明日へと続く記憶

アニメ、ゲーム、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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とある飛空士への夜想曲 下 

とある飛空士への夜想曲 下 (ガガガ文庫)とある飛空士への夜想曲 下 (ガガガ文庫)
(2011/09/17)
犬村 小六

商品詳細を見る
読書期間:2012/8/21~2012/8/28

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
燃え
感動
ロマンス



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 サイオン島には「魔犬」がいる――。ヴィクトリア海海戦より半年後、帝政天ツ上軍の撃墜王・千々石は、神聖レヴァーム皇国軍の飛空士たちにそう呼ばれ恐れられていた。
 しかし、物量に劣る天ツ上の兵士たちは、レヴァーム軍の果てしない攻撃を前に次々と命を散らしてゆく。
 そして、ついに東進を開始したバルドー機動艦隊。迎え撃つべく、空母「雲鶴」に再び乗り込んだ千々石を待ち構えていたのは、最新鋭科学兵器に守られた海の要塞と、あの男の技だった……!
 魔犬と海猫――ふたりの天才は決着を求め、天空を翔る!「夜想曲」完結!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「とある飛空士」シリーズ第三部、完。

圧倒された。
ただそれに尽きます。

魔犬vs海猫、決着。
フルスロットルで翔け抜けた男達の戦いが、ここで一つ幕を閉じます。

運命というものはあまり信じないタチなのですが、この物語ばかりはそんな言葉がよぎってしまいます。
千々石武夫と吉岡ユキが出逢い、魔犬と海猫が出逢う。
二つの点を結ぶことで生まれる直線は、結末までも決めてしまったのではないでしょうか。

ストーリーは、誰もが予想した内容を辿ったものでした。
それなのに、どうしてこんなにも心を揺さぶられるのでしょう。
戦中ならば有り触れた出来事なのだとしても、陳腐だと一蹴は出来ません。
過酷な状況下で輝く命の尊さと、恐怖を乗り越えた感情の強さは、目が離せず惹きつけられます。
作中の表現にあった通り、まさしく「命を絞り尽くして」生きた者たちの物語だからこそ、胸を打つのでしょうね。

エースのエースたる所以。
千々石武夫の信念と実行に移せる実力に惚れ込みます。
確かに普段は古風なまでに不器用な千々石に対して、もどかしさを覚えてばかりで、波佐見やユキが憤るのも仕方がないなと思いました。
しかし、千々石の図太く育った根幹は、一種の憧れを抱かせる力強さがあります。
英雄を夢見る子供はもちろん、大人ですら勘違いして焦がれてしまうほどに。

そして、もう一人の主人公である海猫。
熾烈な戦いが繰り広げられる最中で、美しさすら感じさせたライバル関係。
彼が空を飛び続ける理由が、たった一言文中に登場しただけで、多大なる破壊力がありました。
魔犬と海猫だったからこそ生まれた空中舞踏だったのだと思います。

苛烈を極める戦争描写に遠慮が一切ありません。
形勢が傾き、消耗していく戦力と疲弊する飛空士たち。
それでも引かない、引くわけにはいかない男たちの執念。
お見事という他ありません。

これは果たして浪漫と呼べる代物だったのでしょうか。
戦争のやるせなさを痛感させられ、結果を見れば哀しみばかりが生まれました。
最後に紡がれた歌だけが救いであったように感じてなりません。
ただ一つ確かなのは、紛れもなく傑作だったということでしょう。

愛する人との約束を胸に抱き、宿敵との決戦に挑む男の物語

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テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への夜想曲  犬村小六  森沢晴行  評価A- 

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人生 

人生 (ガガガ文庫)人生 (ガガガ文庫)
(2012/01/18)
川岸 殴魚

商品詳細を見る
読書期間:2012/7/18~2012/7/20

【評価……B-
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★★★
 … 9
コメディ
ラブコメ




 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 九文学園第二新聞部に所属する赤松勇樹は、入部早々に部長の二階堂彩香から、人生相談コーナーの担当を命じられる。
 生徒たちから寄せられた悩みに答えるのは、理系女子の遠藤梨乃、文系女子の九条ふみ、体育会系の鈴木いくみの三人。
 三者三様の意見はいつもまとまらずに、とりあえず実践してみることになるのだが……。
 友達、恋愛、勉強、性癖、将来のこと。あなたのありふれた悩みにバッチリお答え!超☆感性・人生相談開始!!
 「邪神大沼」シリーズで多くの読者を爆笑の渦に巻き込んだ驚異の新人!川岸欧魚の最新作!!

【感想】


お悩み相談の形式で三人の美少女が、答えを模索する日常系短編集。

新聞部のコーナーとして、人生相談を受け持つことになった主人公・赤松勇樹
その回答者として、三人の美少女達が協力してくれることに。
理系女子の遠藤梨乃、文系女子の九条ふみ、体育会系の鈴木いくみ
彼女たちの会話劇がひたすら展開されます。

まったりと楽しめるコメディでした。
いわゆる駄弁り系の作品で、中身を求めちゃいけない類のものですね。
ストーリーらしきものは、ほぼないといって過言ではありません。

一つ一つのエピソードは短めで、偏った性格をしている彼女たちの珍答を笑いながら眺めるというスタイルです。
基本的に主人公は外側の立ち位置なので、絡みは少なめ。
ラブコメ的に美味しい場面というのは、あまりありません。
かといって、コメディもツボから微妙に外れている感じ。
ゆる~い笑いが、最初から最後まで続いた印象ですね。

記号的な少女達は、分かりやすい半面、独自性に乏しいかなぁ。
可愛くないわけではないんですけど、猛烈に心を揺さぶられるシーンは見当たらず。
いずれも惜しい人材だと思うので、掘り下げ方次第では化ける可能性もあるかもしれません。

この作品の一番の長所は、ななせめるちさんのイラストでしょうか。
エロいというか艶めかしい体つきで、女の子がとにかく可愛い。
口絵以上に挿絵で魅力的なラインを描ける絵師さんですね。
笑ったり、照れたり、恥ずかしがったり……ついつい何度も見直してしまいたくなります。

笑いの起伏が平坦気味ですが、地味に笑える場面もあったので、不思議と読後感は良好です。
ギャグに嵌るか否かで評価が大きく割れる作品ですね。

テンプレ的なコントが繰り返されることで笑いを積み重ねていくコメディ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  人生  川岸欧魚  ななせめるち  評価B- 

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灼熱の小早川さん 

灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)
(2011/09/17)
田中 ロミオ

商品詳細を見る
読書期間:2012/6/8

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
青春
ラブコメ
リアリティ
構成


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★☆☆☆☆☆☆☆
 … 3



 人間関係も勉強もそつなくこなし、万事如才ない高校生となった飯嶋直幸。県下でもトップレベルの進学校に入学した彼は、なに不自由ない学園生活を手にした。伝統と自粛のバランス――そんな口当たりのいい雰囲気に突然水を差したのは、クラス代表となった小早川千尋。代表に立候補し、履行の邪魔なので副代表は不要と言いはなった眼鏡女子だ。常にテンション高め、ガチガチの規律でクラスを混乱に陥れる彼女のその手に、直幸は炎の剣を幻視する。そして彼女の心の闇を知るのだが――。
 田中ロミオ最新作は、ヒロイン観察系ラブコメ!?

