fc2ブログ

明日へと続く記憶

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

09«1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»11

“夕顔”ヒカルが地球にいたころ……2 

“夕顔” ヒカルが地球にいたころ……(2) (ファミ通文庫)“夕顔” ヒカルが地球にいたころ……(2) (ファミ通文庫)
(2011/08/29)
野村 美月

商品詳細を見る
読書期間:2012/7/31~2012/8/3

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー
恋愛
ツンデレ
期待感


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 取り憑かれ、うっかり友達になってしまった幽霊のヒカルのため、その“心残り”を晴らす約束をした是光。ヒカルが示した次の相手は、内気な引きこもりの少女だった。
 夜にだけ咲く儚い花のような少女、夕雨。閉じた世界で幸せに微笑む彼女と過ごすうち、徐々に放っておけない気分になる是光だったが……。
 何故か約束の内容を告げないヒカル。そんな中、夕雨を不登校にした“怨霊”の噂が学園に甦る。その正体を前に、是光は――!?
 大人気シリーズ第2巻、登場!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


源氏物語をモチーフにした淡く切ない、そして冷徹さを感じさせるシリーズ第2弾。
ひんやりと冷たい表面だからこそ、温もりが熱く実感出来るような作品ですね。

成仏し損ねたヒカルには、心残りのある女性が数十人いるらしい。
その中の一人、引きこもりの少女、奏井夕雨
ヒカルと彼女の約束を果たすために、またしても赤城是光は人情で動くストーリーです。

物語が見事に練られていて、読み応えがあります。
ミステリー要素を含んだストーリー展開に振り回されるのが楽しい。
ヒカルの関係者は訳あり顔で慎重な姿勢を見せる中、強引に突破する是光が格好良いです。
やはり著者のキャラは掘り下げた分だけ、新たな一面を見せてくれますね。

しかしながら、ヒカルの肝心なことに関して黙秘する態度が気に食わない。
1巻でも指摘した部分ですが、あまりにも都合が良過ぎではないでしょうか。
言い訳らしきことも綴ってありましたけど、要するに結局是光のことを信頼していないわけです。
もちろん、ヒカルが隠していた事実が驚愕もので、最終的に語ることが出来なかった理由が判明するのでしょう。
それは分かっていても、是光に秘匿して裏から誘導しているように見えるヒカルの姿勢には納得がいきませんでした。

夕雨のキャラクターは、男性受けしそうだなと思いました。
か弱い存在で守ってあげたくなるような儚さを併せ持つ少女で、庇護欲をそそられます。
繊細で、しかし心に滾る想いは強くて、彼女の魅力がいっぱい詰まった内容だったと思います。
個人的には前回の葵の方が好きなので、出番がほぼなかったのが残念でしたけどね。

その代わりといっては失礼ですが、帆夏が素晴らしいツンデレっぷりを見せつけてくれました。
まさかこんなに早くデレデレになってくれるとは。
彼女の視点になった途端に、雰囲気がガラリと変わりますね。
素直になりきれずに葛藤する女の子は、もどかしくてたまりません。

是光にハーレムを形成する素質があると見込んで、ヒカルは取り憑いたのだろうか?
順調に女の子を囲みつつある是光は、一刻も早く女心を理解するべきだと思います。
この世界観では、下手すると刺されかねないですよw

最後の引きは強烈でした。
次巻の展開が非常に楽しみです。

引きこもり少女に外の世界を見せたくなった主人公が彼女の過去に介入する話

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ヒカルが地球にいたころ……  野村美月  竹岡美穂  評価B 

△page top

“葵”ヒカルが地球にいたころ……1 


(2011/05/30)
野村 美月

商品詳細を見る
読書期間:2012/7/14~2012/7/16

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー
恋愛
ツンデレ
期待感


 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 「心残りがあるんだ」
恋多き学園の“皇子”ヒカル――その幽霊が、是光の前に現れそう告げた。
このまま幽霊につきまとわれ続けるなんて冗談じゃない!と渋々“心残り”を腫らす協力をすることにした是光だが、対象の左乙女葵――“葵の上”と呼ばれる少女は、頑なに話も聞こうとせず、生徒会長の斎賀朝衣にも不審がられ、敵視されるハメに。
そんな時、ヒカルの死にまつわるある噂が聞こえてきて――!?
 野村美月が贈る、ミステリアス現代学園ロマンス、堂々開幕!!

【感想】


大人気ラノベ「文学少女」シリーズの野村美月×竹岡美穂のコンビで贈る新シリーズ。
満を持しての登場です。

著者の作品は、何故か読み始めるのに労力を要します。
「文学少女」も評判が良いと知っていても、なかなか手を出しづらかった記憶があります。
何となく面白そうというよりも面倒臭そうだというイメージが先行するんですよね。
一番最初に読んだ「天使のベースボール」がトラウマにでもなっているんだろうか……。

そんなわけで、発売直後に購入しておきながら、本作を読み始めたのは、シリーズが開始されて1年以上経ってからでした。
比較的余裕のある時期に、ガッツリと読書したいなと思って手を付けてみたわけです。

やはりというべきか、予想外というべきか。
積んでいたのを悔やむくらい、非常に面白かったです。

初めて「文学少女」を読んだ時の作品内に引き込まれる感覚をまた味わうことが出来ました。

設定上はありふれたものです。
主人公の赤城是光は、見た目でヤンキーだと勘違いされ、中身も少々粗暴により、周囲から浮いた存在だった。
大して親しくもない学園の皇子である帝門ヒカルの葬式に参列した際に、何故か幽霊のヒカルに取りつかれてしまう。
ヒカルは心残りが解決しないと成仏出来ないらしく、是光は仕方がなく付き合うことに。
その心残りとは、ヒカルにとって大切な女性である左乙女葵への約束を果たすことだった。
しかし、とりあえず女性なら誰にでも色目を使うヒカル、女に興味がなく無愛想な是光とでは、相性は最悪で、トラブルがばかりが起きてしまう。
果たして、是光はヒカルの代わりに葵との約束を遂げることができるのか――というストーリー。

モチーフである「源氏物語」をミステリアスな少女漫画風に現代アレンジした感じ。
第1巻の物語の本筋は分かりやすく、単純であるがゆえに牽引力も相当です。
長編シリーズの導入しては、上手く調理しており、成功している部類に入ると思われます。

その一方で、裏に流れる長編の伏線は、出し惜しみしている感が強いですね。
それもこれも主人公側であるヒカルが何かを隠しているのが原因です。
是光に語れない理由でもあるのかもしれませんが、是光にとってみればはた迷惑な話ですよ。

幽霊物の醍醐味は、やっぱり他人の情報を有り得ない方法で入手できる点でしょう。
無関係だったはずの是光が、ヒカルのことを誰よりも知っている状況は面白い。
葵や他の女の子に誤解されてしまうところはヤキモキし、逆に巧く事が運ぶとニヤニヤ出来ます。

ヒロイン役としてはメインの葵よりも式部帆夏の方が魅力的に映ります。
是光と衝突を繰り返しながらも接近する帆夏は、所謂ツンデレ娘で、彼女のモノローグが挿入される章だけは、一気にラブコメモードに突入します。
「文学少女」のななせの系譜に連なる少女ですから、ななせファンは好きになるはず。

少々周りくどい文章は相変わらずで、好みは分かれそうですね。
まぁ、竹岡美穂さんのイラストとの相性は抜群だと思います。

また長い物語を楽しむことが出来そうです。
これからどのように展開するのか楽しみ。

死んだ少年と残された少女の間を取り持つ巻き込まれ型お節介系主人公の奮闘が光る

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ヒカルが地球にいたころ……  野村美月  竹岡美穂  評価B+ 

