010/2/15~2010/2/19

【評価……B-
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
青春
友情



 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 「行くぞコノヤローッ!」
 どこかの有名レスラーばりにマイクコールをし、全校朝礼の場で公開告白をした月島。その結果は――当然、停学処分となったのだった。
 バカの日本代表、月島を心配する者が一人。友人の宮本である。宮本は傷心の月島を見舞う事に。その道中で出会ったのが、整った顔立ちながら愛想の欠片もない無表情の少女、長瀬だった。
 どうも、長瀬は“あの月島”に惚れているらしい。その事に驚きつつ、自分に対してなぜか横柄な彼女に怒りも覚える宮本だった。この奇妙な三角関係が、風雲嵐を巻き起こす事になり!?

【感想】


第17回電撃小説大賞<金賞>受賞作品。
すみ兵さんのイラストと、成田良悟さんの推薦文に惹かれました。

ふむ、悪くはない。
なかなか面白かったです。

全校集会の場で突如、意中の相手に告白し即玉砕した友人・月島を心配する主人公・宮本
停学中の月島を訪ねる道中、宮本は一人の少女に後をつけられていることに気付く。
その少女・長瀬は、月島に恋い焦がれた純情な女の子……と思いきや、月島の目がないところでは、口の悪い横暴な娘だった。
宮本は、長瀬から執拗なほどに口撃されながら、彼女に振り回されていく――というストーリー。

定番の青春ラブコメかと思いきや、少し狙いをズラしていて、ちょっとした冒険をしています。
最初は設定からして、「とらドラ!」のような多角関係なのかなと予想したのですが、外れました。
異色というほどではないですけど、着眼点が良くて新鮮さを感じますね。

例えるならば、運転席には友人(=主演・月島)、助手席には友人のことが好きな後輩(=ヒロイン・長瀬)が座っている状態で、後部座席に乗り込んだ脇役(=主人公・宮本)視点で青春ラブコメが描かれているような感じ。
作品上は後部座席の男・宮本が主人公なのですが、物語においては、一人の脇役に過ぎません。
あくまで、運転席に座る友人・月島が主役なんです。
車内の会話には加わるんだけど、主人公がハンドルを握っていないので、目的地は選べません。
脇道に入ったけれど、寄り道し終わったら途中で軌道修正するんだろうなーと思っていたら、そのまま駐車してしまいました。

主人公であるはずの宮本が、地味すぎて本筋の関わりあいが薄いのは、欠点かなぁ。
ちょっと話の内容から距離が遠すぎて、傍観者となっていますねぇ。
宮本自身の抱える悩みについても、あっさりと流してしまっていますし、感情移入はし辛いです。

ヒロインの長瀬も、正直なところ好感を抱くのは難しい。
好きな人の前では素直になれないなんて、そんな可愛らしい次元を既に通り越しちゃっています。
宮本目線で語られるため、ひたすら罵倒され続けます。
おかげでギャップ萌えが機能していなくて、腹黒さだけを植え付けられてしまいました。

ラブコメというとキャラクターが重要ですが、総じてあと一歩といったところですね。
そんな中で、一番良かったと思うのは、月島かな。
バカの日本代表と言うほどバカではありませんでしたが、惚れた女のために行動が出来る熱血漢で、格好良かったです。

ストーリーは、中盤でグダっていますが、終盤の盛り上がりは燃えます。
まさに、青春といった熱さがあり、青臭さが実に爽快でした。

それにしても、主要人物の名前が頭に入ってこず、混乱したのは自分だけでしょうか。
みんな名字で呼び合うし、イメージと合っていないから、キャラと名前が一致しませんでした。

物語の焦点が主人公ではなく親友の恋模様となっている青春ラブコメ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  青春ラリアット!!  蝉川タカマル  すみ兵  評価B- 

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はたらく魔王さま! 

はたらく魔王さま! (電撃文庫)はたらく魔王さま! (電撃文庫)
(2011/02/10)
和ヶ原 聡司

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読書期間:2011/2/11~2011/2/13

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
コメディ
バカ
シュール



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★
 … 9




 世界征服まであと一歩だった魔王サタンは、勇者に敗れ、異世界『日本』の東京・笹塚にたどり着く。
 そんな魔王が日本でできること。それはもちろん“世界征服”!!――ではなく、駅前のファーストフード店でアルバイトをしながら生活費を稼ぐ、いわゆるフリーター生活だった!
 その頃、魔王を追って時空を越えた勇者エミリアもまた、テレホンアポインターとして日本経済と戦っていた。そんな二人が東京で再会することになり――!?
 六畳一間のアパートを仮の魔王城に、今日も額に汗して働くフリーター魔王さまが繰り広げる庶民派ファンタジー。第17回電撃小説大賞〈銀賞〉受賞作登場!