【感想】


田中ロミオ氏が作り上げる新感覚ラブコメ。
AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~」と似て非なる作品です。

一つの作品で、これほど評価が自分の中で割れるものはなかったかもしれません。
メチャクチャ面白かったと思うと同時に読了感の酷さにムカムカとしました。

校則を守り、風紀の乱れを徹底的に正そうとするクラス代表・小早川千尋
厳しく律しようとする彼女は、明らかにクラスから浮いた存在だった。
そんな彼女を抑制するために、クラスメイト達から担がれた主人公・飯嶋直幸は、世渡り上手なスキルを活用して、彼女に取り込もうとするのだが――といったストーリー。

「炎の剣」なんて単語が登場するのでSF要素が混入するのかと思いきや、至極真っ当な学園モノでした。
客観的に見て正しいことをしてるのに孤立する千尋を観察しているうちに、クラス内のポジショニングを忘れて手助けに走る直幸の姿が胸を熱くさせてくれます。
たった二人でクラス行事や仕事をこなす彼らを見ていると、もどかしさと悔しさが募る一方でした。
それでも、距離を縮めていく二人が報われ、自分勝手なクラスメイト達には痛快なオチが容易されているのだと信じ、読み進めていったのですが……。

あえて一言で集約するならば……惜しい
明確なテーマを掲げ、着実に積み上げていったアプローチを台無しにするラストが勿体無さすぎる。
急展開といった類のものではなく、放り投げたとしか言いようがありません。

確かに、決着が非常に難しい題材ではあると思うんですよ。
学校のクラス内の空気は、数あるコミュニティの中でも特殊で、日本人特有の同調気質が悪い方へと働いた結果、いじめなどが生まれたりするわけです。
個別で対応すれば、誰だってイケないことだと理解しているのに、集団では理性よりも輪を保つ意識に傾いてしまいます。
これは、兼ねてより日本人の抱える悪癖でしょう。
それを真正面から捉え、生々しくて歯がゆい人間関係を描いたら、この人の右に出る方はそうはいないでしょうね。
良い意味で、嫌悪感を抱かせる内容となっています。

例えば、バットエンドでもキッチリ描ききっているのであれば、相応の評価を得られると思うんですよ。
でも、これは妥協したのか、問題提示をしたかったのか、とにかくエンターテイメント作品としては酷いラストです。
夢落ちばりに理不尽な方向転換に納得できる要素が見当たりません。
著者の実力を持ってすれば、感動的な盛り上がりを見せつけることも出来ただろうに、勿体無い。

「人類は衰退しました」が特異な文体を求められることもあって、通常のロミオ節を久々に読みましたが、やはり良いですね。
深夜に読み始めたら、スルスルと入ってくる文章に虜となり、途中で本を閉じられなくなってしまいました。

クラスメイトを愚者と罵り、過激な発言が多い千尋の揺れる心情を垣間見る方法が新鮮でしたね。
気丈に振る舞いながらも、たまに凹んでしまう彼女の弱さに、完璧な人間などいないのだと改めて認識させられました。
直幸が表面上の付き合いを続ける友人達と比べると、如何に千尋の心がピュアであったかを思い知ります。
時が経つにつれて、どんどん愛おしい存在となっていきました。

面白かったのは確かなんですけどねぇ。
残り数ページでの超展開が、つくづく勿体無いと感じました。

ラストの駆け足が勿体無いと感じる程にスクールカーストがリアルに描かれています

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  灼熱の小早川さん  田中ロミオ  西邑  評価B+ 

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とある飛空士への夜想曲 上 

とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)
(2011/07/20)
犬村 小六

商品詳細を見る
読書期間:2012/5/19~2012/5/22

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ロマンス
燃え
世界観
期待感


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 「美姫を守り単機敵中翔破一万二千キロ」その偉業を成し遂げたレヴァーム皇国軍の飛空士「海猫」の前に立ちはだかった最大のライバルにして、天ツ上海軍の撃墜王・千々石武夫。
独断専行により一騎打ちを仕掛け、海猫に敗れた千々石は、再戦を胸に秘めていくつもの空戦場を渡る。
「出てこい、海猫」激情の赴くままに襲撃を重ねる千々石のその背には、天ツ上の国民的歌手・水森美空の歌があった……。
空前の大ヒットとなった『とある飛空士への追憶』の舞台、中央海戦争の顛末を描く、新たなる恋と空戦の物語。上下巻で登場!

【感想】


「追憶」「恋歌」から繋がる「とある飛空士」シリーズ第三部。
こちらは、上下巻構成の上巻となります。
一応、単独でも読めますが、「追憶」の内容に大きく関わっているので、未読の方は先に読むことをお薦めします。

書き手も読み手も慣れてきた頃合いでしょうかね。
昨今のラノベには見慣れない堅苦しい文章も読み方が分かっていると苦労せず読めます。
最初は抵抗のあった専門用語や単語も気にならなくなりました。
むしろ、やみつきになりつつありますね。

どちらかといえば、スロースターターな傾向があるので、盛り上がるのは下巻からなんでしょう。
舞台の土台作りや説明に徹した内容となっていました。

「追憶」では敵側として描かれた天ツ上のエース・千々石武夫が主人公。
彼の生い立ちから始まり、海猫こと狩野シャルルとの一戦や、レヴァーム皇国と天ツ上の戦争の行方を追った内容となっています。
そして、その裏で人知れず切ないロマンスが繰り広げられています。

「恋歌」ではラノベに寄り添った印象を受けましたが、今作は原点回帰した硬派な作風となっていますね。
粗暴で不器用な男である千々石と、歌手を夢見る快活な少女・吉岡ユキ
幼い頃は、ただがむしゃらに上だけを見続けていれば良かったものが、歳を重ねることで身動きが取れなくなってしまう窮屈さが世知辛い。
時代と社会が許してくれない恋愛は、このシリーズにおける共通のテーマですね。
制限のある中でのロマンスは、もどかしさとなって心の奥底を刺激してきます。

