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明日へと続く記憶

アニメ、ゲーム、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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ココロコネクト アスランダム 上 

ココロコネクト アスランダム 上 (ファミ通文庫)ココロコネクト アスランダム 上 (ファミ通文庫)
(2012/09/29)
庵田定夏

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読書期間:2012/9/29~2012/9/30

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
青春
ラブコメ
家族愛
構成
SF

 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6


 <ふうせんかずら>が五人に終わりを告げて四カ月。――その異変はクラスメイトから起きた。
 唯の友人が、太一たち文研部を見て怯えるような態度を取り始める。さらに五人は、時折生徒の話し声が聞こえなくなるという不思議な感覚を味わう。終わらない現象に落胆しながらも、『他人から敵視される・隔絶される現象』だと推測するメンバー。しかし時を同じくして五人の中では一時的な記憶の消失が起こり始め……。
 愛と青春の五角形コメディ。最終章、開幕。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


ココロコネクト最終章の幕開け。
ラストエピソードは、上下巻構成かつ厚めの本となっています。

不思議な現状を打破するため、あえて考えてこなかった原因。
何故<ふうせんかずら>は、文研部メンバーに特殊な環境を強いるのか。
語られなかった物語が、暴かれます。

正直、最後までスルーされる設定だと思っていたので、正面から取り組んでいることに驚きました。
この作品の売りは、SF設定ではなく、その状況下における人間関係と成長でしたので、どちらでも良かったんですよね。
これまでとは異なる展開に、新たな面白味がありました。

しかしながら、今回の話はスケールが大きくなりすぎた気がします。
元々<ふうせんかずら>の超常的な力に際限は見られませんでしたが、これはさすがにやりすぎかも。
もっともらしい設定付けはありますが、何でもありという印象は拭えません。
もう少し小規模で収めていた方が、変に引っかからずに読めたかな。

文研部に留まらず、事態が大きくなっていき、次第に絶望感が漂います。
必然的に行き詰まっていき、明日はどっちだ?という状態。
その中で、太一たちが見つけた光が、今までと異なるアプローチで良かったです。
いつの間にか登場人物同様に視野を狭められていて、作者にしてやられたなぁと思いました。
そうですよねぇ、敵か味方かといったら、味方に決まってますよねー。
たとえ前提が覆ろうとも、作品の根幹は変わらなくて安心しました。

上巻だけあって、説明描写多く、トラブルもちっとも解決していません。
それでも読了感が悪くない構成となっており、むしろ盛り上がってきたところで次回に続くので、非常に気になります。

デレばんを始め、キャラの魅力が出にくい話だったのは、少々残念かな。
シリアスでも構いませんが、真面目な話を繰り広げている最中にボケをかますのがイイ味出しているので、コメディ抑えめだったのは物足りなさを感じますね。
キャラが多くなったことで、掘り下げが浅くなってしまっているのも否定できません。

展開的にはテンプレート通りとはいえ、じわじわと湧き上がってくるかのような高揚感があります。
システム側、主催者、超常現象的存在などと対峙するストーリーは、やはり燃えますね。

当たり前のように近過ぎて、だからこそ気付かなかったことに気付く話

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テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ココロコネクト  庵田定夏  白身魚  評価B+ 

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バッカーノ!1711 Whitesmile 

バッカーノ!1711―Whitesmile (電撃文庫)バッカーノ!1711―Whitesmile (電撃文庫)
(2011/12/10)
成田 良悟

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読書期間:2012/8/4~2012/8/9

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
構成
期待感




 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8





 1711年、彼らはついに海に出る。新大陸に向け――。それぞれの心の中に吹き荒れる風を受けて――。
 マイザー・アヴァーロは探求の風。
 セラード・クェーツは野心の風。
 ヴィクター・タルポットは責務の風。
 ベグ・ガロットは研究心の風。
 東郷田九郎とザンクは義侠の風。
 グレットとシルヴィは逃避の風。
 ナイルは恩義の風。
 チェスは他人の風に吹き流されて……。
 多くの錬金術師が大海原へと旅立つ中、失意のヒューイ・ラフォレットは――。

 『不死の酒』を巡る馬鹿騒ぎ、“始まりの物語”の結末は――。
 中世を舞台にした異色作第3弾!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「バッカーノ!」シリーズ第17巻目。
ナンバリングされていないので分かり辛いですけど、ラノベとしては相当長編シリーズとなっています。

全ての始まり、アドウェナ・アウィス号。
船上で不死の酒を飲み交わした錬金術師たちが、いかなる理由でそこへ辿り着いたのか。
ここまで積み重ねてきた物語の原点ともいうべきエピソードが描かれた今回の内容。
面白くないわけがありません。

錬金術師オールスターといって過言ではない表紙からして豪華過ぎますね。
ヒューイが、エルマーが、マイザーが各々の想いと野望を抱き、船旅に出る経緯が遂に明かされています。
一体いつからここまで深く入り組んだ物語を頭に描いていたのでしょうか。
主要人物だけでも両手で足りない数いる中で、複雑に交差した人間関係を見事に綴っています。
この構成力は今更ながらに圧巻ものですね。

1930年代や2000年代の土台は、やはり1700年代に形成されたものでした。
全ては線で繋がっているとは、まさにこのこと。
その観点からすると、「バッカーノ!」の真の主人公はヒューイしか考えられませんね。
フェルメートがラスボス、エルマーがキーマン、ついでに言うとフィーロが第2作目の主人公って感じ。
エルマーは隠しボスになる可能性も秘めていますがね。
シリーズの決着は、馬鹿騒ぎらしく笑えるものだといいなぁ。

意外な過去が判明したキャラが何人かいましたね。
ヴィクターとセラードの乗船経緯は予想外でした。
そもそも二人に繋がりがあったことや、セラードが妙に現実派だったりしたことも驚き。
シルヴィの生い立ちも想像付きませんでした。
成程、ある意味変わっていないのはエルマーぐらいということか。
上手い見せ方ですね。

フェルメートの悪人っぷりと、エルマーの末恐ろしさが際立ちました。
イロモノ揃いである作品でも、飛び抜けて毒の強いのがこの二人ですね。
エルマーは特殊だとしても、フェルメートが天敵だと認識している対立関係が面白い。

ヒューイ、エルマー、フェルメートの3者から特別視されている彼女のその後が気になります。
哀しい結果にだけはなりませんように。

謎とされてきた登場人物達の心情や関連性などが次々と暴かれる過去編集大成

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  バッカーノ!  成田良悟  エナミカツミ  評価B+ 

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“葵”ヒカルが地球にいたころ……1 


(2011/05/30)
野村 美月

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読書期間:2012/7/14~2012/7/16

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー
恋愛
ツンデレ
期待感


 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 「心残りがあるんだ」
恋多き学園の“皇子”ヒカル――その幽霊が、是光の前に現れそう告げた。
このまま幽霊につきまとわれ続けるなんて冗談じゃない!と渋々“心残り”を腫らす協力をすることにした是光だが、対象の左乙女葵――“葵の上”と呼ばれる少女は、頑なに話も聞こうとせず、生徒会長の斎賀朝衣にも不審がられ、敵視されるハメに。
そんな時、ヒカルの死にまつわるある噂が聞こえてきて――!?
 野村美月が贈る、ミステリアス現代学園ロマンス、堂々開幕!!

