明日へと続く記憶

アニメ、ゲーム、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA 

サクラダリセット7  BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)
(2012/03/31)
河野 裕

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読書期間:2012/4/27~2012/4/30

【評価……A
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★★★
 … 9
恋愛
透明感
切なさ
構成
完成度

 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9


 「私が将来の夢を失くしたのは、貴方に出会ったからよ」
 能力を失くした相麻菫。
 「私は貴方を、覚えていません」
 能力を失くした春埼美空。
 改変された咲良田で、ケイはひとり、ふたつの記憶――街に能力が存在する本物の記憶と、能力が消滅した偽物の記憶――に直面していた。
 自らの過去に区切りをつけるため、ケイは初めて咲良田を出て――。
 複雑でシンプルな、大人のような少年がたったひとつを祈り続ける物語。堂々完結!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


物理法則に従わない能力を所持する者が住む街、咲良田。
人が能力を使用することの意義を問うシリーズ最終巻です。

とても素晴らしい物語でした。
直感で読み始めた作品でしたが、出会えたことに感謝したいです。

全てを見通した上での構成が、尋常ではない完成度にまで引き上げています。
作者自身公言している通り、これ以上の過不足はないでしょうね。
作品内の雰囲気だけに留まらず、シリーズ構成までもが美しく整っているなんて、相当緻密な設計をしていない限り不可能なことです。
予定通りの巻数で終われるだけの売れ行きがあって、本当に良かったと心から思いますね。

1~6巻までに登場してきた人物、能力のいずれもが関わっていることに衝撃を覚えます。
7巻を最初に書きあげて、その後に辻褄を合せるよう物語を組み立てたと言われても疑わないですよ。
適材適所が見事過ぎて、ある意味でご都合主義に見えてしまうほどです。

しかし、それは使う立場がいてこそ初めて輝くもの。
未来視能力を持った相麻ではなく、人よりも少し記憶力の良いケイが導いたことに驚かされます。

理想論を語る主人公なら数え切れないくらい存在します。
それらの多くは、言葉だけが立派で、蛮勇といってもいいものです。
または己の力を過信し、結果論で語る暴力的な思考によります。

しかし、ケイは違います。
彼は自分がどれだけ聡くて、どれだけのことが可能なのか正しく判断できる人間です。
春埼や相麻が絶対的に信じるのは、彼ほど透き通った心を持った人間がいるとは思えないからでしょう。

誰よりも傲慢なのに、目指すべき境地が夢のように心地良い。
彼の夢に乗っかり、理想に浸っていたい。
中野智樹、村瀬陽香、岡絵里、坂上央介、宇川沙々音。
ケイの周りにいる人間は、一括りには出来ない想いを抱いているけれど、みんな彼に惹かれている。
友情であり、嫉妬であり、憧れでもあるそれを人はカリスマと呼ぶのでしょう。

当たり前のことを当たり前にできるのが如何に難しいことなのか。
完璧主義者でありながら切り捨てる勇気も併せ持つケイの凄みが、坂上の台詞に集約されていました。

無垢というより無味な人格だなという第一印象が嘘なほどに春埼は変わりましたね。
作中でも関わり合いの薄い立場から見ると、春埼は意志のない人間に見えるんでしょう。
でも、ここまで物語を追ってきた読者からすると、ぬりえの前と後くらい別物に感じられます。

ケイを通じることで、相麻菫が如何に非情な立場にあったのかを痛感します。
前回で散々泣いた相麻が、なおも苦境に立たされ続けないといけないことに嘆くことしかできません。
それでも、少しでもケイや春埼が彼女の肩代わりができれば、救いとなるのかなと勝手ながらに思いました。

管理局との対立は、そのままケイと浦地による手札の切り合いと化していましたね。
お互いの手の内を読み合う様は、形勢が頻繁に入れ替わり、読み応え抜群でした。
頭脳的な能力バトルは大好きなので、知略戦には心躍りましたね。
雰囲気を大きく壊すようなこともなく、あくまで物語を構成する一つの要素に留めてくれていたのも良かったです。

散りばめられた伏線は、概ね回収されています。
ケイの名前がカタカナ表記だった理由など明かされないと思っていたので、あのくだりは嬉しかった。

潔癖すぎるぐらい綺麗なお話でした。
余分な成分を一切取り除いた後に残された二つの側面は、どちらも正しく、恐ろしいほどに純真で。
人々の感情を大切な宝物のように扱う彼や彼女たちは、とても素敵な人でした。

口絵のイラストは、最後まで高クオリティ。
椎名優さんの優しくも洗練されたタッチによるイラストが、素晴らしい相乗効果を生み出していました。
また次のシリーズもこのコンビによる作品を読んでみたいですね。

矛盾の中に潜む真実を求めて、少年が我儘に己の世界を求める物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  サクラダリセット  河野裕  椎名優  評価A 

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サクラダリセット6 BOY, GIRL and ―― 

サクラダリセット6  BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫)サクラダリセット6 BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫)
(2011/11/30)
河野 裕

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読書期間:2012/1/24~2012/1/28
月間マイベスト作品

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★★★
 … 9
恋愛
透明感
切なさ
構成


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 「これで、最後だから。たぶん、あと数日で、すべて終わる」
 復活後、姿を見せなかった相麻菫。しばらくぶりの彼女からケイへの連絡は、奇妙なものだった。
 一つ目は、春埼と一緒に交差点でゴミ拾いをしろというもの。
 一方、管理局対策室室長・浦地は“咲良田のリセット”――全能力の消滅を目論んでいた。彼は未来視能力を持つ二代目魔女・相麻に接触し……。
 初代魔女が名前を失う前、咲良田の「始まりの一年」が明らかに!最終章突入!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


壮大な舞台で綴られるのは、少年と少女の恋物語。
能力の是非を問うクライマックス突入のシリーズ第6巻です。

何という切なく、そして綺麗なお話。
この作者が紡ぎ出すキャラ、言葉使い、雰囲気。
いずれも美しいという言葉がピタリと似合います。
透き通った文章が、静かに心の奥深いところへと沈む込んでいき、離しません。
期待通り面白かったです。

遂に明かされる咲良田の始まりと、相麻菫の意図。
秘められた過去に気が付いた時、一言では言い表せられない想いが胸に込み上げてきます。
数々の伏線がたった一つのことへと収束しく様は圧巻で、様々な関門を貫いて届く想いを美しいと言わずとして何と表現すればいいのか分かりません。

相麻菫の悲痛なる決意を思うと、吐息が重くなります。
傍から見れば、たったそれだけのことであっても、彼女は文字通り身を投げてまで守りたかったのか。
彼女が抱える愛情の深さに涙腺が刺激されっぱなしです。
覚悟を決めた人間の格好良さに男も女も関係ありませんね。

ケイ、菫、そしてもう一人の主役となる浦地正宗。
彼らが幸せを求め、それぞれの世界を望み、我を通す行為に嫌悪感を抱かないのが凄い。
この作品の素晴らしいところは、皆が純粋に心を追い求めるところにあると思いますね。

脇を固める役柄も欠かせません。
全てはこのために配置していたのかと言わんばかりに、集うピース。
余すところなく全員が物語に関わり合い、ケイに影響を与えていく構成には目を瞠ります。
最初から完成形がある程度出来ていないと作れませんよ、これは。

小説に華を添える椎名優さんのイラストは、相変わらずの画力で文句のつけようがありません。
春埼の作り笑顔から、菫の慟哭まで、いずれも脳内に直接焼きついたかのように覚えています。
冒頭で登場人物紹介を載せてくれたことも有難い配慮でした。

能力は、人を幸せにするか否か。
最終巻を読むのが今から楽しみでなりません。

少女の苦しみと慈しみが詰まった未来が、優し過ぎて切なくなります

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  サクラダリセット  河野裕  椎名優  評価A- 

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円環少女 1 バベル再臨 

円環少女 (角川スニーカー文庫)円環少女 (角川スニーカー文庫)
(2005/08/31)
長谷 敏司

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読書期間:2012/1/1~2012/1/18

【評価……C+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
 … 3
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
SF
構成
ロリ



 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 幾千もの魔法世界から<地獄>と呼ばれ最も忌み嫌われた場所――地球。なぜんら、本来自然なはずの魔法現象を消滅させてしまう恐るべき力を、人類だけが持っているからだった。
 元の世界で犯した罪のため<地獄>に堕とされた一人の少女魔導師・鴉木メイゼル。彼女の受けた刑罰は、<地獄>で敵対魔導師100人を倒すこと――。
 <円環大系>の使い手が、誰も成し得たことの無い過酷な運命に立ち向かう!灼熱のウィザーズバトル開幕!!