好戦的な性格をしている主人公ということもあってか、空戦描写は増量しています。
大して知識のない自分でも、どこかで聞いたことのあるような戦局ですね。
一つの判断が局面を大きく左右する戦いに自然と手汗が湧きあがってきます。
国内でも随一の腕を持つ飛空士である千々石のエースたる所以を見せつけられました。
まだ前半ですから比較的優位な立場が続くこともあり、余裕はありますけどね。

千々石が海猫を好き過ぎて困る。
……というのは冗談ですが、戦闘中も常に海猫の影を探す千々石は、恋しているようにも見えます。
好意を寄せてくれる女性に背を向けて、何もない空を睨む彼が報われる日は来るのでしょうか。
「追憶」読者としては、海猫にも当然ながら思い入れがあるため、結末が見るのが不安でもあります。

とにかく伏線は仕込み完了。
果たして、これをどこまで仕上げてくれるのか、期待が高まりますね。

空のライバルへの渇望と切ないロマンスが交差する戦中物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への夜想曲  犬村小六  森沢晴行  評価B+ 

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ボンクラーズ、ドントクライ 

ボンクラーズ、ドントクライ (ガガガ文庫)ボンクラーズ、ドントクライ (ガガガ文庫)
(2012/01/18)
大樹 連司

商品詳細を見る
読書期間:2012/2/27~2012/2/29

【評価……B
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
 … 3
青春
恋愛
友情
浪漫
切なさ

 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6


 あの頃の僕らは、恋がどんなものかも知らなかった――。
 ネットもケータイもまだ馴染みがなかった1999年、とある片田舎の高校。主人公の肇とカントクは、夢だけは大きく「日本の特撮映画を変えること」だが、映画の撮影準備と称して憧れの特撮ヒーローになりきる「ごっこ遊び」に興じてばかりのボンクラ映画研究部。そんな「撮らない」映画研究部に、わけありの美少女が飛び込んできて――。
 男子ってやつは、バカで、むき出しで、まっすぐで、最低だけど最高だ!!
 誰しもが通り過ぎる、恥ずかしく、苦く、痛々しい青春模様。

【感想】


1999年、舞台は田舎の空気が香る高校。
男2人と女1人の高校生達が、本気で映画撮影に精を出す青春小説です。

もう題材が好み過ぎる。
携帯電話の普及が学生にまでは広がりきっていない時代。
ろくな活動をしていない映研部員である男2人の前に現れた元映研部所属の美少女。
世代的にど真ん中ということもあって、あらすじを読んだ時点で購入が確定しました。

大した数を観ていない人間でも、映画は永遠の浪漫だと思いますね。
映画撮影に情熱を注ぐ若者達の物語を何本も読んできたので、汗と涙の結晶という言葉が過言でないことぐらいは分かります。
まさに青春の1ページの代表格として、古典から幾度となく使用されてきた題材です。

ただ今作は、そんな熱さよりも、三角関係の恋愛方面に焦点が当てられています。
甘酸っぱい恋模様ではなく、キリキリと胸が痛むような感じ。
思わず学生時代を思い出してしまい、主人公達が堪らなく羨ましい。
世界の全てがたった一つのことに収束してしまっているような錯覚……いや、当の本人にとっては間違いなく真実で、だからこそ身体の内から震え、連動するように心も不安定になるんですよね。

しかし、残念なことに、この作品ではあと一歩が届いていません。
主人公の立ち位置は素晴らしいですし、配役も王道から外れず、見事な関係を形成しています。
結論は悪くないのに、作者が物語から逃げちゃっているのが非常に勿体無い。
ここからが本番だろうというところで、軸が若干ズレちゃっているんですよね。
だからこそ美しいともいえなくもないのですが、もっともっと心を掻き乱させて欲しかった。
250p弱で一冊完結ならば、ここが限界だったのでしょうか。

著作「ほうかごのロケッティア」と比べると、文章に力強さが見られませんね。
サラサラと綴られた言葉は、軽めで読みやすい反面、心に訴えかける力も弱かった。
意識してテイストを変えたのかなぁ。

雰囲気は終始良かった。
中盤で登場人物の根幹に触れるようなエピソードがあれば、ラストへのカタルシスへと繋がったんですけどね。
このままでも面白かったと言えますけど、更にワンランク上に行くチャンスがあった本でした。

映画撮影に青春を注ぐ裏で紡がれる男子高校生の切ない恋物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ボンクラーズ、ドントクライ  大樹連司  白味噌  評価B 

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こうして彼は屋上を燃やすことにした 

こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)
(2011/05/18)
カミツキレイニー

商品詳細を見る
読書期間:2011/12/6~2011/12/8

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
青春
友情
構成



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 彼氏にフラれた私・三浦加奈は、死のうと決意して屋上へと向かう。けれどそこで「カカシ」と名乗る不思議な少女、毒舌の「ブリキ」、ニコニコ顔の「ライオン」と出会う。ライオンは言う。「どうせ死ぬなら、復讐してからにしませんか?」そうして私は「ドロシー」になった。西の悪い魔女を殺すことと引き替えに、願いを叶える『オズの魔法使い』のキャラクターに。広い空の下、屋上にしか居場所のない私たちは、自分に欠けているものを手に入れる。
 第5回小学館ライトノベル大賞・ガガガ大賞受賞作。心に残る、青春ジュブナイル。

【感想】


自殺願望のある少年少女が死ぬために生きる話。
第5回小学館ライトノベル大賞・ガガガ大賞受賞作。

こんなに面白いとは予想していなかった。
ガガガ文庫らしい、ねっとりとした空気が売りなのかと思いきや全然違いましたね。
思春期の少年少女が、自分を恨み他人を憎みながらも、友と呼べる人間と繋がり、思い悩みながら前を見据えようとする前向きな物語でした。
甘酸っぱさではなく、己の未熟さ故の苦味と友情のほんのりとした温かさが絶妙な具合で入り混じる青春小説です。

ストーリーは、彼氏にフラれて絶望する主人公・三浦加奈の一人称で語られます。
屋上から飛び降りようと決意した彼女は、不思議な3人組に出会う。
『オズの魔法使い』をモチーフにしたあだ名で呼び合う彼らもまた、自殺を考えているという。
いつも笑顔を張り付けた勇気のないライオン
脳味噌がない人形だと自称する不思議系少女のカカシ
世界を憎んでいるかのような厳しい言葉を並べる心のないブリキ
そこにドロシーの名を授けられた彼女が輪に入ることで、物語が動き始めます。