【感想】


大人気ラノベ「文学少女」シリーズの野村美月×竹岡美穂のコンビで贈る新シリーズ。
満を持しての登場です。

著者の作品は、何故か読み始めるのに労力を要します。
「文学少女」も評判が良いと知っていても、なかなか手を出しづらかった記憶があります。
何となく面白そうというよりも面倒臭そうだというイメージが先行するんですよね。
一番最初に読んだ「天使のベースボール」がトラウマにでもなっているんだろうか……。

そんなわけで、発売直後に購入しておきながら、本作を読み始めたのは、シリーズが開始されて1年以上経ってからでした。
比較的余裕のある時期に、ガッツリと読書したいなと思って手を付けてみたわけです。

やはりというべきか、予想外というべきか。
積んでいたのを悔やむくらい、非常に面白かったです。

初めて「文学少女」を読んだ時の作品内に引き込まれる感覚をまた味わうことが出来ました。

設定上はありふれたものです。
主人公の赤城是光は、見た目でヤンキーだと勘違いされ、中身も少々粗暴により、周囲から浮いた存在だった。
大して親しくもない学園の皇子である帝門ヒカルの葬式に参列した際に、何故か幽霊のヒカルに取りつかれてしまう。
ヒカルは心残りが解決しないと成仏出来ないらしく、是光は仕方がなく付き合うことに。
その心残りとは、ヒカルにとって大切な女性である左乙女葵への約束を果たすことだった。
しかし、とりあえず女性なら誰にでも色目を使うヒカル、女に興味がなく無愛想な是光とでは、相性は最悪で、トラブルがばかりが起きてしまう。
果たして、是光はヒカルの代わりに葵との約束を遂げることができるのか――というストーリー。

モチーフである「源氏物語」をミステリアスな少女漫画風に現代アレンジした感じ。
第1巻の物語の本筋は分かりやすく、単純であるがゆえに牽引力も相当です。
長編シリーズの導入しては、上手く調理しており、成功している部類に入ると思われます。

その一方で、裏に流れる長編の伏線は、出し惜しみしている感が強いですね。
それもこれも主人公側であるヒカルが何かを隠しているのが原因です。
是光に語れない理由でもあるのかもしれませんが、是光にとってみればはた迷惑な話ですよ。

幽霊物の醍醐味は、やっぱり他人の情報を有り得ない方法で入手できる点でしょう。
無関係だったはずの是光が、ヒカルのことを誰よりも知っている状況は面白い。
葵や他の女の子に誤解されてしまうところはヤキモキし、逆に巧く事が運ぶとニヤニヤ出来ます。

ヒロイン役としてはメインの葵よりも式部帆夏の方が魅力的に映ります。
是光と衝突を繰り返しながらも接近する帆夏は、所謂ツンデレ娘で、彼女のモノローグが挿入される章だけは、一気にラブコメモードに突入します。
「文学少女」のななせの系譜に連なる少女ですから、ななせファンは好きになるはず。

少々周りくどい文章は相変わらずで、好みは分かれそうですね。
まぁ、竹岡美穂さんのイラストとの相性は抜群だと思います。

また長い物語を楽しむことが出来そうです。
これからどのように展開するのか楽しみ。

死んだ少年と残された少女の間を取り持つ巻き込まれ型お節介系主人公の奮闘が光る

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ヒカルが地球にいたころ……  野村美月  竹岡美穂  評価B+ 

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僕は友達が少ない8 

僕は友達が少ない 8 (MF文庫J)僕は友達が少ない 8 (MF文庫J)
(2012/06/22)
平坂 読

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読書期間:2012/6/30

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ラブコメ
青春
リア充
友情


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 聖クロニカ学園学園祭本番、前座のような体育祭はつつがなく終わり、いよいよ文化祭当日となった。
 自主制作映画を上映する予定の隣人部だったが、映画の仕上げを担当していた理科が倒れてしまい、映画は未完成となり上映は中止に。残念な結果となった学園祭ののち、これまでの馬鹿馬鹿しいけど賑やかで楽しい活動の日々へと戻っていく隣人部。互いに絆を深めていく隣人部の面々と過ごしながら、小鷹は隣人部への思いをいっそう強くする。
 そんなおり、星奈を敵視する生徒会の遊佐葵が隣人部に対して不穏な動きを見せ、小鷹、夜空、星奈、理科、幸村の関係にも大きな転機が訪れる――。
 残念系コメディ、ついに終幕……!?

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


アニメ第二期が発表された残念系青春ラブコメ、第8弾。
これまで3~6ヶ月ペースで刊行していたので、9ヶ月振りの新刊は久しぶりに感じました。

前回から引き続き、理科の甲斐甲斐しさが目を瞠る物語ですね。
決して得意なわけでもないのに、立ち回れるのが自分しかいないからという理由で、献身的な行動に出られる彼女は、尊敬に値します。

夜空は自分のことで手一杯だし、星奈はそもそも良い意味で自己中心的な考え。
幸村は献身的というよりも異常なまでに従順であるだけで、小鷹を導くわけではなく、やはりあくまで自分主体なんですよね。
そう考えると、自分を押し殺してまで小鷹を引っ張り上げようとする理科は、頭が回る分、損をしてしまう性格といえるもので、隣人部の誰よりも人の心に敏感な娘なんだと思います。
自由気ままに振る舞っていますけど、本当は泣きたくなるくらい健気で可愛い女の子ですよ。
初期から雰囲気だけは感じ取れていましたが、ここまで広げてくれるとは思ってもみませんでした。

作品テーマ的には、理科こそが正ヒロインといってもいいくらいです。
哀しいかな、それは「友達」という意味になってしまうんですよね。
既に友達同士になっている事実から目を逸らす小鷹を向き合わせるために、文字通り実力行使で正そうとする理科とのやり取りは、どこまでいっても熱い友情物語にしかなりません。
それはそれで大切なことなんですけど、女の子としては非常に可哀想なポジショニングですね。

それもこれも、小鷹がヘタレすぎるせいです。
彼の言い分もわからないでもないんですが、それを踏まえたとしても酷い。
時には、逃げるという選択肢が必要なことだったあるので、そこは追及しません。
しかし、投げ掛けられた言葉をなかったことにする無神経さは、責められて当然ですね。
「え?なんだって?」じゃねえよ、まったく。

でも、彼が主人公だったからこそ成り立つ作品なんですよね、これは。
青春ラブコメのアンチテーゼともいうべきプロローグが、ようやく終わりました。
メッセージ性としては、本質を捉えていて良かったと思います。
ただ、その表現方法が突飛だったり、台詞回しが些か強引だったのは引っ掛かりましたがね。