△page top

半熟作家と“文学少女”な編集者 

半熟作家と“文学少女”な編集者 (ファミ通文庫)半熟作家と“文学少女”な編集者 (ファミ通文庫)
(2011/04/30)
野村 美月

商品詳細を見る
読書期間:2011/8/20~2011/8/24

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
ミステリー
青春
ラブコメ
切なさ


 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6



 新しい担当編集の天野遠子嬢は、清楚な美人だった。――が、いきなり本棚の前でグルメ批評を始めるわ、ほんわか笑顔で容赦なく原稿修正を指示してくるわ、売れっ子高校生作家たるオレが、どうしてこうも振り回される!?
 そんな時届いた脅迫状じみたファンレター。そこにはまだ刊行される前の小説の内容が書かれて……って差出人は、まさか!?
 半熟作家・雀宮快斗とその担当編集者遠子が織りなす、物語や文学を食べちゃうくらい愛する“文学少女”の最後の物語。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


文学少女、最終章。

5年に渡り続いたファミ通文庫における看板タイトルが、本当のラストを迎えました。
本編8冊、短編集4冊、外伝3冊、そして最後を締めくくる今巻の計16冊。
長く続いただけあって、作品内の世界は十分過ぎるほどに描かれてきました。
終わりが寂しいというよりも、お腹いっぱいと感じる作品はそうはないでしょう。

最終回の内容は、本編から数年後、編集者となった遠子が一人の作家を担当する話。
タイトルだけ発表された当初は、本編ラストの続きかと思いましたが、よくよく考えてみれば心葉が半熟作家なわけないですよね。

主人公は半熟作家の雀宮快斗
とはいえ、高校生でありながら人気シリーズを執筆し、メディアミックス展開も好調で、更にはモデルまでもこなすハイスペックなキャラです。
思想も半熟というよりも若いという方が正しいような気がします。
そんな彼が、担当編集者である遠子と出会い、成熟していくストーリーが語られます。

言ってしまえば、最終回によくあるパターンですね。
最後の最後に新キャラを投入し、第三者の立場からこれまで登場したキャラの後日談を語る手法です。
既知であるキャラの見た目も中身も成長した姿が、懐かしくも新鮮に映り、さながら同窓会に出席したような気分になるこの手法は、結構好きだったりします。
ただ、この「文学少女」においては、ちょっと主人公キャラの位置付けが遠かったかな。
遠子は良いんですけど、心葉を含めた他キャラとの絡みや情報が入ってくる立場だったら、もっと大団円の雰囲気が出たと思うんですよね。

全4章からなるエピソードは、外伝でもない番外編って感じ。
シリーズ最終巻として見るとあっさりしすぎかなと思わないでもないですが、暗い話が続いた作品で、明るく締められたのは良かったと思います。
オチに関しては完全に目から鱗で、スッキリとした気分で読み終えることができました。

本編、外伝と二度も終わりを迎えた作品なので、気持ちの整理をつけることは難しくなかったです。
癖のある文体から手に取るのが少し遅れましたが、読んで良かったと思える作品でした。

第三者視点から描かれる“文学少女”その後の物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B 

△page top

“文学少女”と恋する挿話集4 

“文学少女”と恋する挿話集4 (ファミ通文庫)“文学少女”と恋する挿話集4 (ファミ通文庫)
(2010/12/25)
野村 美月

商品詳細を見る
読書期間:2011/4/5~2011/4/10

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
青春
ラブコメ
切なさ



 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6




 「心葉先輩、大発見です~~!」
 文芸部に飛び込んできた菜乃の“発見”とは?『“文学少女”見習いの、発見』、部室にいつの間にか置かれていた薔薇の模様の指輪。これは誰かから遠子へのプロポーズ!?謎を探る遠子とそれに振り回される心葉だったが……『“文学少女”と騒がしい恋人たち』ほか、甘くほろ苦いエピソードが満載!
 美羽、ななせ、遠子の“その後”を描いた書き下ろしも収録の、物語を食べちゃうくらい愛する“文学少女”の恋する挿話集第4弾!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


未来への希望に包まれた切なくも幸福なエピソード満載な文学少女の短編集、第4弾。
シリーズ通算15冊目にあたる本作をもって、短編集はラストとなります。

全部で13話も収録されており、短編というよりも掌編集と表した方が適切かもしれません。
主人公がコロコロと変わり、なおかつ本編より未来を描いた話が多くあるため、大団円の印象を受けました。
辛い過去も出来事も少なくなかった彼や彼女らの幸せなひと時が描かれており、暖かい気持ちになれます。

一つ一つの話は面白いと思えるものの、ちょっと蛇足だと感じてしまうのは、如何ともし難いかな。
さすがに本編に近い巻数分を外伝や短編集に費やしているだけあって、お腹いっぱいです。
好きな世界は、いつまでも閉じずに続きを読みたくなるものですが、多少物足りないくらいで丁度いいのかもしれませんね。
全てを描き切らず、物語の先を楽しむ余白みたいなものを残して欲しい気持ちもあって、複雑な心境でした。

最も印象に残ったのは「不機嫌な私と檸檬の君」。
中学二年生になった心葉の妹・井上舞花の甘酸っぱい物語なのですが、これが良かった。
恋と呼べるほど立派じゃなくて、だけど淡い心の移ろいが繊細で儚い。
まさしく青春の一ページといった具合で、いつまでも想い出に残りそうな切ないエピソードでした。

過去話の心葉を見ると、相当ヘタレだったんだなぁと再認識しますな。
それにしても、結構早い段階から心葉と遠子はお互いを意識していたように描かれていますが、後付け感しまくりですね。
トラウマを抱え込みつつも美羽を忘れられなかったり、ななせに心を許したりといった本編の流れを考えると、遠子への嫉妬が度を越しているように思えました。

さて、次巻で長かった文学少女シリーズも最終巻ですね。
成長した心葉と遠子の話が読めたらいいなー。

サブキャラクターにもスポットが当てられた幅広くツボを押さえた短編集

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B 

△page top

“文学少女”見習いの、卒業。 

“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)“文学少女”見習いの、卒業。 (ファミ通文庫)
(2010/08/30)
野村 美月

商品詳細を見る
読書期間:2010/9/9~2010/9/15

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー
青春
切なさ



 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 「わかったでしょう?邪魔よ」
 親友の瞳から、そう告げられた菜乃。しかも心葉は、そんな瞳とつきあうという!
 仰天する菜乃の前に、さらに、瞳の過去――人を死なせたと噂された三年前、彼女の側にいた人物が姿を現す。瞳に何か起こっているなら、引くわけにはいかない!心を決め、動きはじめた菜乃に、心葉は一冊の本を差し出し……。瞳が抱く秘密とは?
 そして、迫る心葉との別れと、菜乃の初恋の行方は――。
 もうひとつの“文学少女”の物語、堂々完結。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


外伝「文学少女見習い」シリーズ、終幕。
後輩・日坂菜乃の片想いの結末が描かれています。

切なく、しんみりとさせられる良いお話でした。
寂しさに心を埋めつくされそうになりますが、僅かに希望という光が残されていて、読了後すぐにというわけにはいかずとも前向きになれる終わり方だったと思います。

前回のラストで物凄いことになっていて、どんな波乱の展開が待ち受けているのかと気になって仕方ありませんでした。
しかし、蓋を開けてみると、その点については思っていたよりも底が浅くて残念でしたね。
てっきり、ドロドロの関係が見られると思っていたんですが、菜乃が意外と大人でした。

