バカとテストと召喚獣10.5
2013/06/12 Wed 23:15:10 [edit]
![]() | バカとテストと召喚獣10.5 (ファミ通文庫) (2012/09/29) 井上 堅二 商品詳細を見る |
【評価……A-】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★★★☆ … 9 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★★★☆ … 9 | バカ ギャグ ラブコメ | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
進路希望調査の記入内容に迷う明久・雄二・ムッツリーニの三人に、学園長が提案したのは召喚者の未来をシミュレートする新たな実験――「間に合ってます」「なんだいその反応!?」(正しい教師とのやりとり)。 とはいえ興味をそそられたFクラス面々は早速試してみることに……。 『僕と未来と召喚獣』他、明久と雄二を襲った衝撃の人格入れ替わり事件の顛末『僕と雄二と危ない黒魔術』など全4本でお贈りする青春エクスプロージョンショートストーリー第5弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
バカテスシリーズ通算15冊目、短編集第5弾。
美春と共に玉野さんが早くも表紙登場。
大躍進ですなぁ。
やっぱり、バカテスは短編集の方が面白い。
皮肉なことに、テストや召喚獣が関わらない方が、ギャグセンス抜群である作者の力を存分に発揮できるんですよね。
『僕と兄さんと謎の抱き枕』
高校見学にやってきた久保弟&土屋妹から見た文月学園の非日常的な学園生活。
兄が明久の抱き枕などを所有していることを知った久保弟が事実を確かめに調査しにやってくる話です。
情報収集に努める久保弟を嘲笑うかのように、生徒たちの吉井明久評が酷いw
誰に尋ねても一言目にバカと言われ、二言目に衝撃的な噂を流される始末。
それがあながち間違いではないのが、明久の明久たる所以なのでしょうがねw
久保弟は、作品内では稀にみる常識人なので、文月学園に関わらない方が彼にとっては幸せではないかな……。
『僕と雄二と危ない黒魔術』
バカテス版「ココロココネクト ヒトランダム」編。
怪しげな黒魔術により明久と雄二の人格が入れ替わってしまい、いつものメンバーを巻き込んだ一騒動が繰り広げられます。
もはや召喚獣のシステムすら関係のないファンタジー設定は少々突飛すぎる気がしましたね。
しかし、それすら気にならないほどに勢いが凄まじく、笑いが止まりません。
見慣れたやり取りのはずなのに、言葉のチョイスが絶妙で、何度噴き出してしまったことやら。
笑いの破壊力は、今巻最大でしたね。
玉野さんの行動がガチ過ぎて、ギャグで収まりきれなかったのはいかがと思うw
『僕と未来と召喚獣』
進路に悩む明久達の前に、学園長による召喚獣調整の実験が行われれる恒例の展開。
今度の召喚獣は、未来のシミュレートができるというもの。
これは興味深いエピソードでしたねー。
みんな身長が伸びたり、大人っぽくなったりしていて、外見的な成長が窺えます。
葉賀ユイさんのイラストを眺めることが出来ただけでも、この話は大成功でした。
20代中頃の明久には、今にはない余裕が生まれていて格好良かったですね。
『私とウサギと仄かな初恋』
吉井くんと瑞希ちゃんの過去話。
瑞希が事あるごとに匂わせていた明久に好意を抱くようになったキッカケですね。
それが遂に明かされます。
未来以上に有り得ないくらい美少年な明久がいる!
明るくて皆の輪の中心にいて、周囲に笑顔を振りまくクラスの人気者。
一体この天使のような子が、どうしてあんなにバカになってしまったんだ……。
まぁ、視点の関係から瑞希フィルターによる補正が強かったのかもしれませんが。
ネガティブな思考が常な瑞希ちゃんにとって、明久は眩しい存在だったでしょうね。
些細なことで喜ぶ二人が、微笑ましくてほんわかとした気持ちになりました。
それだけに意外なストーリー運びに少々驚きましたけど、この話、絶対裏側がありますよね。
美波の過去話が雄二視点でも語られたように、今度は明久視点で見せてくれそう。
▼ | ノンストップバカコメディの真骨頂は短編にこそある |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 バカとテストと召喚獣 井上堅二 葉賀ユイ 評価A-ココロコネクト アスランダム 上
2013/05/30 Thu 23:27:58 [edit]
![]() | ココロコネクト アスランダム 上 (ファミ通文庫) (2012/09/29) 庵田定夏 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | 青春 ラブコメ 家族愛 構成 SF | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 |
<ふうせんかずら>が五人に終わりを告げて四カ月。――その異変はクラスメイトから起きた。 唯の友人が、太一たち文研部を見て怯えるような態度を取り始める。さらに五人は、時折生徒の話し声が聞こえなくなるという不思議な感覚を味わう。終わらない現象に落胆しながらも、『他人から敵視される・隔絶される現象』だと推測するメンバー。しかし時を同じくして五人の中では一時的な記憶の消失が起こり始め……。 愛と青春の五角形コメディ。最終章、開幕。 |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
ココロコネクト最終章の幕開け。
ラストエピソードは、上下巻構成かつ厚めの本となっています。
不思議な現状を打破するため、あえて考えてこなかった原因。
何故<ふうせんかずら>は、文研部メンバーに特殊な環境を強いるのか。
語られなかった物語が、暴かれます。
正直、最後までスルーされる設定だと思っていたので、正面から取り組んでいることに驚きました。
この作品の売りは、SF設定ではなく、その状況下における人間関係と成長でしたので、どちらでも良かったんですよね。
これまでとは異なる展開に、新たな面白味がありました。
しかしながら、今回の話はスケールが大きくなりすぎた気がします。
元々<ふうせんかずら>の超常的な力に際限は見られませんでしたが、これはさすがにやりすぎかも。
もっともらしい設定付けはありますが、何でもありという印象は拭えません。
もう少し小規模で収めていた方が、変に引っかからずに読めたかな。
文研部に留まらず、事態が大きくなっていき、次第に絶望感が漂います。
必然的に行き詰まっていき、明日はどっちだ?という状態。
その中で、太一たちが見つけた光が、今までと異なるアプローチで良かったです。
いつの間にか登場人物同様に視野を狭められていて、作者にしてやられたなぁと思いました。
そうですよねぇ、敵か味方かといったら、味方に決まってますよねー。
たとえ前提が覆ろうとも、作品の根幹は変わらなくて安心しました。
上巻だけあって、説明描写多く、トラブルもちっとも解決していません。
それでも読了感が悪くない構成となっており、むしろ盛り上がってきたところで次回に続くので、非常に気になります。
デレばんを始め、キャラの魅力が出にくい話だったのは、少々残念かな。
シリアスでも構いませんが、真面目な話を繰り広げている最中にボケをかますのがイイ味出しているので、コメディ抑えめだったのは物足りなさを感じますね。
キャラが多くなったことで、掘り下げが浅くなってしまっているのも否定できません。
展開的にはテンプレート通りとはいえ、じわじわと湧き上がってくるかのような高揚感があります。
システム側、主催者、超常現象的存在などと対峙するストーリーは、やはり燃えますね。
▼ | 当たり前のように近過ぎて、だからこそ気付かなかったことに気付く話 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ココロコネクト 庵田定夏 白身魚 評価B+明智少年のこじつけ1
2013/03/09 Sat 23:59:08 [edit]
![]() | 明智少年のこじつけ1 (ファミ通文庫) (2012/01/30) 道端さっと 商品詳細を見る |
【評価……D】
発想 ★★★★☆☆☆☆☆☆ … 4 設定 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆ … 2 物語 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ … 1 人物 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ … 1 文章 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ … 2 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | ギャグ ラブコメ ミステリー | ★★☆☆☆☆☆☆ … 2 ★★☆☆☆☆☆☆ … 2 ★★☆☆☆☆☆☆ … 2 |
幼なじみの明智京太郎は、今日もお決まりの台詞をつきつける――「小林くん。キミがこの事件の犯人だ!」ってオレを犯人扱いすんのはもうやめろ! おまけに文美は「すごいわ、名推理!」なんて合いの手打つし二重ちゃんに至っては「兄さんをイジめないで」と叫んでドロップキックを繰り出す始末。なぜだ、被害者はオレなのに……。とにかく京太郎、お前はまず証拠をもってこい! 第13回えんため大賞優秀賞、その場しのぎのNEO的学園ミステリー。!! |
【感想】
第13回えんため大賞優秀賞受賞作品。
完全に地雷でした。
何故これを選出したのが理解できないぐらいに酷かったです。
正直、途中で諦めようと思ったのは、一度や二度ではありませんでした。
探偵役が好きな明智京太郎が、理不尽なまでに主人公・小林修司を貶める作品。
日常生活に舞い込んできた事件を、無理矢理小林を犯人に仕立てようとする京太郎がムカつく
こじつけどころか、理論も何もあったものではありません。
中二病を発症して手のつけられなくなった野郎で、ただ小林を苛めているだけです。
ギャグ?コメディ?笑えるシーンなんて見当たりません。
しかもそれが延々と続きます。
ストーリーに変化を付けられないのか、登場人物達の喚き合いをただ傍観するだけ。
京太郎を始めとしたキャラの言動に腹が立ちまくりです。
こうして読書感想を書いているだけでも、ムカムカしてきたくらいですよ。
京太郎の妹である二重が押し倒されているカラーイラストを見て購入したのが間違いでした。
結局、挿絵の方も微妙でしたからねぇ。
amazonの評価が星1つであることを先に知っていたら、手を出すことはなかったのになぁ……。
唯一評価できるとしたら、方向性や狙いといったコンセプトかなぁ。
こじつけで推理するミステリーという発想は悪くないと思います。
ギャグとしてもシリアスとしても面白さを感じられなかったのは、実力不足なのでしょうかね。
「えんため大賞」といえば、野村美月、井上堅二、庵田定夏らを輩出した実績のある賞ですが、ハッキリ言って看板に傷を付けたと思います。
少なくとも、今後世間的な評判を見聞きする前に、新人作品に手を出そうとは思わなくなりました。
文章もつまらないルビを多用しすぎてて辟易とします。
相当なことがない限り、作者の本は今後読むことはないでしょう。
▼ | 探偵を気取る少年から言い掛かりで犯人扱いされる主人公のギャグ小説 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 明智少年のこじつけ 道端さっと 春日歩 評価D“夕顔”ヒカルが地球にいたころ……2
2013/02/05 Tue 23:59:02 [edit]
![]() | “夕顔” ヒカルが地球にいたころ……(2) (ファミ通文庫) (2011/08/29) 野村 美月 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | ミステリー 恋愛 ツンデレ 期待感 | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
取り憑かれ、うっかり友達になってしまった幽霊のヒカルのため、その“心残り”を晴らす約束をした是光。ヒカルが示した次の相手は、内気な引きこもりの少女だった。 夜にだけ咲く儚い花のような少女、夕雨。閉じた世界で幸せに微笑む彼女と過ごすうち、徐々に放っておけない気分になる是光だったが……。 何故か約束の内容を告げないヒカル。そんな中、夕雨を不登校にした“怨霊”の噂が学園に甦る。その正体を前に、是光は――!? 大人気シリーズ第2巻、登場!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
源氏物語をモチーフにした淡く切ない、そして冷徹さを感じさせるシリーズ第2弾。
ひんやりと冷たい表面だからこそ、温もりが熱く実感出来るような作品ですね。
成仏し損ねたヒカルには、心残りのある女性が数十人いるらしい。
その中の一人、引きこもりの少女、奏井夕雨。
ヒカルと彼女の約束を果たすために、またしても赤城是光は人情で動くストーリーです。
物語が見事に練られていて、読み応えがあります。
ミステリー要素を含んだストーリー展開に振り回されるのが楽しい。
ヒカルの関係者は訳あり顔で慎重な姿勢を見せる中、強引に突破する是光が格好良いです。
やはり著者のキャラは掘り下げた分だけ、新たな一面を見せてくれますね。
しかしながら、ヒカルの肝心なことに関して黙秘する態度が気に食わない。
1巻でも指摘した部分ですが、あまりにも都合が良過ぎではないでしょうか。
言い訳らしきことも綴ってありましたけど、要するに結局是光のことを信頼していないわけです。
もちろん、ヒカルが隠していた事実が驚愕もので、最終的に語ることが出来なかった理由が判明するのでしょう。
それは分かっていても、是光に秘匿して裏から誘導しているように見えるヒカルの姿勢には納得がいきませんでした。
夕雨のキャラクターは、男性受けしそうだなと思いました。
か弱い存在で守ってあげたくなるような儚さを併せ持つ少女で、庇護欲をそそられます。
繊細で、しかし心に滾る想いは強くて、彼女の魅力がいっぱい詰まった内容だったと思います。
個人的には前回の葵の方が好きなので、出番がほぼなかったのが残念でしたけどね。
その代わりといっては失礼ですが、帆夏が素晴らしいツンデレっぷりを見せつけてくれました。
まさかこんなに早くデレデレになってくれるとは。
彼女の視点になった途端に、雰囲気がガラリと変わりますね。
素直になりきれずに葛藤する女の子は、もどかしくてたまりません。
是光にハーレムを形成する素質があると見込んで、ヒカルは取り憑いたのだろうか?
順調に女の子を囲みつつある是光は、一刻も早く女心を理解するべきだと思います。
この世界観では、下手すると刺されかねないですよw
最後の引きは強烈でした。
次巻の展開が非常に楽しみです。
▼ | 引きこもり少女に外の世界を見せたくなった主人公が彼女の過去に介入する話 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ヒカルが地球にいたころ…… 野村美月 竹岡美穂 評価Bバタフライ×ブレイクダウン 1 君が世界を救うというなら
2013/01/16 Wed 23:58:27 [edit]
![]() | バタフライ×ブレイクダウン 1 君が世界を救うというなら (ファミ通文庫) (2012/05/30) 佐々原史緒 商品詳細を見る |
【評価……B-】
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 設定 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 物語 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 人物 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | SF ラブコメ コメディ | ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
祐吾の前に突然“空から降りてきた”少女、桜庭せせりは未来から来た「時軸修復士」だった。 何でもこの時代の些細な出来事が巡り巡って未来の世界滅亡に繋がるのだと! ところがそれを阻止するための彼女の任務は恋のキューピッド役など何かと地味。果ては「はぁ!?トップアイドルの○○を××する!?」「協力してください!」「え?ま、任せとけ!ってか、そんなんで人類助かるの!?」 時代を越え運命を越える、崖っぷちのボーイ・ミーツ・ガールズ!! |
【感想】
「暴風ガールズファイト」の佐々原史緒さんが紡ぐ新たな物語。
未来から来た少女の手助けをすることになるタイムトラベル&ラブコメ作品。
タイトルは、バタフライエフェクト、又はバタフライ効果から。
日本人的には「風が吹けば桶屋が儲かる」の方が馴染み深いのかもしれません。
現代の些細な出来事が遠い未来で世界滅亡に繋がることを知った主人公・岡崎祐吾は、おっちょこちょいな時軸修復士・桜庭せせりに頼まれて世界滅亡を阻止する協力をすることになるストーリー。
読書中はそれなりに面白かったけれど、振り返ってみるとあまり印象に残るものはなかったかぁ。
良い意味でも悪い意味でも。
設定的にどんな無意味に見える任務であろうと実は意味として成すというのは、作者としては楽でしょうね。
好きなように話を弄りたい放題ですから。
しかし、何でもありだからこそ、物語の主軸を作り辛いのかもしれません。
遠い未来の結果を防ぐために、現代の関連なさそうな事象を食い止めるというのは、眼前の目的がどうしても希薄となってしまう傾向にあります。
ギミックとしては定番ではありますが、現代人の主人公側に危機感が足りないので、シリアスにはなりきれません。
おそらく狙ってコメディ重視の作品としているのでしょうね。
実際、祐吾とせせりのやり取りはなかなか楽しめました。
一見おっとり系の可愛い女の子に見えるせせりが、パワフルで豪快な性格で祐吾を振り回すのが面白い。
若干天然気味でポカをする彼女は、やるべきことに一生懸命で憎めませんね。
妙に思考が根暗だったり極度に自虐的だったりするのも良いスパイスになっています。
もう一方のヒロインである高峯揚羽は、見た目通りのツンと澄ました少女でした。
トップアイドルである彼女との関わり合いで芸能界の裏側などが描かれているわけですけど、何だかそちらの方がメインとして相応しい舞台だったような……。
彼女が所属するアイドルグループの面々も個性的で面白かったですし。
文章センスはさすがですが、ちょっと流行を意識し過ぎかな?