そして始まる本格的なラブコメディ。
理科が「友達」としての正ヒロインであるならば、「恋人」役はやっぱり星奈
夜空の立場がないぐらいに星奈のヒロイン力が圧倒的過ぎる。
恵まれた環境に加えて、天性のお嬢様気質が何とも輝かしい。
一見すると、ドSな夜空がしっかり者で、ドMな星奈が打たれ弱いように見えますが、中身は逆。
意外と脆い夜空に対して、星奈の揺ぎ無さは感心するレベルです。
躊躇いなく想いを言葉に出来る星奈は、素直に凄いなと思いますね。

幸村もまた芯の強い人間だなぁ。
この娘の行動原理は、どこから湧いてくるんだろう。
これだけ小鷹がヘタレていると、そこまで信頼する幸村が不思議に見えてきますね。

停滞していた……いや、小鷹が停滞させていた物語が、ようやく動く時が来ました。
本来であれば、ここからが本番なのですが、作品的には今回がクライマックスかもしれません。
踏み出せなかった一歩を友達が背中を押してくれて、進むことができたのですから。

現状維持に固執していた臆病な男を前へ進ませようとする女友達の言葉が熱い

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  僕は友達が少ない  平坂読  ブリキ  評価B+ 

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灼熱の小早川さん 

灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)
(2011/09/17)
田中 ロミオ

商品詳細を見る
読書期間:2012/6/8

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
青春
ラブコメ
リアリティ
構成


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★☆☆☆☆☆☆☆
 … 3



 人間関係も勉強もそつなくこなし、万事如才ない高校生となった飯嶋直幸。県下でもトップレベルの進学校に入学した彼は、なに不自由ない学園生活を手にした。伝統と自粛のバランス――そんな口当たりのいい雰囲気に突然水を差したのは、クラス代表となった小早川千尋。代表に立候補し、履行の邪魔なので副代表は不要と言いはなった眼鏡女子だ。常にテンション高め、ガチガチの規律でクラスを混乱に陥れる彼女のその手に、直幸は炎の剣を幻視する。そして彼女の心の闇を知るのだが――。
 田中ロミオ最新作は、ヒロイン観察系ラブコメ!?

【感想】


田中ロミオ氏が作り上げる新感覚ラブコメ。
AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~」と似て非なる作品です。

一つの作品で、これほど評価が自分の中で割れるものはなかったかもしれません。
メチャクチャ面白かったと思うと同時に読了感の酷さにムカムカとしました。

校則を守り、風紀の乱れを徹底的に正そうとするクラス代表・小早川千尋
厳しく律しようとする彼女は、明らかにクラスから浮いた存在だった。
そんな彼女を抑制するために、クラスメイト達から担がれた主人公・飯嶋直幸は、世渡り上手なスキルを活用して、彼女に取り込もうとするのだが――といったストーリー。

「炎の剣」なんて単語が登場するのでSF要素が混入するのかと思いきや、至極真っ当な学園モノでした。
客観的に見て正しいことをしてるのに孤立する千尋を観察しているうちに、クラス内のポジショニングを忘れて手助けに走る直幸の姿が胸を熱くさせてくれます。
たった二人でクラス行事や仕事をこなす彼らを見ていると、もどかしさと悔しさが募る一方でした。
それでも、距離を縮めていく二人が報われ、自分勝手なクラスメイト達には痛快なオチが容易されているのだと信じ、読み進めていったのですが……。

あえて一言で集約するならば……惜しい
明確なテーマを掲げ、着実に積み上げていったアプローチを台無しにするラストが勿体無さすぎる。
急展開といった類のものではなく、放り投げたとしか言いようがありません。

確かに、決着が非常に難しい題材ではあると思うんですよ。
学校のクラス内の空気は、数あるコミュニティの中でも特殊で、日本人特有の同調気質が悪い方へと働いた結果、いじめなどが生まれたりするわけです。
個別で対応すれば、誰だってイケないことだと理解しているのに、集団では理性よりも輪を保つ意識に傾いてしまいます。
これは、兼ねてより日本人の抱える悪癖でしょう。
それを真正面から捉え、生々しくて歯がゆい人間関係を描いたら、この人の右に出る方はそうはいないでしょうね。
良い意味で、嫌悪感を抱かせる内容となっています。

例えば、バットエンドでもキッチリ描ききっているのであれば、相応の評価を得られると思うんですよ。
でも、これは妥協したのか、問題提示をしたかったのか、とにかくエンターテイメント作品としては酷いラストです。
夢落ちばりに理不尽な方向転換に納得できる要素が見当たりません。
著者の実力を持ってすれば、感動的な盛り上がりを見せつけることも出来ただろうに、勿体無い。

「人類は衰退しました」が特異な文体を求められることもあって、通常のロミオ節を久々に読みましたが、やはり良いですね。
深夜に読み始めたら、スルスルと入ってくる文章に虜となり、途中で本を閉じられなくなってしまいました。

クラスメイトを愚者と罵り、過激な発言が多い千尋の揺れる心情を垣間見る方法が新鮮でしたね。
気丈に振る舞いながらも、たまに凹んでしまう彼女の弱さに、完璧な人間などいないのだと改めて認識させられました。
直幸が表面上の付き合いを続ける友人達と比べると、如何に千尋の心がピュアであったかを思い知ります。
時が経つにつれて、どんどん愛おしい存在となっていきました。

面白かったのは確かなんですけどねぇ。
残り数ページでの超展開が、つくづく勿体無いと感じました。

ラストの駆け足が勿体無いと感じる程にスクールカーストがリアルに描かれています

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  灼熱の小早川さん  田中ロミオ  西邑  評価B+ 

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ドラフィル! 竜ヶ坂商店街オーケストラの英雄 

ドラフィル!―竜ヶ坂商店街オーケストラの英雄 (メディアワークス文庫)ドラフィル!―竜ヶ坂商店街オーケストラの英雄 (メディアワークス文庫)
(2012/03/24)
美奈川 護

商品詳細を見る
読書期間:2012/6/3~2012/6/7

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
構成
感動
人情
音楽


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 音大を出たけれど音楽で食べる当てのないヴァイオリニストの青年・響介。叔父の伝手で行き着いた先は竜が破壊の限りを尽くした――と思える程に何もない町、竜ヶ坂の商店街の有志で構成されたアマチュアオーケストラだった。激烈個性的な面子で構成されたそのアマオケを仕切るボスは、車椅子に乗った男勝りの若い女性、七緒。彼女はオケが抱えている無理難題を、半ば強引に響介へ押し付けてきて――!?竜ヶ坂商店街フィルハーモニー、通称『ドラフィル』を舞台に贈る、音楽とそれを愛する人々の物語。

【感想】


地方の商店街メンバーで構成されたアマチュアオーケストラが奏でる音と人を繋ぐストーリー。

音楽の世界で成功を収めるものは、ほんの一握りという表現すら生温い。
そんな厳しい分野で働き口のなかった藤間響介だったが、叔父より商店街のアマチュアオーケストラを紹介される。
公民館の臨時職員を兼ねつつ、商店街の人情溢れる人々と心を通わせていく、そんな情熱と慈愛の物語です。