まぁ、もちろん物語そのものは、いつも通りドロドロでしたけどね。
“文学少女”見習いの、寂寞。」は、菜乃の親友である冬柴瞳に隠された過去に迫るエピソードで、夏目漱石の「こころ」をモチーフとした、病的なまでの愛憎劇が胸にこびりつきました。
後ろ向きになっている人間に、声を届けようとするのは並大抵の力では無理だよなぁと思い知らされます。
客観的に見れば、冷静な意見も言えるんでしょうけど、当事者にはその判断ができませんからね。

さて。
文章量は「寂寞」が大半を占めていますが、あくまでこの本のメインは、心葉の卒業による菜乃との別れを描いた「“文学少女”見習いの、卒業。 」です。
二人で過ごす文芸部の時間に終わりを告げる時がやってきました。
落ち着いた雰囲気を見せる心葉が、突拍子もない言動を放つ菜乃の前に、顔をしかめたり怒ったりする――といった楽しかった日々もおしまいです。

本編で未来が語られているため、外伝のラストは最初から確定していました。
それを良い意味で裏切ってくれる、素晴らしい締め方だったと思います。

菜乃は本当にいい娘ですね。
その名の通り、隣にいる人を暖めてくれる純粋で優しい女の子でした。
彼女の成長を見守ることができる外伝作品が生まれてくれたことに、感謝します。

数年後、心葉もびっくりするくらい大人な女性になって……いなさそうだなw
どれだけ時が経っても、きっと菜乃は晴れやかな笑顔の似合う女の子なんでしょうね。

文学少女を語る上で、欠かせない作品になったと言っても過言じゃないはずです。
読んで良かったと思える、とても素敵なお話でした。

失恋から始まり失恋で終わる、幸せな片想いがここにあります

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B+ 

△page top

“文学少女”と恋する挿話集3 

“文学少女”と恋する挿話集3 (ファミ通文庫)“文学少女”と恋する挿話集3 (ファミ通文庫)
(2010/04/30)
野村 美月

商品詳細を見る
読書期間:2010/5/19~2010/5/20

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
切なさ





 ★★★★★★☆☆☆ … 7






 恋に破れた「炎の闘牛」、柔道部の牛園くん。それでも遠子を思いきれず、思い出が欲しいと心葉に詰め寄り……『“文学少女”と炎を上げる牛魔王』、クラスにも、気安い笑顔を向けてくる担任の竹田千愛先生にもなじめない中学生の仔鹿だが――『迷える仔鹿と嘘つき人形』ほか、遠子の想いを目にした紗代や、夕歌と毬谷先生の出会いなど、甘くほろ苦いエピソードが満載!
 物語を食べちゃうくらい愛する“文学少女”と、彼女を取り巻く人々の、恋する挿話集第3弾!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


サブキャラのエピソードが豊富な文学少女シリーズ短編集、第3弾。

面白かったです。
キャラに思い入れが強ければ強いほど楽しめます。
メインキャラの恋愛模様やストーリーが好きで読んでいる人にとっては、ちょっと辛いかもしれません。
脇役達も切ない恋愛や青春をしていて、見応えはあるとは思いますがね。

内容は大まかに分類すると、3つに分かれます。

前半は、心葉と遠子の文芸部の日常を綴ったお話。
前々から思っていましたが、この二人に振り回される外野はたまったもんじゃないよなぁ。
ギャグであっても、この鈍感さは牛園くんが可哀想だ。

中盤は、夕歌と毬谷の出会いと、その後のお話。
悲劇的な未来を知っているだけに、出会いの章は、読む気力を維持するのが大変でした。
夕歌の歓びと反比例するように、気が滅入ってしまいましたね。
まさか毬谷のその後が描かれるとは思わなかったのですが、これはこれで哀しく重いなぁ……。

後半は、中学教師となった千愛と、その教え子の一人である仔鹿との交流を描いたエピソード。
人の感情を理解できないことを恥じる千愛が、教師になっていることに驚いた。
最も不向きな職業だろうに、それだけ向き合う覚悟を持って選んだのかな。
少しずつではありながらも、温もりを感じる方へと変化している彼女を見ていると、嬉しくなりました。
これまで何度か言ってますが、千愛が作中で一番キャラが立っているんですよね。
おかげで、話自体が凄く面白い。

ななせの登場が少なかったのは残念ですが、色んなキャラの短編が見られて良かったです。

ミステリーやコメディ分が控えめの代わりに、切なさが沁みる物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B 

△page top

“文学少女”見習いの、傷心。 

“文学少女”見習いの、傷心。 (ファミ通文庫)“文学少女”見習いの、傷心。 (ファミ通文庫)
(2009/12/26)
野村 美月

商品詳細を見る
読書期間:2010/1/16~2010/1/18

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
ミステリー
青春




 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6





 「きみが大嫌いだ」
 心葉にそう告げられてしまった菜乃。その日以来、心葉は本心を見せず、取り繕った笑みで菜乃に接するようになる。そんなの嫌だ!と、夏休み、菜乃はある行動に出るが……。
 傷心の夏が過ぎ、秋。文化祭に向け賑わう校内で、菜乃はまた新たな出逢いを体験する。不吉な影を背負った少女。彼女に関わる中で、菜乃は彼女の、そして心葉やななせ、皆が様々に心に抱える闇と光を見つめることになる。もうひとつの“文学少女”の物語、第2弾!!
 DVDにはオリジナルアニメーション『“文学少女”今日のおやつ~はつ恋~』と、『劇場版“文学少女”予告映像』を収録!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「文学少女」シリーズ外伝、その2。
本編に劣らないクオリティを誇っており、何気に楽しみにしているシリーズです。

心葉に「大嫌い」と言われショックを受けた菜乃が、もう一度振り拭いてもらおうと頑張る夏の短編「“文学少女”見習いの、傷心。」、「フランケンシュタイン」をベースにしたミュージカルに参加することになった心葉と菜乃の文化祭エピソード「“文学少女”見習いの、怪物。」、千愛の日常が描かれた「ある日の千愛」を加えた三編で構成されています。

相変わらず、独特の雰囲気を放っていますね。
全体的に説明口調であったり、妙に重々しい捉え方であったり。
昼ドラみたいにクセが強く、万人受けはしづらい作風です。
それにもかかわらず、絶大な支持を受けていることに、この作品のバランスの良さがうかがえますね。

外伝という位置づけですが、本編の補完的な意味合いも十分に含まれています。
物語としては、メインとなる「怪物」の話が長い割には物足りないかな。
登場人物を絞りすぎていてミステリーとして読むと、大体想像がついてしまうところがあります。
それでもまぁ、きっちりと驚きを提供してくれるのだから凄いんですけど。

それにしても、心葉は酷いな。
ななせや菜乃に対して、非道すぎやしませんか。
自分が傷つくことには敏感なのに、他人を傷つけることに関しては躊躇がないな。
遠子先輩という大きな存在があるので、好意を持った女性を拒絶することは理解できますが、やり方ってもんがあるでしょうよ。

その代わりに、菜乃のへこたれない性格が頼もしいですね。
精神構造が繊細なキャラが多い中で、何度挫かれても再び立ち上がろうとする彼女の姿は眩しく輝いています。
ある意味一番普通の思考を持ち合わせた人物なので、感情移入しやすいですね。
結末は決まっているものの、応援したくなるキャラだなぁ。

ななせには、この物語が続く限り切なさしか生まれないような気がする。
報われないことが分かっているだけに、読んでいて辛い……。
彼女が幸せになれる日が来ることを願ってやみません。