【感想】


SFとファンタジーが融合された現代モノの魔法バトル小説、シリーズ第1弾。
コアな人気を誇る作品で、シリーズ完結を機に読み始めてみました。

文章が難儀ってレベルじゃねえー!
ライトノベルに限らず、一般小説でもここまで苦労した覚えはありませんよ。
感覚としては、もはや古文です。

最初は、自分の読解力がないだけかなと思っていました。
単語の選別は、硬質な美がありましたしね。
しかし、それだけでは片づけられないぐらい明らかにおかしな文法が散見されます。
SVO型の文章の方が少ないくらいで、主語と述語が繋がっていません。
おかげで、どれだけ物語が良くても魅力を半減してしまい、非常に残念なことになっています。

そこに加えて設定も難解かつ作品内の専門用語も多用しており、親切心なぞ欠片も見当たりません。
説明が説明になっておらず、幾度となく文章を読み直しさせられました。
せめて文章が一般的なものであれば、理解も深まったんですけどねぇ。

一部の者だけが魔法と数多の異世界があることを知っている世界観は、別段珍しくはありません。
ただ、その魔法大系が独特で、センスを感じます。
特に面白いのが、地球に住む人間には観測するだけで魔法効果を消滅させる力があり、それを嫌う魔導師たちが地球を<地獄>と呼ぶ設定。
一般人が魔法の存在に気付いていないことと、魔導師たちが公に力を発揮できない理由をまとめて論理づける視点が、実に巧妙で納得させられました。

キャラの登場数がやたらと多いのも、混乱を誘う要因の一つですね。
設定も物語にも言えることなんですが、詰め込み過ぎてしまう癖でもあるんでしょうか。
巻数を重ねた後に来るべきクライマックスを、初っ端から持ってきた感じがしました。
おかげで、ストーリーは面白味もあったんですけど、設定ありきで構成が雑な部分もあったり。
おそらく、ある程度ならした後は、敷き詰めた伏線が誘爆するように広がっていくことになると思われるので、シリーズが進めば進むほど楽しめる類の作品なんでしょう。
それと引き替えに、敷居の高さが相当なものとなってしまいましたね。

感情移入するほど没頭は出来なかったのですが、それでもヒロインの鴉木メイゼルだけはキャラが立っていたと思います。
見た目小学生の女の子には重すぎる業を背負っているにも関わらず、辛そうな素振りを見せません。
主人公の武原仁を「せんせ」と呼び慕う、ちょっぴり背伸びしたところが可愛かったです。
まぁ、ロリには興味がないので、個人的にはロマンスは必要ないですけどね。

素材の良さは間違いないと思います。
ただし、調理方法が特殊で、人を選ぶどころか、人が試されるような作品です。
とにかく次から次へと生み出される設定の波にドップリと漬かるか、溺れてしまうか。
「このライトノベルがすごい!2012」で少数の支持者に投票された結果、総合4位に輝いた作品ですが、これはとてもじゃないですけど、万人にはお薦め出来ません。
緻密な作中設定が大好きだという人は、ハマれる可能性があるので、挑戦してもいいかも。
整合性があるかどうかは保証しかねますがね。

330Pの本を読み終わるのに半月も要するとは思わなかったなぁ。
物語的には気になるので、2巻は読むつもりですが、文章が改善されていないと厳しいですねぇ。

魔法や舞台の設定が激流の如く書き連ねており、難解な文体が独自の作風を生み出しています

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  円環少女  長谷敏司  深遊  評価C+ 

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サクラダリセット5 ONE HAND EDEN 

サクラダリセット5  ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)サクラダリセット5 ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)
(2011/04/28)
河野 裕

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読書期間:6/23~6/27

【評価……B
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
透明感
構成
安定感



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 「私を普通の女の子にすることが、貴方にできる?」
 復活した相麻菫。ケイは彼女に、咲良田の外に――能力が存在しない世界に移住することを提案する。だがそれが上手くいくのか、彼にも分からなかった。
 確証を得るため、ケイは管理局の仕事を引き受け、春埼、野ノ尾とともに、九年間眠り続ける女性の「夢の世界」へ入る。そこでケイは、ミチルという少女と青い鳥に出会い――!
 “咲良田”とは?能力とは?物語の核心に迫る第5弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


特殊能力を有する若者たちが、真摯に幸せを追求するハートフルストーリー第5弾。
透明感のある雰囲気は、今巻も継続しています。

久々の本編ですね。
3巻は9割が過去編、4巻は短編集だったこともあり、ようやく物語が再始動しました。
ただし、今回はサブストーリーに本筋の種蒔きを散らしたかの内容ですがね。

中身は、安定した作りで楽しめました。
妙に哲学的な会話が面白く、気が付いたら読み終わっています。
丁寧語の会話が機械的なやり取りだからこそ、言葉に含まれる人肌に触れたかのような温もりが伝わってきますね。

ほのかに温まる優しさと、残酷な消失が表裏一体となっている話でした。
泣きたくなるくらい切ないけれど、救いのあるラストのおかげで、読了感は素晴らしく晴れやかです。
若干インパクトが不足気味ですけれど、及第点はクリアしていると思います。

一人でも多くの笑顔を実現しようと奔走するケイの理念は、凄く心地良い。
現実を脱線しない程度に理想を追い求める彼の努力は、一種の恐ろしさを覚えるほどに純度が高く眩しく見えます。
個を消しているようで、誰よりも我が強いところが好きですね。

登場人物たちが曇ることなくクッキリと描かれる裏で、細かな設定や伏線が配慮されています。
能力の組み合わせ方が絶妙で無駄がないのは、もはや言うまでもなし。
積み重ねていく土台の安定感は見事です。

この作品、刊行順に読んでいても時間軸が激しく前後するので、中間部分が不透明ですね。
意図的に隠された事実が含まれているんでしょうけど、少々把握し辛いのが難点かな。
相麻菫の計画や、管理局内部の思惑が少しずつ見えてきて、シリーズの根幹部分が判明しつつありますが、終着点はまだまだ見えないですね。

きっと作者の頭の中では、完成図が出来あがっているんでしょう。
空いている箇所にピースを一つずつ埋めていくパズルを彷彿とさせる構成で、隙がありません。
刊行が空いてしまうと忘れてしまいそうなので、一気に読みたいですね。

大切な少女のために手段を選ばない主人公が格好良い

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  サクラダリセット  河野裕  椎名優  評価B 

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涼宮ハルヒの驚愕(後) 

涼宮ハルヒの驚愕(後<br /> (角川スニーカー文庫 168-11)涼宮ハルヒの驚愕(後)
(角川スニーカー文庫 168-11)

(2011/06/15)
谷川 流

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読書期間:2011/5/26

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
SF
ラブコメ
世界観
構成
衝撃度

 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8


 団長閣下による難関極まりないSOS団入団試験を突破する一年生がいるとは思わなかったが、俺に押しつけられた「雑用係」という不本意な肩書きを譲渡できる人員を得た幸運を噛みしめるのに、何のはばかりもないはずだ。なのに、ハルヒ同席のあのぎこちない再会以来、佐々木たちが顔を見せていないことが妙に引っかかるのはどうしてかね。類い稀なる経験に裏打ちされた我が第六感は、何を伝えたいんだ?
 圧巻のシリーズ第11巻!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「涼宮ハルヒ」シリーズ第11弾。
「分裂」「驚愕(前)」から続く分岐ルートの収束点であり、解決編となります。

amazonの画像は、通常版の後巻となっています。
涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版」のセット購入希望の方はご注意ください。