【感想】


第17回電撃小説大賞<銀賞>受賞作品。
どうやら巷の評判では、大賞を差し置いて一番好評らしいです。

おー、面白いじゃないか。
新人作家の本を発売日に買うのは、結構バクチなんですが、これは当たりでした。

勇者に追い詰められた魔王が咄嗟に異世界へ逃げ込んだ先は、現代の日本だった。
元の世界へ戻り世界征服の野望を叶えるため、魔力回復に努めようとするが、なかなか手段が見つからない。
しばらく日本に滞在する必要性が出てきた魔王とその部下は、バイトに励むのであった!!

……いやいや、シュールすぎるだろうw

ラノベらしからぬ、現代社会をリアルに追求した結果、ギャップが物凄いことになっちゃってます。
ファンタジー世界から一転して、日本経済に立ち向かう魔王が、面白可笑しいのなんの。
貧乏生活に苦労する魔王と、その部下であるアルシエルのやり取りが楽しすぎます。
ご都合主義で済ませてしまう作品が多い中で、ラスボスが必死に戸籍とか国民健康保険を手に入れようとする姿を見るなんて思いもしませんでしたよw

そんな日常シーンが、終始丁寧に描かれているなーという印象を受けました。
基本的にコミカル路線を貫いており、シリアスな過去やバトルシーンも挿入されますが、笑いの種があちらこちらに仕込んであるので、ずっと楽しい気分で読めます。
弾けるようにして連鎖的に会話が繋がるのもテンポが良く、ページをめくる手が止められません。

最初は、また魔王モノかとげんなりしたんですよねぇ。
自分はあまり読んでいないとはいえ、流行に乗っかろうと同じ題材の作品が立て続けに発売されているので、正直「またか」と思ってしまいました。

しかし、あらすじを読んでみて、どうやら一味違う模様。
気になって店頭で手に取ってみて、カラーページにある一つの台詞を見て購入を決意しました。

 「いいか勇者エミリア、俺は、この世界で正社員になってみせるぜ!」

店内でモロ吹き出しましたw
なんだこれ、魔王の威厳なぞあったもんじゃない。

つーか、この魔王、本当に悪事を行おう気があるのかと疑いたくなるぐらい優しいよ!
真面目で勤勉だし、仕事の立ち回りや手際も優秀で、後輩が憧れるのも納得ですよ。

勇者エミリアも、プライドは残しているものの、こちらはこちらでOLとして馴染み過ぎw
まだ魔王討伐を本気で考えているだけ、魔王よりマシかってレベルですけどね。
おかげで、魔王の変貌ぶりに戸惑い、ツッコミ役として輝いています。

設定的に、収拾がついていないところが散見されますが、これらはきっと今後の伏線なんでしょう。
ストーリーが一本道すぎて仕掛けが弱いので、その辺りも含めて期待したいところです。
題材的にも続けられそうですし、長期シリーズになるのではないかな、というかなって欲しいなー。

某ファーストフード店でバイトする魔王とOLの勇者の生活臭溢れる現代コメディ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  はたらく魔王さま!  和ヶ原聡司  029  評価B 

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ゴールデンタイム1 春にしてブラックアウト 

ゴールデンタイム〈1〉春にしてブラックアウト (電撃文庫)ゴールデンタイム〈1〉春にしてブラックアウト (電撃文庫)
(2010/09/10)
竹宮 ゆゆこ

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読書期間:2011/2/1~2011/2/7

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ
青春
期待感



 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 晴れて大学に合格し上京してきた多田万里。大学デビュー、東京デビュー、ひとり暮らしデビュー、と初めてのことづくしで浮足立つ彼は、入学式当日、不意打ちにあう。
 圧倒的なお嬢様オーラ!完璧な人生のシナリオ!得意なのは一人相撲!
 襲撃者の名は加賀香子。薔薇の花束を万里に叩きつけた彼女は、万里の友達でもある幼馴染みの柳澤を追いかけて、同じ大学に入学してきたという。そんな眩しくも危うい香子が気にかかり、放っておけない万里だが――?
 竹宮ゆゆこ&駒都えーじの強力タッグが贈る青春ラブコメ!