最後の最後に爆弾が仕掛けられていて、次が物凄く気になります。
外伝最終巻となる次巻が楽しみでなりませんね。

補足。
自分はDVD付特装版の方を購入しましたが……うーん、通常版で良かったかなぁ。
アニメは低予算のOVAっぽい感じだったし、背表紙にも「DVD付特装版」と書いてあるのが気に入らなかった。
映画はきっと観ることないでしょうね。

人が作り出す心の壁と距離をまざまざと見せつけられる物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B 

△page top

“文学少女”と恋する挿話集2 

“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫)“文学少女”と恋する挿話集 2 (ファミ通文庫)
(2009/08/29)
野村 美月

商品詳細を見る
読書期間:2009/9/9~2009/9/11

【評価……B
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
ラブコメ ★★★★★★☆☆☆
 … 7
青春 ★★★★★★★★☆☆
 … 8

親切だけどお節介で早とちりなななせの親友・森ちゃん。そんな彼女に恋する少年・反町の前に、“文学少女”が現れて――!?
『“文学少女”と愛を叫ぶ詩人』、心葉に恋するななせの切ない胸の裡を描く『ななせの恋日記』ほか、今回はななせ&森ちゃん達をメインに贈る、物語を食べちゃうくらい深く愛する“文学少女”の、恋する挿話集第2弾!!
時に本編で語られなかった秘めた想いまでもが描かれる、甘く切なくほろ苦い、珠玉の恋のエピソード集。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


文学少女シリーズ短編集第2弾。
劇場版アニメのGW公開も決まり、本編が終わっていてもまだまだ勢いは止まらない模様です。

さて、今回の短編は以前から公言されていた通り、ななせの登場頻度の多い内容となっています。
とはいえ、メインの役柄かといわれると、ちょっと違う気がしますね。
ななせの親友の森ちゃんに想いを寄せる反町くんがこの巻の主役だと思われます。

本編では描かれなかった、ななせ&森ちゃんサイドを反町くん視点で語られています。
少し期間が空き、かつ客観的な視点からみると、癖の強いキャラが多いことに改めて気付かされますね。
言葉は悪いですけど、高校生としては異常な人物ばかりですからねぇ。
そんなキャラ色の濃い人物が多い作品において、反町くんや森ちゃんの普通っぽさが新鮮で救われるような気分になります。
特に反町くんは等身大の青春を過ごしていて、共感しやすかったですね。
心葉より、よっぽどイイ男な気がするw

反町くんの話はちょっと甘めのラブコメで、笑えるシーンも多く楽しく読めました。
一方で、その合間に語られるななせの変化が本編を思い出させて、切なくなります。
本編の裏側を見ると、心葉の非道さが際立つなぁ……w
心葉が主役のエピソードは完全にギャグ路線で面白かっただけに、ギャップが激しい。

最後を飾る「ななせの恋日記 特別編」は、本編でななせが一番幸せだった頃の話。
待望のエピソードだったはずですが、実際に読んでみると胸が痛くなりますね。
やはりこの先の結果を知っていると、単純に甘酸っぱさに浸れないのは仕方ないか。

ボリュームもあり非常に満足感のある短編集でした。
でも、外伝はともかく短編集は無理に続けようとせず、キリのいいところで終わらせて欲しいな。
引っ張り続けていても、あまりいいことはないでしょうしね。

第三者の視点から語られる心葉・遠子・ななせの物語が作品内の世界を広げてくれています

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B 

△page top

“文学少女”見習いの、初戀。 

“文学少女”見習いの、初戀。 (ファミ通文庫)“文学少女”見習いの、初戀。 (ファミ通文庫)
(2009/04/30)
野村 美月

商品詳細を見る
読書期間:2009/5/14~2009/5/15

【評価……B+
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー ★★★★★★☆☆☆
 … 7
青春 ★★★★★★☆☆☆
 … 7

聖条学園に入学した日坂菜乃は、ひとりの上級生と出会う。
文芸部部長、井上心葉。彼に惹かれ、勢いで文芸部に入部してしまった菜乃だったが、心葉の胸には既にひとりの“文学少女”が宿っていた。
まるで相手にされず、落ち込む菜乃。けれど、彼女がある事件に巻き込まれ、追い詰められたとき、心葉は告げる。
「気づかないふりも、目をそらすことも、もうしないって誓ったんだ」
――文学初心者の少女が物語に隠された真実を探す、もうひとつの“文学少女”の物語!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


“文学少女”シリーズ、外伝。

遠子が卒業し、心葉が3年生になった話。
主人公は新入生・日坂菜乃にバトンタッチされ、新しい切り口からの物語が繰り広げられます。

まるで別物に変わってしまう不安も少なからずありましたが、杞憂でしたね。
間違いなくこれは“文学少女”シリーズです。
一見すると綺麗で儚げな雰囲気を漂わせながら、中身はドロドロとしたストーリーとキャラで構成されている今シリーズの特徴が、外伝にもしっかりと受け継がれていました。

新しい主人公の菜乃は、これまで今作品にはいなかったタイプで面白い。
陰鬱とした展開が続く中で、素直な直球型の性格は映えますね。
通常だと、本編キャラに感情移入してしまっているため、「何も知らない奴が勝手なことを言うな!」と毛嫌いしてしまいがちなんですが、菜乃に対しては全くそんな気持ちにはなりませんでした。
ななせとは異なる純粋さを持っていて、喜怒哀楽の感情を目一杯表してくれる見ていて気持ちいい女の子です。

菜乃の視点から見る心葉たちが、すごく新鮮でした。
ヘタレと言われまくった心葉が理知的な繊細系美少年に格上げされているのには笑ったw
心葉の成長が感じられたのと同時に、変わらない一面もあって嬉しかったですね。

あと、美羽のラスボスっぷりも顕在でしたねw
登場シーンは僅かなのに、キャラ立ちが半端じゃないw

また、ストーリーも外伝だと思って舐めてはいけません。
本編とも引けを取らない良質な内容で、ミステリ要素も先が読めず楽しめました。
相変わらず、神懸かり的な推理ならぬ“想像”をするキャラもいますけどw

恋の行方に関しては結末が見えてしまっていますが、それでもこれからの展開が非常に気になる作りでした。
またしばらく“文学少女”シリーズを楽しむことができそうです。

安心感と新鮮さの両方を感じることのできる“文学少女”新シリーズ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B+ 

△page top

“文学少女”と恋する挿話集1 

“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)
(2008/12/26)
野村 美月

商品詳細を見る
読書期間:2009/3/19~2009/3/24

【評価……B
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆
 … 7

柔道一筋、人呼んで「炎の闘牛」。そんな彼が恋をした!清楚で可憐な大和撫子、その名は……『“文学少女”と恋する牛魔王』、「このことは内密に」待望の入部希望者が漏らした呟きには、何やら不穏な気配が!?『“文学少女”と革命する労働者』ほか、遠子のクラスメイトとの交流や、美羽&芥川のその後など、ほろ苦く甘い、極上のエピソードが盛りだくさん!物語を食べちゃうくらい深く愛する“文学少女”天野遠子と、彼女を取り巻く人々の、恋する挿話集第1段!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「文学少女」シリーズ初の短編集。

本編が終わった後に初刊行される短編集なので、後日談も収録されています。
先にこちらに手を出してしまうとネタバレになってしまうのでご注意を。

全10編という数からも分かるように、1つ1つのエピソードは短め。
ギャグコメディもあれば、しんみりと切ない話もあって、バラエティに富んでいます。

その中でも異質なものが「無口な王子と歩き下手な人魚」。
他のサブタイトルには頭に“文学少女”の冠が載っているのですが、これにだけありません。
中身は想像がつくと思いますが、芥川くんと美羽のお話。
切なくて、胸に痛みを伴う内容となっており、一番印象に残りました。