素直に面白かったです。
ここまで読み終えて、ようやくすっきりとした心地になりましたね。
ずっと燻っていたものが、物語を紐解くごとに解かれて、晴れやかな気持ちにさせてくれました。

前巻を読んでいたときにも感じたことですが、後半に進めば進むほど筆の走りが快調になっていき、滑らかな語り口調が面白くなっていますね。
筆者がどの時期にスランプに陥ったのか、推察しても解答は得られませんが、おそらく序盤だったんでしょう。
明らかに文章の勢いが違います。

これまた想像でしかありませんけど、初期の構想は一旦リセットして、再度練り直したのではないでしょうか。
仕切り直しといってもいいかもしれません。
「憂鬱」を想起させるようなハルヒとキョンの関係性が、リスタートを印象付けています。

SOS団結成からちょうど1年経った話として、相応しいストーリーでした。
ハルヒの何でもありな力に振り回される団員たちの図に変化はなくとも、団結力は段違いです。
みんながみんな成長し、パワーアップしています。

その最たる例として、外的要因として投入された佐々木への応対でしょう。
ハルヒとキョンの二人の仲に、一陣の風が吹いたわけですが、これが思いのほか揺るがない。
確かに「分裂」初期では、神人を発生させてしまうぐらいハルヒの内心は穏やかでなかったので、もっと直接的にラブコメチックなやり取りがあるのかと思っていました。
しかし、実際はキョンを中心とした、ハルヒと佐々木の両側面を見せる手法としての活用に留まっています。
まぁ、あくまで主人公はキョンだということをアピールする狙いもあったのでしょうが、もっと波乱が待っていると思っていたんですけどね。

分裂したルートと二択を迫られるキョンが、交わるようにして繋がる展開は、期待通り面白かった。
この部分が読みたくて4年間待っていたようなもんですしね。
某キャラが今までのイメージから大きく崩れて、思わず吹き出してしまいましたよw

「分裂」の感想でも書きましたが、著者の「学校を出よう!」を彷彿とさせるギミックが散りばめられていましたね。
多次元世界論は、興味深くはありましたけど、読み応えは足りなかったかな……?
文章に遊びがあるのは大歓迎です。
でも、余分なくだりや段落が散見され、同じことを繰り返している構成は、もう少し絞り込むべきでした。

佐々木が可哀想になってしまうぐらい、キョンの気持ちが既に強固なものとなっていましたね。
みくるに父性感情に近い好意を抱いたり、長門へ絶大な信頼を寄せたりとしていても、女の子として魅力を感じるのはハルヒってことなんでしょう。
これまでは自覚しないよう努めていた想いが、節々でこぼれ落ちていて、ほんわかとさせられます。
ただし、キョンがSOS団員以外に対して、過剰なまでに排他的なのは気になりました。

佐々木も悪くないどころか、凄く良い子なんですが、勝負の相手や時期がマズかったかな。
一般人でありながら、誰よりも根幹からブレない頼もしさや、他人の言葉の真理に鋭く気付く聡い一面は、人間的にとても魅力的でした。
結局、三角関係にすら持ちこめなかったのは、残念というか気の毒でしたねぇ。
今後の登場も是非期待したいところです。

新しくSOS団の一員として加わった渡橋泰水の素性は、なるほど、これは良いアイデアですね。
将来のSF展開に、一つ新たな要因を投石できる可能性を作ったことになります。
幾つもの可能性を疑っていたのですが、何故か不思議とこのパターンだけは抜け落ちていて、正直予想外でした。
「分裂」から登場しているにも関わらず、後巻に至るまで挿絵がなかったので、やっと容姿が判明しましたわけですが、なかなか可愛かったと思います。
それにしてもハルヒ、佐々木、長門、ヤスミとショートカットの女の子が多いのは作者の趣味なんだろうかw

「憂鬱」がハルヒ、「消失」が長門、「陰謀」がみくるだとすると、順番的には古泉の回だったわけです。
古泉の活躍は、当初から決まっていたのではないか……というより、主役だったのではないでしょうかね。
ハルヒ寄りにシフトしたのは、4年の空白があったからではないかなと。

宇宙人や未来人ばかりクローズアップされますが、古泉は何気に凄いと思うんですよ。
華やかなSOS団の女子メンバーに埋もれることなく、見事なまでにキャラを立たせています。
よくある親友や悪友とはまた違う立ち位置で、キョンと最も会話をしている人物、それが彼ですね。
超能力は限定的条件付きであっても、古泉の思考回路や分析力は、相当な力だと思います。
本当に今回の古泉は、格好良かった。
そして、一気に怪しい存在になりましたw

あとは、やはりハルヒか。
キョンが驚愕することばかりで、おかしいなと訝しんでいましたが、最後に来ましたね。
ハルヒの驚愕する顔は、思わずニヤケてしまいました。
傍若無人なイメージが付きやすいけれど、実は中身は非常に女の子らしいですよね。

キョンは、一応主人公のはずなのに、無力感が漂っているなぁ。
藤原たちに追い詰められて、手も足も言葉さえも出てこないのは、仕方がないとはいえ、本人も自覚している通り少々情けない。
古泉とは正反対で、考えているようで考えが甘い。
男前にはなったなと思いますが。

【いとうのいぢさんのイラストについて】

本人も公言している通り、随分絵柄が変わりました。
塗り方の変化や下まつ毛のせいで、何だかケバいw
例えるならば、淡く野暮ったかった田舎娘が、都会でメイクを覚えた感じ。
好みはあるでしょうが、絵のレベルは上がっており、これはこれで良いと思います。
みくると佐々木が可愛かったです。

しかし、前後巻合わせて、口絵でキョンの顔ドアップを3枚も描いたのはやりすぎ。
佐々木なんて、後巻の表紙以外に、本編ではカラーイラストないというのに。

【Rainy Day】

初回限定版のみについてくる小冊子に収録されている書き下ろし短編。
キョンと佐々木の中学時代を描いた、とある夏のエピソードです。
内容的には、本編を読んでから手をつけることをお薦めします。
ページ数は少なめなので中身は何とも言えませんが、佐々木の絵が最高でした。

【総評】

読んで良かったと思える良作でした。
しかし、4年の時を待つほどのものだったかと問われると、首を傾げてしまいます。
シリーズ最高傑作である「消失」のラインには残念ながら届いていません。
期待をし過ぎると、楽しめなくなるでしょうね。
それでもこの世界観は大好きです。

次は、果たしていつになるのかな。
短編ネタを形にしたいそうですが、今回で先が気になる伏線がいっぱい出来上がりました。
さすがにまた4年後ってことがないことを切に願います。

各々の成長が見られ、SOS団の絆の強さを思い知らされる原点回帰の物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  涼宮ハルヒの憂鬱  谷川流  いとうのいぢ  評価A- 

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涼宮ハルヒの驚愕(前) 

涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版(64ページオールカラー特製小冊子付き) (角川スニーカー文庫)
(2011/05/25)
谷川 流

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読書期間:2011/5/25~2011/5/26

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
ラブコメ
世界観
構成
衝撃度

 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8


 SOS団の最終防衛ラインにして、その信頼性の高さは俺の精神安定に欠かさざる存在であるところの長門が伏せっているだと?
 原因はあの宇宙人別バージョン女らしいんだが、そいつが堂々と目の前に現れやがったのには開いた口も塞がらない心持ちだ。どうやら、こいつを始めとしたSOS団もどきな連中は俺に敵認定されたいらしいな。上等だ、俺の怒髪は天どころか、とっくに月軌道を超えちまってるんだぜ?
 待望のシリーズ第10巻!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「涼宮ハルヒ」シリーズ第10弾。
2007年4月に「分裂」が発売され、同年6月発売予定だった本作。
散々もう出ないのではないかと噂されていましたが、遂にお目見えです。