美奈川護さんの本を読むのは、デビュー作「ヴァンダル画廊街の奇跡」以来です。
荒削りながらも光るものがあると評してから2年。
知らぬ間に、ここまでの域に達していたのかと驚かされるほどに良く出来た作品に仕上がっていました。

ラノベ色を排除したことで、登場人物たちの心情に焦点が合わさってます。
この方は、ラノベよりも一般向けの方が向いているのかもしれませんね。
余計な設定に振り回されず、剥き出しの想いが塊となってぶつかってくる本作は、音楽モノの人間ドラマとして実に見応えのある出来栄えでした。

主人公・藤間響介が、街に馴染んでいく過程が心地良い。
寂れた街ながらも元気に音楽活動を励む商店街の面子が、故郷に帰ってきたかのような安心感を与えてくれます。
横の繋がりに変なしがらみはなく、ただただ根強い交流に心が温かくなりますね。
その中心に居る車椅子の女性・一之瀬七緒が、飾らない性格で、ガンガン突き進むのも良かったです。

短編連作形式となっているため、まるでテレビドラマを見ているような感覚になりました。
響介と親しくなっていくメンバーが、一人ずつ増えていき、最後に待ち構えるのはヒロイン役の七緒という構成は、定番ながらも巧く乗せられたなぁと感じました。
終盤の引っくり返しは、予想より一歩先に進んだもので、単純に面白かったです。

クラッシックに詳しくなくても理解できるよう配列された文章が非常に丁寧な印象を受けました。
題材も学校の教科書を開けば出てくる有名な音楽家や楽曲を選出していることもあって、想像しやすかったです。
音を楽しむと書いて「音楽」ということを、文字媒体で表現している文章に惹かれました。
惜しいのは、人間ドラマの割合が多めで、演奏シーンの量が物足りなかったこと。
紡がれた単語が並びを得ることで生まれる「音」にもっと浸っていたかったなぁ。

始まりの終わりとも言える内容だったので、綺麗に終わってはいますが、続きも書けそうな感じ。
メインとなる第四楽章はともかく、その他は若干踏み込みの浅さも見られます。
土台は出来たわけですから、続巻が出るのであれば、その辺りにも期待したいところですね。

音楽を愛する人達が自らの想いを音に変えて伝えようとする人間ドラマ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ドラフィル!  美奈川護  富岡二郎  評価B+ 

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ソードアート・オンライン9 アリシゼーション・ビギニング 

ソードアート・オンライン〈9〉 (電撃文庫)ソードアート・オンライン〈9〉 (電撃文庫)
(2012/02/10)
川原 礫

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読書期間:

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
世界観
構成
期待感


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 「ここは……どこだ……?」
 目を覚ますと、キリトは巨木が連なる森の中――ファンタジーの≪仮想世界≫に入り込んでいた。手がかりを求めて辺りを彷徨う彼は、一人の少年と出会う。
 「僕の名前はユージオ。よろしく、キリト君」
 この仮想世界の住人――つまり≪NPC≫である少年は、なんら人間と変わらない感情の豊かさを持ち合わせていた。ユージオと親交を深めていくキリトの脳裏に、とある過去の過去がよみがえる。
 それは、子供時代のキリトがユージオと一緒に野山を駆け回っている記憶だった。そしてそこには、ユージオともう一人、金色の髪を持つ少女の姿があった。
 名前は、アリス。
 忘れていけないはずの、大切な名前だった。
 ウェブ上で最も支持を得た超人気エピソード登場!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


近未来のMMO情勢を主とした現代SF物語、第9巻。
アニメ放送前に発売されたものとしては、これが最新刊にあたります。

舞台は新たなる世界へ。
アリシゼーション」と題された今回のゲームは、いつになく特殊です。
なにせリアルとゲームの区別がつかず、キリトが現状に陥った理由を全く分かっていません。
果たしては、何が真実で何が虚像なのか。
手探り状態で進む展開は、まさにRPGそのもののようでした。

うん、面白かったです。
ただ少々構えて読まないと辛い部分はあるかな。

タイトルにわざわざ「ビギニング」と付けたくらいですから、相当長いエピソードになるんだろうなと予想していましたけど、この内容は序章もいいところって具合ですね。
約400Pの厚みのある本でありながら、プロローグⅠとⅡに100P弱ずつ割いています。
要するに、半分はプロローグであり、物語は始まってもいません。
専門用語も大量に頻出するため、導入としては、かなり重たい。
前半に詰め込んでいるおかげで、後半の加速に繋がるんでしょうが、もう少しエンジンのかけ方を気遣って欲しかったです。

まさに新章突入と言わんばかりのカラーの見開き中表紙は、素晴らしい演出でした。
ああ、売れている作品は違うなぁと嫌な考え方をしていましたねw

物語の筋が理解し始めると、楽しみ方が分かってきます。
突然、見知らぬ土地に降り立ったキリトが、冷静に考察する流れは面白い。
明確なゴールの存在を把握できないので、可能性を徐々に潰していきながら推理する手法を取っているわけですが、これが結果的にキリトと同調することになっています。
第三者の視点でヒーローを眺めていることの多かったこのシリーズにおいて、主人公と同じタイミングで驚いたり、頭を働かせたりするのは新鮮な気分となりました。

珍しいことは他にもあり、何と男の仲間キャラが登場します!
AWもSAOも味方キャラの増加は常に女の子であり、男は最低限しか存在していなかった川原礫さんの作品において、これが如何に珍しいことか。
表紙にも登場している碧眼の少年・ユージオの活躍には胸を躍らせました。

キリトの能力がチートっぽかったり、口を開けば女の子を落としていたりするところは相変わらず。
ステージが変わろうが、レベルが1になろうが、スペック高くて卑怯臭いなぁ……w

非常にワクワクとできる冒険の始まりでしたね。
謎ばかりが残っているので、早く次が読みたいです。

壮大な物語が始まる予感を感じさせてくれる設定と舞台が丁寧に作られています

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ソードアート・オンライン  川原礫  abec  評価B+ 

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とある飛空士への夜想曲 上 

とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)
(2011/07/20)
犬村 小六

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読書期間:2012/5/19~2012/5/22

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ロマンス
燃え
世界観
期待感


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 「美姫を守り単機敵中翔破一万二千キロ」その偉業を成し遂げたレヴァーム皇国軍の飛空士「海猫」の前に立ちはだかった最大のライバルにして、天ツ上海軍の撃墜王・千々石武夫。
独断専行により一騎打ちを仕掛け、海猫に敗れた千々石は、再戦を胸に秘めていくつもの空戦場を渡る。
「出てこい、海猫」激情の赴くままに襲撃を重ねる千々石のその背には、天ツ上の国民的歌手・水森美空の歌があった……。
空前の大ヒットとなった『とある飛空士への追憶』の舞台、中央海戦争の顛末を描く、新たなる恋と空戦の物語。上下巻で登場!