ほとんどのエピソードが、本編開始前、または本編中の裏側の出来事の話となっています。
そういう話は大抵笑い話が多くて、そちらもまた気軽に楽しめて良かったです。
まだまだ遠子に気を許していないツンツンとした心葉が、若いなと感じました。

よく出来た短編集だったと思います。
本編読んで満足したから短編集は別にいいやーという人も、一度手に取ってみてもいい内容かと。
残念ながら、ななせや竹田さんの話はなく、出番も皆無だったので2巻に期待したいところです。

ミステリー要素がほぼなくなり、甘さと苦さが素朴な味として感じ取れます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B 

△page top

“文学少女”と神に臨む作家 下 

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫)“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫)
(2008/08/30)
野村 美月

商品詳細を見る

【評価……A-
舞台 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー ★★★★★★★★☆☆
 … 8
青春 ★★★★★★★★☆☆
 … 8

「書かなくてもいい。ずっと側にいる」
――そう告げるななせに救われた心葉。だが、そんな彼を流人の言葉が脅かす。
「琴吹さんのこと、壊しちゃうかもしれませんよ」
……そんな時、突然、遠子が姿を消した。空っぽの家に残るのは切り裂かれた制服だけ。心葉は遠子を追えるのか?露わになってゆく真実に、彼が出す答えとは?遠子の祈り、叶子の憎しみ、流人の絶望――その果てに秘められた物語が今、明らかになる……!
“文学少女”の物語、堂々終幕!

【感想】 <前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


文学少女シリーズ本編、最終巻。

1巻を手に取る前は量があると思っていた文学少女シリーズも、読み始めてからは勢いよく消化してしまいました。
長いようで短かったですね。

読み終えて最初に思ったことは、この本を読んで良かったなぁ、と。
今はただ物語の余韻に浸っていたい気分です。

読んでいる間は、それはもう様々な感情を忙しく変えていましたが、読了後は非常に穏やかな気持ちです。
濃厚でありながらクドさはなく、ドロドロとした人間関係を驚くほどにスッキリと仕上げています。
いつものことながら、解決編にて暗く哀しい物語を見事なまでに切なく優しいお話に変えてくれます。

重厚なストーリーと魅力的なキャラクターが絶妙のバランスで混ざり合う、素晴らしい作品でした。
「面白い」「楽しい」という感想があまり似つかわしくなく、上手い言葉が見つかりません。
分かりやすい言葉でいうのであれば、これが感動というものなのかもしれません。
物語を食べる遠子先輩のように、自分にとってもこの作品は糧となりました。

過去から絡まり続けてきた遠子先輩を主とする人物関係が解かれていくところは、圧巻の一言。
辿り着いた真実が露わになった時、頭の中にバラバラに存在していたピースが1つの形を作り、爽快感が弾けます。
伏線の回収に無駄がありません。

シリーズ通して上質のイラストを提供して下さった竹岡美穂さんも素晴らしいお仕事ぶりでした。
最終巻の今回は普段以上に印象的な絵が多かったですね。
最後の絵を見たときの「ああ、終わってしまった……」という寂しさは忘れられません。

この“文学少女”シリーズは、確かに癖があって万人が楽しめるものではなかったと思います。
しかし、それでも多くの人に感動を与えたのは事実です。
ライトノベルの名作の一つとして、これから先も語り継がれていくことでしょう。

これから先も、短編集や外伝などが控えていますが、ひとまずこれにて完結。
うん、良かった。



以下、シリーズ本編完結につきキャラ別ネタバレ感想です。
未読の方はご注意を。
-- 続きを読む --

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価A- 

△page top

“文学少女”と神に臨む作家 上 

“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫)“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫)
(2008/04/28)
野村 美月

商品詳細を見る

【評価……B
舞台 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー ★★★★☆☆☆☆☆
 … 5

「わたしは天野遠子。ご覧のとおりの“文学少女”よ」
――そう名乗る不思議な少女との出会いから、二年。物語を食べちゃうくらい愛するこの“文学少女”に導かれ、心葉は様々なことを乗り越えてきた。けれど、遠子の卒業の日は迫り、そして――。
突然の、“文学少女”の裏切りの言葉。愕然とする心葉を、さらに流人が翻弄する。
「天野遠子は消えてしまう」
「天野遠子を知ってください」
――遠子に秘められた謎とは?心葉と遠子の物語の結末は!?
最終編、開幕!

【感想】 <前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


“文学少女”シリーズ最終章、前編。
ラストに解かれる物語は、これまで語り手側だった遠子先輩の過去と現在の話。

心葉の物語て紡がれる一方で見え隠れしていた、遠子先輩の抱える苦悩が今ようやく明かされます。
遠子先輩と流人の家族環境がいかにして形成されたかを心葉が知ったとき、雰囲気がズンと重たくなります。

上巻である今回は、材料紹介に徹した料理番組みたいなものでした。
最終章の引用元として選ばれたのはジットの「狭き門」。
並べられたネタをいかに調理するかは全て下巻へ持ち越されています。

面白かったといえば面白かったんですがー……。
読み終わっても次巻へ続くとなっているミステリー小説は、どうしてもスッキリとしませんね。
文学少女シリーズの見所である、どんでん返しの解決編がないと物足りない。
こればかりは、致し方ありませんね。

今回、物語の主導権を握っている流人は大きく化けましたね。
言葉巧みにというよりも、脅しや行動で無理やり心葉を自分の望む方へと誘導させています。
この流人を怖いと思うか、ムカつくと感じるは人それぞれだと思いますが、自分の場合は後者でした。
ハッキリ言って無茶苦茶過ぎますね。
しかし、モテまくりのはずの流人が、主要人物からは嫌われまくりってのも皮肉な感じもします。

心葉をヘタレという人も多いですが、これで責められるのは可哀想かなと思いました。
まだ心葉の傷は癒えていない状態で、誰もが勝手なことを心葉に求め過ぎでしょう。
遠子先輩や流人が抱く希望は分からないでもないですけど、もっと別のアプローチの仕方はなかったのかなと思います。
まぁ、ななせに対して優柔不断な態度を取っているところは確かにどうかと思いますがw

また「文学少女が本を食べる」習性をここまで放置してきたことで、土台が緩い点も気になるところ。
このファンタジー要素があるため、ドッシリと構えて読むことを許してくれません。
例えば、あらすじにもある「天野遠子は消えてしまう」という一文を見ても、存在そのものが非現実的に消え去ってしまうのか、それともあくまで現実的な範囲内の比喩表現なのかが非常に分かりにくいです。
以前に別の本の感想でも指摘したことがありますが、ミステリーとファンタジーは上手く融合させないと軸がブレてしまいます。
意図的に狙ったところもあるんでしょうが、それならば「文学少女が本を食べる」確固たる設定を提示して欲しかったなぁと感じずにはいられませんでした。

逆に、キャラ付けは、これ以上ないぐらいしっかりと肉付けされていて言うことなしですね。
とにかく、ななせ最高。
初々しい彼女のデレている姿を見ているだけで、重い空気が穏やかになります。
優しさの溢れる言葉一つ一つが、本当に心葉のことが大好きなんだなぁと分かるものばかりで、心に染みますね。

何だかんだ言いつつも貪るように一気にシリーズを読破してしまったので、読ませる力はかなりものだと思います。
好き嫌いの違いはあっても、登場人物に対して感情を動かされているのがその証拠。
ここまで読んだら、真相を求めるために間髪を入れず下巻に着手せざるを得ません。

一番気になるのは当然、心葉が最後に選ぶ相手が誰になるのか、ですね。

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B 

△page top

“文学少女”と月花を孕く水妖 

“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)
(2007/12/25)
野村 美月

商品詳細を見る

【評価……B-
舞台 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
ミステリー ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6

「悪い人にさらわれました。着替えと宿題を持って、今すぐ助けに来てください」
――そんな遠子からのSOSで、夏休みを姫倉の別荘で゛おやつ″を書いて過ごす羽目になった心葉。
だが、そんな彼らに、八十年前起こった惨劇の影が忍び寄る。
゛令嬢″゛学生″そして゛妖怪"。役者は揃い舞台は整い、すべては再び崩壊に向かう。
事態を仕組んだ麻貴の望みとは?自らの゛想像"に心を揺らす゛文学少女″の゛秘密″とは――。
夢のようなひと夏を描く、゛文学少女″特別編!