とりあえず、率直な感想としては、とても面白かったと言えます。

当初一冊だけの予定が、発売が延びた結果、前後巻となりました。
初回限定版は、その前後巻がセットで販売され、「涼宮ハルヒの秘話」という小冊子が付いてきます。
遅れて通常版も発売する予定となっているらしいのですが、どうも相当数刷ったようで、通常版の方が希少になりそうな気配です。
初回で50万部以上を発行しているため、まだ書店に多く並んでおり、わざわざ通常版を買う方は少ないでしょうね。

前巻は、amazonの画像にもあるハルヒが表紙です。
Hのマーク上に「初回限定版」の文字が印字されていて、背表紙にも同じく書いてあります。
裏面は、あらすじのみとなっており、バーコードや値段は一切表記されていません。
おそらく通常版は、この辺りが異なっていて、マニアは両方買うことになるんでしょう。

そもそも「驚愕」の前後巻の前に、「分裂」からの続きとなっており、4年待ったファンの多くは内容をすっかり忘れてしまっていたでしょうね。
自分の場合、この新刊のためにシリーズ再読をしていたので、問題なくすんなり入ることができました。

一応簡単に振り返ると、「分裂」で物語が2つのルートに分裂しました。
入団希望の新入生たちが集ったSOS団の平和な日常が続くαルート。
佐々木を中心とした宇宙人・未来人・超能力者よる介入が激しいSF展開まっしぐらなβルート。
二つの時間軸が交互に展開されるものの、いかなる理論で分裂しているのが分からず、同時に物語が進行しています。

前巻ということもあって、まだまだ問題は解決するに至っておりません。
それどころか、「分裂」以上に物語が分裂しており、二つのルートの差が激しくなっています。

内容はまるで違うのに、どちらもこの作品らしいと感じるのが何とも面白い。
個人的には、新入生のSOS団員適性試験が楽しいαルートの方が好きですね。
βルートは、長門が倒れたことで先が見通せず、興味深くはあるんですが、進みが遅いのが残念。

しかし、これは前後巻に分ける必要性はあったんですかね。
2冊に分ける理由も特にありませんし、そもそもこんなに長々と分裂模様を描く意味も希薄です。
答えだけはぐらかされている気分で、焦れったいのなんの。
「憂鬱」「溜息」と同じく、仕掛けが遅くて、少々テンポが悪く感じました。

とはいえ、つまらなかったわけではありません。
タイトル通り、驚愕の事実が複数発覚して、ドキドキワクワクさせられました。
一番の驚きは、古泉関連かな。
全く予想していなかっただけに、まさかと思いました。
本当なのかどうかイマイチ信じることができませんが、真実とするならば色々と引っくり返りますね。

一連の物語の第4章から第6章までが収録されています。
このうち、第4章は「ザ・スニーカー」で先行掲載されたものですね。

4年間のブランクなのか、第4章は文章にキレがなくて不安な立ち上がりでした。
連続して再読していたからこそ気付いた些事かもしれませんが、キョンのたとえて表現するモノローグが鳴りを潜めていて、面白味が少なく感じましたね。
しかし、それも最初だけで、中盤からは踊るような文章で、ああ「涼宮ハルヒ」が戻ってきたんだなぁという実感しました。

SOS団を大事に想うキョンの気持ちが、文面に強く表れていました。
異能を所持しているわけでもない一高校生でありながら、宇宙人や未来人に立ち向かう様は、無謀とも言えますが、傍観者スタイルだった「消失」以前とは異なり、熱くて格好良かったです。

最近のライトノベルは、どうしてもお約束のえちぃシーンを取り入れる傾向がありますが、この作品に関してはエロ要素は皆無ですね。
コメディもパロに頼り切らず、キョンの変化球な語り口で勝負しています。
それが逆に新鮮で、安心感を与えてくれますね。
チープなエロコメや、パロディ満載のバカコメディも嫌いじゃないですけど、作風を考えるとこれが正しい選択でしょう。

内容が内容だけに、ネタバレなしだと当たり障りのないことしか書けませんね。
キャラに関しても、語りたいことがいっぱいあります。
ハルヒ、キョン、古泉、佐々木、その他新キャラなどなど。
ということで、後巻の感想で少し踏み込んで書きたいと思います。

シリーズ再始動となる待望の続巻は、驚愕の事実が随所に埋め込まれています

テーマ: ライトノベル

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タグ: 書評  涼宮ハルヒの憂鬱  谷川流  いとうのいぢ  評価B+ 

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涼宮ハルヒの分裂 

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)
(2007/03/31)
谷川 流

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読書期間:2011/5/20~2011/5/24

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
SF
ラブコメ
世界観
構成
期待感

 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★
 … 9


 桜の花咲く季節を迎え、涼宮ハルヒ率いるSOS団の面々が無事に進級を果たしたのは慶賀に堪えないと言えなくもない。
 だが爽やかなはずのこの時期に、なんで俺はこんな面子に囲まれているんだろうな。顔なじみのひとりはいいとして、以前に遭遇した誘拐少女と敵意丸出しの未来野郎、そして正体不明の謎女。そいつらが突きつけてきた無理難題は、まあ要するに俺をのっぴきならない状況に追い込むものだったのさ。
 大人気シリーズ第9弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「涼宮ハルヒ」シリーズ、第9弾。

まず読み始める際に、ページ上部の余白が大きいことに気付くと思います。
違和感バリバリですけど、一応意味はありますので、ご安心ください。
初めて読んだ時は、印刷設定ミスかと疑ったものですw

「消失」までを第一部とするならば、それ以降に語られた伏線を集結させた第二部完結編の序章となるのが、今回の「分裂」の内容ですね。
「雪山症候群」にてSOS団を窮地に追いやった敵対宇宙人、「陰謀」でみくる誘拐を企てた機関とは異なる組織と気に食わない未来人が顔を揃えて登場し、キョンを突飛な展開に巻き込んでいきます。
あくまで前半部分なので、今巻だけでは感想が難しいものの、今後の展開は期待が持てる内容となっていますね。

タイトル通りの「分裂」を起こしているため、構成が非常にややこしいことになっています。
このギミックが面白かどうかと問われると、微妙なところですね。
アリといえばアリなんですけど、解決していないこともあってスッキリしないのが何とも言えません。
まぁ、当時とは違い、解答編である「驚愕」がすぐ読める環境になったので、これから読み始める人にとっては特に問題ないかもしれませんね。

仕掛けからして、「涼宮ハルヒ」というよりも「学校を出よう!」に近い印象を受けました。
著者が表現する時間移動論や並行世界原理などは、感覚的に納得させられる説明が上手いんですよね。
叙述トリックも多用していて、この時点では、気が付いていない要素もありそうです。
SF理論が、なかなか興味深くて、先が非常に気になります。

新キャラが何名か登場していますが、中でも一押しは佐々木でしょうか。
あらすじにもある通り、キョンの顔馴染みである存在で、SOS団の面子にも負けず劣らずユニークです。
登場の仕方には、少々驚かされました。
理知的なイメージというと既に古泉がいますが、この手のキャラは大好きですね。

キャラクターが多く登場している反面、SOS団の面子は若干割を食う立場となってます。
出番が全体的に少なめの中で、ハルヒは要所で輝いていました。
もはや、傍若無人な態度がツンデレにしか見えなくなりましたねw

これにて「涼宮ハルヒ」シリーズの再読が完了です。
シリーズ初の複数巻にまたがる長編で、まさか4年待たされることになるとは思いもしませんでした。
いよいよ「驚愕」の物語を再スタートすることができます。

伏線大放出となる長大な物語の幕開けを予感させます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

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涼宮ハルヒの憤慨 

涼宮ハルヒの憤慨 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの憤慨 (角川スニーカー文庫)
(2006/04/28)
谷川 流