ドロドロとした重い話だと思って構えていたので、方向性の違いに驚きました。
当人にとっては真っ暗闇に落ちたかのような深刻な話なんでしょうが、読み手からすると意外に軽く読めます。
お節介焼きなドロシーが、ほぼ無意識的に友達を救おうと行動に出るのが好きだなぁ。
確かに、心の傷はデリケートな問題なんだけど、直球で踏み込まないと進めないことだってありますよね。
簡単に自殺すると言ってしまう人間はあまり好きじゃないですが、彼女が彼氏のことをどれだけ愛していたのかが文面から読み取れるので、嫌いにはなりませんでした。

空を見上げることが出来る屋上という舞台にしたのは上手い。
他にも設定的な繋がりや、不自然だと感じられ部分の説明など、細かいところで配慮がされています。
なるほど、こういった収束の仕方もあるんだなぁと感心させられました。

最後の締め方も、文句なし。
ほんのちょっぴり苦さが残ってますが、凄く爽やかで読了感の良いお話でした。
ドロシーのアクションには、スカッとしましたね。

イラストは、「狼と香辛料」で有名な文倉十さん。
体のバランスが妙だったりするんですが、それを補って余りある人間的な表情が素敵。
ラノベには珍しくモノクロの挿絵の描き込みも手を抜かず、質量を感じられるのがいいですね。
ラストシーンの絵は、構図も含めて素晴らしい一枚だったなと思います。

テーマはベタで、心に響くかどうかは人それぞれでしょうが、出来は良かったと思います。
文章も読みやすくて、さすが大賞に輝くだけのことはあります。
この作品は完結しているので、次は作家買いをしてみたいですね。

居場所を共有し傷を理解し合うことで、前へ歩み出せる若者たちの物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  こうして彼は屋上を燃やすことにした  カミツキレイニー  文倉十  評価B+ 

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ユメオチル、アリス 

ユメオチル、アリス (ガガガ文庫)ユメオチル、アリス (ガガガ文庫)
(2011/03/18)
鮎川 歩

商品詳細を見る
読書期間:2011/10/12~2011/10/17

【評価……B-
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
ダーク





 ★★★★★★★★☆☆☆ … 7






 瞼を閉じて意識を閉ざす。ひたすらに睡眠を貪る。現実逃避は僕の得意技。
 「初めてキミを見たとき、びびっと来たんだ」
 夢の中で出逢った不思議な少女ルルディ。金色の瞳を輝かせながら彼女は言った。
 「ボクと一緒に、夢の世界を究めてみない?」
 ……この夢の世界のさらなる奥に、現実の魔手の届かない究極の理想郷があるのだという。それが「完全明晰夢」の世界、完全に明晰なる夢。その究極の夢見の力を手に入れるため、僕は今日も眠り続ける。現実から逃げて逃げて逃げまくる。所詮、現実なんて単なるゴミクズである。
 「クイックセーブ&ロード」の著者が送る脳内冒険譚!

【感想】


「クイックセーブ&ロード」の鮎川歩氏による新作。
デビュー作が結構面白かったので、手に取ってみました。

虐げられる現実から目を逸らす少年・有栖幹人
彼が夢の中で出逢った謎の少女・ルルディから明晰夢を見るためのコツを授かる。
絶望的な現実から逃亡するため、徐々に夢の世界へと足を踏み出していく。
はたして彼の行く先に待ち構えるものは幸福か不幸か?というストーリー展開です。

相変わらずの鬱々な小説を書く作家さんだなぁ。
前作も苦しかったですけど、今回は最初から状況が厳しい。
しかも、手に入れた能力は夢の中限定であって、むしろ全力で現実逃避をしています。
現実はどうしようもない環境に追い込まれているとはいえ、ラノベでここまで後ろ向きな作品は珍しい。
異能の力を手に入れた段階で積年の恨みを果たすパターンは、よくあるんですけどね。

帯にある「現実なんてゴミクズだ」の一文は実にキャッチーだなと思います。
順風満帆な人生を歩んでいる人なんて一握りでしょうし、誰だって一度や二度、いや、数え切れないくらい不運や運命めいたものを嘆いたりしたことがあるはずです。
夢でもいいから自分の思い通りの世界へ逃げ込みたいという欲求を抱いてしまうのは仕方ないでしょう。
完全に現実を捨てられるかと言われると困るのですが、明晰夢を見る異能は正直羨ましいですね。
逃げているのかもしれませんが、そうでもしないとやりきれないことだってありますよね。
リアルで満たされている人ならともかく、現状に不満がある人なら多少なりとも共感できる内容だったのではないでしょうか。
だからこそ、明るい本が読みたいっていう人にはお薦め出来ませんが。

夢の国の案内人・ルルディは、もっと幻想的なキャラだと思っていたので意表を突かれました。
何故かここだけ妙にラブコメにありがちなラノベキャラで、ある意味ギャップがありましたね。
彼女のお陰で、陰鬱な空気が少し和らいでいました。

雰囲気は出ていますが、前作の窮屈感の方が上かなぁ。
夢と現実の選択というテーマを一貫して描写しているので、ストーリーにブレはありません。
しかし、その副産物として設定的に判明しないまま終わっている部分が多く見られるのが惜しかったですね。

総じて評価すると、悪くはないんですが、続きを読みたいかと問われると微妙なところ。
この話を広げるよりも、新しい舞台を書いて欲しいなーという気持ちの方が強いです。
まぁ、発売したら買うでしょうけどね。

現実で行き詰っている少年に思い通りの夢を見る力が与えられる話

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ユメオチル、アリス  鮎川歩  立花オコジョ  評価B- 

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とある飛空士への恋歌5 

とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)
(2011/01/18)
犬村 小六

商品詳細を見る

読書期間:2011/9/6~2011/9/11

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
感動
ロマンス
切なさ



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 イスラとの休戦交渉の座に就いた空の一族の要求は、風呼びの少女ニナ・ヴィエントの身柄だった。イグナシオの取りなしにより機会を得たカルエルは、出立の日、想いの丈を彼女にぶつける。
 「このまま逃げよう、クレア。ふたりで。空の果てまで――」
 かつての力を取り戻し、愛すべき人を救った風呼びの少女。革命によりすべてを失い、追放劇の果てにかけがえのない生を得た元皇子。ふたりの選ぶ道、未来は……。
 そしてイスラは「空の果て」にたどり着く。すべての謎が解き明かされる!
 超弩級スカイ・オペラ「恋歌」、感動のフィナーレ!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「とある飛空士への恋歌」最終幕。
憎悪を越えた愛情に気付いた少年と少女の終わりと始まりが綴られます。