【感想】


「追憶」「恋歌」から繋がる「とある飛空士」シリーズ第三部。
こちらは、上下巻構成の上巻となります。
一応、単独でも読めますが、「追憶」の内容に大きく関わっているので、未読の方は先に読むことをお薦めします。

書き手も読み手も慣れてきた頃合いでしょうかね。
昨今のラノベには見慣れない堅苦しい文章も読み方が分かっていると苦労せず読めます。
最初は抵抗のあった専門用語や単語も気にならなくなりました。
むしろ、やみつきになりつつありますね。

どちらかといえば、スロースターターな傾向があるので、盛り上がるのは下巻からなんでしょう。
舞台の土台作りや説明に徹した内容となっていました。

「追憶」では敵側として描かれた天ツ上のエース・千々石武夫が主人公。
彼の生い立ちから始まり、海猫こと狩野シャルルとの一戦や、レヴァーム皇国と天ツ上の戦争の行方を追った内容となっています。
そして、その裏で人知れず切ないロマンスが繰り広げられています。

「恋歌」ではラノベに寄り添った印象を受けましたが、今作は原点回帰した硬派な作風となっていますね。
粗暴で不器用な男である千々石と、歌手を夢見る快活な少女・吉岡ユキ
幼い頃は、ただがむしゃらに上だけを見続けていれば良かったものが、歳を重ねることで身動きが取れなくなってしまう窮屈さが世知辛い。
時代と社会が許してくれない恋愛は、このシリーズにおける共通のテーマですね。
制限のある中でのロマンスは、もどかしさとなって心の奥底を刺激してきます。

好戦的な性格をしている主人公ということもあってか、空戦描写は増量しています。
大して知識のない自分でも、どこかで聞いたことのあるような戦局ですね。
一つの判断が局面を大きく左右する戦いに自然と手汗が湧きあがってきます。
国内でも随一の腕を持つ飛空士である千々石のエースたる所以を見せつけられました。
まだ前半ですから比較的優位な立場が続くこともあり、余裕はありますけどね。

千々石が海猫を好き過ぎて困る。
……というのは冗談ですが、戦闘中も常に海猫の影を探す千々石は、恋しているようにも見えます。
好意を寄せてくれる女性に背を向けて、何もない空を睨む彼が報われる日は来るのでしょうか。
「追憶」読者としては、海猫にも当然ながら思い入れがあるため、結末が見るのが不安でもあります。

とにかく伏線は仕込み完了。
果たして、これをどこまで仕上げてくれるのか、期待が高まりますね。

空のライバルへの渇望と切ないロマンスが交差する戦中物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への夜想曲  犬村小六  森沢晴行  評価B+ 

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豚は飛んでもただの豚?2 

豚は飛んでもただの豚?2 (MF文庫J)豚は飛んでもただの豚?2 (MF文庫J)
(2012/03/22)
涼木行

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読書期間:2012/5/14

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
青春
恋愛
ラブコメ



 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6




 元不良の高校1年生・真宮逢人はちょんなことがきっかけで、クラスメイトでポニーテールの美少女・藤室綾に初恋中だ。バイト先の同僚で、綾の妹・瑞姫の協力があるにもかかわらず、真宮の初恋は少しも前に進まない。
 夏――それは恋の季節。少しでも綾とお近づきになるために努力しなければいけない真宮であったが、超バカな彼の前に大きな壁が立ちふさがる。青春を謳歌する高校生にとって最大の敵――「中間試験」である。
 「綾姉に教えてもらえばいいじゃん?」
 赤点必至の真宮は、このピンチをチャンスに変えることができるのか!?
 第7回新人賞<最優秀賞>受賞作・元不良の少年と美少女三姉妹が織り成す、青春×初恋×ぽんこつストーリー第2弾!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


それぞれの高校生活に精一杯な学生たちの青春群像劇、第2巻。

何気ない日常に一喜一憂する少年少女のお話の詰め合わせが、実に面白い。
わー、これは好みだ。

本当にこれはMF文庫のライトノベルなのでしょうか?
1巻の時点でも、エロ系ラブコメとは一線を画する内容に驚きましたが、2巻でもその路線を継続しつつ、ラブコメよりも青春に重きを置いた作品となっています。
感覚的に言えば、メディアワークス文庫の内容を登場人物たちの年齢を下げて書いてみました、という感じ。

三姉妹との恋愛模様が混迷し始めるのだと思いきや、物語が全然始まりません。
それどころか恋にかまけているほどの余裕はないと言わんばかり。
いやー、ラブコメ一色のレーベルで異彩を放ってますね。

これは、青春が遠い日々となった人が懐かしんで愉しむ本の類かもしれません。
文体は柔らかいのですが、対象年齢層は20代後半以降だと思われます。
今現在青春真っ盛りな10代が読んでも魅力を感じ辛いのではないでしょうか。
中間テストで苦しみ、バイトに励み、趣味に没頭する。
いずれも過ぎ去ったからこそ如何に輝かしい瞬間だったのかを思い知っているんですよね。
ああ、あの頃に戻りたい。

ピンで表紙を飾っていることからも分かる通り、瑞姫がメインのエピソードがあります。
前回はヒロイン役でしたけど、今回は主人公でしたね。
三姉妹の中でも優遇され過ぎなぐらい、丁寧に掘り下げられています。
彼女の揺れ動く機微を逃すことなく描写されており、物事を深く考えないタチの真宮よりも主役っぽい。

逆に真宮の片想い相手である綾の内面が、なかなか語られません。
真宮を中心に三姉妹とのラブコメが展開されるんだろうなーと安易に考えていましたが、もしかすると作品の方向性はまるで違うところを向いているのかもしれませんね。
真宮と瑞希を主軸に青春が綴られるのか、それとも綾や雲雀の視点も加えるのか、はたまた真宮視点のラブストーリーに戻るのか。
どの方向に進んでも面白そうなので、期待するしかないですね。
まぁ、やっぱり真宮と瑞希がお似合いだと思うので、最終的にはカップル成立して欲しいなー。

真宮がボクシング以外、全く無頓着だったというのが改めて分かる内容でしたね。
勉強が大の苦手で、恋心に疎く、思考も短絡的。
ただ、彼ほど成長が楽しみな主人公はいないでしょう。
ぶっきらぼうながらも人の声に耳を貸し、馬鹿ながら必死に正しい道を選ぼうとする真面目な考え方が、将来性を感じさせます。
父親との会話シーンからもイイ奴さ加減が存分に出ていました。

恋一つとってみても捉え方は様々。
切ない甘酸っぱさもあれば、胸いっぱいに広がる苦しみもあります。
心が新鮮であるがゆえにもがく少年少女たちの若さが、何と瑞々しいことか。

会話文の砕け方がリアルらしさを含んでいて心地良く読めます。
ただ、地の文だけ、又は会話文だけが連続する傾向があり、些か平坦に感じられます。
物語が進展しないこともあって、若干クドさを覚えてしまう場面もありました。