もっと作者自身の色を出しても良いのではないかなと思いました。
イラストは、H2SO4さん。
カラーイラストの女の子達が煌びやかで目を奪われました。
そのぶん挿絵になると、ちょっと魅力が落ちてしまうのは残念でしたが。
どうやら事情により2巻が最終巻となってしまったようですね。
伏線散りばめているけれど、回収できているのかなぁ。
▼ | 世界の未来を救うために少年少女が芸能界の裏側でアレコレする話 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 バタフライ×ブレイクダウン 佐々原史緒 H2SO4 評価B-“葵”ヒカルが地球にいたころ……1
2012/12/25 Tue 23:58:57 [edit]
![]() | (2011/05/30) 野村 美月 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | ミステリー 恋愛 ツンデレ 期待感 | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
「心残りがあるんだ」 恋多き学園の“皇子”ヒカル――その幽霊が、是光の前に現れそう告げた。 このまま幽霊につきまとわれ続けるなんて冗談じゃない!と渋々“心残り”を腫らす協力をすることにした是光だが、対象の左乙女葵――“葵の上”と呼ばれる少女は、頑なに話も聞こうとせず、生徒会長の斎賀朝衣にも不審がられ、敵視されるハメに。 そんな時、ヒカルの死にまつわるある噂が聞こえてきて――!? 野村美月が贈る、ミステリアス現代学園ロマンス、堂々開幕!! |
【感想】
大人気ラノベ「文学少女」シリーズの野村美月×竹岡美穂のコンビで贈る新シリーズ。
満を持しての登場です。
著者の作品は、何故か読み始めるのに労力を要します。
「文学少女」も評判が良いと知っていても、なかなか手を出しづらかった記憶があります。
何となく面白そうというよりも面倒臭そうだというイメージが先行するんですよね。
一番最初に読んだ「天使のベースボール」がトラウマにでもなっているんだろうか……。
そんなわけで、発売直後に購入しておきながら、本作を読み始めたのは、シリーズが開始されて1年以上経ってからでした。
比較的余裕のある時期に、ガッツリと読書したいなと思って手を付けてみたわけです。
やはりというべきか、予想外というべきか。
積んでいたのを悔やむくらい、非常に面白かったです。
初めて「文学少女」を読んだ時の作品内に引き込まれる感覚をまた味わうことが出来ました。
設定上はありふれたものです。
主人公の赤城是光は、見た目でヤンキーだと勘違いされ、中身も少々粗暴により、周囲から浮いた存在だった。
大して親しくもない学園の皇子である帝門ヒカルの葬式に参列した際に、何故か幽霊のヒカルに取りつかれてしまう。
ヒカルは心残りが解決しないと成仏出来ないらしく、是光は仕方がなく付き合うことに。
その心残りとは、ヒカルにとって大切な女性である左乙女葵への約束を果たすことだった。
しかし、とりあえず女性なら誰にでも色目を使うヒカル、女に興味がなく無愛想な是光とでは、相性は最悪で、トラブルがばかりが起きてしまう。
果たして、是光はヒカルの代わりに葵との約束を遂げることができるのか――というストーリー。
モチーフである「源氏物語」をミステリアスな少女漫画風に現代アレンジした感じ。
第1巻の物語の本筋は分かりやすく、単純であるがゆえに牽引力も相当です。
長編シリーズの導入しては、上手く調理しており、成功している部類に入ると思われます。
その一方で、裏に流れる長編の伏線は、出し惜しみしている感が強いですね。
それもこれも主人公側であるヒカルが何かを隠しているのが原因です。
是光に語れない理由でもあるのかもしれませんが、是光にとってみればはた迷惑な話ですよ。
幽霊物の醍醐味は、やっぱり他人の情報を有り得ない方法で入手できる点でしょう。
無関係だったはずの是光が、ヒカルのことを誰よりも知っている状況は面白い。
葵や他の女の子に誤解されてしまうところはヤキモキし、逆に巧く事が運ぶとニヤニヤ出来ます。
ヒロイン役としてはメインの葵よりも式部帆夏の方が魅力的に映ります。
是光と衝突を繰り返しながらも接近する帆夏は、所謂ツンデレ娘で、彼女のモノローグが挿入される章だけは、一気にラブコメモードに突入します。
「文学少女」のななせの系譜に連なる少女ですから、ななせファンは好きになるはず。
少々周りくどい文章は相変わらずで、好みは分かれそうですね。
まぁ、竹岡美穂さんのイラストとの相性は抜群だと思います。
また長い物語を楽しむことが出来そうです。
これからどのように展開するのか楽しみ。
▼ | 死んだ少年と残された少女の間を取り持つ巻き込まれ型お節介系主人公の奮闘が光る |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ヒカルが地球にいたころ…… 野村美月 竹岡美穂 評価B+ココロコネクト ステップタイム
2012/10/15 Mon 23:59:32 [edit]
![]() | ココロコネクト ステップタイム (ファミ通文庫) (2012/06/30) 庵田定夏 商品詳細を見る |
【評価……A-】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★★★☆ … 9 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | 青春 ラブコメ リア充 | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★★☆ … 9 |
お付き合いするということは、二人の仲が進展するということ――生まれて初めて恋人ができた桐山唯は悶えていた。それを見かねた親友の雪菜は太一&稲葉、中山&石川を巻き込んだトリプルデートを計画して……!? 戸惑いの初デートから、五人が互いの第一印象を語る創部ヒストリー、稲葉と伊織の友情秘話に藤島麻衣子と1年生コンビが立ち上げたプロジェクトの全貌まで! 愛と青春の五角形コメディ、美味しいところを詰め込んだココロコレクト第2弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
ココロコ短編集「ココロコレクト」第2弾。
恋あり友情あり、シリアスありコメディあり。
過去話から最新話まで、文研部2年生5人以外にも見せ場が用意された幅広い内容となっています。
以前より告知されていました最終章の目前として相応しいラインナップだと思います。
表紙絵は、太一&稲葉んのカップルに他2名。
稲葉んの表情が完全に恋する乙女で、初期のクールなイメージはどこへやらという可愛さ。
背まで縮んでしまったかのように見えますね。
短編の中身も稲葉ファンとしては嬉しい展開が多くて堪能させていただきました。
ちゃっかり最前列でカメラ目線の藤島姐さんはさすがです。
そして今回の短編集でまるで関係のない妹の莉奈が登場しているのはファンサービスなんでしょうかね。
「ファーストエンカウンター」
タイトルから察することが出来るように、文研部の創設が語られるエピソード。
八重樫太一・稲葉姫子・永瀬伊織・桐山唯・青木義文の5人それぞれの視点から各人物に抱いた印象をモノローグで綴られています。
まだ出逢って間もないということで、距離感の掴めない皆の様子が初々しい。
しかし、既にこの頃には部の雰囲気は雛型が完成しており、仲良くなることが約束されていたかのよう。
まるで記憶消失されたループ物かのように自然と馴れ合っているんですよね。
実は、ふうせんかずらによって現象が起きた2回目以降の世界なのかと思うのは疑いすぎかな。
それにしても、「ヒトランダム」で伊織は相手に合わせてきたとドヤ顔で太一に告白しましたが、みんなにバレバレじゃねーかw
「ふたりぼっちの友情」
伊織と稲葉んの友情秘話。
対外的に仮面を被っている節のある似た者同士の二人が、本物の友情を育むキッカケとなった1年生の頃のストーリーです。
意外と精神面が脆い二人が、窮地に立つことで互いの心を曝け出す展開は、ココロコらしい。
たとえ不思議な現象が起きてなくても、少女達の成長物語というコンセプトは変わらないですね。
「デート×デート×デート」
伊織と雪菜が見守る中で行われる太一&稲葉、青木&唯、石川&中山のトリプルデート話。
唯と中山が不甲斐ないと雪菜が憤り、デートしろと発案したのが事の始まり。
青木や石川は彼氏として頑張っているのに対し、唯と中山は可哀想になるくらいテンパってますね。
ガチガチに固まっていて、ミスしたことに落ち込み、初々しさを通り越して痛々しい。
それに比べて、太一と稲葉のカップル指数は、さすが数々の関門を乗り越えてきただけのことはあって、まだ付き合い始めて半年とは思えない程の安定感ですね。
稲葉んが太一と二人っきりのときだけ自然体で、少しだけいつもより表情や会話が柔らかいところにトキメキを感じずにはいられません。
口絵にファッションチェックがありますが、ここも稲葉んの圧勝すぎる。
まぁ好みはあるんでしょうけどね。
「この我が道を行く疾走」
時系列としては最新のエピソード。
文研部2年生のリア充っぷりをまざまざと見せつけられた紫乃と千尋が、藤島と組んで「リア充とは何か?」を改めて研究する一風変わったお話。
藤島麻衣子視点で心情が描かれており、彼女の真意がどこにあったのかが分かる貴重な短編でした。
妙なところだけ鋭く変に鈍感だから、春が訪れるのは時間が掛かりそうだなぁ。
次回以降に迎える転機を不安感いっぱいに煽っていますね。
ココロコシリーズは、毎度引きが強烈だなー。
▼ | 現象が起きないからこそ人間関係が生々しく描くことが出来ている短編集 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ココロコネクト 庵田定夏 白身魚 評価A-暴風ガールズファイト2
2012/06/29 Fri 23:59:43 [edit]
![]() | 暴風ガールズファイト 2 (ファミ通文庫) (2007/12/25) 佐々原 史緒 商品詳細を見る |
【評価……A-】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★★☆ … 9 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | 青春 スポコン 燃え 友情 構成 | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★★☆ … 9 ★★★★★★★★★☆ … 9 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
グラウンド、ユニフォーム、チーム名をGETし意気揚々の、ラクロス同好会改め≪聖ヴェリタス ロッソ・テンペスタ≫。 校外合宿と公式戦出場を目指し、次に狙うはオージーからの不思議な留学生カレンと、ヴェリタスの王子こと九條香月(とそのお供)!ミッション遂行のため、級長様の謀略が冴え渡る!?ああコワいですわ! 「コラーっ、宮前!それじゃわたしが悪者みたいじゃん!」(by広海) 合宿・特訓・肝試し!?体育会系美少女グラフィティ第2弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
嵐を撒き散らす女子ラクロス部の熱血スポコン小説、第2巻。
何という熱い戦い。これは燃える!
遂に部員が集まり、正式なクラブとして昇格したチーム≪ロッソ・テンペスタ≫。
合宿でスキルアップした彼女達は、念願の公式戦出場を果たす。
一度敗れたらお終いとなるトーナメント方式で、目標の日本一を目指す王道ストーリーです。
これぞ正統派スポコン小説でしょう。
とにかく感情そのものが生で発露する感覚といいましょうか。
声、汗、涙……。
彼女達が叫ぶと、こちらまで叫び出したくなるようなシンクロ率。
麻生広海の一人称で語られる心情は、ダイレクトに読者の心をガッチリと掴んで離しません。
多種多様な女の子が登場し、いずれも魅力的なキャラであるこの作品。
新たな部員が増えても、埋もれてしまうどころか、パワーアップしています。
ラクロス経験豊富なオカルト趣味の留学生、カレン・バクスター。
女子校にありがちな王子系キャラ、九條香月。
その九條の取り巻きであるミーハーな、高梨光葉&明葉の双子姉妹。
個人的には好きなのは、不思議な観念を片言の日本語で話すカレン。
ちょっと浮いた感じが、グループ内のポジショニングとして面白い位置に収まっていますね。
我が強いメンバーの中で、ふわふわとした怪しさがイイ味を出していました。
エピソード的には、九條と小坂の掘り下げが良かった。
一人一人の個性を蔑ろにせず、キッチリと物語に絡めてくれるところに完成度の高さを感じさせます。
本当にかる~く漂わせる恋愛臭も嫌いじゃありません。
昨今の作品だと百合に走りがちなところなので、むしろこの方向性は大歓迎ですね。
相変わらずまとめ役の麻生さんと、一番を譲れない宮前の黒さがイイなぁ。
いつの間にか麻生さんと相棒役みたいになった長谷川が抑え役となっているのも面白い。
そして、何と言っても評価したいのは、ラクロスの試合描写でしょう。
三人称ならまだしも、一人称でライブ感溢れる展開を見せられるって相当だと思うんですよ。
スポコン漫画は大好きでよく読むんですが、ラノベでは何故か取り上げられにくい題材なんですよね。
確かに、表現上、絵的な効果が大きいために扱われにくいとは思うんです。
更にいえば、スポーツ物を書ける作家が少なかったのではないでしょうか。
あくまで設定や舞台装置にスポーツを利用しただけのコメディだったり、萌えだったりすることが多数見られます。
それはそれで構いやしませんが、ガチの熱血系作品はなかなかありません。
その観点において、佐々原史緒さんの姿勢は、情熱を注ぎ込んでいるのが読み手に伝わってくるぐらい熱いもので、大変貴重なものです。
ブログで感想を書き始める前から読んできたラノベ歴で、最も楽しかったスポコン小説でした。
3巻の予定がないのが残念すぎます。
おそらくそれを理解しての執筆だったんでしょうね。
若干ながら、端折った部分もありましたし。
今からでも遅くはないので、続きを出して欲しいなぁ。
▼ | 一つ一つのプレーに一喜一憂できるスポーツの醍醐味が詰まった熱血青春モノ |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 暴風ガールズファイト 佐々原史緒 倉藤倖 評価A-暴風ガールズファイト
2012/06/19 Tue 23:59:48 [edit]
![]() | 暴風ガールズファイト (ファミ通文庫) (2007/09/29) 佐々原 史緒 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 挿絵 ★★★★☆☆☆☆☆☆ … 4 | 青春 スポコン 燃え 友情 | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
マリア様が見守る聖ヴェリタス女学院。高等部に進学した麻生広海は、親友との別れによる喪失感と何ら変わり映えのしない高校生活を前にすでに鬱屈していた。 ところが!そんな広海の前に吹き荒れる五十嵐千果というちびっこい嵐!巻き込まれるがままなぜか高校ラクロス日本一を目指して立ちあがることに!……ってつーかラクロスって何よ?ウチにそんな部あったっけ?? 汗と涙とド根性!空前絶後の美少女スポ根グラフィティ、待望の試合開始! |
【感想】
カトリック系女子校でラクロス部を設立し、青春を捧げんとする乙女達のスポコン小説。
同好会を部へと昇格させるために、少女達が汗水流す燃える作品となっています。
面白かった!