怒濤の戦場を描いた3,4巻とは異なり、物語は急激にエピローグへと突入。
遂に本当の意味で相思相愛となったカルエルとクレアだが、残酷な現実は二人を引き離す。
決断に迫られた彼と彼女の選択が最大の見せ場になる――そう思っていました。

しかし、実際はそれだけで留まっていません。
イスラが旅立った本当の目的である「空の果て」に辿り着いた先が描かれています。
恋物語が中心になるかと思いきや、空の浪漫が零れんばかりに詰まっていました。
そして、感動のエピローグへと続いていきます。

心に残る物語でした。
けれども、これは賛否両論になるのも致し方がないかなぁと思いますね。
結末自体に異論を唱える人は少ないでしょうが、最後の最後で焦点がズレた感覚があります。
ここまでカルエルとクレアの悲恋で引っ張ってきただけに、スッキリとしないといいますか。
見たかったものが見れなかったという想いは、少なから残ってしまいました。

でも、これは今後の布石だと思うんですよね。
「とある飛空士」シリーズは、今後も続きそうですし、いつか本当の最終回が読める日が来るのではないかと根拠もなく信じています。

それに、丁寧過ぎるぐらいに長く語られるエピローグは、決して見劣りするものでもありません。
派手さはないけれど、まるでテレビドラマの最終回のような時の流れを感じ取ることができる、素晴らしい終わり方でした。

何だか後半はずっとエンディングテーマが流れているような感覚がありました。
作中で振り返ったり、逆に未来を見据えているため、終わりの雰囲気が随所に出ていたのが原因ですね。
そのため、読了後ではなく、読みながら余韻に浸っているような不可思議な気持ちになりました。
確かに描かれた物語こそ「あれっ?」と首を傾げたものの、内容は非常に満足度の高い仕上がりになっていたと思います。

ヘタレだったカルは、よくもまぁここまで成長したもんだなぁ。
そんなカルを支えた続けたアリエルは、本当に魅力的な心優しい女の子でした。
彼女がいたからこそ、このロマンスは成り立ったんだと思います。

夕焼けが印象的な表紙を初めて見た時に違和感を覚えましたが、なるほど、そういうことですか。
該当するシーンのことを考えると、心が沁みますね。

おそらく珍しいタイプでしょうが、「追憶」よりも「恋歌」の方が楽しめました。
この本に出会えたことを感謝します。

恋歌の旋律が空へと舞い、切なさと穏やかさが感じ取れるフィナーレ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への恋歌  犬村小六  森沢晴行  評価A- 

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人類は衰退しました6 

人類は衰退しました 6 (ガガガ文庫)人類は衰退しました 6 (ガガガ文庫)
(2011/02/18)
田中 ロミオ

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読書期間:2011/7/30~2011/8/1

【評価……B-
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ほのぼの
ダーク
パロディ



 ★★★★☆☆☆☆☆ … 5
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は“妖精さん”のものだったりします。そんな妖精さんと人間との間を取り持つのが、国際公務員の“調停官”であるわたしのお仕事。
 季節は冬。祖父の趣味サークル「大砲倶楽部」の一員として南に向かったわたしは、「鳥人間コンテスト」の安全対策係として、岬に集まった各チームの機体をチェックすることに。思うに……みなさん、死にそうです。
 クスノキの里を同類誌のイベント会場にしてしまった友人Yと、白い部屋に密室監禁!
 さて、どちらが危ない!?――記録、それは儚い。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


約1年振りとなる人退シリーズ、第6弾。
帯にてアニメ化が発表されました。

薄っ!
久々だというのに200ページしかありません。
背表紙の一番上にあるレーベル名が見切れて「AGAG」になっちゃってますよ。
量的には満足には程遠く、無理矢理刊行した感がありありと出ていますね。

内容も同じことがいえます。
一定水準の面白さはあるんですが、表面的な話ばかりで作りが雑な印象を受けました。
パロディがアクセントになって面白可笑しい展開が起こるのが売りの一つですけど、今回のは少々安直かな。

確かに、アイデア自体は悪くありません。
「鳥人間コンテスト」と「同人誌」に関するエピソードは、楽しく読めました。
シュールかつブラックなネタが満載で、底意地の悪い作者だなぁと思いつつも、ニヤリとさせられます。

しかしこれは「人退」でやる必要性があったのかと疑問符が浮かびました。
人類が衰退していく退廃的な世界で、不思議な生き物である妖精さんの癒される挙動と、その結果生まれる恐ろしいギャップが良かっただけに、作品の売りを感じることができませんでした。
人間サイドの黒さや醜さが目立ち、それはそれで悪くないのですが、ほのぼのとした妖精さんの出番が少なくて残念です。
妖精さんを便利ツールとして利用しているのは作者も「わたし」も同じで引っかかりを覚えますね。

体全体を脱力させたくなるようなゆるさと、気の抜けた炭酸飲料水のようなゆるさは別物です。
今回は、どちからというと後者のような物でした。

絵師の交代ニュースが入ってきたばかりですが、今巻に挿絵がほぼなかったことに関係あるのかな。
口絵もはっきりいって手抜きで、既巻とは仕上がりがまるで違います。

某鍵ゲーのシナリオ担当していたことで、ラノベの執筆活動は停滞気味だったようですね。
今年はこちら方面にも力を入れるそうなので、今後の踏ん張りに期待します。

妖精さん成分少なめのブラックユーモアたっぷりなパロディコメディ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  人類は衰退しました  田中ロミオ  山崎透  評価B- 

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キミとは致命的なズレがある 

キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫)キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫)
(2011/05/18)
赤月 カケヤ

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読書期間:2011/7/3~2011/7/5

【評価……B-
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
ミステリー
サスペンス




 ★★★★☆☆☆☆☆ … 5
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6





 海里克也は保健室で目を覚ました。なぜここにいるのか?保険医の鑑司によると、階段で転んで気を失っていたらしい。……覚えていない。十歳のとき、大きな事故で両親と記憶を失ってしまった克也には、ここ数年の記憶しかない。また記憶が消えてしまったのだろうか。
 「見えないモノが見えてないか?」
 そんな司の問い掛けにドキリとする。――自販機の陰から伸びる少女の姿態――突如現れ克也を責める不幸の手紙――少女の死の映像と命を狩る指の感触。これは幻覚?それとも――?
 第5回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作!