【感想】


竹宮ゆゆこ×駒都えーじが贈る、青春ラブコメ開幕。

期待通り面白かったです。
しかし、土台作りがメインのため、まだまだ序章で、これからといった感じ。

ラノベでは非常に珍しい大学が舞台のお話。
御法度とまではいかなくとも、購読層に中高生が多いラノベでは、あまり見かけません。
そのためにメディアワークス文庫を立ち上げたようなもんですしね。

大学版「とらドラ!」と呼ばれるのも分かりますが、感覚としては「わたしたちの田村くん」の方に近い。
主人公・多田万里の奔放さが、そう思わせるのかもしれません。
恋慕のベクトルが噛み合わず、複雑な人間模様が描かれそうな予感がしますね。

舞台設定もさることながら、ヒロイン役の加賀香子の性格付けは冒険したなぁ。
「とらドラ!」の大河も凶暴な役柄でしたが、暴力系美少女は昔から需要がありましたし、それこそラノベ風味に仕上げていたので多くの人に親しまれました。
しかし、香子の場合、言動がまさに病的なストーカーで、ちょっと怖い。
登場人物の年齢層が上がっていることもあって、ギャグで済まされない雰囲気もまた危うさを助長させます。

表面だけ見たら、どう考えてもお近づきになりたくない人物像です。
少女から女性へと成長する過程にある純真さ、不器用さが物凄く生々しい。
香子自身にも暴走をしている自覚があり、隠れた素顔を垣間見たら嫌いになれません。

物語の掴みとしては、ちょっと弱いかな。
先が読めない面白さはありますけど、引き込まれるまでに時間がかかります。
エンジンが掛り始めると、今度は止め時が見つからないんですけどね。

それにしても、相変わらず癖のある文章を書きますね。
痛々しい自虐を笑いの方向へと持っていく文体が独特です。
会話が型に嵌っていなくて、意図的に崩した言葉が絶妙なリアリティを伴います。
雑なようで密度の濃い文章は、計算してもなかなか書けるものではないかと思います。

絵の担当は、人気イラストレーターのこつえーこと駒都えーじさん。
「イリヤの空、UFOの夏」の頃から好きな絵師さんで、竹宮ゆゆこさんとの相乗効果に期待していました。
なのですが……、うーん、ちょっと相性悪いかもしれませんね。
元々幼女から中高生の絵柄が得意な方なので、大学生という大人びた人物だったことも影響はあると思いますが、それ以上に作風とかけ離れているように見受けられました。
各章の頭に小さな絵はあるだけで、挿絵がなかったのも残念。
作者が女の子の服装描写に力入れているだけに、惜しい。
イラストそのものは綺麗なんだけどなぁ。

生々しい心理描写が売りの大学生青春ラブコメディ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ゴールデンタイム  竹宮ゆゆこ  駒都えーじ  評価B+ 

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嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん10 終わりの終わりは始まり 

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん10 終わりの終わりは始まり (電撃文庫)嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん10 終わりの終わりは始まり (電撃文庫)
(2011/01/06)
入間 人間

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読書期間:2011/1/8

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8

構成
ミステリー



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6




 まーちゃんが、殺人犯に攫われた。
 僕の元から、まーちゃんが消えた。バカップル伝説も終焉を迎えた。
 長瀬透殺人事件に起因する自分自身との無益な争いに精を出していた間に攫われたんだから、まったくもって笑えない。
 しかも犯人は、長瀬だけでなく、僕の知り合いを次々と殺してまわった人間でもある。
 そして、今だ犯人は逃亡中。
 この事件だけは、僕が終わらせないといけない。敵は二つ。殺人犯と、僕自身。内外からの挟み撃ちだ。相手にとって不足はないが、相手からすれば標的は不足だらけだろう。
 だからって、まーちゃんを諦めると、僕はみーくんじゃなくなる。
 出来る内に、出来ることを。『ぼく』が終わる前に。
 よーし。じゃあみんな、行ってきます。
 ちょいとハッピーエンドまで。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