いやー、良い物を読ませて頂きました。
第1巻が刊行されたのが2007年9月。
最初に注目したのは「このライトノベルがすごい!2009」にて上位にランクインしたときでした。
名前すら知らない作品だったこともあり、興味が湧いてすぐに購入したことを覚えています。
しかし、それから読もうとする気分になかなかならず、3年半以上も積んでいました。
次のキッカケは、「ショートストーリーズ 3分間のボーイ・ミーツ・ガール」。
ファミ通文庫の作家陣による短編集にて、著者の作品はクオリティが頭一つ抜けていました。
綺麗な文章と淡々しい雰囲気に心を揺さぶられました。
作者の名前を覚えようとしたところで、本書の作者であることに気が付いたというわけです。
ミッションスクールが舞台のラノベといえば、やはり「マリア様がみてる」を思い出します。
女子校という環境が百合を連想させますが、この学校に登場する少女達はそんな甘い雰囲気など持っておりません。
クールな委員長キャラかと思いきや、中身は計算高くて腹黒い麻生広美を主人公に構えている時点で、生温い空気は早々に吹っ飛びます。
エスカレーター式に進学する生徒が大勢締める中で優等生を演じていた彼女が、高校から入学してきた帰国子女・五十嵐千果の超絶的なエネルギーの渦に巻き込まれて、仮面がボロボロと剥がれていく展開が楽しい。
ラクロス日本一を目指す五十嵐が生み出す大きなうねりに引き込まれるようにして、次々と個性豊かな仲間が集まっていく流れが、実に爽快かつ愉快です。
生まれも育ちも完璧お嬢様でありながら、本性は言葉使いが物騒なほどの負けず嫌い・宮前雪乃。
大阪から転入してきたサブカル事情に詳しい・嶋あかね。
先輩を敬う気持ちが欠けている礼儀知らずなグラマラス中学生・小坂依奈。
数少ないスポーツ経験者で真面目な常識人・長谷川悠里。
おどおどした性格の部長・大西くららと、彼女をサポートするクールビューティーな黒田苑子。
まだ本来の女子ラクロスに必要なプレイヤー数は確保できていませんけど、それを補って余りあるキャラの濃さとパワーに圧倒されます。
ワイワイと賑やかに騒いでいても、一人一人確固とした存在を放っているので、キャラが潰れてしまうなんてことはありません。
個人的なお気に入りは、どんどん黒くなっていく麻生さん。
人間関係において、ナチュラルに上側のポジションにつくこの娘の呼称は、さん付けがよく似合いますw
部員集めに紙幅を費やしているため、試合に割くページはそれほど多くはありません。
それでも短いながらも詰め込まれた熱気に汗が伝わってくるようで、夢中になって読み耽りました。
安易にキャラ推しで構成する展開にしておらず、スポコン物として熱くなれるのは貴重です。
スポーツは、ご都合主義を取っ払った汗と涙と情熱で燃え上がるのが至高であると考えているので、本作は非常に楽しめました。
上記に記述した通り、文章に惹かれて買ったわけですが、思っていたのとはちょっと違いましたね。
冒頭を読んだ時、買ったのは失敗だったかな?と疑ってしまいました。
というのも、背景描写の不足を節々で感じ取れるからなんですよ。
麻生広美の一人称で語られるため、死角が生まれやすく、行き届いていない部分が多々あります。
5H1Wのうち、who、when、whereの記述が明らかに足りません。
特に舞台が不鮮明であると、頭の中で想像がし辛くなってしまい、もどかしくなります。
ラクロスの知識は、ほんの少しだけあったので、一応問題なく想像出来ました。
全く観たことがない人にとっては、イメージが湧き辛かったかもしれません。
その一方で、会話の前後に誰が喋っているのかという説明は、半分以上カットされているといっても過言ではないのに、こちらは驚くほどに把握しやすくなっています。
語尾で色分けするような単調さではなく、自然と言葉使いに差をつけており、口調で判断出来ます。
まさにキャラが生きているような感覚で、声色の違いを読み取ることが出来ました。
数年前の作品なので、ここから更に腕を磨きあげていったのかもしれませんね。
イラストは、正直なところ残念な出来です。
表紙やカラーイラストで損をしている部分は、何割かあるでしょう。
まだ挿絵は良い絵も混ざっていたりするので、惜しいなぁと思います。
2巻で打ち切りにされてしまっているのが、とても悔しいですね。
そうだとしても読むことが出来て良かったと思いますし、お勧めもしたくなる作品ですね。
▼ | 嵐の名を持つ少女に巻き込まれた少女達がスポーツにのめり込んでいく熱血スポコンラノベ |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 暴風ガールズファイト 佐々原史緒 倉藤倖 評価B+ココロコネクト ユメランダム
2012/05/14 Mon 23:59:28 [edit]
![]() | ココロコネクト ユメランダム (ファミ通文庫) (2012/02/29) 庵田 定夏 商品詳細を見る |
【評価……A-】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★★☆ … 9 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | 青春 ラブコメ | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
修学旅行を控えた9月末、太一たち二年生には進路調査票が配られていた。 部室で将来を見据えて語るメンバーを見て、一人焦りを覚える太一。 そんな時、「――これで最後です」と<ふうせんかずら>が終わりと始まりを告げる。 山星高校全員の願望が見える、その現象を危惧した稲葉は何もしないことを部員たちに強要。 しかし見捨てることはできないと主張する太一と唯、反対派の稲葉と青木で意見の衝突が始まって……。 愛と青春の五角形コメディ第6巻! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
不思議な現象に巻き込まれるたびに成長する少年少女の青春ラブコメディ、第7巻。
アニメ化に続き、ゲーム化も発表され、名実ともに人気シリーズとして相応しくなってきました。
本当に面白い作品だなぁと、しみじみ思います。
<ふうせんかずら>より告げられた最後の現象『夢中透視』は、二年生5人に力が宿るものだった。
その力は、文研部以外の山星高校に在学する者すべての願望を見通すという。
他人の手助けを積極的に行いたい自己犠牲野郎の太一や、見て見ぬ振りが出来ない唯は、力の行使を主張するが、稲葉と青木は異常な方法で手に入れた情報に手を出してはいけないと反対する。
意見の食い違いにより文研部の空気が怪しくなっていく――というストーリーです。
数々の苦境を乗り越えたことで、10代とは思えないほどの精神力を身に付けた文研部メンバー達。
一年生の千尋や紫乃と比べると、もはや隙など見当たらないのではないかと思っていました。
ところが、強固な絆だからこそ、僅かな綻びが深刻な裂け目となってしまいます。
第1巻の「ニセランダム」の時からこの構想を練っていたんでしょうか。
どちらにせよ物語の流れが計算付くとなっており、感服するしかないですね。
毎回誰かしらがズタズタのボロボロまで追い込まれますが、今回は太一の番でした。
かつてないほどに失敗を繰り返す太一に、何度モヤモヤとさせられたことやら。
自己犠牲野郎の言葉で片付けられていた太一の本質を、更に一歩踏み込み暴く展開はさすが。
どこまでも青く、だからこそ一皮剥けたときの輝きは、羨むぐらいに眩しい。
一人では越えられない壁も、かけがえのない友となら越えられる、なんて青臭くて言葉に出すのも恥ずかしくなるようなことを体現している彼らは、まさに青春してますね。
太一の問題は作中で散々掘り下げられましたが、今回の件のキッカケは、稲葉だったと思います。
議論すら取り合わず、独裁的に話を完結させようとしたのがそもそもの始まりでしょう。
太一の危うさを理解していながら……いや、理解しているからこそなのか、反論を許さない姿勢で『夢中透視』の力を使わないよう強制したのが、拗れてしまった原因でした。
二人とも頑固だからなぁ……。
結局、人は身近な人間、もしくは自分に影響を与える人間のことしか考えられないんですよね。
そして、それは概ね正しいと思います。
名も知らない人の不幸よりも、大切な人間の幸せを願っても何も悪くないですし、当然でしょう。
そこへ思考が至ったキャラがいなかったのが惜しい。
正直、青木家の件については、太一たちが責められる筋合いはなく、むしろ正当な判断が出来る状況を作り出したと褒めらるべきことです。
要するに、客観的に見えて感情論で語っているのは、稲葉も青木も同じなわけで。
力が芽生えてしまった以上、力を使用するにしても見なかったことにするにしても、己の基準で判断するしかないわけですよね。
幸い、伊織が慎重派で中間を担ってくれましたけど、空中分解してもおかしくなかった。
それぐらい極論のぶつけ合いで、もう少し柔軟に対応すればいいのにと思いました。
藤島の存在感が半端じゃない件については、もう藤島だから仕方がないで説明がつくと思うw
何だか彼女だけ別の軸で動いているかのような独特感がありますよね。
挿絵は脇役メインで物足りませんでしたけど、その代わり表紙が良かったです。
対立している4人と中心に佇む伊織が、作品の内容を見事に捉えていました。
恋愛事情に関しては、大きな進展があった割には、晴れ渡るような解放感はあと一歩だったかなぁ。
良かったのは間違いないんですけど、読者視点で対立関係を引きずって読んでしまいました。
本編は次で最後のエピソードだそうですが、とんでもない展開になりそうな爆弾が……。
それでも彼や彼女ならば、きっとどんな苦難も乗り越えて、ハッピーエンドになるはず。
そう信じられるだけの成長を果たした巻だったと思います。
▼ | 少年が己の本質から逃げずに向き合い、初めてスタートラインに立つ話 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ココロコネクト 庵田定夏 白身魚 評価A-龍ヶ嬢七々々の埋蔵金1
2012/05/08 Tue 23:59:31 [edit]
![]() | 龍ヶ嬢七々々の埋蔵金1 (ファミ通文庫) (2012/01/30) 鳳乃一真 商品詳細を見る |
【評価……B-】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 物語 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 人物 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | 浪漫 ラブコメ ミステリー 構成 期待感 | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
「八真重護、島流しの刑に処す」と親父に勘当された俺を待ってたのは人工学園島の極貧生活と、激安アパートの美少女地縛霊だった! その名も龍ヶ嬢七々々様、生前はGREAT7の中心人物だったが今やネトゲ三昧のニート地縛霊。コレって一応美少女と同棲?俺、始まった!?否、始まったのは島中に隠された≪七々々コレクション≫を巡るノー冒険・ノ―ライフな争奪戦の日々!! 第13回えんため大賞「大賞」受賞の奇想天外トレジャーハント・ロワイヤル!! |
【感想】
第13回えんため大賞<大賞>受賞作品。
「吉永さん家のガーゴイル」以来、8年振りとなる<大賞>となります。
家業を継がないと宣言した途端に勘当された主人公・八真重護は、文字通りの島流しに遭う。
辿り着いた先は、≪学生特区≫とも呼ばれる学生のための施設が充実した学園島だった。
極貧生活を強いられた重護に選択の余地はなく、格安の物件を紹介されたところ、そこは美少女地縛霊が住む部屋だった……という展開。
なるほど、大賞に選ぶ理由も納得できる魅力的な本でした。
様々な要素が入り乱れつつも、最低限まとめるべきところでまとめていると思います。
並みの新人ならば、ここまで詰め込んだ段階で破綻してしまっているでしょう。
タイトルにナンバリングある通り、最初からシリーズ化が約束された作品です。
それこそ埋蔵金のように随所に伏線が埋められており、期待感を存分に煽ってくれます。
とはいえ、風呂敷を広げるだけではなく、しっかりと土台となる部分で物語を完結させていることに好感を覚えますね。
地縛霊・龍ヶ嬢七々々が生前に島のどこかへ隠した埋蔵金こと≪七々々コレクション≫を探し出すというコンセプトが目新しくて面白い。
チート的能力を持つアイテムに目を眩んだ人間や組織が暗躍し、こぞって宝探しを始めます。
二転三転する痛快なドタバタコメディのタッチに描かれるため、陰湿さはありません。
少年心をくすぐるドキドキワクワクさせられるアドベンチャー小説というのは、最近なかったですね。
エンターテイメント作品として生み出された物語というのが、良く分かります。
登場人物が多い割には混乱することなく、一人称で群像劇が楽しめますね。
ただ、キャラ描写には偏りがあります。
特に表紙とタイトルを飾る龍ヶ嬢七々々が、大して出番がないところが活かしきれてないなと感じました。
地縛霊という設定はインパクトがありますが、場所移動できないのが致命的に物語を動かしにくいですね。
単なる一発ネタとは考え辛いですし、何かしらの意図があるんでしょう。
一方で本当のメインヒロインは彼女ではないかと言わんばかりに活躍するのが、名探偵・壱級天災。
常に自信を漲らせ、例え周囲から馬鹿にされようが探偵を夢見る突き抜け具合が格好良い。
天災に限らず、この作品のキャラは一貫した信念を持っていて、気持ちが良いですね。
重護の父親の台詞一つを取ってみても、潔くて痺れます。
難点もいくつかあります。
焦点がブレる物語、地味な脇役、ライト感覚であやふやな設定などなど。
素材は良くても調理がたどたどしく、面白いとは思ったシーンも飛び飛びで、読むのに時間がかかりました。
同じく過去のえんため大賞受賞作「ココロコネクト」「空色パンデミック」などと比べると完成度は明らかに劣ります。
ですが、磨きあげると輝き出す原石という意味合いで<大賞>を受賞したということならば、相応しいのではないでしょうか。
面白そうな仕掛けを用意したんですから、今後のハードルは高いですよー。