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読書期間:2011/5/16~2011/5/17

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
SF
ラブコメ
世界観
青春


 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 涼宮ハルヒが暇を持て余してたらそれこそ天地が逆になる騒ぎだろうが、むやみに目を輝かせてるのも困った状況ではある。
 それというのも生徒会長なるお方が、生徒会はSOS団の存在自体を認めないなどと言い出しやがったからで、意外な強敵の出現にやおら腕章を付け替えたハルヒ“編集長”の号令一下、俺たちSOS団の面々はなぜか文集の原稿執筆などという苦行の真っ最中なわけだ。
 天上天下唯我独占「涼宮ハルヒ」シリーズ第8弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「涼宮ハルヒ」シリーズ第8弾。
中編2本収録されており、長編ほどではないにしろ充足感を得られる内容となっています。

どちらもSOS団の日常がベースのエピソードで、非常に楽しかったです。
何でもない日々がこんなにも面白く感じられるのは、キャラが立っているのと文章に中毒性があるからでしょうね。
キョンの一人称による語りは、独特のテンポで病み付きになります。
筆力が高いというよりも、センスを感じる文体で、個人的な好みの差が大きいだろうなと感じますね。

挿絵も豊富で、見応えありました。
ただ、相変わらず本文の描写と合っていない箇所もあるのが、勿体無い。
イラスト指定は、しっかりして欲しいですね。

【編集長★一直線!】

SOS団が不法に占拠している文芸部室を生徒会の圧力で撤去されないために、文芸活動をする羽目になったSOS団メンバーたちによる執筆記録。
ハルヒの中では、SOS団vs生徒会という構図がバチバチと火花を散らしているんだろうなと想像容易いですね。
まぁ、実際のところは生徒会の方が至極正論であるのですが。
それをハルヒもキョンも無意識で理解しているため、生徒会長の会誌作りの条件を飲んだのでしょう。
ハルヒの場合、単純に面白そうだからと考えた可能性も否めませんけどねw
実際、みんなで何かを作るという共同作業は楽しそうで、執筆自体を苦労はしても、制作に躍起になるSOS団員たちは決して嫌そうに見えませんでしたし。

団員たちの書いた中では、みくるや長門もいいけど、キョンの小説モドキが一番面白かった。
オチは何となく読めても、先が気になりました。

努力家で真面目なみくるが健気で可愛いなぁ。
うーん、うーんと唸りながらも頑張って文章を綴ろうとする姿は、とても上級生に見えない愛らしさ。
マスコット的な意味で獲ってきたハルヒの慧眼は認めざるを得ませんね。

【ワンダリング・シャドウ】

春休みも間近に迫った学年末にSOS団に調査の依頼が舞い込んだ話。
何とも懐かしさを感じる展開ですね。

こうしてみると、いかにハルヒが成長したかが分かります。
古泉が冬休み辺りから言っている通り、ハルヒの精神状態はどんどん安定していってますね。
「溜息」の時からは考えられないぐらい仲間想いになっていて、とても好感を持てます。
キョンへの恋心が見え隠れする頻度が高まってきているのも、ニヤリとしちゃいますね。

初期と比べると落ち着き過ぎていて、勢いが萎んだように感じる人もいるかもしれませんが、短編はほのぼの路線で良いと思います。
シリアスなSF展開は、長編で期待することにしますよ。

青春の1ページを着々と増やすSOS団員たちの日常と非日常の両側面が楽しめます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  涼宮ハルヒの憂鬱  谷川流  いとうのいぢ  評価B+ 

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涼宮ハルヒの陰謀 

涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの陰謀 (角川スニーカー文庫)
(2005/08/31)
谷川 流

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読書期間:2011/5/13~2011/5/15

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
SF
ラブコメ
世界観
構成


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7



 年末から気にしていた懸案イベントも無事こなし、残りわずかな高一生活をのんびりと楽しめるかと思いきや、ハルヒがやけにおとなしいのが気に入らない。
 こんなときには必ず何かが起こる予感のそのままに、俺の前には現れたのは8日後の未来から来たという朝比奈さんだった。しかも、事情を全く知らない彼女をこの時間に送り出したのは、なんと俺だというのだ。未来の俺よ、いったい何を企んでいるんだ!?
 大人気シリーズ怒濤の第7弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「涼宮ハルヒ」シリーズ第7弾。
「消失」以来の長編であり、420ページを越える過去最厚の本でもあります。
色んな人物の陰謀が渦巻き、風向きが変わりつつある伏線が張り巡らされた回でした。

導入部が素晴らしい。
巻数にして2冊分棚上げされていた世界改変時の解決編は、まさに待望の話でした。
「消失」で最後まで語られずにヤキモキしていたので、やっとスッキリしましたよ。

そして、ようやく落ちついたと思ったのも束の間、近未来からみくるが時間移動してきて一騒動が巻き起こります。
8日後の未来からキョンに言われるがままにタイムリープしてきたみくるは、何も知らないという。
この展開には、期待の高まりを抑えられませんでしたね。
同じ時間軸上に同一人物がいる世界は、ドキドキハラハラする緊張感があって楽しいなぁ。
中盤以降、若干グダグダするところは惜しいものの、忙しない展開が面白かったです。

表紙を飾っているみくるが、今回の主役のはずなんですが、相変わらず何も分かってないので、中心に居るのに無知という可哀想なことになっています。
彼女は、キョン以上に巻き込まれ型ですね。
作者のあざとさを感じるほどに、純真で可愛かったです。
個人的には、恋人にしたいというよりも娘に欲しいタイプですね。

キョンは、みくるに対して紳士すぎる。
内心では過剰なまでに崇拝し、計り知れないほど好意を抱いているというのに、全然手を出そうとしないからもどかしい。
実際に抱きしめたり、押し倒すぐらいのことをやって欲しいもんです。
萌えキャラとしてSOS団に入団したみくるなのに、ラブコメ要素は意外と少ないですからねぇ。

長門は、人間味のある言葉を発するようになったなぁ。
感情的な台詞を吐くたびに、ハッとさせられます。
能力の縮小化に繋がるのかもしれませんが、長門個人としては良い傾向だなって思いますね。

何気に一番可愛かったのは、古泉かもしれません。
時間旅行をおねだりしたり、体験したキョンに聞きたがったり、喜々として解説したりと妙に萌えポイントが豊富でしたw
キョンと古泉の会話は、本当に楽しいなぁ。

タイトルにもなっているハルヒの陰謀は、途中で気付きました。
巧妙に隠してはいますが、ヒントも多かったので予想がついちゃいましたね。

やっぱり、未来は知らないからこそ楽しいんだろうなぁ。
物語上仕方がないとはいえ、規定事項をなぞるような構成は、作業のように感じられましたし。
未来人が絡む話は好きなんですが、作り方は難儀してそうですね。

カラーページのハルヒ、みくる、長門の三人娘が無茶苦茶可愛かったです。
他の絵師さんと比べ、飛び抜けた画力があるというわけではないはずなんですが、キャラクターの魅せ方が上手いのかな。

なるほど、この頃から「分裂」以降の伏線も張られていたんですね。
再読でなければ気付きませんでした。
これは、今後の大きなうねりを感じさせますね。

新たなる局面を予感させる伏線が盛り込まれた転換期の前段階

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  涼宮ハルヒの憂鬱  谷川流  いとうのいぢ  評価A- 

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涼宮ハルヒの動揺 

涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)
(2005/03/31)
谷川 流

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読書期間:2011/5/11~2011/5/12

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
SF
ラブコメ
世界観



 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8




 幻にしておきたかった自主映画だとか突然のヒトメボレ告白、雪山で上演された古泉渾身の推理劇や朝比奈さんとの秘密のデート。
 SOS団を巻き込んで起こる面白イベントを気持ちいいくらいに楽しんでいる涼宮ハルヒが動揺なぞしてる姿は想像できないだろうが、文化祭のハプニングであいつが心を揺らめかせていたのは確かなことで、それは俺だけが知っているハルヒの顔だったのかもな――。
 お待ちかね「涼宮ハルヒ」シリーズ第6弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「涼宮ハルヒ」シリーズ第6弾。
前巻に引き続き短編集です。
本当にこの作品は、短編の割合が多いですね。