嘘つき少年と壊れた少女のものがたり」終章。
第13回電撃小説大賞の最終選考会で物議を醸したみーまーシリーズ、最終巻です。

みーまーらしい終わり方。

最後の最後まで一貫とした評価がし辛い作品でした。
一言目に面白いとはなかなか言えないし、不満点も多数存在します。
しかし、独特な雰囲気、登場人物たちの魅力、癖のある文章など長所も数多くあります。
どちらに傾くのかは人それぞれでしょうが、自分にとっては購読し続けたいと思わせる力があったのは確かです。

長く続いた作品は、終わりを迎えると途方もない虚無感に襲われるのですが、今作ではありませんでしたね。
終わりを迎えたのは受け止めているのだけれど、どこかでまだ続いている感覚があります。
著者の作品がクロスオーバーしていることもあって、本作の登場人物が他の作品と同じ世界で生きているんだろうなぁと考えると、不思議とあまり寂しさを感じませんでした。
もしかすると、みーまーシリーズのみを追っている人からすると、別の感想を抱くのかもしれませんね。

200ページちょっとの最終巻は物足りない。
しかも、その多くが冗長だったのはいただけませんね。
詳しく書くとネタバレになってしまうので避けますが、もう少し練り込めたのではないかなと思います。
映画公開に合わせる為に1年間待たされた挙句に、この内容の薄さは正直残念と言わざるを得ません。
8,9巻の展開が凄かっただけに、期間を空けられると、ハードルばかりが高くなってしまいました。

犯人や物語の結末は、予想の範囲を超えることなく収まり、驚きが足りなかったですね。
みーまーには、鈍く響き渡るインパクトが欲しいと思ってしまいます。
状況は酷い惨状なんですが、その割にあっさりとしすぎでした。

とはいえ、後半というか部分的に凄く盛り上がり、それだけでも読んだかいはあったと思います。
見せ場が短すぎたのは惜しいけれど、そのかわりにある台詞に重みが凝縮されていました。
精神が崩壊するほど残虐非道な事件があったり、血みどろとなり何度も瀕死に陥ったりと、危険性ばかりがクローズアップされますが、結局のところ本作は愛の物語だったんだなぁとしみじみと感じますね。
客観的にみると歪んだ愛情でも当事者にとっては限りなく純真で、それが皮肉でもあります。

この終幕が、果たしてハッピーエンドかどうかというのは、それこそ受け取り方次第でしょうね。
個人的には、ハッピーでもバッドでもなく、唯一無二のトゥルーエンドだったという印象かな。

ヒロイン勢を始めとして登場人物に良キャラが多かったので、もっと幸せな場面を見たかったなぁという欲は正直あります。
まぁでも、××とまーちゃんのための物語としては、ここが一番いい落とし所だったのでしょう。

左さんのイラストは、初期から随分と変化しましたが、どの時期の絵も好みで見応えがありました。
挿絵が扉絵のみというのも作品のスタイルと合っていて良かったと思います。
あぁでも、ゆずゆずの絵がもっと見たかった……!

一息つく暇もなく、次々と新作を発表する著者には感服します。
とても充実した時間を過ごすことができました。
お疲れ様です。そして次回作も期待しています。

どれだけ不幸でも生きている幸せを実感させてくれるラブストーリー

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん  入間人間    評価B+ 

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クロノ×セクス×コンプレックス③ 

クロノ×セクス×コンプレックス〈3〉 (電撃文庫)クロノ×セクス×コンプレックス〈3〉 (電撃文庫)
(2010/11/10)
壁井 ユカコ

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読書期間:2010/12/21~2010/12/31

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
世界観





 ★★★★★★☆☆☆ … 7






 念願の現代日本への帰還をはたしたミムラは、どこか違和感のある故郷で、ついに三村の体を持つミムラ・S・オールドマンに出会った。そしてわかった事実――それは、故郷は三村の知っているものと大きく変わっており、幼なじみの小町が存在ごと消えているということ。意気消沈して学園に戻ったミムラのために、オリンピアは新たな時間魔法を使う。そのおかげで学園に起こる大パニック。そしてミムラは、時間の改変がもたらす恐ろしい結果と、「小町を忘れるな」という司書の言葉の意味を知ることになる。
 司書の正体とは――!?