▼ | 大人も子供も関係なく不可思議な道具に魅せられて追い求める冒険小説 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 龍ヶ嬢七々々の埋蔵金 鳳乃一真 赤りんご 評価B-ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! Extradisc
2012/05/03 Thu 23:52:44 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! Extradisc (ファミ通文庫) (2011/11/30) 田尾典丈 商品詳細を見る |
【評価……B-】
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 設定 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 物語 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 人物 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 文章 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 | ラブコメ SF 燃え | ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 |
大人しい理恵が本気モード全開で誘惑!?『おさななじみとすることぜんぶ』、間違えてFPSを現実に反映させてしまった、ある男の物語『運命歪曲のエクスチェンジ』、世界統合により平穏を取り戻した武紀たち、春海の卒業が近づくにつれ、皆それぞれの進路を意識しはじめ――『それぞれの未来』他、『シルバーブレット』のラストエピソードを含む短編2編を加えた全5編でお贈りする『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』終焉を飾るエクストラ短編集!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」シリーズ、本当に本当の最終巻。
「Extradisc」の名の通り、外伝、番外編、後日談などごっちゃ混ぜにした短編集となっています。
本編最終巻である8巻を読んだ後だと、少々蛇足っぽく感じてしまう内容でしたね。
雑多なため、まとまりを欠くのは置いといても、物語の芯が弱く感じました。
キャラが好きで読んでいる人ならば、おそらく好意的な解釈がとれると思うんですがね。
最も期待していた外伝「シルバーブレット」のエピソードが、あらすじを読んでいるような印象を抱くものとなっており、盛り上がりきれなかったのが痛かった。
武紀サイドの話を飛ばして、秀之サイドのみで展開し、ストーリーをただ追っているだけのような形となっているため、淡々としたものとなっています。
内容も大して量があるわけでもありませんし、これなら本編最終巻に挿入して欲しかったなぁ。
秀之の決意は、並々ならぬものがあり、もっと燃えてもいいバックボーンが確立できていただけに惜しい。
武紀よりも年上だからというわけじゃないですが、秀之はオールドタイプの主人公だなと改めて実感しました。
たった一人の大切な女性のために、自らの身を顧みず貫き通す意志の強さは、男が惚れる格好良さですね。
武紀も決して嫌いじゃないですけど、秀之の方が年齢的にも感情移入がしやすかったです。
「運命歪曲のエクスチェンジ」は、FPS世界を投影してしまった番外編。
ここにきてゲストキャラの主人公とヒロインで短編一本作られてもなぁー。
意欲作だったとは思われますが、個人的にはイマイチな出来でした。
そして後日談を描いた「それぞれの未来」で幕が閉じます。
春海の卒業が迫る中、それぞれの進路を思い浮かべ、歩み出すというお話でした。
超常的な現象と打って変わって現実的な問題に悩む面々を見て、平和になったんだなぁと思いましたね。
相変わらず武紀は気負いすぎている感がありますが、これからはきっと周りのみんながセーブしてくれるでしょう。
出番が少なくて残念でしたが、愛子は特に良いストッパーとなっている気がします。
設定的なフォローも幾つかありました。
ただ、突っ込むといくらでも粗が出てきそうなので、何となくで楽しむのが得策でしょうね。
長かった「ギャルゲヱ」シリーズも、これにて完結。
2,3巻の時点では、ここまで継続して購読できるとは思ってみませんでした。
ブレイクはし損ねましたけど、少なくとも自分にとっては良作だったといえます。
田尾先生の次回作にも期待をして待ちたいなと思います。
▼ | 外伝の最終章と本編の後日談がセットとなった追加ディスク風な一冊 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価B-バカとテストと召喚獣10
2012/04/25 Wed 23:59:51 [edit]
![]() | バカとテストと召喚獣10 (ファミ通文庫) (2011/12/26) 井上 堅二 商品詳細を見る |
【評価……B-】
発想 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 設定 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 物語 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | バカ ギャグ ラブコメ 構成 | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ … 3 |
ついにAクラスとの再戦を迎えた明久たちFクラス。雪辱を果たすため、そしてA教室の大画面で秘蔵DVDを観るため(一部関係者談)気力充分な彼らだったが、前回苦戦を強いられたAクラスも今回は序盤から全力全開!試召戦争は午前中から早くもクライマックス状態に。 そんな中、突然3年生の主席がFクラスを訪れ謎の言葉を残していく……。 『美形は帰れ!』(動物園の皆さん)果たして2年最強クラスの座はどちらの手に!?風雲急を告げる第10巻!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
バカが騒いで奔走する学園コメディ、遂にシリーズ第10巻を迎えました。
この2年間、刊行ペースがガクッと落ちたので、思っていたより時間がかかりましたね。
物語もいよいよ大詰め。
悲願の勝利を目指し、Aクラスとの勝負に出たFクラス。
今こそ燃え上がる試召戦争が繰り広げられる!!――と言いたかったのですが……。
これはないわー。
もう、ただただ残念。
何故このような構成にしたのか、酷いオチに愕然としました。
そもそも試召戦争が、正直大して面白いものでもありません。
何度か指摘している通り、このギミックで話を広げるには限界が来ています。
テストの点数で勝負をする設定上、戦闘で優劣をつけるのは難しく、観察処分者である明久を特別視するのも、さすがに限度があるでしょう。
しかし、その制約を理解した上で、作者は頑張ったと思います。
精一杯頑張っていると伝わることが良いことだとは思いませんけど、苦しいなりにまとめられていました。
最後の最後までは。
持っていきたい展開があるのは理解できますけど、都合良過ぎて萎えてしまいました。
少なくとも今回明かされた内容では、理由になっていません。
新たな構図を見せること自体はアリだとしても、この瞬間である必要性はなかったはずです。
フラストレーションを溜めさせて、次回に爆発させるにしても、やり方がマズかった。
それに加えて、ギャグの切れ味が鈍いのも痛手でした。
哀しくなるほどにネタ切れ感が漂っています。
もちろん、バカテスワールドのノリが大好きで読んでいるため、面白い部分もあるにはあるんですが、以前だと声を上げて笑う箇所がいくつも見つかったのに、今ではニヤリと笑う程度に収まってしまっています。
バカテストの破壊力も、随分落ちてしまいましたしねぇ。
キャラで何とか引っ張っているという作品になっています。
対Aクラスということで、久保君や優子などの活躍が見られる点は嬉しかった。
特に、ギャグ要因となりつつあった久保君が、学年次席としての本領を発揮してくれたのは、見応えありました。
せっかく表紙に出ているのに、優子に比べると愛子の出番が少なかったことは残念でしたけど。
焦って暴挙に出る美波とか、ちょっと格好付け過ぎな明久と雄二とか、頼りになる秀吉とムッツリーニとか、相変わらず他人の幸せを許さないFFF団とか、いつも通り楽しかったです。
一方で、新キャラは魅力が感じられませんでしたね。
名前だけ出ていた高城も登場し、キャラ的にも面白味はあるんですけど、どうにもいけすかない。
あと、ちょこちょこ顔を出すリンネもウザったく、好きになれません。
3年生で好きになれるのは、小暮先輩ぐらいですよ。
残すところラストエピソードのみらしいですが、ここから挽回してくれることを切に願います。
▼ | 成長した明久たちの姿が見られるAクラスとの再戦が見所 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 バカとテストと召喚獣 井上堅二 葉賀ユイ 評価B-ココロコネクト ニセランダム
2012/01/17 Tue 23:51:38 [edit]
![]() | ココロコネクト ニセランダム (ファミ通文庫) (2011/10/29) 庵田 定夏 商品詳細を見る |
【評価……A-】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★★☆ … 9 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | 青春 構成 | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
新メンバーの千尋と紫乃が加わり、来るべく体育祭に向けて盛り上がる太一たち文研部。だがそんな一大イベントを前に一年生の二人はどこか浮かない顔をしていた。 そんなある日、太一は伊織から「未練」があると告げられる。さらに周囲の言動から立ち上る強烈な違和感――信頼しているからこそ相手の言葉を疑いなく受け入れてしまう五人、そんなメンバーを陰で嘲笑うのは太一たちが予想もしない人物で……。 愛と青春の五角形コメディ、絆を貫く第5巻!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
少年少女たちの愛と青春の成長物語、シリーズ通算6冊目。
帯にてアニメ化が発表され、ますます勢いの乗る本作。
今回も青臭過ぎて、痛々しさを通り越した清々しさが詰まっています。
一筋縄ではいかないからこその面白さがあるシリーズですね。
ライトノベルという言語通り、さらりと軽く流す物語が多い中で、キャラの掘り下げが素晴らしい。
表面だけでは留まらず、どんどん踏み込む容赦のなさは、なかなか見られません。
普段がリア充全開の和気藹々とした雰囲気だけに、追い込まれた時のギャップが凄まじい。
読んでいるこちらのココロまでもがズタズタになりますよ。
大人しく読むことが出来ず、呻いたり喚いたりしながらベッドの上でゴロゴロしまくってました。
心臓までに届く皮膚を一枚一枚剥いでいくような構成は、何度体験しても慣れません。
余計なものを取っ払い、文字通り心を裸にする追い詰め方には、躊躇いを感じさせませんね。
もちろん一切手加減ナシとまでは言いませんし、ぬるいなと思う場面も中にはあるんですけど、他多数のラブコメであるような安易で優しい解決は見当たらないです。
ホラーサスペンスならまだしも、青春系小説でここまでシビアなのは珍しい。
それにしても、今回の話は卑しい……もっと直接的に言えば、ゲスいものだったなぁ。
作品のテイストから考えると、境界線を越えた先の外道さだと感じました。
これまでの現象と比較すると、厭らしさが一際異質です。
主観をどこに置くかによって、大きく評価が割れるでしょうね。
個人的には、作品としてはありだと思うものの、文研部メンバーは聞き分けが良過ぎるなーとも思いました。
大人びた思考とか、成熟しているとか、そんなレベルじゃないですよこれは。
絆が強固すぎて隙がなく、人間が出来た考えばかりで、聖人君子にしか見えない。
2年生5人組のリア充オーラが圧倒的すぎて、2人の後輩が気後れしてしまうのも致し方がないかな。
紫乃は、初顔見せだった前回で察した通り、臆病な性格をしたキャラでしたね。
憧れの先輩達に羨望の眼差しで向けて、自分も変わることが出来たらと願う姿は年相応でした。
彼女の視点から見ることで、2年生組の異常さを痛感しました。
千尋の性格を受け入れられる人は、あまり多くはないかもしれません。
でも、太一たちが成長し過ぎているだけで、高校生になったばかりの男子としては、最もリアリティのある姿だったのではないかなと思います。
彼の心境の変化と行動に移れない情けなさは、嫌になるくらい共感を覚えました。
駄目だと頭で理解出来ていても直面する問題から逃げてしまい、より一層状況が悪くなるなんてことは誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
酷いことをしてしまったのは事実でしょうけど、嫌いにはなれません。
むしろ、紫乃よりも好きなくらいです。厨二病要素とかw
難しいなー、この回は。
読者の倫理観や感情で、ガラリと見方が変わってしまいます。
千尋の心理描写を上辺だけではなく詳細まで浮き彫りにしたことは、長所であるといえます。
ただし、それを踏まえた上でも、好意的な解釈は出来ないという人の気持ちもよく分かります。
オチを考えたら、もう少しスカッとした罰が与えられても良かったかなと思いますね。
どうしても後輩をクローズアップした巻だったので、既存の文研部メンバーの描写は少なめでした。
デレばんと太一の絡みをもっと読んでみたかったなー。
短編集と比べると、壊れっぷりにセーブがかかっているように見えましたし。
白身魚さんの挿絵が、若干少なく、あっさりしすぎだったのが少々残念。
あとがき絵は滅茶苦茶良かったんですが、力の入れどころが違う気がしますよw
髪を下ろした伊織の絵も、ようやく見慣れてきました。
これだけ結びつきの強い絆を崩壊させるような事件がまだ起こるんでしょうかね。
依存が強いほど、失った時のショックも大きなものとなるんでしょうが……はてさて。
最後にふと思ったこと。
太一の妹と千尋の弟って、もしかしてアレだったりするのかな……?