いとうのいぢさんのイラストが、安定し出したのはこの頃からでしょうかね。
表紙のハルヒや口絵のみくるが可愛くて目の保養になります。

【ライブアライブ】

文化祭当日の話。
「溜息」では、映画製作だけに一冊を費やした結果、肝心の文化祭模様がほとんど描かれず仕舞いだったので、不完全燃焼なところがありました。
確かに、イベント当日よりも前日までの準備の方が楽しいとよく言われますが、やっぱり祭りの賑わいがないと、メインディッシュを抜いたディナーみたいな印象を受けます。
そういう意味では、念願のエピソードだったとも言えます。

しかし、この話に限っては、アニメ版のインパクトが強すぎますね。
神懸かっていた音楽の演出と比べるのは、可哀想ですけど。
戸惑った表情をするハルヒは、可愛げがあって大変よろしいです。

【朝比奈ミクルの冒険 Episode 00】

「溜息」にて撮影された映画本編。
支離滅裂もいいところな無茶苦茶な内容なのは、見るまでもなく分かっていましたよ、ええ。
何だか「溜息」をカメラのレンズを通して再構成された感じ。
おかげで、新鮮味はありませんでした。

【ヒトメボレLOVER】

キョンの中学時代のクラスメイトが、キョンの身近にいる女の子に一目惚れした話。
それが誰なのかは読んでからのお楽しみですが、反応が非常に可愛かったということだけは言及しておきます。
嫉妬するキョンにニヤニヤさせられるラブコメの王道的な展開が面白かった。
オチが意外で驚きましたね。

【猫はどこに行った?】

「雪山症候群」直後の話。
古泉主催によるSOS団ミステリーツアー第2弾です。
推理劇については、古泉の苦労が垣間見れて面白かったです。
いつものハンサムスマイルを崩して、不安な表情を浮かべる古泉は新鮮でした
夏合宿の時と比べると結構単純だったのは、ネタが尽きたんでしょうかねw

【朝比奈みくるの憂鬱】

時系列的には、最新となる三学期の話。
アンニュイな面持ちのみくるからデートのお誘いを受けたキョンがホイホイと付いていく話です。
次回以降の伏線を匂わせる内容で、種を蒔いたって感じ。
キョンとみくるが、互いの心を理解する流れが秀逸でした。

いつもと異なる方向へ揺れ動くSOS団員達の心情が新鮮

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  涼宮ハルヒの憂鬱  谷川流  いとうのいぢ  評価B+ 

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涼宮ハルヒの暴走 

涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)
(2004/10/01)
谷川 流

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読書期間:2011/5/6~2011/5/10

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
SF
ラブコメ
世界観
青春


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 夏休みに山ほど遊びイベントを設定しようとも、宿敵コンピ研が持ちかけてきた無理無茶無謀な対決に挑もうとも、ハルヒはそれが自身の暴走ゆえとはこれっぽっちも思っていないことは明白だが、いくらなんでもSOS団全員が雪山で遭難している状況を暴走と言わずしてなんと言おう。
こんなときに頼りになる長門が熱で倒れちまって、SOS団発足以来、最大の危機なんじゃないのか、これ!?
 非日常系学園ストーリー、絶好調の第5巻!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「涼宮ハルヒ」シリーズ第5弾。
短編集のため時系列はまちまちですが、「消失」の続きの話もあります。
発刊順に読まないとネタバレを食らいますので、飛ばさずに順番に読むことをお薦めします。

【エンドレスエイト】

SOS団の長い夏休みを描いた短編。
もはやアニメ版の方が有名になってしまったエピソードでもありますね。

純粋に好みです、この話。
堪能していた夏季休暇に思わぬ落とし穴が待っていたというか、既に迷宮に入り込んでいたという事実に気付く流れは、実にワクワクさせられます。
時間概念のトリックは、シリーズでも見ていて一番楽しいです。
それにしても、一応専門分野であろう話なのに、みくるは活躍しないなぁ……w

【射手座の日】

文化祭もつつがなく閉幕し、日常の落ち着きを取り戻した秋の日を描いた短編。
コンピ研とゲームで対戦することになる話。

今までの中で、一番平和なお話なのではないでしょうか。
SOS団員の反応が、みんながみんな、らしくてニヤニヤしちゃいます。
ハルヒの暴走が騒がしくて面白く、みくるの鈍重さに微笑ましい気持ちになり、長門のスーパーテクに爽快感を覚え、古泉とキョンの信頼感の厚い会話が楽しい。
他の話に比べると、特別と呼べるような出来事はないのですが、だからこそSOS団という仲の良いグループに嫉妬してしまいますね。

【雪山症候群】

冬休みにやってきた雪山で遭難したSOS団が、クローズドサークルに陥る中編。
「消失」直後の話で、文章量から見ても今回のメインとなるエピソードといえます。
今巻では、2011年現時点で唯一アニメで放送されていない話でもあります。

作中でもキョンや古泉が気付いている通り、ハルヒの変化が見て取れますね。
ツンデレで素直に受け取れないところがありますが、団員をちゃんと友人として大事に想っているのが節々から伝わってきて、キョンならずとも嬉しくなります。
長門もまた自律進化の兆しが見られ、成長を感じさせます。

それに対して、みくるの頼りにならなさが浮きまくっています。
危機感が不自然なぐらい足りない。
天然で済ませるには、ちょっと異質な何かを感じました。
ただの勘違いなのか、それとも将来的な伏線なのか、少々気になります。

見所が多く話も面白かったです。
長門の脱落で緊迫した事態に陥ったSOS団で、古泉の頼もしさが光りました。
理知的で偽悪的なスマイルを浮かべる古泉と、それを平然と流すキョンのコンビは大好きです。
しかし、話の畳み方が、唐突かつ乱暴なところがあり、それだけが残念でしたね。

非日常的な状況に巻き込まれつつも、充実した高校生活を送るキョン達が羨ましくなります

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  涼宮ハルヒの憂鬱  谷川流  いとうのいぢ  評価A- 

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涼宮ハルヒの消失 

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)
(2004/07)
谷川 流

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読書期間:2011/5/1~2011/5/5

【評価……A+
発想 ★★★★★★★★★ … 9
設定 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★★★
 … 10
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
ラブコメ
世界観
完成度
構成

 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8


 「涼宮ハルヒ?それ誰?」って、国木田よ、そう思いたくなる気持ちは解らんでもないが、そんなに真顔で言うことはないだろう。だが他のやつらもハルヒなんか最初からいなかったような口ぶりだ。混乱する俺に追い打ちをかけるようにニコニコ笑顔で教室に現れた女は、俺を殺そうとし、消失したはずの委員長・朝倉涼子だった!
 どうやら俺はちっとも笑えない状況におかれてしまったらしいな。
 大人気シリーズ第4巻、驚愕のスタート!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「涼宮ハルヒ」シリーズ第4弾。

これを名作と言わずとして何という。
シリーズ内最高傑作と呼び声の高い作品は伊達ではありません。
紛れもなく傑作です。

クリスマスも近づいた冬のある日、それは唐突に訪れる。
キョンが異変に気付いたときには、既にハルヒやSOS団の存在が消失していた。
全てがなかったことにされた世界に恐怖し足掻くが、活路を見出せない。
果たしてキョンは何を選択するのか。
ハルヒは何処へ消えてしまったのか。
謎に満ちた導入から展開されるSF要素満載のストーリーです。

初めて読んだ時のインパクトは絶大でした。
それまでのハルヒの長編は、物語の始動が遅く、ダラダラとしているのが欠点でしたが、「消失」は開始早々から強烈な牽引力で引き込んでくれます。

怪しげな組織をバックにつける古泉、未来を知る朝比奈さん(大) 、そして何より絶対的な能力を有し数々の問題を解決へと導いてきた長門の存在は、如何様な事態も収束へ向けてくれる安心感がありました。
だからこそでしょう。
過剰なまでの長門のスーパーマンっぷりを見てきただけに、絶望感は底知れないものとなっています。
頼りになる仲間たちが消失し、孤立に陥ったキョンの焦燥っぷりは、仕方がないでしょう。
心細いというレベルではなく、あまりの喪失感と八方塞がりな状況に諦観せざるを得ません。
いやはや、まんまと作者にやられてしまいました。