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


性転換して魔法学園に通うことになってしまった女の子の時間移動モノ、第3巻。
説明は間違っていないはずなのに、混在していて分かり辛いことこの上ないですね。

ワクワクドキドキの魔法学園生活は何処へやら。

前回語られなかった三村の帰郷と、それに伴う衝撃的な事実が明かされる今巻。
三村がどんどん後ろ向きというか、負の感情を抱え込んでいくので、雰囲気が一向に晴れません。
作者らしいといえばらしいんだけど、1巻のあとがきを読む限りでは、コミカルかつ爽快な話になるのかと思ったので、予想を裏切られました。
まぁ、こういうどんよりしたのも嫌いじゃないですが。

それにしても、三村にとって小町はそこまで特別な存在だったのか。
三村には日常の象徴であったのかもしれないけど、思い入れが急に強くなったようで違和感がありました。
1,2巻で、もう少しプッシュしておいても良かったのではないかなぁ。

物語の大筋が照らし出され、ようやく展開する方向が読めるようになってきました。
張っていた伏線も一部放出していますが、出し惜しみしている感はありますね。
司書の正体については、確定したと素直に受け取ることはできませんし。
全ては、ここからが本番になりそうです。

三村とミムラの入れ替わった当事者たちのやり取りは、シリアス度が高めで楽しみきれませんでした。
元男よりも元女の方が開放的で、三村がタジタジとなっているところは面白かったんですがね。
というか、三村は自分の体に迫られてドキドキしすぎだろう。
もう心までもが乙女になっちゃってるよ。

空回りしている三村とは対照的に、オリンピアが可哀想すぎるほどに健気で切ない。
プライドが高く素直じゃないけれど、賢い判断をする彼女は好感を持てます。
ミムラやオリンピアとの会話でも、三村は察しが悪すぎだしねぇ。
もはや、オリンピアが主人公で、三村がヒロイン役で概ね合っていると思う。

会話量が少なく、地の文の説明が多くて、いつもよりも読むのに手こずりました。
何だか作者の文章と呼吸が合わなかった感じ。
壁井さんの作品では珍しい。

村上ゆいちさんのイラストは、正直微妙と言わざるを得ませんでした。
口絵はまだしも、挿絵が一目で雑というか手抜きというのが分かるもので残念。
イラストレーター交代劇の合間にストックができたからこそ短期間で刊行できたのでしょうが、村上ゆいちさんにはもう少し時間を上げても良かったんじゃないかなぁ。
焦らせずに、じっくり描いてもらえれば、素敵な絵を描いてくれる人なんですから。

良くも悪くも雰囲気がガラリと変貌し、まさしく転換期となった今回。
次の一歩目が、どのように踏み出すのか、いやーな予感がしつつも待ちたいと思います。

真相が明かされるに連れて重く暗い話にシフトしていく時間跳躍物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  クロノ×セクス×コンプレックス  壁井ユカコ  村上ゆいち  評価B 

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電波女と青春男⑦ 

電波女と青春男(7) (電撃文庫)電波女と青春男(7) (電撃文庫)
(2010/12/10)
入間 人間

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読書期間:2010/12/12~2010/12/13

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★★ … 9
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★★
 … 9
ラブコメ
青春
リア充



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 どもども丹羽真です。近況としては、ちょっとした事情で貯めていた青春ポイントを使い切ってしまったので、最近干からびそう……という感じ。
 突然ですが、どうやら今回は、その青春ポイントにまつわるお話じゃなくて、『妄想ポイント』が主軸となるみたいだ。
 宇宙って途方もなく広いわけだし、俺たちが辿り着けないほど遠くにもう一つぐらい地球があって、そこではやっぱり俺やエリオたちがいて、似たような毎日を送っていて……とか妄想することがあるんだけど。今回はそんな話。
 でもどうせ空想奇譚なら。夢がある方がいい。
 そう、例えば。
 もしリュウシさんや前川さんやエリオと、人生を共に歩むことになったら、とか。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


アニメ放送が迫ってきた、高校生達の青春ストーリー第7弾。

真が妄想する、各ヒロインと結ばれた場合の短編集+αという珍しい形式となっています。
ギャルゲーのルート別シナリオを読んでいるかのような感覚ですね。
メインヒロインよりもサブヒロイン好きとしては、嬉しい内容でした。

つまり何が言いたいのかというと、前たんが可愛すぎてヤバイ。
あらすじを読んで、すぐに読まねばと思ったのも、何を隠そう、前川さんエンドがあると知ったからです。
いやー、恋する前川さんの照れっぷりに、ニヤけ顔が止まりません。
相思相愛となって、ようやく気持ちを真に伝えられるようになった前たんの恋に臆病なところが大好きです。
嫉妬深いところなんか、逆にたまらんわー。