【感想】


第5回小学館ライトノベル大賞<優秀賞>受賞作品。
記憶を失った過去がある主人公・海里克也が、現実と幻覚の境界線を曖昧したまま、過去の事件を追うサスペンスストーリー。
人間の心理に迫るサイコホラー作品です。

まず何より目を引くのが、インパクト絶大な表紙でしょうね
拒否反応を示す人も多そうですが、個人的には読んでみたくなる怖さがあります。
しかし、内容は期待していたほど濃いものではありませんでした。

つまらなかったわけではありませんが、素直に面白かったと言えないんですよね。
読書中はそれなりの楽しめたんですけど、読了後に残ったものがないといいますか……。
続巻が出たとしても、買うかどうか微妙なところです。

もうちょっと狂気成分が欲しかったかなぁ。
物足りないと感じるのは、この種のラノベに毒され過ぎでしょうか。
まぁでも、こういう意図的に狂った作品を出せるのが、ガガガ文庫の良いところですね。
他レーベルで、この作品に賞を与えるのは正直難しいでしょうし。

無茶のある設定を雰囲気で誤魔化している面がありますね。
文章が綺麗なので、ぼんやりとした描写が挿入されると妙な違和感を抱きます。
話の組み立て方は悪くなく、たまに強引さあっても、物語の牽引力は高めなところは良点でしょう。

ミステリーに関しては、犯人やオチが分かりやすいので、あくまでサブ要素かな。
伏線の張り方などからみると、要所は押さえているものの、あまり隠す気もないように見えます。

ロジックを重要視したためか、キャラは少々雑です。
使い捨てのような脇役がいるのはまだいいとして、メインキャラでも描写が甘かったりします。
詳しく書くとネタバレに繋がりそうなのでボカしますが、ヒロイン役の一人の存在が希薄なんですよね。
それが狙いだとは理解出来ていますし、物語上のキーとなる立ち回りも兼ねているため、仕方がないのかもしれませんが……。

個人的に最も評価したいなと思ったところは、犯人の倫理観。
病んだ思想が如実に表れていて、良い意味で気持ち悪さがありました。
一見すると他多数と変わらないように見える人間が持つズレこそが、最も怖いところじゃないでしょうか。

イラスト担当は、晩杯あきらさん。
アナログっぽい独特な塗りが特徴のようで、カラーイラストは見応えありました。
挿絵はなく、各章の扉絵のみなのですが、こちらは走り描きのようなもので、良く言えば味のあるタッチ、悪く言えばただのラフです。
キャラが安定しておらず、同じキャラでも別人のように見えたりしたのは気になりました。

失くした記憶と過去に怯えながらも前を向いて大切なものを取り戻そうとする物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  キミとは致命的なズレがある  赤月カケヤ  晩杯あきら  評価B- 

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とある飛空士への恋歌4 

とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)
(2010/08/18)
犬村 小六

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読書期間:2011/1/9~2011/1/13
月間マイベスト作品

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
燃え
感動
緊張感
家族愛
ロマンス

 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8


 「大好きだから……さよなら」
 級友の死に苛まれていたカルエルとクレアは、思い出の湖畔で思いがけず再会する。お互いの気持ちを確かめるため、正体を明かしたカルエルだったが、クレアには別れを告げられてしまう――。
 一方「空の一族」との戦いで多くの仲間を失い、疲弊した飛空科生徒たちは、悩みと苦しみを抱えたまま、再び決戦の空へ向かうこととなる。仲間の思いを受け継ぎ、潰滅の危機に瀕している大好きなイスラを、大切なひとを守るために……。
 超弩級スカイ・オペラ「飛空士」シリーズ、驚天動地のクライマックスに突入!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


空を翔ける者たちの愛と憎しみのロマンス、第4巻。

震えた。
周囲の雑音が気にならないくらい没頭して読み耽りました。

通常、シリーズ物が途中で急激に評価を上げることは少ないはずなのですが、この作品は3巻4巻で明らかに一つ上の水準に到達しましたね。

戦争という現実の前に、学生たちが甘さを捨てざるを得ない状況になっていくのが見ていて辛い。
しかし、そんな緊迫した中で、一皮むける男たちが何と熱いことか。
「男子三日会わざれば刮目せよ」とは、まさにこのこと。
死への恐怖、逃げ出したい気持ちを抱えながらも、やるべきことを見失わない彼らが格好良すぎる。
ミツオやファウスト、ウォルフガングの勇姿にも涙しましたが、今回も同等の破壊力が胸に来ました。

空戦そのものは、戦艦や戦争に詳しくないため、細かい指摘を上げることはできません。
知識のないものからすると、説明文が的確で分かりやすく、盛り上げどころも押さえていて良かったです。
ラノベらしくない濃厚な文章で、ギリギリの戦いに何度も鳥肌が立ちました。
映像ではなく文章だからこその面白味があって、お見事だったと思います。

あらすじ通り、遂に明かされた秘密。
物語は加速し、息をつく暇もありません。
前巻同様、展開は予想の範囲内なのに、どうしてこう心躍らされるんだろうか。
伏線が見え過ぎていることに関しては気にならないわけではないんですが、これが王道の良さでしょうかね。

過去との決別があっさりと取るべきか、グダグダで情けないと見るべきか、読み手次第かな。
個人的には、周りが立派過ぎるだけで、カルエルのように苦悩するのは当然だとも思うので、適度な塩梅だと思いました。

今回キーマンとなったのは、これまで背景が謎だったイグナシオ
情報がなさすぎたので、急に湧き出てきた印象が拭えませんでしたが、良い役柄でした。
彼が居てくれて、本当に良かった。

イラストのレベルも総じて高く、見応え十分です。
登場人物が多いので、口絵でキャラ紹介してくれていると、もっと読みやすかったかな。
まともに載っているのが2巻しかいないので。

素晴らしい一冊でした。
次回の最終巻、感動のラストを期待します。

臨場感のある空戦描写が圧巻のクライマックスに打ち震えます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への恋歌  犬村小六  森沢晴行  評価A- 