▼ | 己が欲するものを持っている文研部メンバーに憧れて入部した後輩達の試練と成長を描いた物語 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ココロコネクト 庵田定夏 白身魚 評価A-ショートストーリーズ 3分間のボーイ・ミーツ・ガール
2012/01/09 Mon 23:58:59 [edit]
![]() | ショートストーリーズ 3分間のボーイ・ミーツ・ガール (ファミ通文庫) (2011/07/30) 井上 堅二、ほか 他 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | ラブコメ 青春 | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
“青春”の数だけ“出会い”がある――。 “3分間”をキーワードに独自の世界観で描かれる珠玉のボーイ・ミーツ・ガール。 人気作家・井上堅二の贈る、幼馴染みとの窓越しの恋模様『三分間のボーイ・ミーツ・ガール』、野村美月が描く、猫嫌いの女の子への一目惚れの顛末『こっちにおいで、子猫ちゃん。』、新鋭・庵田定夏の紡ぐ『ガチで人生が決まる面接に行ってくる』など、書き下ろし8篇を含めた全19篇! 切なく甘くほろ苦いショートストーリー集。 |
【感想】
ファミ通文庫が誇る豪華作家によるショートストーリー集。
テーマは「3分間」と「ボーイミーツガール」。
プロの作家が特色を出した掌編が全部で19編収録されています。
ラノベ界全体で見ると微妙な位置付けにあるレーベルですが、個人的には好きな作品が多いので、評価は結構高かったりします。
昔はゲーム系ラノベばかりでしたけど、最近はだいぶ新人育成の芽が出てきていますしね。
実際この本を手に取るキッカケとなった作家として、井上堅二・野村美月・庵田定夏・本田誠・田尾典丈などの名前が挙げられます。
知っている作家が多ければ多いほど、楽しめるのは間違いないでしょうね。
各章で振り分けられた紙幅に差があり、10~30ページと人によってまちまちです。
お気に入りの作家さんが、何ページ書いているのか気になると思うので書いておきます。
【3min.30cm】 田口仙年堂 10p 評価……B
トップバッターとして相応しい王道的な学園青春モノ。
思春期の学生ならば一度は妄想したことがあるのではないかというシチュエーションが素敵。
心臓の音が聞こえそうな近距離具合がもどかしくてウズウズしてしまいますね。
【詰め込み教育の弊害と教室の片隅に彼女】 日日日 23p 評価……C-
テスト中に記憶喪失を起こしてしまった少年とそれをサポートする少女の学園モノ。
ショートストーリーに設定を詰め込み過ぎて、ゴチャゴチャとしてしまった例ですね
無茶がありすぎますて、楽しめませんでした。
【ガチで人生が決まる面接に行ってくる】 庵田定夏 21p 評価……B+
高校受験の面接前に待合室で出会った少年少女のショートストーリー。
全短編中最もテーマに沿った内容となっていて、なおかつ話も非常に面白い。
緊張している主人公とヒロインが可愛くて、続きも読んでみたくなる隙のない仕上がりです。
【ねこなぶり】 嬉野秋彦 11p 評価……C+
ボーイミーツガールに猫がプラスされた短編その1。
一発ネタすぎて感想を書き辛い。
もうちょっと膨らませることができたんじゃないかなぁ。
【三分間の神様】 榊一郎 32p 評価……B
毎晩3分間だけ繋がる電話の相手は異世界の少女だった――というSFチックな話。
オチの付け方が少々乱暴なことを除けば、見事な構成。
硬派な正統派作品で、基本を押さえた内容となっていました。
【七年前のマリッジブルー】 本田誠 27p 評価……B+
ウェディングドレスを着た女性が目の前に突如現れるというインパクトのある導入で始まる物語。
この限られた枚数で、起承転結をキッチリと書ききっているのが凄い。
タイムトラベルという設定も、著者ならではの調理の仕方がされていて好感が持てました。
【お湯を注いで】 櫂末高彰 8p 評価……B-
カップラーメンが出来上がるまでの僅かな時間のみ現れる精霊とお喋りする話。
3分間というテーマで、まず思いつく題材ですよね。
お手軽にほっこりとできる内容でした。
【こっちにおいで、子猫ちゃん】 野村美月 17p 評価……B-
ノリと勢いだけで突っ走る男が一目惚れした女の子を追っかける話。
複雑に練り過ぎるよりも、簡潔にまとめた方が読みやすいのは確かだけど、少々強引かなぁ。
女の子の可愛さよりも、男の猪突猛進な有り様が記憶に残ります。
【ネオンテトラのジレンマ】 綾里けいし 9p 評価……C+
「私を、食べて欲しいんです」の言葉から綴られるホラー系短編。
ボーイミーツガールのテーマから、甘くて淡い短編が多い中で、飛び抜けて異色。
完成度は高いんですが、ケーキの中に生肉が入っていたかのような感覚で何とも受け付け辛い。
【5400万キロメートル彼方のツグミ】 庄司卓 25p 評価……A-
自力で帰還できなくなった小惑星探索機に搭載されたAIに人格が芽生えた遠距離SFロマンス。
直球の感動系物語で、科学と浪漫のブレンドが絶妙です。
「はやぶさ」に心惹かれた人ほど響くであろう一遍だと思います。
【先輩にリモコンを向けてみた】 前書き 19p 評価……B+
軽い気持ちでイタズラしてみたら、ぶっ飛んだ事実が明るみとなったドタバタコメディ。
テンポのいい会話の応酬がまるでコントのように心地良く、何より単純に笑えます。
3分間の設定を上手く焦りへ繋げていて、刻一刻と迫るタイムリミットにヒートアップしました。
【トキとロボット】 羽根川牧人 17p 評価……B-
殺戮機械として生まれた女の子型ロボットが、戦場で男の子を拾ったところから始まる物語。
バッテリー寿命が尽きかけている彼女の行動が、人間味溢れるもので優しく温かい。
背景が世紀末にしか見えません。
【ロイヤルコーポあさひの真実】 竹岡葉月 24p 評価……B+
朝目覚めたら、昨夜の宴会で飲み潰れた女の子が部屋に残っていた大学生が主人公の話。
うわー、この伏線は全く気が付かなかった。
この状況は面白いなぁ……続きが読んでみたくなります。
【QとK】 築地俊彦 17p 評価……C
児童能力者が罪を犯すと収監される監獄から脱獄しようとする男と女のサスペンス風ドラマ。
後味が悪さは、それはそれで特徴的で構わないのですが、面白さに直結しないのはどうかと。
テーマの意味合いも弱く、微妙でした。
【3分間のABCD】 はせがわみやび 25p 評価……D
美術館で出逢った女の子は、美を栄養として見た目を変化させる人間とは異なる種族だった。
……意味不明。
うーん、頭に浮かんだ設定をただ並べてみただけにしか見えない。
【杉本遥は男前っ!】 新木伸 23p 評価……B
古今東西よく使われてきた親友が実はお嬢様でしたというパターンの王道ラブコメ。
物語の始まりしか描かれていませんが、短編ではこれが普通ともいえる。
最後の選択肢は悩ましくて、先がちょっと気になりました。
【call】 佐々原史緒 9p 評価……A-
卒業式に連絡先を受け取った女の子に会うため、勇気を出して田舎まで追いかける男の子の話。
期待と不安が入り混じる男の子の苦悩が描かれる、滅茶苦茶好みの青春モノでした。
3分間の使い方も秀逸で、情景が浮かび上がるシチュエーションが最高に素晴らしい。
【彼女に関する傾向と対策】 田尾典丈 8p 評価……B
好きな女の子に告白をしたら、何故か面接を受けることになった一風変わったラブコメ。
ネタ一本で勝負しているのですが、上手くハマっており、キャラが確立しています。
二人の掛け合いが甘々で微笑ましいのが何とも素敵。
【三分間のボーイ・ミーツ・ガール】 井上堅二 11p 評価……B
女の子側の視点で語られる窓越し幼馴染み系ラブコメディ。
個人的にはアリの部類に入るけど、このオチは色々と酷いw
著者を知っている人なら薄々感づいていたでしょうけど、初読みの人は怒るんじゃなかろうかw
▼ | ラブコメ・青春・SFなど多種多様なボーイミーツガールが楽しめる全19篇 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 3分間のボーイ・ミーツ・ガール ファミ通文庫作家陣 評価Bギャルゲヱの世界よ、ようこそ!disc8
2011/11/22 Tue 23:59:45 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc8 (ファミ通文庫) (2011/08/29) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 | 恋愛 SF | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
「一緒の世界で、共に歩もう」 ヒロイン達とお互いに気持ちを確かめ合った、俺こと都筑武紀。本来の世界と『例外レイヤー』を統合し『現実補正』を使って二つの世界にいる人々の記憶を融合……トゥルーエンドへの道筋は見えている。 しかし、そこに至るにはこの世界に存在しないあるアイテムが必須……。どうする俺!無いものは作るしかないのか?俺が、あの『エターナルイノセンス』を!! 選択肢無限の真世界を奔走する青春ADVノベル、遂に完結! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」シリーズ、本編最終巻。
コンスタントに刊行されたおかげで、2年半ちょっとで11冊も積みあげられました。
当初は一発ネタかと思っていた本作が、ここまで来るとは感慨深いものがあります。
シリーズ途中のテコ入れが成功した数少ない例ですね。
満を持しての最終巻というよりは、ちょっと急だったかなと感じられました。
詰め込み過ぎな面が多々あり、設定や物語の強引さが散見されます。
伏線を無理矢理活用したり、唐突な問いかけがあったりと、不自然さが目立ちました。
テーマや主張は良いんですけど、見せ方が悪かったと言うべきでしょうか。
もう1冊とは言わずとも、もう少しページがあれば、説明も付けられたと思うんですがね。
でもこの作品には、数字では表せられない面白さが内包されています。
欠点が見えやすく、他の要素でカバーしている訳でもないんですが、全て込みで楽しむことが出来ます。
正直なところ、今でもその理由をハッキリとは解りません。
ただ、もしかしたらストーリーの流れが綺麗であることが関係しているのかもしれませんね。
物語上に配置されるキャラとSF設定がパズルのピースのように組み込まれているため、作品の一体感を増大させているように感じました。
材料が別段凄いわけではなく、調理の腕が極めて優秀というわけでなくとも、見事な仕上がりとなったのは、感性の良さと文章的な配慮によるものだったのかなと思います。
主人公・都筑武紀は結局最後まで思考に余裕がないけれど、その必死さは嫌いじゃありません。
幾度となく障害に立ち塞がれ、それでも泥臭く塗れてでも答えを探し続ける根気は、主人公として相応しい姿だと思います。
もどかしい気持ちにさせられた初期と比べると、今では尊敬すらできるぐらいに成長を果たしました。
まぁ、ハーレム願望はないので、そちらは遠慮しますけどw
前回の愛子のターンは、さすがに続きませんでしたけど、時折見せるいじらしさは健在でした。
やっぱりメインヒロインは、愛子で決まりだなー。
表紙にいなかったのが残念でした。
ゆうきの伏線を拾ってくれるとは思いませんでしたね。
正体については、予想は当たっていたのですが考えが浅かったので、半分正解で半分不正解という感じ。
なるほどなぁと感心させられつつも、あっさりしすぎていたのが勿体無くて少々不満。
1冊使っても良かったぐらいのネタだと思うんですけどね。
もう一人の主人公・高橋秀之は、正真正銘デキる男で格好良いのですが、本編での出番は少なめでした。
これは外伝&後日談の短編集でシリーズ本当の最終巻となる「Extradisc」に期待かな。
みんな幸せで終わる大団円を読めることを願いたいと思います。
▼ | 共感は出来なくともハーレムを目指す男と女の子達の幸せを願わずにはいられない本編最終回 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価B半熟作家と“文学少女”な編集者
2011/11/04 Fri 23:59:36 [edit]
![]() | 半熟作家と“文学少女”な編集者 (ファミ通文庫) (2011/04/30) 野村 美月 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | ミステリー 青春 ラブコメ 切なさ | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 |
新しい担当編集の天野遠子嬢は、清楚な美人だった。――が、いきなり本棚の前でグルメ批評を始めるわ、ほんわか笑顔で容赦なく原稿修正を指示してくるわ、売れっ子高校生作家たるオレが、どうしてこうも振り回される!? そんな時届いた脅迫状じみたファンレター。そこにはまだ刊行される前の小説の内容が書かれて……って差出人は、まさか!? 半熟作家・雀宮快斗とその担当編集者遠子が織りなす、物語や文学を食べちゃうくらい愛する“文学少女”の最後の物語。 |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
文学少女、最終章。
5年に渡り続いたファミ通文庫における看板タイトルが、本当のラストを迎えました。
本編8冊、短編集4冊、外伝3冊、そして最後を締めくくる今巻の計16冊。
長く続いただけあって、作品内の世界は十分過ぎるほどに描かれてきました。
終わりが寂しいというよりも、お腹いっぱいと感じる作品はそうはないでしょう。
最終回の内容は、本編から数年後、編集者となった遠子が一人の作家を担当する話。
タイトルだけ発表された当初は、本編ラストの続きかと思いましたが、よくよく考えてみれば心葉が半熟作家なわけないですよね。
主人公は半熟作家の雀宮快斗。
とはいえ、高校生でありながら人気シリーズを執筆し、メディアミックス展開も好調で、更にはモデルまでもこなすハイスペックなキャラです。
思想も半熟というよりも若いという方が正しいような気がします。
そんな彼が、担当編集者である遠子と出会い、成熟していくストーリーが語られます。
言ってしまえば、最終回によくあるパターンですね。
最後の最後に新キャラを投入し、第三者の立場からこれまで登場したキャラの後日談を語る手法です。
既知であるキャラの見た目も中身も成長した姿が、懐かしくも新鮮に映り、さながら同窓会に出席したような気分になるこの手法は、結構好きだったりします。
ただ、この「文学少女」においては、ちょっと主人公キャラの位置付けが遠かったかな。
遠子は良いんですけど、心葉を含めた他キャラとの絡みや情報が入ってくる立場だったら、もっと大団円の雰囲気が出たと思うんですよね。
全4章からなるエピソードは、外伝でもない番外編って感じ。
シリーズ最終巻として見るとあっさりしすぎかなと思わないでもないですが、暗い話が続いた作品で、明るく締められたのは良かったと思います。
オチに関しては完全に目から鱗で、スッキリとした気分で読み終えることができました。
本編、外伝と二度も終わりを迎えた作品なので、気持ちの整理をつけることは難しくなかったです。
癖のある文体から手に取るのが少し遅れましたが、読んで良かったと思える作品でした。
▼ | 第三者視点から描かれる“文学少女”その後の物語 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 文学少女 野村美月 竹岡美穂 評価Bギャルゲヱの世界よ、ようこそ!disc7
2011/08/30 Tue 23:58:40 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc7 (ファミ通文庫) (2011/05/30) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | 恋愛 SF 構成 | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
理恵の世界から戻った俺こと都筑武紀は、かつてない衝撃を受けていた。 死んだはずの両親が生きている!しかも目の前には恋人状態の高橋が!! 『八年前の事故が発生しなかった世界』 ――だがしかし、この幸せで残酷な世界に俺の愛するヒロイン達は存在しない。 そして、事態収拾のため情報を集めようとした俺は、ある人物からもたされた驚愕の真実に戦慄する……まさか、あの事故が!? 選択肢無限の真世界を奔走する、青春ADVノベル、待望の第7弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
ギャルゲーが現実となった世界で生きる道を模索する青春SF物語。
シリーズ通算10冊目の表紙を飾るのは、早くも三回目の登場となる高橋さんが目印です。
フェアリーテールシステムの限界が近づき、「エターナルイノセンス」のヒロインが消滅する危機が迫る。
起死回生のアイデアで難を凌いだ武紀は、今一度女の子達との交流を経て、絆を再確認した。
しかし、直後に待ち受けていたのは、死んだ両親が生存し、愛子が恋人となっている別世界だった……!という凶悪な引きで終わった前回からの続きです。
期待以上の愛子萌えに悶えまくり。
もはや、疑う余地なしといって過言ではないぐらいの正ヒロインっぷりですよ。
これはどう見ても、各ルート攻略後のトゥルールートですね。
他キャラが霞むくらい可愛すぎて困った。いや困らない。ああ素晴らしい。
素直に慣れなくて、でも不器用なりに正面から向き合おうとする彼女の愛おしさったら、もうね。
気のせいか、有河サトルさんの絵も、高橋さんだけ気合が入っているように見えます。
振り袖を着て優しく微笑む表情には、思わず見惚れてしまいますね。
さて、内容についてですが、遂に明かされたフェアリーテールシステムの全貌に驚かされました。
風呂敷を広げ過ぎだろうと心配していましたが、どこ吹く風。
詰め込んだ伏線を一気に放出する様は、まさに解答編で一種の爽快感さえあります。
一体どこから考えていたのか分かりませんが、想像できなかったことばかりで衝撃的でした。
正直、細かいところを突っ込めば粗は多数見つかるでしょう。
しかし、それを無視させてしまうぐらいの説得力が凄い。
作中の設定を、そういうものなんだと漠然と思わせることができるのって、なかなか出来ません。