白身魚さんのイラスト効果は絶大ですね。
瑞姫が可愛すぎて何度ページを遡って見返したことやら。
それに対して、真宮の不安定さはもう少し何とかして欲しいw

おそらく、流行からは外れた作品でしょうね。
短い巻数で打ち切りにはなって欲しくないので、是非とも売れて欲しい作品です。

何もないところにある日常という名の高校生物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  豚は飛んでもただの豚?  涼木行  白身魚  評価B+ 

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暴風ガールズファイト 

暴風ガールズファイト (ファミ通文庫)暴風ガールズファイト (ファミ通文庫)
(2007/09/29)
佐々原 史緒

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読書期間:2012/5/9~2012/5/11

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★☆☆☆☆☆☆
 … 4
青春
スポコン
燃え
友情


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 マリア様が見守る聖ヴェリタス女学院。高等部に進学した麻生広海は、親友との別れによる喪失感と何ら変わり映えのしない高校生活を前にすでに鬱屈していた。
 ところが!そんな広海の前に吹き荒れる五十嵐千果というちびっこい嵐!巻き込まれるがままなぜか高校ラクロス日本一を目指して立ちあがることに!……ってつーかラクロスって何よ?ウチにそんな部あったっけ??
 汗と涙とド根性!空前絶後の美少女スポ根グラフィティ、待望の試合開始!

【感想】


カトリック系女子校でラクロス部を設立し、青春を捧げんとする乙女達のスポコン小説。
同好会を部へと昇格させるために、少女達が汗水流す燃える作品となっています。

面白かった!
いやー、良い物を読ませて頂きました。

第1巻が刊行されたのが2007年9月。
最初に注目したのは「このライトノベルがすごい!2009」にて上位にランクインしたときでした。
名前すら知らない作品だったこともあり、興味が湧いてすぐに購入したことを覚えています。
しかし、それから読もうとする気分になかなかならず、3年半以上も積んでいました。

次のキッカケは、「ショートストーリーズ 3分間のボーイ・ミーツ・ガール」。
ファミ通文庫の作家陣による短編集にて、著者の作品はクオリティが頭一つ抜けていました。
綺麗な文章と淡々しい雰囲気に心を揺さぶられました。
作者の名前を覚えようとしたところで、本書の作者であることに気が付いたというわけです。

ミッションスクールが舞台のラノベといえば、やはり「マリア様がみてる」を思い出します。
女子校という環境が百合を連想させますが、この学校に登場する少女達はそんな甘い雰囲気など持っておりません。

クールな委員長キャラかと思いきや、中身は計算高くて腹黒い麻生広美を主人公に構えている時点で、生温い空気は早々に吹っ飛びます。
エスカレーター式に進学する生徒が大勢締める中で優等生を演じていた彼女が、高校から入学してきた帰国子女・五十嵐千果の超絶的なエネルギーの渦に巻き込まれて、仮面がボロボロと剥がれていく展開が楽しい。
ラクロス日本一を目指す五十嵐が生み出す大きなうねりに引き込まれるようにして、次々と個性豊かな仲間が集まっていく流れが、実に爽快かつ愉快です。

生まれも育ちも完璧お嬢様でありながら、本性は言葉使いが物騒なほどの負けず嫌い・宮前雪乃
大阪から転入してきたサブカル事情に詳しい・嶋あかね
先輩を敬う気持ちが欠けている礼儀知らずなグラマラス中学生・小坂依奈
数少ないスポーツ経験者で真面目な常識人・長谷川悠里
おどおどした性格の部長・大西くららと、彼女をサポートするクールビューティーな黒田苑子

まだ本来の女子ラクロスに必要なプレイヤー数は確保できていませんけど、それを補って余りあるキャラの濃さとパワーに圧倒されます。
ワイワイと賑やかに騒いでいても、一人一人確固とした存在を放っているので、キャラが潰れてしまうなんてことはありません。
個人的なお気に入りは、どんどん黒くなっていく麻生さん。
人間関係において、ナチュラルに上側のポジションにつくこの娘の呼称は、さん付けがよく似合いますw

部員集めに紙幅を費やしているため、試合に割くページはそれほど多くはありません。
それでも短いながらも詰め込まれた熱気に汗が伝わってくるようで、夢中になって読み耽りました。
安易にキャラ推しで構成する展開にしておらず、スポコン物として熱くなれるのは貴重です。
スポーツは、ご都合主義を取っ払った汗と涙と情熱で燃え上がるのが至高であると考えているので、本作は非常に楽しめました。

上記に記述した通り、文章に惹かれて買ったわけですが、思っていたのとはちょっと違いましたね。
冒頭を読んだ時、買ったのは失敗だったかな?と疑ってしまいました。
というのも、背景描写の不足を節々で感じ取れるからなんですよ。
麻生広美の一人称で語られるため、死角が生まれやすく、行き届いていない部分が多々あります。
5H1Wのうち、who、when、whereの記述が明らかに足りません。
特に舞台が不鮮明であると、頭の中で想像がし辛くなってしまい、もどかしくなります。

ラクロスの知識は、ほんの少しだけあったので、一応問題なく想像出来ました。
全く観たことがない人にとっては、イメージが湧き辛かったかもしれません。

その一方で、会話の前後に誰が喋っているのかという説明は、半分以上カットされているといっても過言ではないのに、こちらは驚くほどに把握しやすくなっています。
語尾で色分けするような単調さではなく、自然と言葉使いに差をつけており、口調で判断出来ます。
まさにキャラが生きているような感覚で、声色の違いを読み取ることが出来ました。
数年前の作品なので、ここから更に腕を磨きあげていったのかもしれませんね。

イラストは、正直なところ残念な出来です。
表紙やカラーイラストで損をしている部分は、何割かあるでしょう。
まだ挿絵は良い絵も混ざっていたりするので、惜しいなぁと思います。

2巻で打ち切りにされてしまっているのが、とても悔しいですね。
そうだとしても読むことが出来て良かったと思いますし、お勧めもしたくなる作品ですね。

嵐の名を持つ少女に巻き込まれた少女達がスポーツにのめり込んでいく熱血スポコンラノベ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  暴風ガールズファイト  佐々原史緒  倉藤倖  評価B+ 

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はたらく魔王さま!4 

はたらく魔王さま!〈4〉 (電撃文庫)はたらく魔王さま!〈4〉 (電撃文庫)
(2012/02/10)
和ヶ原 聡司

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読書期間:2012/5/5~2012/5/8

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
コメディ
安定感
ラブコメ
ツンデレ
ファンタジー

 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6


 バイト先のファーストフード店の休業で、職を失った魔王。さらに住居であるアパート、ヴィラ・ローザ笹塚も、ガブリエルとの戦いで壊れた壁を修理するため、一時退去しなくてはならなくなってしまう。
 職と魔王城を同時に失い失意の魔王は、大家・志波の勧めで“海の家”ではたらくことに。その店は、志波の姪だという女性・天祢が経営しているらしい。しかも、魔王に恋する女子高生・千穂や、魔王の命を狙う勇者・エミリアまでもが魔王を追って海の家にやってきて――!?
 夏で海でも仕事です!な、庶民派ファンタジー第4弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