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ラ・のべつまくなし2 

ラ・のべつまくなし2 (ガガガ文庫)ラ・のべつまくなし2 (ガガガ文庫)
(2010/02/18)
壱月 龍一

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読書期間:2010/8/6~2010/8/8

【評価……B-
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ





 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6






 「金輪際アンタとは仕事しない!」
 純文学を志すも『かみたまっ』でラノベ作家としてデビューし、ヒットを飛ばすことになった青年・矢文学(通称・ブンガク)。 スケジュールの合間を縫って会うことになった『かみたまっ』のイラストレーター双星は、双子の高校生・星峰海、陸の合同ペンネームだった!
 陸に比べプロ意識の高い海は、ブンガクが『かみたまっ』のファンの女子高生とつきあってるという話を聞き、突然の絶縁宣言!! 陸の謝罪を受けたブンガクだが、明日葉にはふたりの関係を怪しまれてしまい――。
 カタブツとフジョシのラブ第2幕!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


純文学作家志望だったはずのラノベ作家と、そのファンである腐女子との純愛系ラブコメ。

今回は、主人公・矢文学ことブンガクが『かみたまっ』のイラストレーターである双星海&陸の双子と初対面を行った打ち合わせの場で、考え方の違いから思わぬ方向へと問題が飛び火する展開から始まります。

1巻に引き続き、なかなか良かったです。
何となく読もうという気力が湧き辛いのですが、読み始めると不思議と面白い。
自分の中で、失礼な話ではありますけど、それが意外だと感じる部分があるんですよね。

おそらくこれは流行りのラブコメにも関わらず、登場人物が堅物だからなんだと思います。
意図的なのかどうかは不明ですけど、ギャップが生まれていて、他にはない楽しみを得ることができるのが大きな理由なのではないでしょうか。

エロ方面に突っ走るラブコメが多い中、昭和を彷彿とさせるような古臭い考え方をする主人公のおかげで、純愛度が物凄く濃厚です。
初々しすぎるブンガクと明日葉の関係に、ニヤニヤさせられる人は多いでしょう。
全身がむず痒くなりますよ、これ。

個人的には、主役の二人よりも脇役の圭介×柚のカップルの凸凹さに悶えました。
前回の感想でも書きましたけど、圭介のキャラはホントいいですね。
ブンガクを上手くフォローしていて、まさに親友といった感じ。
明日葉じゃなくても、ブンガクと圭介のコンビには萌えて燃えます。

物語のメインとなる双子のイラストレーターの話は、ちょっとゴチャゴチャしすぎたかな?
綺麗にまとまっているとは思いますけど、もっと題材を絞って描いてシンプルに見せるべきだったかも。
どのエピソードも悪くないんですが、主人公の関わり合いが薄かったのが不満でした。

逆に良かったのは、あくまで主人公が作家であることを念頭に入れた解決策であったこと。
この手の話は、2巻になると作家である意味がなくなるものもありますからね。

それにしても、裕龍ながれさんの絵は濃いですねー。
ブンガクの20歳もですが、明日葉がどうみても17歳に見えんw

次が最終巻……ということは、二次元アレルギー関連の話かな。
楽しみです。

堅物なラノベ作家とBL大好き腐女子の初々しいエピソードが見どころ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ラ・のべつまくなし  壱月龍一  裕龍ながれ  評価B- 

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とある飛空士への恋歌3 

とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)
(2009/12/18)
犬村 小六

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読書期間:2010/7/7/~2010/7/12

【評価……A
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
燃え
感動
緊張感
ギャグ


 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
 … 2



 8月の強烈な日射しのもと、過酷な陸戦訓練を続けるカルエルたち。戦闘への不安と焦燥が募る中、それは若き飛空士たちの間に恋愛をも育んでゆく。
 そして、イスラはついに噴き上がる海「聖泉」へ到達する。これより先は「空の一族」が支配するといわれる未知の空域。カルエルたちは、イスラ後方への索敵飛行を余儀なくされるが――。
 「いつまでもみんなと一緒に空を飛びたい」
 ただそれだけを願った少年少女たちが飛ぶ空は、美しいだけでなく残酷で……。王道スカイ・オペラ「飛空士」シリーズ、驚愕と慟哭の最新刊!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


空に浪漫を抱く少年少女の物語、第3弾。

ボロ泣きした。

本を読んで、ここまで涙を流したのはいつ以来だろう。
涙ぐみことはあっても、とめどめなく泣いたことは数える程しかありません。
涙腺が崩壊して、泣き疲れました。

もうね、読了直後はまともに感想文なんて書けないくらい感情に整理が付かなかった。
今、思い返してみても哀しみで胸が締め付けられそうになります。

それぐらい、ツボに入りまくった話でした。
凄すぎて、あまり読みかえしたいとは思えないですね、これは。

こういっては何ですが、ストーリーはフラグや伏線があからさまで、次の展開は常に読めます。
しかし、不安に煽られながら読ませる技術といいますか、文章力が凄い。
脇役一人を取ってみても、切実なる想いが文字通り痛いほど伝わってきます。
名もなき正規兵や指揮官のセリフに幾度も全身を痺れさせられました。

だからこそ、惜しい。
明らかに浮いている設定や人物がいるのが散見されしまうのが、あまりにも勿体無い。
前半の平和な場面を表現するのはいいんだけど、アリーメンはやりすぎた。
別にギャグが面白くないとはいいませんが、この作品には相応しくなかった。
多分、普通のコメディ作品なら素直に楽しめていたんだろうなと思います。

寮長の存在も異質すぎて、受け付けません。
もう少し、どうにかならなかったのだろうか。
下手すると、それが引っかかって、せっかくの感動が全て消え去りかねませんでしたよ。

そんなgdgd気味の前半を乗り越えた先の後半の第3章、第4章はともに素晴らしかったです。
特に第3章は、完璧でした。
基本的にそれ以上がないという意味になってしまうので、本の感想では出来るだけ「完璧」という単語を使わないようにしていましたが、こればっかりは言わざるを得ません。

「追憶」では、空戦に浪漫を感じられずに熱くなりきれなかったと書きました。
今回これだけ感動させられたのは、中心にあるのが飛空機ではなく人だったからなんだと思います。
のめり込む様に燃えました。

イラストも、挿入するタイミング含めて文句なしでした。
まさか、キャラが登場しない挿絵に打ち震えることになるとは思いもしませんでしたよ。

読了後の脱力感は、言葉で表すのが難しい。
とにかく、心が消耗させられる回でした。
ホント、疲れましたよ……。
こういう話、弱いわ。

平穏な日常の終わりを告げる急転直下な転換期

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への恋歌  犬村小六  森沢晴行  評価A 

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ほうかごのロケッティア 

ほうかごのロケッティア (ガガガ文庫)ほうかごのロケッティア (ガガガ文庫)
(2009/12/18)
大樹 連司

商品詳細を見る
読書期間:2010/5/21~2010/5/23

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
青春
浪漫




 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8





 何もかもが、順調なはずだったオレの学園生活。あの電波女が来るまでは――。
 「私の“友達”を宇宙に返して!」電波女に弱みを握られたオレに与えられたのは「携帯電話を人工衛星にする」というバカげたプロジェクト。高校生が自作ロケット?ほかに行き場のない連中の現実逃避だろ!?
 オレの心配をよそに、ひと癖もふた癖もある連中が集まり、ロケット制作が始まった。カウントダウンの先にあるのは、バカげたドリーマーの自爆好意か、教室という箱庭からの脱出か――。
 青春と妄想をのせたロケットが今、宇宙へ「リフトオフ」する!