ただし、ちょっと専門用語を出し過ぎたのはマイナス点だったかな。
シリーズ通して読んでいても把握し辛いなと感じました。
ご都合主義も散見されますが、こちらは目を瞑る方向で。
毎回、窮地に立たされる武紀ですが、今回ばかりは規模が違いましたね。
あまりに残酷な選択肢を付きつけられ、どのように打開するのか見ものでした。
作中で出てくる「我が儘な理想主義者」という言葉がピッタリな武紀らしい選択には、腹が立つくらい自己中心的でムカつくけれど、主人公としてはこれ以上ないぐらい正しかったと思います。
武紀本当に初期とは比べ物にならないぐらいに成長したなぁ。
本来の主人公である真田正樹にも格好良い場面が用意されていましたし、愛子の兄である秀之の慌てふためく姿もシリアス展開の中で絶妙なアクセントになっていて面白かった。
最後の最後まで、結局高橋さんが全部持って行っちゃうんですけどねw
次回で完結ってのが寂しいですね。
まぁでも、ちょうど今日が8巻の発売日なので、ネタバレを食らう前に早く読みたいと思います。
▼ | クライマックス突入と同時に開拓された愛子ルートが素晴らしい |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価B+バカとテストと召喚獣9.5
2011/08/29 Mon 23:16:48 [edit]
![]() | バカとテストと召喚獣9.5 (ファミ通文庫) (2011/06/30) 井上 堅二 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 設定 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | バカ ギャグ ラブコメ | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
召喚実験リターン!明久と雄二で喚び出した召喚獣は、まるで二人の子供のようで――って、また惨劇が繰り返されるのか!?「僕と子供と召喚獣」、ドキドキ同居生活を赤裸々に綴る「僕と姫路さんとある日の昼下がり」、謎多きムッツリーニの一面が白日の下に晒される!?「僕と土屋家と揺れない心」、高校1年生の春――すべてはこの出会いから始まった!「俺と喧嘩と不思議なバカども」の4本で贈る、青春エクスプロージョンショートストーリー集第4弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
アニメ二期絶賛放送中のバカテスシリーズ、短編集第4弾。
本当に読みやすくて楽しい作品だなぁ。
ストーリーをキッチリ組み立てる必要がある本編と比べて、軽快なテンポで繰り広げられるネタ中心のエピソード満載の短編集は、いつも以上に笑えることが多いのが利点です。
ただ、今回はギャグよりも、ラブコメや青春展開に力を入れた内容となっていて、笑えるというよりも面白いという感想になりますね。
『僕と子供と召喚獣』
本音を喋る召喚獣に続く、ババァ長の試験召喚実験その2。
今度は二人で召喚することで、自律行動する召喚獣のテストをすることになった明久たち。
その召喚獣は、さながら二人の子供のよう。
当然ながら、女子連中が黙っている訳がなく、またしても明久&雄二が追いやられるという定番パターンです。
明久と雄二の子供とか、明らかに狙ってやってますよね、コレ。
姫路さんや美波よりも雄二とのカップリング推しが強過ぎるw
男読者でも嫌悪感を抱かずに、むしろギャグとして楽しめているので何ら問題ないってところが凄い。
『僕と姫路さんとある日の昼下がり』
姫路さんが同居してた頃の、ほのぼのエピソード。
腐女子向けや誰特なサービスシーンが多い中で、ラブコメの王道的な内容は貴重でした。
まさかの挿絵に驚きましたよ。
でも、明久が鈍感すぎて、ニヤニヤさせられるってことはあまりなかったかな。
『僕と土屋家と揺れない心』
明久&雄二の不毛な言い争いから始まったムッツリーニ主催の企画で土屋家を訪問する話。
要するにガキの使いの「笑ってはいけない」シリーズのパロディです。
ネタ的には面白くなりそうな予感があったのですが、キレはイマイチでしたね。
無理矢理笑わせようとしているためなのか、それとも普段のギャグと異なるためなのかは分かりませんが。
この企画は、シュールな間や音、リアクションが重要なので、文章では難しかったのかもしれません。
それよりも注目すべきだったのは、ムッツリーニの家族構成でしょう。
てっきり一人っ子だと思ってたら、兄2人に妹1人とは意外すぎる。
将来、妹を盗撮したりしないか心配ですw
『俺と喧嘩と不思議なバカども』
7.5巻収録の「ウチと日本と知らない言葉」を雄二視点で描いた短編。
明久、雄二、秀吉、ムッツリーニの4人がいかにして、つるむようになったのかが明かされています。
やさぐれた雄二が、バカ正直に生きる明久を目の当たりにして、不本意ながらも惹かれていく展開が熱い。
眩し過ぎて直視できないぐらい青春街道まっしぐらのイイ話でした。
男の友情が描かれるシーンの多い回でしたね。
その代わり、カラーページの漫画は髪型を変えたヒロインズが可愛かったです。
ツインテールの美波もいいけれど、単純に髪を下ろすだけでもギャップがあって萌えるので、たまに見せて欲しいなぁ。
それにしても、著者プロフィール欄が表紙絶賛コーナーになっちゃってますねw
葉賀ユイさんの絵が素晴らしいのは同調しますが、バカテスが終わって、絵師担当が代わったらどうするんだろう。
井上堅二さんは、生きていけるんだろうかw
さて、そろそろ終わりが近づいているみたいですが、まだ次は完結ではないのかな。
あとがきを読む限り、もうちょっとだけ続きそうです。
▼ | 互いを罵るほどの悪友にまでなった明久と雄二の出会いのエピソードが見所 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 バカとテストと召喚獣 井上堅二 葉賀ユイ 評価B+空色パンデミック④
2011/08/15 Mon 23:59:27 [edit]
![]() | 空色パンデミック4 (ファミ通文庫) (2011/03/30) 本田 誠 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | 世界観 構成 | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
最近、仲西景の様子がおかしいことに俺、青井晴は気づいていた。 穂高結衣の発作に巻き込まれ続けた仲西は、自らも「現空混在病」という病に蝕まれていたんだ。 幻聴や己の中の別人格に悩まされ、現実と空想の狭間で苦しみ、やがて恋人の結衣の存在すら忘却してしまった……。 結衣は失意の中で、それでも仲西を救う方法を探している。 そして俺もまた、あいつを救うために、ある「芝居」を計画したんだ――。 狂騒と純真の「ボーイ、ミーツ、空想少女」終幕。 |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
空想に侵された思想の果てで、信じるべきものとは一体何か。
大事なものを気づかせてくれるシリーズ最終巻です。
うん、面白かった。
満足度としてはあと一歩届かなかったかなとは思いましたが、見所はいっぱいありました。
シリーズ通して不鮮明なところがありましたけど、今回はそれまでの比じゃないですね。
仲西だけではなく読者も現空混在症に罹ってしまったかのように、先が見通せません。
いや、そもそも目の前の出来事が、現実なのか空想なのかの判断すら付かないレベルです。
森崎や青井の視点から描かれているシーンがなければ、混乱しきっていたでしょうね。
状況判断が付かないというのは、面白い試みではありますが、構成的には難のあるギミックでした。
正直読み辛い。
3巻の時のような作品内に引き込まれる力強さはなく、散らばっている印象を受けました。
しかし、それもまた意図的のように感じられ、何だか作者の術中にハマってしまったような気がします。
終始シリアス展開で空想病の本当の恐ろしさを思い知りました。
他人になりきっていたという恥ずかしさがある方がまだマシですね。
記憶の整合性や自己の喪失を体感しているようで、恐怖を覚えました。
ネタ切れなのか打ち切りなのかは不明ですけど、急に最終巻となったため駆け足すぎる部分が目立ちます。
もっとじっくり練って欲しかったところですが、この設定で世界を広げることに限界を感じたんでしょうかねぇ。
複雑な内容と比べて、ラストがあっさりしすぎかな。
これが最終巻でなければ、素直に賞賛していたんでしょうけど、触れずに終わってしまった伏線が多過ぎて勿体無い。
作品の内容的に、平然と続きが出てもおかしくはありませんが、おそらく次はないでしょうね。
結衣の空気化に伴う青井のメインヒロインっぷりは俺得でしたけど、作品的には首を傾げてしまいましたね。
結局Wヒロインを上手く活用出来ずに終わってしまいました。
それならいっそのこと、結衣を空想の人物というオチで青井とくっつく形でも良かったんじゃないでしょうか。
どちらにせよ、ラブコメをもうちょっと楽しみたかった。
森崎と今井さんの関係は良かったんだけどなー。
空想病患者のクーソーとのやり取りは、しんみりとさせられました。
寂しいけれど、前向きになれるイイ話でしたね。
庭さんのイラストは、表情が柔らかく優しいのが素敵で大好きです。
しかし、P219の絵だけはないですね。
身体のバランスがおかしすぎて、萎えてしまいました。
あれならイラストなしの方が想像をかきたてられて良かったなぁ。
1巻を読んだ時の衝撃は、ラノベの新しい時代を感じたものです。
乱発される微エロ系ラブコメとは違い、新鮮さが魅力だっただけに、終幕は残念。
また設定が凝った次回作に期待したいですね。
▼ | 現実と空想の境目がぼやけている中で、確固たるものを見つける物語 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 空色パンデミック 本田誠 庭 評価B+ココロコネクト クリップタイム
2011/07/12 Tue 23:40:04 [edit]
![]() | ココロコネクト クリップタイム (ファミ通文庫) (2011/05/30) 庵田 定夏 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★★★☆ … 9 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | 青春 ラブコメ リア充 | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
「新入部員がこなーい!!」 積極的な勧誘をしないと決めたものの、いつまで経っても現れない新入生に焦る太一たち。そんな時、文研部の扉を叩いたのは気だるな男の子と内気で小柄な女の子で――。 待望の新入部員編と、文研部が一枚のスクープ写真で学校を湧かせた文化祭秘話、伊織と太一との三角関係に悩む稲葉の奮闘劇から、唯が体験した女の子とのドキドキ初デートまで! 愛と青春の五角形コメディの美味しいところを集めたココロコレクト第1弾!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
「ココロコネクト」シリーズ初の短編集。
どうやら「ココロコレクト」という通称らしいですが、上手過ぎて紛らわしい。
全部で4つのエピソードが収録されており、うち3つはFBonlineにて掲載されていたものです。
自分は見たことがなかったので、どれも新鮮な気持ちで読むことが出来ました。
ふうせんかずらによる不思議現象に巻き込まれることなく、文研部の学校生活をラブコメタッチで描かれた青春モノとして仕上がっています。
心が削られるかのような緊迫感やシリアスな展開は皆無で、良くも悪くも緩いですね。
太一たち5人の会話の応酬だけでも楽しいのは確かなんですが、ちょっと物足りないかなー。
危機的状況に追い込まれることで、必死に抗おうと輝きを増すキャラばかりですから、内面の掘り下げが本編に比べると浅いと惜しいなぁと感じてしまいます。
「スクープ写真の正しい使い方」
ふうせんかずらの脅威に不安を抱くことになる前である1巻直前のエピソード。
以前から何度か思い出として話題にあった文研新聞・文化祭増刊号にまつわる話です。
結果は分かっていましたけど、ここまで盛大にやっていたのか。
キャラ紹介といっても差し支えのないくらい、それぞれの特徴を捉えた内容でしたね。
カラーページにある伊織の浴衣が姿が、物凄く似合っていて素晴らしかったです。
「桐山唯の初体験」
タイトルから色々と想像してしまう、ラブコメの王道的なニヤニヤエピソード。
時期的には、1巻と2巻の間かな。
コメディ色が強過ぎるかなと思わないでもないですが、唯の揺れる心の動きは淡くて良かったです。
「稲葉姫子の孤軍奮闘」
稲葉が太一に恋心を打ち明けた直後である2巻と3巻の間の話。
想い人である太一と、ライバルである伊織への接し方に悩む稲葉んが、あーだこーだと知恵を絞るが余計にドツボにハマるというこれまた典型的な流れ。
オチが見え過ぎているのが、ある意味安心。
「ペンタゴン++」
今巻収録の中で、唯一の書き下ろしである最新エピソード。
2年生に進級した文研部5人が、入部希望の新入生を迎える新たなスタートとなるプロローグ的な話です。
表紙の太一以外の二人が、一年生である新キャラですね。
右側にいるのが宇和千尋は、名前と表紙絵では判断付きにくいですが、男です。
クールな物怖じしない性格で、なかなか男前なところがあります。
太一や青木とは違うタイプですし、そもそも女キャラの比率が高い作品なので、個人的には大歓迎ですね。
もう一人は、表紙真ん中にいる円城寺紫乃。
後輩キャラの定番である小柄で内向的な一面があり、分かりやすいキャラですね。
過度なロリに偏ることなく、年相応な感じが好感持てます。
二人が、文研部に加入するかどうかを焦点としたこの話が、一番面白かったですね。
二年生になり、クラス替えなどの環境の変化もあって、読み応えがありました。
あとは、太一と稲葉が付き合い始めた後の初エピソードということもあって注目していました。
なるほどなるほど、これがデレばん症候群か……。
うぜえ!w
稲葉んのデレっぷりが可愛いとかそんな生易しいもんじゃないよ!?
尋常じゃない破壊力は、もはや笑いしか出ませんw
キャラ崩壊しすぎて、クールビューティーの面影が風前の灯だよw
今までの稲葉んとは別人だと言われても信じちゃうレベルだよ!
しかしまぁ、片鱗は見せていたけど、まさかここまで稲葉んが変貌するとはね……。
いつもなら「いいぞ、もっとやれー!」とけしかけるところですが、ちょっとは落ち着けと突っ込みを入れたくなります。
こんなリア充が側にいたら、さぞ鬱陶しいだろうなぁ……w
伊織がネタに走るのも致し方がないw
稲葉んがデレデレで幸せそうなのは喜ばしいんだけど、甘過ぎて弄らないとやってられないわ。
▼ | 付き合い始めたばかりのカップルのラブラブっぷりに当てられます |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ココロコネクト 庵田定夏 白身魚 評価B+ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! add on シルバーブレット2
2011/06/23 Thu 23:31:02 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! addon シルバーブレット2 (ファミ通文庫) (2011/02/28) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | SF 燃え ラブコメ | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 |
激しい戦いの末、秀之の決意に触れた神藤は、共闘することを決意した。義人に加え心強い仲間を得た秀之だったが、平穏な時間も束の間、自宅PCに電子妖精の天才・寫取から突如ハッキングを受けてしまう! そして、超常的なその攻撃手法に戦慄を覚えつつも退けた秀之は、一つのファイルがあることに気づく。なんと、それは電子妖精支部の所在地が記された文書だった……! 人気作『ギャルゲヱ』の外伝シリーズ、待望の第2巻登場!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」シリーズ、外伝第2巻。
1巻を読んだ時、本編と同じ、またはそれ以上に面白かった記憶があり、2巻も期待していました。
結果としては、面白くはあったんですが、勢いは落ちてしまったかなぁという印象ですね。
もっと「フェアリーテールシステム」の解明に近づくのかと思いきや、何だかきな臭い方向に進んでいます。
SF系バトル小説としての見せ方が、1巻に比べると迫力不足で惜しいですね。
秀之が開発した「能力インストール」は、他のキャラが使用する技を真似るというバトル系漫画にはよくあるパターンですが、状況に応じて色んな能力を使い分ける臨機応変さがドキドキワクワクさせられるため、個人的に好きな設定です。
そんな優秀な能力に制限が判明するわけですが……なるほど、これは厳しい。
覚悟した上で、秀之も使用しているんでしょうが、心に重たく圧し掛かってきます。
想像していた以上に枷は深刻で、物語の今後を考えると鬱展開もありえそうですね。
全ての作品で丸く収まる必要性はありませんけど、この作品はハッピーエンドで終わって欲しいなぁ。
一方で、本編主人公の都筑武紀が関与し始めるエピソードもあって、リンクを楽しむことができました。
まさに本編の裏側で進行していたもう一つの物語って感じで、思惑が入り乱れていて面白い。
特にシスコンの秀之が、愛子に近づく武紀を快く思っていない辺りは、笑いが止まりませんでしたw
本編を読んで薄々気が付いていましたが、マジだから始末に負えないw
それにしても、舞台の規模が大きくなり過ぎているのが、少々不安。
あまりにトンデモ設定にしてしまうと、辻褄合わせが大変ですが、大丈夫なんでしょうかね。
綺麗に畳むつもりがないのではと疑ってしまいます。
先が気になるところで終わっているので、今後の舵取りに期待ですね。
▼ | 大切な家族のために己の身を削って戦う主人公が切なく、格好良い |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価Bわたしと思春期男子と妄想の彼女たち 1 リア中ですが何か?