【感想】 <前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


“文学少女”シリーズ第6巻にして初の番外編。

シリーズで唯一、時間軸を遡った話となっております。
時期としては2巻と3巻の間にある夏休みに起こった話ですね。
一応、時系列通り2巻読了直後に読むこともできなくはないですが、発売順に読む方がベターでしょう。

内容は、2巻でメインキャストになり損ねた麻貴のストーリー。
富と権力を兼ね備えた姫倉家の別荘で巻き起こる過去と現在の事件。
それを紐解くのは、やはり我らが“文学少女”こと遠子先輩です。
多少サスペンス&ホラー要素が混ざっていますが、遠子先輩みたいに極度の怖がりでなければ気になるほどでもありません。

今回のモチーフは泉鏡花の「夜叉ヶ池」。
これまでに取り上げてきた作品に比べると、個人的には馴染みのない題材でした。
本の内容と過去の事件とのリンクは、かなりややこしかったですけど巧かったと思います。

ただ、それはストーリーそのものの面白さとは別の話でして。
悪くはない、という評価で落ち着いてしまうかなぁ。

身も蓋もない言い方をすれば、最終章への助走期間の回だったんですよね。
麻貴編なのに次への文学少女編を意識してか、遠子先輩のエピソードも多く含まれています。
まぁそれ自体はいいんですけどね。
前回で伏線を大放出してしまったので、構築し直している感が強く出てしまいました。
だからこそ「特別編」という区分になるんでしょうが。

また、前巻の集大成があまりにハイクオリティだったために、落差が激しく感じてしまう点があるのも否めません。
リアルタイムでシリーズを追っていた人ならば、自然と読了期間が空いたことで気持ちの整理をできたと思うんですが、僕みたいに5巻の余韻を漂わせている中でこの本を読んでしまうと期待が大きく膨らみすぎていて無意識にハードルを高めに設定していました。
一旦ここでブレイクタイムを挟むぐらいの気楽さで読んだ方が良かったですね。失敗しました。
これから読む方は、5巻読了後すぐに6巻を読むのではなく、ちょっとだけ時間を置くことをお勧めします。

今回の一番の見所はラストのエピローグ。
次巻の未来を仄めかす内容で、先が非常に気になるものとなっています。
ここは逆にシリーズ完結後に追っていて良かったと思えたところですね。

もしも、ななせ派ではなく遠子先輩派だったら、この本をもっと美味しく(色んな意味で)読めたのかもしれないなぁ。
レギュラーメンバーで好きなキャラクター(ななせ・竹田さん・芥川くん)が出番なしだったのも残念でした。

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B- 

△page top

“文学少女”と慟哭の巡礼者 

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)
(2007/08/30)
野村 美月

商品詳細を見る

【評価……A-
舞台 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
オススメ度 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ミステリー ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
切なさ ★★★★★★★★☆☆
 … 8

もうすぐ遠子は卒業する。それを寂しく思う一方で、ななせとは初詣に行ったりと、ほんの少し距離を縮める心葉。だが、突然ななせが入院したと聞き、見舞いに行った心葉は、片時も忘れたことのなかったひとりの少女と再開する!過去と変わらず微笑む少女。しかし彼女を中心として、心葉と周囲の人達との絆は大きく軋み始める。一体何が真実なのか。彼女は何を願っているのか――。゛文学少女″が゛想像″する、少女の本当の想いとは!?待望の第5弾!

【感想】 <前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


ここまでの集大成といえる回。
シリーズ最大の核であろう心葉の物語が綴られています。
最終巻としても通用しそうな盛り上がりですよ、これは。

実に素晴らしい一冊でした。
陳腐な言葉しか表現できない自分が憎いほど。
あぁ、文学少女の文才が欲しいっ……!
いつも以上に上手く自分の感情を言葉にできませんでした。
人気のある作品(しかも完結済)ですから、もっと良質なレビュー・感想はゴロゴロ転がっていると思いますので、そちらを読んでもらった方が有意義だと思います。

◆ ストーリー

モチーフは宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」。
小学生の頃に読んだ記憶はありますが、内容は忘れちゃってました。
まぁ、いつものように文学少女が丁寧に説明してくれているので何の問題もありませんでしたね。

1~4巻までに築き上げてきた土台が見事に物語を支えています。
ストーリーに厚みがあり、登場人物の言葉に重みがあります。
伏線の回収が綺麗で、物語の進行が非常に滑らか。
ミステリーに関しても、今までのようなミスリードを狙ったものは控えめで、ストーリー自体にのめり込ませてくれます。

◆ キャラクター

●井上心葉

心葉は……誰よりも純粋で、哀れで、そして弱い心を持ってますね。
都合の良いように真実を捻じ曲げたり、目をそらしたりして、自分自身を誤魔化してる。
そうすることで身近な人を傷つけていると自覚しているのにも関わらず、自分を守るためにそれを止めることができない。
盲目的になる理由も、過去に負った精神的な傷も、それは言葉にならないほど辛いことだというのは分かります。
だけど、天秤に諮る時、大切な何かの重さを量り損ねてはいけないんですよ。
その選択ミスが、致命的な結果に繋がることだってあるわけですから。
無意識による行動ほど残酷なものはないですね。
しかし、心葉が井上ミウというPNをつけた理由が明らかになった時、不覚にも感動してしまいました。
こういうところが心葉の魅力で、女の子たちから惹かれる理由なんでしょうね。

●朝倉美羽

とうとう真打ち登場。
彼女が感じた絶望は、予想をはるかに超えた辛さがありました。
心葉が気付いてあげられなかった真実は、心葉にも美羽にも果てしなく重苦しかったです。
ななせ派の僕にとっては、序盤は腹が立つ場面も少なくありませんでしたが、読了後は驚くほどにその感情が反転となりました。
こんなにも美羽を応援したくなるとは思いもしませんでしたね。
構成が見事ですね。

●琴吹ななせ

イイ子すぎる……!
ひたすらこれに尽きます。
心葉と穏やかな雰囲気を共にしているときの彼女があまりに可愛すぎて悶死しそうですw
脆そうにみえて譲れないところは引かないところも数ある魅力の一つですね。
健気だなぁ。

●竹田千愛

どういえば彼女のことを的確に表せられるんだろうかと、いつも悩む。
とりあえず、“文学少女”シリーズにおいて最もキャラが立っている人物だと思います。
竹田さんが「本当」の顔を見せた時のゾクリと背に冷たいもの走る感覚が忘れられません。

●天野遠子

心葉にとっては、遠子先輩と出逢えたことは何よりの幸いだったんでしょうね。
いつだって心葉が崩れ落ちそうなタイミングで登場する遠子先輩が何とも頼もしい存在に感じられます。
一歩間違えれば説教臭く聞こえてしまう語りも、今回ばかりは一字一句そのまま心の中に溶け込んでいくかのようでした。