まず、ストーリーラインが秀逸。
このために「憂鬱」「溜息」「退屈」の物語を積み重ねてきたと言われても信じるほど。
250ページ程度という、どちらかといえば薄い本にも関わらず、濃厚さは他の長編の遥か上をいきます。

緩急の付け方が素晴らしい。
停滞させるところは重々しく、希望は神々しく見せ、かと思いきや急転直下する状況に目を離すどころか、息をつく暇すらありません。
初読した数年前は、夢中を飛び越えて没頭するように読み耽った記憶があります。

ネタバレになるため多くは語れませんが、「消失」で使用されている設定には鳥肌が立ちました。
個人的な好みを抜きにしても、これでテンションが上がらなければ嘘だろうってもんです。
さりげない話が伏線となっており、ただの情報に過ぎなかった点が繋がった時の爽快さは、思わず声を出してしまいそうになります。
SF展開もギミック、ロジックともに素晴らしく、何より面白い。

キャラクターは、立ち位置まで精密に計算されているかのように完璧。
これまで斜に構えていたキョンが、己を直視して本心を自覚する展開は痺れるほどに熱い。
主体性がなく、ハルヒや他のSOS団員達に流されるまま過ごし、たまに口を出すポジションという傍観者の立場を捨て、自ら飛び込む意志を見せる様は、まさにこれぞ主人公といった姿でした。
キョンにとっては、まさしくここが本当の意味でのスタートラインになるんでしょうね。

各ヒロインたちは、さらにそれを上回ります見せ場が用意をされています。
中でも長門は、消失長門という言葉でカテゴライズされるほど人気が出ました。
今巻で長門派が大幅増となったのは、疑いようがないでしょうね。
事実、自分も転んだうちの一人です。
小動物系の女の子はたまりません。

出番こそ少なめのハルヒですが、存在感は抜きん出ていますね。
時系列でいえば、「溜息」の文化祭以降のハルヒは結構好きだったりします。
明らかに彼女の中に変化をもたらしているのが見てとれるのが嬉しい。
長門とは別の意味で、頼もしさを覚えます。
行動力のある彼女の魅力が存分に出ていました。

再登場を果たした朝倉を始めとした脇役も光りますね。
谷口、国木田もイイ味出しています。

「涼宮ハルヒ」シリーズ……というか、昔のラノベにありがちなことに、イラストの指定が間違っていますね。
まぁ、ある意味ネタバレを避けた形になっているため、ありといえばありですが。
この当時のいとうのいぢさんは、まだ描き慣れていないように感じられますね。
ハルヒが、シャナっぽくも見えました。

完成度が非常に高い作品です。
唯一惜しい点は、結末が締めきっていないところかな。
これは、先が気になり過ぎますよ。
出来ることならば、全てを今巻で片づけて欲しかった思いは残りました。

思い出補正がないとは言い切れません。
しかし、名作であるのは間違いないでしょう。
1~3巻をツマラナイと思った人はともかく、微妙だと感じた程度ならば、是非とも「消失」までは読んで判断して欲しいですね。
このカタルシスを体験しないのは、損しますよ。

⇒ <劇場版『涼宮ハルヒの消失』感想

葛藤する主人公が決意するまでの心理を丹念に描いた渾身の一作

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

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涼宮ハルヒの退屈 

涼宮ハルヒの退屈 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの退屈 (角川スニーカー文庫)
(2003/12)
谷川 流

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読書期間:2011/4/20~2011/4/22

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
SF
ラブコメ
世界観
青春


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 ハルヒと出会ってから俺はすっかり忘れた言葉だが、あいつの辞書にはいまだに“退屈”という文字が光り輝いているようだ。
 その証拠に俺たちSOS団はハルヒの号令のもと、草野球チームを結成し、七夕祭りに一喜一憂、失踪者の捜索に熱中したかと思えば、わざわざ孤島に出向いて殺人事件に巻き込まれてみたりして。
 まったく、どれだけ暴れればあいつの気が済むのか想像したくもないね……。
 非日常系学園ストーリー、天下御免の第3巻!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


涼宮ハルヒシリーズ第3弾。
「ザ・スニーカー」で掲載されたエピソードが多く含まれた、初の短編集です。

「憂鬱」と「溜息」の間の半年間で巻き起こったSOS団の活動記録といえば分かりやすいかな。
収録されている4話とも、基本的には似たような構成となっています。
身も蓋もない言い方をすれば、ハルヒの思いつきで振り回されるSOS団員の苦労話ですね。
全てアニメ化されている内容なので、原作未読の人でも知っている話は多いと思われます。

どれもこれもキャラの魅力を存分に引き出した話で、とても楽しく読めました。
巻数を重ねるごとに肉付けされていくキャラが、独り立ちしたかのように動き回るため、見ていて飽きません。
「溜息」では不快だったハルヒの横暴さは鳴りを潜め、良い意味でアクティブな面が目立ちました。

【涼宮ハルヒの退屈】

表題作にもなっている短編が第1章。
タイトルとは裏腹に、ハルヒが草野球大会で大暴れする話。
どうやら「憂鬱」よりも先に発表された、シリーズ最古の物語だそうです。
確かに言われてみれば、本編の縮図ともいえるようなバランス構成となっていて、SOS団員みんなの良さが万遍なく出ていますね。

【笹の葉ラプソディ】

ギミックの面白い超重要なエピソード。
宇宙人や超能力者も悪くはないですが、個人的には時間移動が最もドキドキさせられる設定ですね。
ヒロイン三人娘のちょっと変わった姿が見ることができるのは、ポイント高し。
何気にハルヒとの出会いの伏線を回収していたりと、緻密な設定が光ります。
今巻の中で、一番のお気に入り。

【ミステリックサイン】

SOS団結成以来初の外部からの依頼により、とある調査を行うことになったハルヒ達。
いつも通り、ハルヒだけが気付かないところで事態は急転しているというテンプレ的なお話。
長門が活躍する話……と言いたいところですが、あの万能宇宙人の出番がない話なんてほぼないよなぁw

【孤島症候群】

夏休みのバカンスが思わぬ展開となる書き下ろしの中編ミステリー。
他とは毛色が違うサスペンス風味なんですが、こんな場面の古泉は活き活きとしていますね。
爽やかな二枚目スマイルを浮かべながら、止め処なく語り続けるスタイルは癖になります。
アニメ版で大きく脚本が書きかえられましたが、こればっかりは正解だったと思いますね。

仲間と過ごす青春的な日常の裏で繰り広げられる非日常展開という仕組みが面白い

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  涼宮ハルヒの憂鬱  谷川流  いとうのいぢ  評価B+ 

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涼宮ハルヒの溜息 

涼宮ハルヒの溜息 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの溜息 (角川スニーカー文庫)
(2003/09)
谷川 流

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読書期間:2011/3/26~2011/3/30

【評価……B-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★☆☆☆☆☆
 … 5
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
ラブコメ
世界観
構成


 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6



 宇宙人未来人超能力者と一緒に遊ぶのが目的という、正体不明な謎の団体SOS団を率いる涼宮ハルヒの目下の関心事は文化祭が楽しくないことらしい。行事を楽しくしたい心意気は大いに結構だが、なにも俺たちが映画を撮らなくてもいいんじゃないか?
 ハルヒが何か言い出すたびに、周りの宇宙人未来人超能力者が苦労するんだけどな――スニーカー大賞<大賞>を受賞したビミョーに非日常系学園ストーリー、圧倒的人気で第2弾登場!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