リュウシさんENDも、大人っぽく成長した二人の姿が見られて良かった。
しかしながらこの作者は、バカップルしか書けないんだろうかw
周囲からすると、いちゃいちゃしすぎていて、どう見てもウザったいですよ、これw

妄想なのに甘い関係で終わることなく、切なさも想像するところは、このシリーズらしいと感じました。
真を取り巻く環境は、絶妙なバランスで成り立っているということなんだなぁ。

まぁ、真の考え方は、都合がよすぎるなーと思わないでもないんですがね。
女の子たちの好意を感じながらも正面から受け止めもせず、鈍感な振りをしてチヤホヤされたいと言っているように聞こえますから。
それで、青春ポイントがなくなったとか言っているんだから、全国の男子高校生に恨まれても仕方ないですよ。

媒体が本である以上、どうしてもエンディングの表現が一つに固定しがちなので、このように妄想でも可能性を見せてくれるのは凄く嬉しい配慮ですね。
人気作品の中には、ゲームでフォローするパターンもありますが、やっぱり原作者の文章で読みたいですし。

それにしても、似たような表紙になるくらいなら、エリオ以外の女の子も表紙に出して欲しいなと思う自分は、やはり贔屓の目があるんでしょうかね。
リュウシさんや前川さんの表紙も見たいよなぁ。
挿絵がエロ素晴らしいだけにね。

唯一不満だったのは、星中ルートがなかったこと。
真的には、妄想する余地すらないってことなのか?
切ない関係なだけに、ラブラブな二人が見たかったなぁ。

ギャルゲー風マルチエンディング方式の実験作

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  電波女と青春男  入間人間  ブリキ  評価B+ 

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キーリⅣ 長い夜は深淵のほとりで 

キーリ〈4〉長い夜は深淵のほとりで (電撃文庫)キーリ〈4〉長い夜は深淵のほとりで (電撃文庫)
(2004/02)
壁井 ユカコ

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読書期間:2010/12/7~2010/12/11

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
世界観
安定感




 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8





 ハーヴェイが消えてから約一年半。キーリは16歳になっていた。キーリと、ラジオの憑依霊・兵長そして<不死人>ベアトリクスは、東サウスハイロで暮らしている。
 ある日、ベアトリクスの情報筋からキーリの出生の手がかりが見つかったと聞き、ノースハイロ方面に向けて出発する。
 旅の途中、ウエスタベリ教区のはずれの街トゥールースに着いたキーリ達は、この街でまた不思議な出来事に遭遇する。そして……。キーリの出生の手がかりとは!?ハーヴェイとの再会は!?
 第9回電撃ゲーム小説大賞<大賞>受賞作、第4弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


砂風が舞う荒野で、無鉄砲な少女と抜けている男が周囲に迷惑をかける話、第4巻。

前回から約1年半の月日が流れ、キーリの髪もまた長くなるぐらいになりました。
3巻冒頭で15歳となったキーリは、少し大人びた16歳になっていた……のかなぁ?w
もちろん成長している部分もあるんだけど、相変わらず考えが浅かったり、勢いで突き進んだりと、安心して見ていることができない女の子でした。

不死人にとっての一年半は大した時間ではないようで、ハーヴェイも変わっていませんね。
面倒臭がり屋のうえ、言葉に配慮が欠ける性格は死んでも直らないようで。

そんな二人のお陰で、結局全体的にあまり変化がないように感じられました。
相手を傷つけ、そして自分の言葉に凹み、でも素直になれなくて。
2年ぐらい付き合ったカップルの痴話喧嘩に、周りが巻き込まれるような回りくどい話ですね。
あー、こう書くと凄いつまらなさそうに感じるな……w
いや、楽しんで読めましたよ、ええ。

ただまぁ、もう少し劇的な展開があっても良かったのではないかなとは思ってしまいます。
内面に走る傾向がある作者さんですが、地味すぎて盛り上がり損ねたのは惜しかった。
らしいといえばらしいのだけど、もっと純粋に感動的な再会を用意して欲しかったなぁと。

ストーリー的には、本流が見えてきたかなといったところ。
ハーヴェイの死亡フラグがヤバイことになってきていますが、最終的に幸せになってくれることを願います。
どうにも死がまとわりつく作品ですけど、これだけ苦労しているんだからハッピーエンドで終わってくれないと報われないですね。