◆ 総評

終盤にある恒例の文学少女のシーンでは、込み上げてくるものが溢れてきそうな切なさが胸に迫ります。
そして、その後は何もかもがすっきりと透き通るかのような心地良さが残り、イイ締め方だった……と思いきや、最後の最後に次へのフリが待っていました。
本当にもう落ち着かせてくれないシリーズだなぁ。
続きを買わせるという意味では、まんまと嵌められてます。
面白いから何の不満もないですけどね。

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価A- 

△page top

“文学少女”と穢名の天使 

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)
(2007/04/28)
野村 美月

商品詳細を見る

【評価……B+
舞台 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
青春 ★★★★★★☆☆☆
 … 7

文芸部部長、天野遠子。物語を食べちゃうくらいに愛するこの“文学少女”が何と突然の休部宣言!?
その理由に呆れ返りつつも一抹の寂しさを覚える心葉。
一方では、音楽教師の毬谷の手伝いで、ななせと一緒に放課後を過ごすことになったりと、平和な日々が過ぎていくが……。
クリスマス間近の街からひとりの少女が姿を消した。
必死で行方を追うななせと心葉の前に、やがて心葉自身の鏡写しのような、ひとりの“天使”が姿を現す――。
大好評シリーズ第4弾!

【感想】 <前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


“文学少女”シリーズ第4弾。
前回のラストが非常に気になる終わり方でしたが、ワンクッション置く形となってます。

今回のモチーフは「オペラ座の怪人」です。
“文学少女”シリーズで取り上げられる作品は、有名なものが多いので知っている人も多そうですね。

やっとと言うべきか、早くもというべきか、今回はななせのターンです。
本当にもう可愛い!としか言いようがないですね、この娘。
心葉のそばにいるだけで取り乱してしまうななせが大好きです。

しかも、ゲストキャラはほぼ全員病んでいるし、心葉や遠子先輩も普通とは言い難い性格をしているので、余計にななせの純粋さが輝いてみえますね。
ツンデレを地で行く彼女の振る舞いが、救いにもなっているように感じられました。

というのも、何気に気分が重たくなる話ばかりの“文学少女”シリーズですが、今回はひと際キツイ内容だったからです。
客観的に見たら、2巻の方が残酷的・悲哀的だと思いますが、登場人物たちへの感情移入はこちらのが断然上。
正直、後味はあまり良くないです。

しかし、それは決して物語の質が悪いということではありません。
展開はある程度読めたので衝撃はそこまでありませんでしたが、この話は忘れることはないだろうなと思っています。
実際、読了後2ヶ月以上経った今でもこの本のことを思い出すと、胸が苦しくなるぐらいです。
それだけ自分にとって訴えるものがあったということなんでしょうね。

面白かった……というよりも、読むことができて良かったと思える本でした。

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B+ 

△page top

“文学少女”と繋がれた愚者 

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)
(2006/12/25)
野村 美月

商品詳細を見る

【評価……B+
舞台 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー ★★★★★★☆☆☆
 … 7

「ああっ、この本ページが足りないわ!」
ある日遠子が図書館から借りてきた本は、切り裂かれ、ページが欠けていた――。
物語を食べちゃうくらい深く愛する“文学少女”が、これに黙っているわけもない。
暴走する遠子に巻き込まれた挙句、何故か文化祭で劇までやるハメになる心葉と級友の芥川だったが……。
垣間見たクラスメイトの心の闇。追いつめられ募る狂気。過去に縛られ立ちすくむ魂を、“文学少女”は解き放てるのか――?
大好評シリーズ第3弾!

【感想】 <前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


“文学少女”シリーズ第3弾。
2巻読み終わってから少し期間を置く形となったのは、やはり前回感じたしこりが尾を引いていたからでしょうかね。

良かったです。
過度な期待をしなければ、十分すぎるほどの面白さがありますね。

ひょんなことから文芸部なのに文化祭で劇をやることになった心葉たち。
毎回、とある文学作品を題材とした物語が展開されるこの文学少女シリーズ。
今回は演目の武者小路実篤の「友情」が取り上げられています。

今回は心葉のクラスメイトである芥川くんのお話。
芥川くん(どうしても“くん”付けで呼んでしまう)は、1巻から登場していますけど、ただの脇役だと思っていたので、この抜擢には驚きました。
どうやら当初から重要キャラの一人だったようですね。
いきなり新キャラを登場させるよりも読者の感情移入がしやすくなるので、この見せ方は素直に巧いと思いました。

また、2巻で感じたメインキャストの外野っぷりは解消されていますね。
芥川くんが心葉の友達だからというだけではなく、心葉にとっても前進を意味する内容だったからです。
やっぱり物語というのは、主人公が密接に関わってこそ面白いんですよね。

芥川くん同様、これまでチョイ役でしかなかったななせにも、ようやく出番が巡ってきて嬉しい限り。
誰が見ても心葉に好意を寄せているのが丸分かりなのに、当人は全く気付く節がありませんね。
あーもう、ななせが可愛い&可哀想で仕方ないですね。

そして、何よりも竹田さんの存在感が凄い。
表面上は天真爛漫な仮面をつけていますが、ひとたびスイッチが入ると垣間見ることができる裏の顔が実に暗い。
吹けば飛ばされてしまいそうな危うい雰囲気を漂わせつつ、同時に深く重みのある言葉を発する彼女の姿はインパクトが強いですねぇ。
作中で好きな女の子を挙げるとななせ派な自分ですが、キャラクター的には竹田さんがに魅力を感じてしまいますね。

ストーリーは、まさしく文字通り友情がテーマの今巻。
徐々に関係を構築していく過程がいいですね。
心葉も芥川くんも殻に籠るタイプの人間なので、時には進まない関係がもどかしかったりもします。
しかし、頼れる上級生(笑)の遠子先輩が、そんな2人の背中を押してくれています。
今までで一番先輩らしい立ち振る舞いだったんではないでしょうか。
249Pの挿絵は、既に全巻読み終えた今現在でも印象に残っている一枚となっています。
竹岡美穂さんのイラストは、どれも儚げなタッチで作風の雰囲気にぴったりですね。

そして、真っ直ぐに進んでいるように見える物語に少しずつ違和感を与えるさじ加減がこれまた素晴らしい。
途中でミスリードかもしれないと感付いても、真相までは辿り着けませんでした。
明らかになる真実に快感を覚えてしまっては、あとは夢中で先を求める以外に選択肢はなかったですね。
僕が文学少女シリーズにハマったのは、この3巻からだったなぁと後にしてみれば思い返すことができます。

次が気になって仕方がないラストで締めくくられていて、とてもじゃないですが他の本を読むことはできませんでした。
リアルタイムで読んでいなくて良かったですよ、ホントw

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B+ 

△page top

“文学少女”と飢え渇く幽霊 

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)
(2006/08/30)
野村 美月

商品詳細を見る

【評価……B-
舞台 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
ミステリー ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6

文芸部部長・天野遠子。物語を食べちゃうくらい愛しているこの自称“文学少女”に、後輩の井上心葉は振り回されっぱなしの毎日を送っている。
そんなある日、文芸部の「恋の相談ポスト」に「憎い」「幽霊が」という文字や、謎の数字を書き連ねた紙片が投げ込まれる。文芸部への挑戦だわ!と、心葉を巻き込み調査をはじめる遠子だが、見つけた“犯人”は「わたし、もう死んでるの」と笑う少女で――!?
コメディ風味のビターテイスト学園ミステリー、第2弾。