【感想】


打ち上げロケットに情熱を燃やす高校生達の青春物語。

読了後の解放感が、まさに宙へ飛び立つロケットのように爽快です。
中盤までは、学校生活という特異なコミュニティにおける陰の部分を如実に描き出した内容となっていて、期待していたものとは大きく異なりました。
正直なところ、求めていたものと違ったので、騙されたかなーと思いもしましたが、後半は一度もスロットを緩めることなく、加速し続けるストーリーと、登場人物たちの躍動に心が震わされましたね。

電波女・久遠かぐやの「携帯電話を宇宙へ送らなければならない」といった旨の発言から始まった突拍子もない計画。
高校生がロケットを打ち上げるという、ただそれだけで読んでみたくなる何かがあります。

案の定、ロケット作りの工程は、ワクワクしぱなっし。
成功と失敗と挫折を繰り返し、徐々にロケットを大きくしていく過程に興奮しました。
目標は確かに存在はするのだけれど、途中から目的と手段が入れ替わってしまっていて、それに気付きながらも、もはやブレーキの効かない主人公たちが熱いのなんの。

当然ながら、本当のロケット作りは、こんなトントン拍子に進まないでしょう。
しかし、素人ポジションである主人公にも分かりやすく丁寧に説明する流れは、非常に出来が良く、実際に作ることができるのかもと思わせるだけの説得力がありました。
人によっては、キャラに喋らせているだけで面白味のない教科書的な文章になってしまったり、作者の押し付けがましい思想が鼻についたりしますが、この作者さんには一切ないですね。
限られた紙幅で、キャラを立たせ、的確な文章構成を導き出す手腕は、かなりのものだと思いました。

クラス内のスクールカーストを裏から制御して得意気になっている主人公・褐葉貴人は、ぶっちゃけ嫌いです。
物事の捉え方がゲームに近く、人の感情や立場を都合よく操作しようとする考え方が気に食わない。
青春系ラノベということで、改善されることは決定事項だと思って読んでいましたが、結構辛かったです。
覚醒してからは、好青年になったものの、しこりは多少残りましたね。

対比させる狙いは分かりますが、スクールカーストは要らなかったなと思います。
これがなければ、もっと純粋に称賛できましたし、オススメもしやすかったんですけどね。

終盤、クラスメイト関係で無理にイイ話に持っていこうとしている点が気になったものの、怒涛の展開、というか回転にテンション急上昇。
お祭りの際の高揚感に近いものがあり、足が地につかないドキドキ感がありました。
恋愛要素もあるけれど、それ以上に浪漫が詰め込まれています。
こんな青春、羨ましいなぁ。

素晴らしい作品であり、同時に納得のいかない点もある作品。
それでも、表紙の青空のように、清々しい気分にはさせてくれる良作には違いありません。

目標を見つけた高校生たちが、全力で突っ走る青春ロケット物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ほうかごのロケティア  大樹連司  しずまよしのり  評価B+ 

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クイックセーブ&ロード3 

クイックセーブ&ロード 3 (ガガガ文庫)クイックセーブ&ロード 3 (ガガガ文庫)
(2010/03/18)
鮎川 歩

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読書期間:2010/5/14~2010/5/15

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★☆☆☆☆☆☆
 … 4
ミステリー





 ★★★★★★☆☆☆ … 7






 病院で目覚めた僕は、驚きの真実を告げられる。中学受験の日から、中学三年の夏休み前の事故までの記憶を失っていたのだ。周囲の反応に戸惑うばかりの日々。僕は過去の自分を探る過程で、奇妙な噂を聞く。それは「クイックセーブ&ロード」と呼ばれる、まるでゲームのような都合のいい魔法の話。学校で街で、魔法を信じた子どもたちが次々と命を落とす。そして噂は僕までも渦中に巻き込んで広がっていく……。生と死の狭間にいる少年の推理ロマン、いよいよ完結!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


死を引き金として時間を巻き戻す能力を持つ主人公が記憶喪失となる、シリーズ完結編。

うん、面白かったです。
細かいことを言い出したらキリはないですが、それなりに綺麗な終わり方だったと思います。

2巻で広げた問題提起に対して、あまりにも小さな一歩で幕を閉じているため、物足りなさはあります。
その先が見たかったのも確かですが、作者が訴えたかったテーマは、別のところにありました。
命の冒涜ともいうべき手段でリセットする主人公・榊潔人の成長が感じられて、良かったです。

今回は、潔人が病院で目覚めるところから始まります。
しかも、能力を得た以降の記憶を失くした状態で。
記憶喪失+リセット能力というと、ますます「サクラダリセット」を彷彿とさせますが、ギミックは似て非なるものですね。

記憶喪失直前の自分の不可解な行動を追う推理モノというのは、なかなか新鮮で面白い。
クイックセーブ&ロードの能力を覚えていないため、なおのこと話がややこしくなっており、ストーリーの展開のさせ方が読めません。
読者の視点からすると、犯人の目星は付くのですが、そこに至るまでの経緯を主人公たちがどのような形で確証を得るのかが分からず、一風変わった推理小説となっています。

恋愛絡みは、ほんのりと匂わせる程度。
相変わらずミステリー要素が強く、あまり突っ込んで描かれることはありませんでした。
これが良かったのか悪かったのか、微妙すぎて何とも言えませんね。

もうちょっと続いても良かったと思うのですが、売り上げはあまり伸びなかったのかな。
打ち切りというほど酷い締め方でなかったので、概ね満足しちゃってますが。

次回作にも期待してみたい作家さんですね。

永遠といって差し支えのない時間を持つ人間が人生の歩き方を決める話

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  クイックセーブ&ロード  鮎川歩  染谷  評価B 

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