言わずと知れた「涼宮ハルヒ」シリーズ、第2弾。
再読感想です。

1巻の「憂鬱」から一気に時間が経過した半年後の秋。
ハルヒの突発的な提案という名の命令で、文化祭で発表する映画を撮ることになったSOS団メンバー達。
傍若無人なハルヒに振り回されながらも、撮影に勤しむキョン達だったが、もちろん平穏に事は終わりません。
嵐を呼び寄せる女・涼宮ハルヒによって降り注がれる難題の山々の前に、自称一般人であるキョンの苦悩する……という流れで始まります。
記念すべきアニメ第1話「朝比奈ミクルの冒険」のメイキングストーリーですね。

さて、2巻目にして、早くも問題作の登場です。
明らかに異色であり、意欲作でもあるが故に、賛否両論の激しい巻となっています。

はっきりいって、単独では限りなく厳しい評価になるのは避けられません。

確かに、一度は完結した作品を広げ直して再構築させ、伏線を散ばせることは成功しています。
しかし、その結果、「溜息」自体の面白さを損なうことになっていまいました。
土台作りや隠しネタを仕込むことは、もちろん今後のことを考えると重要なんですが、だからといって過程を蔑ろにしては駄目でしょう。
後々考えると感心できる内容であっても、それとこれとは話が別です。

問題その1・ハルヒの度が過ぎる横暴さ。
普段から我が儘ではありますが、今回のハルヒは酷すぎる。
目眩を覚えるほどの非道さに、読んでいてムカムカと苛立ちました。
人として、越えてはいけないラインを大幅に通り越していて、とてもじゃないですが許すことなんかできません。

物語の観点から捉えるのであれば、涼宮ハルヒにとっての転換期であり、必要不可欠だったのかもしれません。
ただ、見せ方があまりにも悪過ぎて、ハルヒ個人のイメージは最悪です。
友人に対するものとは思えない態度、支離滅裂で自分勝手すぎる行動、自己中心的で他者を寄せ付けない強引さなど、「憂鬱」の時ならば上手く長所となっていた面も、全てがマイナス側へと傾いてしまっています。
おかげで、瞬間的なデレを見せたところで、到底回復できない地点まで達しています。

問題その2・キョンの乱暴な独白。
表現の面白さは買うのですが、何故か今巻のキョンは、驚くほどに口が悪い。
半年間SOS団で活動を行い、多少なりとも信頼関係を築いたであろうにも関わらず、初期より辛辣です。
親しくなったことで軽口を叩くようになった、というのとは違うしなぁ。
再読の場合、長門への心情がなおのこと違和感ありました。

問題その3・古泉の説明のクドさ。
面倒臭く長ったらしい考察は、どちらかというと好きな方なんですが、さすがにしつこい。
しかも、話が同じところを回っているので、閉塞感があって不毛です。

問題その4・物語の起伏にムラがある。
グドグドな展開が続き、いつまで経っても盛り上がって来ずに、そのまま終局となってしまいました。
中盤に見せ場はありますが、終盤は尻すぼみしています。
オチは秀逸だと思う反面、あっさりとしすぎていて肩透かしを食らった気分になりますね。

面白くないわけではありませんし、光る部分もあるのですが、欠点が目立つ内容になっているのが残念。
どうしても微妙に感じてしまいますね。
この「溜息」のせいで、続きを読まなくなった人がいるとすると、勿体無さすぎます。
時系列順に本を出せばよかったのにと思いますけど、今更ですね。

神に等しい能力を無自覚に発揮する女の子のフォローをする宇宙人や超能力者の話

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  涼宮ハルヒの憂鬱  谷川流  いとうのいぢ  評価B- 

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涼宮ハルヒの憂鬱 

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)
(2003/06)
谷川 流

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読書期間:2011/1/4~2011/1/7

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★★ … 9
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
ラブコメ
世界観
完成度


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9



 「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」。
 入学早々、ぶっ飛んだ挨拶をかましてくれた涼宮ハルヒ。そんなSF小説じゃあるまいし……と誰でも思うよな。俺も思ったよ。だけどハルヒは心の底から真剣だったんだ。それに気付いたときには俺の日常は、もうすでに超常になっていた――。
 第8回スニーカー大賞<大賞>受賞作、ビミョーに非日常系学園ストーリー!

【感想】


今やラノベ読者に限らず、オタク文化を好む者であれば知らない人はいないであろう超有名作品。
アニメ版は京都アニメーションの名を世に轟かせた、角川スニーカー文庫の看板タイトルです。

シリーズのファンは、国内にとどまらず、海外でも熱狂的なファンが多数存在しています。
さらには、作家志望者に多大な影響を与え、類似作品が山のように生まれました。
まさしく00年代ライトノベル業界の代表作品といっても決して過言ではないでしょう。

さて。
そんなメジャータイトルを今更感想を書かなくても、そこらじゅうに溢れかえっていますが、せっかくなので自分が感じたことを書き残したいと思います。

2011年の1冊目として読んだ今巻ですが、通算では5回目くらいの再読になります。
これだけ読みなおしたラノベは、他に1,2冊あるかどうか。
それだけ思い入れ深い特別な一冊です。

初読はアニメ放送第一期放送終了直後の2006年8月。
アニメ1話を見た瞬間にこれは絶対に面白いという確信を得ましたが、先に原作を読んでしまうとアニメが楽しめくなるかもしれないと思って、最終話を視聴するまで手をつけなかった思い出があります。
その判断が正解だったかどうかは分かりませんけど、当時の最新刊である「涼宮ハルヒの憤慨」までノンストップで読んでしまうぐらいハマりました。

内容については、アニメの作りが丁寧過ぎて、原作ならでは得られる充実感というのがほぼありません。
つまり、初見であるにも関わらず、既にほとんど把握済みという状態でした。
おそらく、自分みたいな人は大勢いたんじゃないかな。

何といっても特徴的なのが、主人公・キョンの語り口でしょう。
地の文が、流暢な喋り言葉でなだれ込んで来るのは、実に衝撃的でした。
これがハルヒの評価を決定づける上で、最も大きなポイントになっていると思われます。
事実、テンポの良さに病み付きになる人もいれば、嫌悪感を覚える人だっています。
ちなみに、言うまでもなく自分の場合は前者でした。

ライトノベルという分野において、この軽さは武器になります。
一つの文章における面白味を損なうことなく、サクサクと読める為、非常に心地良いんですよね。
登場人物が活き活きしているのも長所の一つですが、それもこの文体のおかげともいえます。
読者はキョンに同調することで、シンパシーを得ることができました。

キョンだけではなく、取り巻く仲間達も魅力的です。
我が儘なツンデレ娘であり台風のように騒がしいヒロイン・涼宮ハルヒを筆頭に、無口系キャラの王道を往く万能少女・長門有希、天然ロリ顔巨乳の癒し系お姉さん・朝比奈みくると、スタンダードが故に外れもない可愛い女の子達。
そして、キョンを除くと唯一の男子である二枚目・古泉一樹も含めた計5人の集まりは、中高生を中心とするラノベ読者にとっては憧れを覚えるほどのものでした。

第1巻となる今作では、まだキャラ紹介程度にしか話が進んでいません。
説明に量を費やし、ストーリーに関しては終盤にちょっとだけ進展するかなってレベルです。
とはいえ、セカイ系の基本的な骨格は形成されていて、完成度は間違いなく高いと思います。
これが新人作品だったわけですから、そりゃあ大賞を受賞するでしょうね。

イラスト担当は、これまたハルヒで名を馳せたいとうのいぢさん。
この作品が流行った理由の一つでもあるキャラ造形は、古さと新しさがミックスされたもので、テンプレ的な要素も踏まえつつ独自の色を出すことに成功しました。
挿絵は、渾身のイラストと比較すると、何気に結構粗かったりするので過度な期待は禁物です。

何度も触れすぎて素直な感想は書きにくくなってしまいました。
それでも、面白いといえる名作だと思います。
ラノベの入門書に相応しい本のうちの一冊ですね。

非日常に憧れる自由奔放な女の子と、それに振り回されダルそうな男の子のボーイミーツガール

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  涼宮ハルヒの憂鬱  谷川流  いとうのいぢ  評価A- 

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