2011/05/17 Tue 23:58:46 [edit]
![]() | わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 1 リア中ですが何か? (ファミ通文庫) (2011/01/29) やのゆい 商品詳細を見る |
【評価……C】
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 設定 ★★★★☆☆☆☆☆☆ … 4 物語 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 人物 ★★★★☆☆☆☆☆☆ … 4 文章 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 | ラブコメ 青春 | ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 |
日々愛欲に悶える中学生・峰倉あすみ。 ある朝、怪しい虚無僧に渡されたコンタクトレンズを通して彼女が見たものは、水着やブルマ、メイド服を纏って教室を占拠する≪妄想少女≫たちだった!彼女のいない男子なら誰もが望む妄想の彼女。だが、あすみの愛する高柳君にはいない!?学校一の≪妄想少女≫リサたちと、奪・高柳君に燃えるあすみの恋はどうなる!? 第12回えんため大賞優秀賞、学校では教えてくれない愛欲まみれの超いまどきリア中ラブコメ!! |
【感想】
思春期の男が理想とする妄想の少女が見えるようになってしまった女の子の恋に生きる物語。
うーん、個人的に駄目でしたねぇ。
肌に合わないといいますか、主人公のバカさ加減にイライラが募ってしまい、楽しめませんでした。
そこまで珍しい設定というわけではないにしろ、惹きつけられる内容だとは思うんですよ。
あえて主人公を女子中学生として、男子中学生の妄想を垣間見ることになるってのは、いかにもドタバタコメディが繰り広げられそうで期待できました。
しかし、予想に反して、妄想少女たちは大して面白味に化けることはなく、せっかくの設定は活かしきれていません。
中学生らしさという観点からすると、確かにこれはリアルっぽい。
創作物のキャラにありがちな大人びた人物は登場せず、誰も彼も若いというか幼い。
周りの見えなさっぷりや、短絡的な思考、安い涙……。
大人の視点からすると実にくだらないことでも、当の本人にとっては天国と地獄の境目にいるかのような心持ちになる。
今でこそ冷静に振り返ることができても、そんな身に覚えが誰しもあるのではないでしょうか?
主人公の峰倉あすみは、はっきり言ってバカです。
この女の子を愛嬌のあるアホの子と捉えるか、考えナシの馬鹿と見るかで、評価が割れるんでしょうね。
言うまでもないですが、自分は後者でした。
理解はできますし、狙いは悪くないと思いますが、ストライクゾーンからは大幅に外れたわけです。
暴言キャラというのは、今ではヒロインの確立したポジションとも言えますけど、あすみの場合、性格の悪さが口に出ているといった印象で、どうしても好きになれませんでした。
それにもかかわらず、みんながみんな、あすみをマンセーしているのが納得できませんでしたね。
恋に真剣と言えば聞こえはいいですが、他人の心を蔑ろにしすぎです。
キャラもストーリーも勢いで突っ走っていて、設定はボロボロと落としていっている感じ。
一口目は変わった味だなと思っていたら、口に運ぶごとに段階的に微妙になっていくスイーツみたい。
きっと、これだけでは終わらない、凄い展開が待っているんだと淡い期待を持ちましたが、残念ながらそんなこともなく。
結局、途中から想像していた通りのオチで、意外性もなく終わってしまいました。
良いところもあるんだけどなぁ。
ザクザクと豪快に進むあすみは、テンポが良く痛快です。
笑えるシーンもあるんですが……総合的にはマイナスに傾いてしまいました。
何だか世間的には絶賛の嵐で肩身が狭いですが、一意見として読んでいただけたらなと思います。
▼ | 恋が全ての女子中学生が、妄想少女たちとの交流で心を育む成長物語 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 わたしと男子と思春期妄想の彼女たち やのゆい みやびあきの 評価C“文学少女”と恋する挿話集4
2011/05/08 Sun 23:47:40 [edit]
![]() | “文学少女”と恋する挿話集4 (ファミ通文庫) (2010/12/25) 野村 美月 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | 青春 ラブコメ 切なさ | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 |
「心葉先輩、大発見です~~!」 文芸部に飛び込んできた菜乃の“発見”とは?『“文学少女”見習いの、発見』、部室にいつの間にか置かれていた薔薇の模様の指輪。これは誰かから遠子へのプロポーズ!?謎を探る遠子とそれに振り回される心葉だったが……『“文学少女”と騒がしい恋人たち』ほか、甘くほろ苦いエピソードが満載! 美羽、ななせ、遠子の“その後”を描いた書き下ろしも収録の、物語を食べちゃうくらい愛する“文学少女”の恋する挿話集第4弾!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
未来への希望に包まれた切なくも幸福なエピソード満載な文学少女の短編集、第4弾。
シリーズ通算15冊目にあたる本作をもって、短編集はラストとなります。
全部で13話も収録されており、短編というよりも掌編集と表した方が適切かもしれません。
主人公がコロコロと変わり、なおかつ本編より未来を描いた話が多くあるため、大団円の印象を受けました。
辛い過去も出来事も少なくなかった彼や彼女らの幸せなひと時が描かれており、暖かい気持ちになれます。
一つ一つの話は面白いと思えるものの、ちょっと蛇足だと感じてしまうのは、如何ともし難いかな。
さすがに本編に近い巻数分を外伝や短編集に費やしているだけあって、お腹いっぱいです。
好きな世界は、いつまでも閉じずに続きを読みたくなるものですが、多少物足りないくらいで丁度いいのかもしれませんね。
全てを描き切らず、物語の先を楽しむ余白みたいなものを残して欲しい気持ちもあって、複雑な心境でした。
最も印象に残ったのは「不機嫌な私と檸檬の君」。
中学二年生になった心葉の妹・井上舞花の甘酸っぱい物語なのですが、これが良かった。
恋と呼べるほど立派じゃなくて、だけど淡い心の移ろいが繊細で儚い。
まさしく青春の一ページといった具合で、いつまでも想い出に残りそうな切ないエピソードでした。
過去話の心葉を見ると、相当ヘタレだったんだなぁと再認識しますな。
それにしても、結構早い段階から心葉と遠子はお互いを意識していたように描かれていますが、後付け感しまくりですね。
トラウマを抱え込みつつも美羽を忘れられなかったり、ななせに心を許したりといった本編の流れを考えると、遠子への嫉妬が度を越しているように思えました。
さて、次巻で長かった文学少女シリーズも最終巻ですね。
成長した心葉と遠子の話が読めたらいいなー。
▼ | サブキャラクターにもスポットが当てられた幅広くツボを押さえた短編集 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 文学少女 野村美月 竹岡美穂 評価B空色パンデミック Short Stories
2011/05/07 Sat 23:56:25 [edit]
![]() | 空色パンデミック Short Stories (ファミ通文庫) (2010/11/29) 本田 誠 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | 世界観 ラブコメ パロディ | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
①結衣、お下げ髪の純真文系少女になりきりロマンス編「空をあおげば」 ②結衣、再び発作を起こしロボットアニメのヒロインになりきりツンデレ編「閉じた世界の片隅で、私に響くほしのおと」 ③結衣、三度発作を起こし最強女エージェントになりきり戦場バトル編「そして伝説は引き継がれる」 ④メアリー、自ら薬で幼児化して景にロ●コン疑惑発生のリベンジ編「バッド・メディスン」 ――“空想病”をめぐる悲しくも可笑しい日常のドタバタ悲喜劇集。 |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
突発的な空想に囚われる少女に巻き込まれた苦労話が展開される、シリーズ初の短編集。
FBonlineで掲載されたエピソードに、書き下ろしが一つ追加されています。
ここまでパロディネタに走るとは思わなかった。
長編のシリアスさは皆無で、コミカルな話が多くて楽しかったです。
ただ、短編4話中3話が、自己完結型の頃の結衣が空想病の発作を起こし、景たちが付き合わされる日々を描いているんですが、展開がどれも同じで少々飽きました。
面白くないわけではないのですが、3話連続というのは構成上問題ありかと。
空想病の発作を起こさないラブコメ展開や、青井とのニヤニヤイベントをもっと見てみたかったな。
あと、いずれのエピソードも元ネタを理解していないと、面白さが半減してしまうのが難点でした。
そのまんまな展開に吹いたり、逆に結衣の勝気な性格の影響で本筋からズレていくことを感じ取ったりできないと、本来の意味で楽しむことができません。
比較的有名作品を扱ったとはいえ、個人的には2章と3章は、軽いネタしか分からなかったので、読み辛いところがありました。
・「空をあおげば」
元ネタは、スタジオジブリの「耳をすませば」。
ED曲であるカントリーロードが聴こえてきそうな古風な雰囲気を醸し出しているのは、空想病患者の結衣だけで、やはり景たちは痛い子を見る目で役者を演じているため、奇妙なラブコメ模様となっています。
空想上のヒロインである結衣に対抗心を燃やす青井が、色々と美味しいw
・「閉じた世界の片隅で、私に響くほしのおと」
元ネタは、「新世紀エヴァンゲリオン」。
森崎がガチ信者で、無駄に熱過ぎる。
話の内容がパロディ方面に濃すぎて、それこそ演劇を見ているかのような気分になります。
・「そして伝説は引き継がれる」
元ネタは、「メタルギア・ソリッド」。
まさかの木村さんの挿絵。しかも結構イケメンだし。
セーフガードたちのノリの良さのお陰で、空想病に対して神経質にならずに済んでいるのかもなぁ。
・「バッド・メディスン」
メアリーが開発した怪しげな薬を自ら服用して、幼女が幼女化するお話。
オチは丸見えでしたけど、この話が一番面白かった。
景は、もう少し学習能力を身につけてもいいと思うんだ。
それにしても、どう贔屓目なしに見ても青井が正ヒロインに見えてしまうのは、気のせいじゃないですよね。
いいぞいいぞー、もっとやれー。
▼ | 空想病という免罪符でパロディネタを仕込みまくっているコメディ短編 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 空色パンデミック 本田誠 庭 評価Bギャルゲヱの世界よ、ようこそ!disc6
2011/04/14 Thu 16:14:28 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc6 (ファミ通文庫) (2010/10/30) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 | ラブコメ メタ SF | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
「なんじゃ、こりゃ――っ!」 雄叫びとともに来襲した従妹の麻衣。中学までの武紀と、主人公道を極めんとする今の彼とのギャップに驚きつつ、その変化を受け入れる彼女だったが…… 「二度とタケにいに近づかないで!」 武紀を想うあまりヒロイン達に残酷な言葉を口にしてしまう。 違うんだ麻衣!わかってくれ理恵、俺の気持ちは――って何故ここに『エターナル イノセンス』がある!? 選択肢無限の真世界を奔走する、青春ADVノベル、待望の第6弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
恋愛アドベンチャーinリアル、第6巻。
思わず唸ってしまうほどに、面白いなあ。
ラブコメからSFへと軌道修正して以来、どんどん良くなってきていますね。
人によって求めているものは違うでしょうが、個人的にはこの展開は好みです。
武紀の従妹・麻衣の襲来。
彼女もまたフェアリーテールシステムにより記憶は補完されているものの、しかし細かい点では齟齬が発生。
不自然にならないよう気をつけながら対応する武紀だったが、いつまでも隠しきれるものでもなく、極めて現実的な思想によりヒロインたちは拒絶されていきます。
これまで武紀を始め、ヒロイン達みんなで幸せになる方法を模索してきて、ようやく辿り着いた結論が、ハーレムルートだったわけですが、これが物の見事に否定されていますね。
当人たちがいくら認め合ったとしても、世間は許容してくれません。
正面からハーレムになる過程を描いているため、ここは避けては通れない問題でした。
正直、どれだけの言葉を並べても、ハーレムの主に説得力は皆無だと思います。
事実、既刊でも何度かこの壁にぶち当たり、そのたびに武紀たちの心情がクローズアップされていますが、読者を納得させるだけの力はありませんでした。
現代の日本で、複数の相手と結ばれるのは、冷静に考えなくともほぼ無理でしょう。
ハーレムをギャグで済ませていないので、引っかかりを覚える要素は多く、しっくりはきません。
それでも、前向きに階段を一歩ずつ登るかのように進む武紀とヒロイン達を見ていると、応援したい気持ちにさせられます。
武紀だけが気負いすぎなところや、高校生ならではの現実を舐めているところなど、問題点は多々ありますけど、真剣に考えているんだということは伝わってきますからね。
フェアリーテールシステムについては、毎回新しい一面を見せてくれますが、今回の展開は面白かった。
ゲームという媒体を上手く利用した設定で、1巻の時のようなメタ的な試みが秀逸でした。
なるほどなぁ、武紀だけが特別というのも良く分かる。
「エターナルイノセンス」のヒロインズや武紀よりも、脇役の方が光って見える作品ですね。
高橋は言うまでもなく、最大の理解者であるゆうき、親友の将也、本来の主人公である正樹、外伝の面々など、魅力的な人物は脇に固まってます。
ヒロイン達とのラブコメよりも、脇役の活躍の方が読みたいと思ってしまいますね。
これだけ練られた設定にも関わらず、何故か触れられていない不自然な点が残っています。
どうして二次元のキャラクターを、三次元として素直に受け止めることができるのか、ということ。
そっくりなコスプレイヤーを見て、二次元キャラが画面から飛び出てきたとは思わないでしょう。
実は、武紀たちが現実だと思っている世界も二次元だったというオチでもない限り、ちょっと浮いている気がしますね。
物語は最後の最後でとんでもないことになってて、次巻が無茶苦茶気になることになっています。
これは期待大ですね。
▼ | ゲーム要素を取り込んだ舞台設定がお見事で、エンターテイメント性の高さがうかがえます |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価Bココロコネクト ミチランダム
2011/04/09 Sat 04:18:54 [edit]
![]() | ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫) (2011/01/29) 庵田 定夏 商品詳細を見る |
月間マイベスト作品
【評価……A】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★★☆ … 9 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★★★ … 10 文章 ★★★★★★★★★☆ … 9 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | 青春 ラブコメ 完成度 | ★★★★★★★★★★ … 10 ★★★★★★★★★☆ … 9 ★★★★★★★★★☆ … 9 |
「太一とは、付き合えません」 太一は正式に伊織に告白し――玉砕した。 異常な現象が起こっていても関係ないと、決死の覚悟で臨んだ想いは儚く散り、その上、重い足を引きずり向かった部室でフられた事をメンバーに知られてしまう! 部内は騒然となり、稲葉は動揺を隠せない。伊織が場を取りなそうとしたその瞬間、彼女の心と感情が響き渡り……。そして、その日を境に永瀬伊織は変わってしまった――。 愛と青春の五角形コメディ、岐路と選択の第4巻! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