田上さんのイラストは、随分と変わってしまいましたね。
絵によってばらつきはありますが、瞳に違和感を覚えるようになってきました。
線も綺麗で、塗りも丁寧なのですが、初期の頃の方がやっぱり好みだなぁ。

淡々としすぎていた印象はあったものの、廃れた雰囲気は健在。
続きに期待です。

面倒臭い女の子と面倒臭がり屋の男がくっついたり離れたりする話

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  キーリ  壁井ユカコ  田上俊介  評価B 

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アクセル・ワールド6 ―浄火の神子― 

アクセル・ワールド 6 (電撃文庫 か 16-11)アクセル・ワールド 6 (電撃文庫 か 16-11)
(2010/10)
川原 礫

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読書期間:2010/12/3~2010/12/6

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
燃え




 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 黒雪姫率いる軍団≪ネガ・ネビュラス≫。その躍進を担っていた銀翼が、もげようとしていた。謎の組織≪加速研究会≫とのバトル中、ハルユキは突如復活した≪災禍の鎧≫の浸食を受ける。彼は未だ、その呪縛から逃れられなかった。
 事態を重く見た≪純色の七王≫は、≪加速世界≫の最高意志決定機関である≪七王会議≫を開く。そこでシルバー・クロウに下された決定とは、≪浄化≫と呼ばれる強化外装の完全解除を行うこと。従わなければ、残りの六王から賞金首に指定され、事実上≪加速世界≫から追放となる。
 最も高度な解呪コマンドである≪浄化≫。その鍵を握るアバターは、≪無制限フィールド≫の意外な場所に幽閉されており……。
 ≪加速世界≫では、致命的な危機を抱えたハルユキ。なのだが、≪現実世界≫では飼育委員活動中に知り合った小学四年生の少女と、なぜか心の交流が深まってしまって――。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


加速世界で行われる大規模な次世代MMO風アクションバトル、第6巻。
表紙が無駄にエロいのは、誰の趣味なんだろうか。

読み応えがあって、面白かったですね。

注目すべきなのは、遂に登場した純色の七王の面々でしょう。
これには、テンションが上がりました。
やっぱり、実力者が集う会合というのは、緊張感があっていいものです。
まぁ、キャラを作り過ぎている人物は、中二病っぽく見えましたがw
今回は顔見せ程度だったものの、今後の熾烈な争いを予感させるものでした。

少年漫画の王道的な燃えを感じさせるのが、このシリーズの特徴であり魅力ですね。
奇をてらった手法を用いなくても、物語を読ませるだけの力強さがあります。
3巻のような意表を突いた展開は、個人的には大好きなんですが、評価は割れてしまいますしね。

実は、≪ブレイン・バースト≫には、ハルユキが知らない秘密があったのだ――という展開が、さすがに多すぎ。
おかげで、説明に費やしているページ比率が凄いことになっています。
新たに判明する設定にワクワクもするんだけど、ハルユキに伝えてない理由が弱い気がします。
情報をあれもこれも中途半端に植え付けられている印象があって、何かしっくりときません。
そりゃまぁ、既に停滞するまで解明されたMMOに参加した初心者みたいな立場なので、分からないことだらけというのは納得できるんですがね。

≪ブレイン・バースト≫の仕様上、登場キャラは年齢的に幼いのは仕方ないとして、何故ロリばかりなんだ。
ショタがいてもいいと思うんだけど。

一つの壁を乗り越えたこともあってか、フーコのキャライメージが、良くも悪くも変わったなぁw
神秘的な佇まいから、笑顔で怖いことを言うお姉さんに変わった感じw

タクムの存在意義が、ハカセキャラに落ち着いてしまっているのが泣ける。
登場する女の子はみんなハルユキに目を向けていて、タクムに対してはぞんざいな扱いになりすぎじゃないかなぁ。
主人公を中心に配置するのはいいことなんだけど、男の脇役にも愛を与えてやって欲しい。

MMORPGをプレイしたことがある人なら、想像しやすい反面、違和感が拭いきれない設定もありますね。
自分がプレイヤーなら、絶対に主要レギオンには参加せずに、自由気ままに遊びたいな。

それにしても、あとがきが凄い不安だ。
ちゃんと、ある程度のけじめはつけてもらいたいのですがね。

ゲーム的な面白さが増してきて、続きが気になる構成となっています

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  アクセル・ワールド  川原礫  HIMA  評価B+ 

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