【感想】 <前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>

文学少女シリーズ第2巻です。
ナンバリングがないと、次にどれを読めばいいのかパッと見では分からないので困るんですよねぇ。
確かに、タイトルを毎回変更した方が、内容との結び付きは強くなりますが。

率直な感想としましては……うーん、1巻に比べると面白さが一段階落ちてしまったかなぁ。
作者曰く、難産の作品だったそうです。
そのためなのか、構成・物語・人物など全てが、それぞれの無理強いによるシワ寄せを受けているように感じました。

これは推測なのですが、作者の野村美月さんはインスピレーションで物語を書くタイプの作家なのではないでしょうか。
順調に書きあげられたときは良作が誕生する代わりに、根をつめて書いたときは納得できる仕上がりになっていないんじゃないかなぁと感じました。
創作においては「時間をかけて考えを練った方がいい作品ができる」「直感重視で作る方がいい作品ができる」という二律相反チックな意見がありますが、これは人によると思うんです。
そして、この著者は後者のタイプなのではないのかなと。
そう考えると作品よって評価が大きく異なるのも理解できます。

難点から挙げます。
心葉にしろ遠子先輩にしろ、今回の話に限ってはどうしても部外者でしかないんですよねぇー。
1巻は文芸部に竹田千愛が恋の相談を持ってきたところからスタートしているので、展開に無理が少なかったのが良点でした。
しかし、今回は明らかに外野である立場にも関わらず、当事者たちを引っかき回し過ぎていたのが気になりました。

心葉はまだしも、遠子先輩は何故そこまでこの話に突っ込む必要性があったのか。
その理由がどうしても思いつきませんでした。

これは文学少女シリーズでなければ、もっと高評価出来たような気がします。
例えば、2巻の主要人物の一人・櫻井流人を主人公とした物語で、心葉と遠子先輩があまり関わってこなければ、純粋に綺麗な物語として読めたんじゃないかなぁ。

心葉や遠子先輩が嫌いなわけではないのです。
むしろキャラクターとしては、かなり好きな方です。
過去に囚われながらも天真爛漫な遠子先輩に引っ張られる心葉を見ているのは楽しいし、心葉の紡ぐ物語を本当に嬉しそうに食べる遠子先輩は非常に愛らしいです。
だからこそ、二人が物語内の異物に感じたのは残念でした。

惜しいキャラクターといえば、琴吹ななせ嬢もそうでしたね。
1巻で感じていた通り、かなり上質なキャラクターで好みのタイプです。
しばらくはツンツンして見せるのかと思ったら、分かりやすすぎるぐらいにツンデレになってますね。
ツンデレは好きですけど、もうちょっと心葉を嫌っていて欲しかった。
そうすることで、デレたときのギャップが美味しかったのにっ……!

シナリオはライトノベルらしからぬ重さで、読了後はズンときます。
決して読みやすい作品ではなく、自分は何度か途中で戻っては読み直しする必要がありました。
でもそれは欠点ではなく、複雑な分だけ面白さも凝縮されているようなものです。
最後はハッピーエンドなのかどうか判断し辛いところではありますが、一つの文学作品として見るのであれば、こういうのもアリだと思います。

1巻は疑心暗鬼で読み始めたのに対して、2巻は期待して読んだため、それが読了感に大きく影響したのも事実。
別に2巻も悪くはなかったんですけどね。

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B- 

△page top

“文学少女”と死にたがりの道化 

“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)
(2006/04/28)
野村 美月

商品詳細を見る

【評価……B+
舞台 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
青春 ★★★★★★☆☆☆
 … 7

「どうかあたしの恋を叶えてください!」
何故か文系部に持ち込まれた以来。それは、単なる恋文の代筆のはずだったが……。
物語を食べちゃうくらい深く愛している“文学少女”天野遠子と、平穏と平凡を愛する、今はただの男子高校生、井上心葉。
ふたりの前に紡ぎ出されたのは、人間の心が分からない、孤独な“お化け”の嘆きと絶望の物語だった――!
野村美月が贈る新味、口溶け軽めでちょっぴりビターな、ミステリアス学園コメディ、開幕!!

バカとテストと召喚獣』と並び、ここ数年のファミ通文庫の誇る看板作品。
今年の8月末に完結した文学少女シリーズ、その第1弾になります。

こういう人気作品を読むと、改めて世間またはネット上での評判というものが的を射ているなと実感します。
確かにこれは、人気が出るのも分かります。
一言で言えば、面白い!

ジャンルは学園ミステリーで、ほのぼのしたコメディパートもありつつも全体的にシリアスですね。
重い過去を背負っている主人公・井上心葉と、言葉通りの意味で本の虫である天野遠子の2人きりの文芸部。
普段であれば、心葉が作る物語を遠子先輩が食べるという奇怪な情景が見られる文芸部室で、何故か恋愛相談が持ち込まれて二人が巻き込まれていくことになります。

ただの恋愛相談だったはずが、徐々に不可思議な話になっていくのが興味深くて物語に引き込まれます。
太宰治の『人間失格』に影響を受けた人間の物語ということで、人間の陰鬱とした感情が漂っています。
これを読んで晴れやかな気持ちになる人もいれば、鬱になってしまう人もいるんじゃないでしょうか。

僕の場合、深く考えないようにして事なきを得ました。
最近、ふとした拍子に「自分は本当に生きているのか」と考えがよぎってしまうことがあるので、変な方向に引き込まれてしまいそうで、ちょっと怖かったですね。
真面目に考えれば、かなり重いテーマの作品です。
ライトノベルらしく、軽めにアレンジされてますけどね。

ミステリーの真相に関しては、正直ありきたりかなと思わないでもないです。
どこかの推理モノの作品で見たことあるような、よくあるオチでした。
しかし、本書はそこで踏みとどまらず、もう一歩深く描いているところが素晴らしい。
人が人を説くには、説得力不足だと感じましたけど、想いだけはしっかりと伝わってきました。
読了感は、青春特有のほろ苦さと爽やかさがブレンドしていて、読んで良かったと思わせてくれます。

長編シリーズありきな設定や伏線の未消化が表に出過ぎていて、消化不良な面は感じられますね。
例えば、心葉の過去はもう少しはっきりと書ききるか、又はぼかしておいた方が今回のメインストーリーに焦点を合わせることができて良かったんじゃないかなと思います。

キャラクターは主要人物である心葉と遠子先輩が非常に魅力的ですね。
遠子先輩は本を食べてしまうという特技(?)から不思議系の女の子なのかなと思っていたら、意外にも普通に明るい先輩で、すごく可愛らしい。
そんな遠子先輩に突っ込みつつも傍にいて振り回される心葉も、男なのに可愛らしいw
おそらく、竹岡美穂さんの優しいイラストからそんなイメージを受けちゃってるところもあるんだと思います。
儚いほどの透明感が絵に出ていて、うっとりと惚れてしまいました。

クラスメイトの琴吹ななせの存在は強烈なインパクトこそ残しましたが、今回はあまりに関係なかったですね。
1巻だけでは、ツンツン娘なのかツンデレ娘なのか見極められませんでした。
かなりのポテンシャルを秘めているのは確かなので、今後に要注目のキャラですね。

以前にも少し書きましたけど、著者の野村美月さんは『天使のベースボール』で悪印象が根付いていたんです。
この文学少女シリーズで払拭したいという期待も込めて1巻を読みましたが、おかげでほぼ解消できました。
当時から別作品は賛否両論ながらも評価が高めだったので、個人的に肌が合わないだけか、もしくは外れを引いてしまっただけなんだろうなとは思っていましたが、どうやらその通りだったみたいです。

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  文学少女  野村美月  竹岡美穂  評価B+ 

△page top