略称が一向に浸透しないココロコ第4弾。
傑作。
この感想を書くときに、一言目を考えるだけで30分以上かかりました。
様々な感情が入り乱れ、圧倒され、のみ込まれてしまいます。
哀しくて、切なくて、苦しくて、潰れてしまうほどに重くて辛い。
優しくて、暖かくて、眩しくて、妬んでしまうほどにみんな輝いている。
とても一言では言い表せませんが、あえて言うならば。
最高に素晴らしかったです。
前回ラストで覚えた不吉な予感は当たり、物語は冒頭からシリアスに展開します。
またしても<ふうせんかずら>によって、異常現象に巻き込まれることになった文研部の5人。
【時間退行現象】と比べると、周囲への影響度は少ない内容だった……はずが、どうも伊織の様子がおかしい。
幾度の危機を乗り越えて強固となっていた絆も、一度ひびが入ると音を立てて崩れていった――という導入です。
同じ内容を繰り返しているだけという意見もあるそうですが、個人的にはそうは思いませんでした。
これまで温めていた伏線を解放させ、更に奥深いところを突いた内容になっています。
ひたすら登場人物の心を研ぎ澄ませることで、洗練された想いが文章に乗せて入り込んできます。
皮がめくれるようにして余分な理屈を落としていった結果、最後に残った剥きだしの感情は、あまりにも当然で、大切で、そしてピュアなものでした。
隠しておきたい気持ちや、伝えるつもりのない言葉がダイレクトに届いてしまう状況は、深刻です。
いかに人がオブラートに包んだ会話をしているか、再認識しますね。
容赦のない言葉がグサグサ刺さり、もう目をそむけたいと何度思ったことやら。
想像以上にキツイよ、これは。
しかし、そんな状態でも日常を続けようとする太一たちの強さに恐れ入ります。
仲間のピンチにも即駆け付けようとしたり、信頼に応えたり、成長ぶりが半端じゃないですね。
太一にしろ青木にしろ唯にしろ、高校生でここまで考えることができれば、十分立派ですよ。
確かに、青臭いにも程があるんだけど、それがもう嫌味でも何でもなく実に爽快です。
浮足立った己の行動に恥ずかしがる彼らを見ていると、こちらまでこっぱずかしい気持ちになります。
異常現象に比べると小さなコトなのかもしれませんが、思春期の高校生にとっての恋愛を含む人間関係というのは、人生の全てだと感じたりするものです。
生々しいティーンエイジャーの苦悩が痛々しく伝わってきて、ほろ苦くて仕方ありません。
今回の主役である伊織の心情は、物凄く共感できました。
これまでの現象の中で、自分が当事者になるならば最も嫌なものだったということもあり、伊織の精神が壊れていくのも止むなしかなぁと思いましたね。
まぁ、今回の事象についてはキッカケでしかありませんでしたけど。
上辺だけの造形ではなく、一人の少女として掘り下げていて、人間的に非常に好感が持てます。
何となく1巻の頃の、後ろ暗いことばかり考えていた稲葉んを思い出しましたね。
そして、その稲葉ですが……可愛すぎて悶え転げました。
何なのこの娘、萌死させる気ですか、そうですね。参りました。
クーデレだったはずなのに、もはやデレデレで、ニヤニヤを通り越して何だか叫ばずにはいられません。
現象が起きずとも、感情が漏れ出しまくっていて、慌てふためく姿に萌えまくりです。
その一方で、友として伊織の力になりたいと立ち上がる様は、格好良すぎる。
伊織も好きなんですけど、稲葉んの破壊力の前には霞んでしまいそうですよ。
これは惚れる。
時折挿入されるコメディも、笑いのツボを付いていて、完成度の高さに唸らされます。
藤島麻衣子や太一の妹など、脇役のキャラが立っていて、瞬間的にも目が離せません。
ぬくもりが伝わってきそうなイラストも、華があっていい。
雰囲気を表現する口絵は、実にお見事です。
何故かモノクロになると表情が薄くなったりしますけど、絵柄は悪くありません。
5人の友情が素敵で、青春系ライトノベルとしては言うことなしですね。
読了感も心地良く、本当に素晴らしい。
ドラマCDを購入したのも、今巻が良すぎたためです。
漫画も良い出来ですし、今後のメディアミックス展開も期待してしまいますね。
▼ | ココロが擦り切れていく少女と、手を差し伸べる仲間達の友情物語 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ココロコネクト 庵田定夏 白身魚 評価Aバカとテストと召喚獣9
2011/04/04 Mon 03:41:39 [edit]
![]() | バカとテストと召喚獣9 (ファミ通文庫) (2011/01/29) 井上 堅二 商品詳細を見る |
【評価……A-】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★★☆ … 9 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★★☆ … 9 | バカ ギャグ ラブコメ 燃え | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
墓穴と姦計が入り乱れた対Cクラス試召戦争。Fクラスは、なんとか初日をタイムアップで切り抜け、勝負を二日目に持ち越すことに成功した。しかし、ただでさえ低い点数をさらに減らしてしまった彼らは、いきなりピンチ状態からのスタートに!しかも、明久は風邪で不在……。どうなるCクラス戦!?この劣勢を覆すことができるヒーローはいないのか!? 「それで、話ってなんだい吉井君?」(by知的眼鏡先生) 勝利を信じる心と心の絆が奇跡を呼ぶ第9巻!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
バカだからこそ、一直線に目的に突っ走ることができる熱い奴らの学園コメディ、第9巻。
Cクラスとの試召戦争後半戦に突入です。
うおー、面白れー!
ここ最近のバカテスの中では、一番楽しかったです。
本編よりも短編集の方が良かったりしてたからなぁ。
姫路さんの不意打ちによるキスで呆然となってしまった明久。
我を取り戻して学校に遅刻した時には、既に試召戦争は始まっていた。
仲間との合流を諦め別行動を取ることにした明久、開始早々苦境に立たされている雄二たちFクラス。
二人の視点から交錯する試召戦争という熱血バトルが繰り広げられています。
明久と雄二の燃える友情展開は珍しくはないんですが、今回は飛びきり熱いですね。
口に出さなくても伝わる信頼関係というのは、卑怯なくらい格好良いなぁ。
普段、お互いを陥れることしか考えていないのに、いざというときに信じられるってのは輝いて見えます。
正直、召喚獣の設定的に限界が見えているので、話を広げるのは難しいんでしょうね。
それでも、十分見応えのある駆け引きが描かれていて、システムの穴を指摘するよりも絞り出した知恵に感心させられました。
まさか、Aクラスメンバーにここまで多くの出番があるとは思いませんでしたね。
明久との絡みが新鮮。
いつものFクラスとの荒っぽい関係とは一味違うマイルドなボケがおかしくて何度も笑いました。
秀吉人気に押されて不遇の立場となってしまっていた優子に、やっと光が当てられましたね。
ちょっと気が強いショタコン程度だと、濃い人間の多い文月学園では埋もれてしまいますけれど、しっかり者のツンデレってのはポイント高いよ。
何度かニヤケさせてもらいました。
今巻に限っては、秀吉よりも萌えましたよ。
ニヤけたというのは、愛子も同様ですね。
私はHだよと公言している女の子が見せる純情さは、破壊力が凄い。
ギャップ萌え好きとしては、たまりませんでした。
もちろん、お約束の誘惑的な行動もあり、何ともまぁご馳走様でしたという感じw
久保君は、相変わらず美味しいポジションでいらっしゃることで。
明久との勘違いコントは、もう楽しくて仕方ありません。
姫路さんは、ようやくメインヒロインとして板についてきたなぁ。
Fクラスの空気に感染してしまい、どす黒い方向に進化してしまった時は、もう清純派ヒロインに戻ることはできないなと思っていましたが、一周して芯の強い魅力的な女の子になりましたね。
明久のために、みんなのためにと頑張る姿は、頼もしさすら感じられました。
表紙の翔子は、いつの間にかに随分と成長していたんだなぁと感慨深くなったりするね、うん。
挿絵では、木下姉弟とデフォルメ明久が可愛かった。
葉賀ユイさんのイラストは、ページをめくる瞬間のドキドキ感がいいなぁと思います。
それにしても、この作者はあとがきまで笑わせてくれますね。
これぞプロというやつか、なるほど。
▼ | いつもよりコメディが控えめのかわりに、熱いストーリーを魅せてくれます |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 バカとテストと召喚獣 井上堅二 葉賀ユイ 評価A-ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! Fandisc
2011/02/27 Sun 23:48:16 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! Fandisc (ファミ通文庫) (2010/08/30) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | ラブコメ メタ | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
咲と愛子の友情のはじまり「いつか花咲く、愛もある」。 武紀にゆうきから意外な提案が……「梅雨が明けるころに」。 悩める春姉、危機一髪?「姉のちときどき胸さわぎ」。 どうしても一緒にお風呂に入ると言う夏海に武紀は!?「俺の妹のばあい」。 意外なあの娘とアキバデートっ!「すくぅ~るメイド」。 そして訪れる武紀最大の正念場――奮い起こせ主人公力!!「攻略仕様のアンチノミー」の全6編でお贈りする「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」珠玉短編集!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」シリーズ初の短編集。
外伝の方が先に出ている作品ってのも珍しい気がしますね。
咲・理恵・ゆうきの三人のパジャマパーティーを幕間として、全6編の構成となります。
シリアスなしのラブコメらしい短編なので、気を張らずに読むことができました。
ヒロインズとのラブコメを求めていた人にとっては、待望の本だったかと思います。
短編ヒロインは、ゆうき・愛子・春海・夏海・四阿の5人。
まぁ、愛子の話は咲との友情エピソードなので特殊ですが、それ以外は武紀と絡みですね。
イチャイチャってレベルを超えている接触もあり、まるでエロゲーのでした。
ファンディスクというタイトルに偽りなしですが、武紀の行動が度を超えているので、引く人もいるかもしれません。
個人的には、冷静なようで判断力が足りていない武紀の強引なところがウザ格好良いと思っているので、アリです。
しかし、一番面白かったのは各ヒロインの話ではなくて、最後の「攻略仕様のアンチノミー」でした。
ネタバレになるので詳しくは語れませんが、エターナルイノセンスのゲーム的な内容を上手く活用した話で、メタ的な要素が楽しかったです。
武紀がヒロイン勢に問われて困る展開に、ニヤニヤとさせられましたよ。
本編はSFの方向に進みしたけれど、このエピソードは1巻の時のノリに近いかな。
ギャルゲーが現実になったことによる面白い可笑しい点を、ギャグっぽく仕立てていて、終始笑えました。
こちらの和やかな雰囲気の方が、万人に好かれそうな気がしますね。
それにしても、ゆうきは平然と咲や理恵たちとお風呂に入っているけど、これで実は男でしたってことだったら、武紀はどう反応するんだろうかw
ゆうきの正体は将来的に明かされてほしいような、このまま秘密でいて欲しいような複雑な心境だなぁw
▼ | ファンディスクの冠に相応しいヒロインとのエロ寄りのラブイベント多数収録 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価Bココロコネクト カコランダム
2011/02/07 Mon 23:59:17 [edit]
![]() | ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫) (2010/09/30) 庵田 定夏 商品詳細を見る |
月間マイベスト作品
【評価……A】
発想 ★★★★★★★★★☆ … 9 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★★☆ … 9 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | 青春 構成 | ★★★★★★★★★☆ … 9 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
終業式、文研部のメンバーは謎の文字を見つけた。「永瀬・稲葉・桐山・青木」、そして「12時~17時」。誰が書いたのか、意図すら分からず、首をひねる五人。だが彼らは12時に、信じられない光景を目にする。子供に戻った伊織と唯、二人は身体と精神が幼くなっていて……!? 17時にピタリと止まる奇妙な条件、姿を現さない<ふうせんかずら>、そしてただ一人現象が起こらない太一に、謎の影が忍び寄る――! 愛と青春の五角形コメディ、大波乱の第三巻!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
略称が「ココロコ」に決定したらしい、シリーズ第3弾。
なーんか、しっくり来ないんだけど、でも他に名案もないか。
いいなぁ、このシリーズ本当に素晴らしいわ。
キャラ良し、ストーリー良し、設定良し、イラスト良し。
ラノベとしては隙がないといっても、決して大袈裟ではない高水準の仕上がりとなっています。
素直に面白いという言葉が出てきますよ。
今回は、身体と精神が幼くなってしまう時間退行現象が文研部に降りかかります。
しかし、何故か太一だけが現象を免れていたり、<ふうせんかずら>が出てこなかったりと、いつもと違う様子。
これまでと異なり肉体的に変化が伴うため、他者からの目を今まで以上に気をつける必要があるのだけど、そんなときに限って問題は発生してしまうもので、壁にぶち当たりながらも大切なことに気付いて行く青春ストーリーとなっています。
発想ありきのギミックのため、細かいところは矛盾があるかもしれません。
しかし、この作品においては、そこは重要ではありません。
超常現象が主題なのではなく、巻き込まれた5人の絆と成長がテーマだからです。
異常な状態に置かれることで見えてくるココロは、擦り切れて痛いのだけど、奥底に眠る想いはすっごい熱いんですよ。
テーマがぶれずに一貫して描かれているため、メッセージ性が強く物凄く読みやすいのも特徴かな。
重たい過去に負けず、現在を見つめ直す面々が格好良すぎます。
特に、青木と桐山の二人の成長には、鳥肌が立つぐらい痺れました。
背中を押してくれる仲間がいることに感謝し、だけど最終的には自分の力で乗り越えてしまう彼らには、尊敬してしまいますね。
文研部の信頼関係の厚さは、眩しすぎて羨ましくなりますよ。
出番は少なめだったかもしれませんが、太一&伊織&稲葉の三角関係が随所に見られたのも良かった。
吹っ切れた結果、冷静な振りしてデレる稲葉んの過激な台詞は反則的すぎます。
腹を括った彼女のアプローチは、太一でなくとも刺激が強すぎるわw
興味深いことに、一見複雑そうな稲葉はハッキリしていて、分かりやすい性格に見える伊織が難儀な思考をしているんですよね。
どちらも好きだけど、稲葉はいかにも二次元キャラって感じはする。
伊織がリアルかと言われると、そうでもないんだけどね。
1巻で浮き彫りとなった伊織の性格については、まだまだ根が深そうです。
青木に男として格好良い場面を奪われまくった太一は、前回までの反動か、小休止でした。
主人公無双になるよりも、こういう回があったほうが感情移入しやすいので、悪くないと思います。
前回の欲望解放での反省をしっかりしていて、ちゃんと前進しているのも目に見えましたしね。
白身魚さんのイラストは、作風との融合具合が素晴らしく、脳内再現が容易かったです。
白バックに女の子の表紙が多いラノベで、ちゃんと背景を描き込みつつ、和やかな雰囲気を表現しているのは、もっと評価されていいんじゃないかなと思いますね。
冬場に上着を脱いでいる桐山に寒くないのかというツッコミはしたいところですが。
ああ、それと幼女化した伊織と姫子ちゃんは可愛かったです。
晴れやかな気持ちで終わると思いきや、何やら怪しげな空気が残っていますね。
シリアスな展開になりそうな予感。
▼ | 助けを請う強さと、自らの殻を破る強さは別物だということを教えてくれます |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ココロコネクト 庵田定夏 白身魚 評価A