庶民的感覚が根付いてしまった魔王と勇者のファンタジーコメディ、第4巻。
またもや現代日本を舞台にして巻き起こるドタバタ模様が繰り広げられます。

バイト先の改装による一時閉店と、アパートの改修が重なり、職と住居を同時に失った魔王。
路頭に迷う魔王達に、大家から救いの手が差し伸べられる。
大家の親戚が経営する海の家で住み込みバイトを募集しているという。
かくして、舞台を海に移し、魔王たちの夏が幕を開けます。

題して「海の家ではたらく魔王さま!」編です。
そのまんまですけど、そうとしか言いようがない内容となっているので仕方がありません。

いやはや、着実に面白さを増していますね。
期待度がますます上がってしまって大変です。

魔王がボロボロの海の家を再建させようと知恵を絞りだし、奮闘する様がメチャクチャ楽しい。
とにかくアイデアが素晴らしく、飛び出す案がどれもこれも感心させられます。
とても営業出来るような状態ではなかったのに、この説得力のある変化はスゲー。
さすが魔王さま、半端ねえ!
海の家で切り盛りするパートは、終始ワクワクさせられっぱなしでしたよ。

窮地を切り抜けようとがむしゃらになる姿が、下手な戦闘シーンよりも燃えました。
ルシフェルにも活躍の場が与えられましたしねw

真奥と恵美の間にアラス・ラムスが入ると、途端にアットホームな雰囲気となるのが和みます。
普段いがみ合っていても、教育だけは熱心なお父さんとお母さんって感じで、微笑ましい。
ツンデレを地で行く恵美が、徐々に態度を軟化させつつあるのも色々と美味しいですね。

ヒロイン的には、きっとちーちゃんこと千穂の方が人気高いんだろうなー。
個人的には、恵美=鈴乃>千穂って具合なんですがね。
千穂も良いキャラだとは思うんですが、恵美と鈴乃が好き過ぎて相対的に評価が下になっちゃいます。

お仕事に励むパートが秀逸な一方で、魔界と天界の動きは怪しくなってきました。
バトル展開よりも、日常生活に四苦八苦している魔王たちを見る方が圧倒的に面白いので、物語の主軸に関心が鈍くなっちゃうのが如何ともしがたいところ。
専門用語が頭に入ってきづらく、日常シーンとの隔たりを感じました。
一概に悪いとは言えないんですけど、もう少しシンプルでもいいかなと思いましたね。

029さんのイラストは、初期と比べると女の子の肉付きが良くなってきましたね。
表紙のちーちゃんのスタイルには、正直目を奪われました。
海といえば、もちろん水着の出番もあり、女性陣は期待通りの可憐さで、目の保養になりました。

伏線が埋め込められた印象の強い回でした。
シリアス路線に走るよりも、このままコメディ調で駆け抜けて欲しいなぁ。

数々の工夫で海の家を再建させようとする魔王の手腕に感服させられます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  はたらく魔王さま!  和ヶ原聡司  029  評価B+ 

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テルミー2 きみをおもうきもち 

テルミー 2 きみをおもうきもち (集英社スーパーダッシュ文庫)テルミー 2 きみをおもうきもち (集英社スーパーダッシュ文庫)
(2011/07/22)
滝川 廉治

商品詳細を見る
読書期間:2012/3/24~2012/3/26

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
青春
感動
切なさ



 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 事故で亡くなった二十四人のクラスメイトの最期の想いを背負う少女・テルミー。
 事故を免れた少年・清隆と共に、テルミーはクラスメイトたちの願いを叶えるため、その身に宿った彼らの能力を支えに、走り出す。
 薔薇を育てていた少年が伝えきれなかった想いを届けるために。
 主演女優と脚本家の二人を失った映研部にもう一度映画を作る喜びを思い出してもらうために。
 悲しみとやさしさが奏でる物語、第二章をあなたに贈ります。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


亡くなった24人のクラスメイトの最期の願いを叶えるために、残された2人が奔走する物語。
1巻発売からしばらく期間が空いたので、続刊は出ないものだと思い込んでいました。

ここまで仕上げてくるとは。
題材に対して作者の技量が若干届いていないかなと危惧していましたが、モノにしましたね。
物凄く良くなっていることに驚かされました。
なるほど、作者が自信作だと言うだけのことはあります。

魂が抜き取られたという言葉通り、悄然とする大切な人を喪った者たち。
身を切り刻まれるかのような痛みに涙し、ぽっかりと穴が空いてしまったかのような喪失感に茫然とする人々を見ていると、無常さにやりきれない思いが募ります。
そんな彼らに、死者からの言葉が届くことは、一体どれほどの救いとなるのか。
人が人を弔う理由が、残された人たちのためだというのが身に染みて分かります。

もう死んでいると達観しているからなのか、クラスメイトの面々の想いが洗練されていて、ダイレクトに胸に響いてきます。
剥き出しとなった心のおかげで、輝美を媒体として宿ったことが伝わってくるんでしょうね。
ちっとも現実的ではなくても、そう信じさせてくれるだけの想いが詰まっています。

プロローグの話から、心を掴まされました。
孫を失くして自意識が曖昧となっているお婆ちゃんが立ち直ったことが、我がことのように嬉しい。
シンプルながらも、この作品の本質を見事にとらえている導入だったと思います。

園芸部部長の恋物語が描かれる第1~2章、女優と脚本家を失った映研部の立て直しを図る第3章。
ともに読み応えのある内容で、切なくも前を見据えることが出来る素晴らしい話でした。
じんわりと熱をこもった優しさで、哀しみがポロポロと剥がれ落ちていくようです。

それと同時進行で、清隆と輝美にも少しずつ変化が生まれていく構成も狙いは悪くありません。
二人に急接近する少女・保科楓は、唐突すぎて異物感があるものの、やりたいことは分かります。
前回の感想で、主人公役の影が薄いと指摘しましたが、クラスメイトの想いの欠片に影響を受け始めている状態を見ると、積もり積もった最後はとんでもないことになるのではないかなという予感を覚えました。

イラスト担当は七草さん。
1巻より上達していて雰囲気も合っていたと思います。
ただ、折り畳んだカラーページに輝美の尻がデカデカと出るところは考えて欲しかったな。

インパクトのある設定のお陰で、久しぶりに読んでも内容を忘れていませんでした。
次も1年後でも構いませんので、是非とも完結して貰いたいです。

切なさの後に温もりが残る読了感が心に染みわたります

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  テルミー  滝川廉治  七草  評価B+ 

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ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~ 

ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
(2011/10/25)
三上 延

商品詳細を見る
読書期間:2012/3/10~2012/3/12

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ミステリー
安定感
恋愛
構成


 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細めるのだった。
 変わらないことも一つある――それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。まるで吸い寄せられるかのように舞い込んでくる古書には、人の秘密、そして想いがこもっている。青年とともに彼女はそれをあるときは鋭く、あるときは優しく紐解いていき――。

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


古書店に持ち込まれる本を巡って紡がれる人と人と繋ぐ物語、シリーズ第2巻。
今やシリーズ発行部数200万部となり名実ともにメディアワークス文庫の看板作品となりましたね。
本屋大賞8位入賞は伊達ではありません。

やはり安定した面白さを提供してくれる作家さんですね。
雰囲気も質も1巻と変わりないので、安心して読むことが出来ました。

前回同様に短編連作となっており、多様な物語を楽しむことが出来るのが嬉しい。
古書と持ち主に関わる背景を見通すかのように言い当てる栞子の推理が実に爽快です。
これは本格ミステリー小説をあまり読まない人間だからなのかもしれませんが、ミステリーの難易度が適度に感じられます。
ある程度予想が付くけれど、最後の核心の部分までは読めない微妙さ加減。
一般とラノベの中間に属するレーベルとしては、この中途半端なヌルさがベストだと思いますね。

例えば、第一話・アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』
栞子が隠している内容は、態度から途中で分かるんですが、何故秘密にしているのかまでは拾えなかったんですよね。
読み返してみると、なるほどなと思わせてくれる構成となっており、物語の畳み方に唸らされます。

第二話・福田定一『名言随筆 サラリーマン』も良かった。
大輔と栞子の絶妙な距離感に、第三者を入れることで僅かに進展する様が楽しい。
もうひたすら焦れったくて、モヤモヤとして、しかし微笑ましい二人の関係が大好きです。

そして、ストーリーとして秀逸だったのが、第三話・足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』
栞子の推理力は異常過ぎる部分はありますけど、それをフィクション上でも納得させてくれるだけの力強さはあったと思います。

シリーズ化が決まっていない1巻で一応の区切りをつけるのは、新作を書く上で当然のことです。
なので、これだけの大人気シリーズとなった今、ここから本格的な長期シリーズとなるための伏線が仕込まれていくことになるわけです。
是非ともダレることのない物語を作り上げて欲しいものですね。

伏線といえば、表紙の栞子が1巻と2巻で若干違うように描かれているのは気のせいなのか、それとも……。
作中の描写からすると、もしかしなくても、あれはそういうことですよね?
ううむ、越島はぐさんもさすがの仕事っぷりですね。

あー、栞子さんと一緒に働きてぇなー。
確かにキャラ造形が出来過ぎ感がありますが、あざとい面も含めて可愛いと思ってしまいます。
人見知りではあっても頑固なところがあったり、鋭いくせに恋愛に関しては疎かったり。
こういうギャップに弱いんですよねぇ。

古書に関わる人々の過去と想いを紐解く女店主の推理と合間に挟まれるロマンスが見所

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ビブリア古書堂の事件手帖  三上延  越島はぐ  評価B+ 

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カミオロシ弐 ~人形供養の儀~ 

カミオロシ〈2〉人形供養の儀 (電撃文庫)カミオロシ〈2〉人形供養の儀 (電撃文庫)
(2012/02/10)
御堂 彰彦

商品詳細を見る
読書期間:2012/3/6~2012/3/9

【評価……B+
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー
ホラー
ラブコメ
構成
期待感

 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8


 人形が持ち主の下に帰ってくる。生徒たちの間で囁かれる噂。玖流は同級生の皐月から人形供養について相談を受ける。燃えるゴミの日にでも出しておけと、玖流は取り合わなかったが、皐月は二階から転落。異様に人形に怯えているという。
 玉響神社――地元では人形供養で知られた古社である。結局、皐月は供養に訪れたはずなのだが。事故だと切り捨てる玖流に、神社に問題があるのではと憤る美古都。美古都に無理やりお供を命ぜられた玖流は渋々神社へと向かうのだった。
 神社の説明に不審点はなかった。だが、何か違和感を覚える。そんな玖流たちを待っていたのは皐月の死だった。何かあると探り出した玖流と美古都は、恐るべき秘密へと辿り着くのだが!?

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


オカルトホラーとミステリーが相まった、シリーズ第2巻。

明らかに面白くなったなーと感じました。
作者が本領を発揮したということもあるんですけど、読者側の心構えが出来たことも大きいかな。
1巻を踏まえて読んでいるので、ファンタジックな境界線を何処に引けばいいのか大体目星がつきます。
頑なに否定するわけではなく、神という存在があり、超越的な現象が存在することを頭に入れておけば、どちら側に流れても納得が出来ますし、ストーリーも把握しやすいですね。

その意味では、元から信仰心の強い美古都や、過去に神と関わっていた玖流よりも、ごく一般的な思想を持った御厨の方が同調できるというのが面白い仕組みだなぁ。
彼は、将来的にトリックスターとなるような予感がしますね。

登場人物を絞って、主要人物に焦点を当てたおかげで随分と読みやすくなりました。
キャラが少なくなればなるほど、ミステリーは予想しやすくなるものですが、今回の事件については、終盤まで真実が見えませんでしたね。
それだけ練られたストーリーと、巧妙な構成だったと思われます。

前巻のラストで予想はしていましたけど、早くも迫られた選択がシビアで、かなりキツイ。
厳しい現実から逃げること許さないのが、御堂彰彦さんらしい作風だなぁと思います。

しかし、これがまだ序の口だというのが散々フラグを立たせていることから分かってしまうんですよね。
まぁ、現状で仮に美古都とスナオを天秤に掛けた場合、読者側からするとスナオに対する思い入れが少ないので、何かしらのエピソードを挿入してくるんでしょう、きっと。
容赦なさに期待する一方で、一体どれほどの痛みとなるのかという恐怖も覚えます。
ううん、二律背反だなぁ。

玖流美古都の掛け合いに、デレ要素が若干ながら増えたようが気がします。
普段いがみ合っているのに、本当は大切にしているんだなというのが傍から感じ取れる二人の関係が頬が緩くなっちゃいますね。
クールな装いで玖流に絡み意地悪してしまう美古都が活き活きしていました。
冗談っぽくからかう発言に本音を混ぜたり、たまに演技を忘れてしまうところが可愛らしいですね。

この作品の凄いところは、雰囲気が出過ぎていて、オカルトチックな内容が罰当たりじゃないかと不安さを抱かせるところにあると思います。
人形の不気味さも表紙から滲み出ていますしね。

総じて素晴らしかったのですが、惜しい点も少々。
ミステリー本筋に矛盾は感じられませんでしたが、細かいところでミスが見受けられます。
例えば、324Pの2行目に対する145Pとか。
160Pで一香と連絡先の交換を今朝したとあるにも関わらず、149Pを見ると一香は寝ていたり。
199Pの文字数が増えているという話も、文字でも音でも同数だったり。
編集さんのチェックが甘いんですかねぇ。
ああでも、描写不足気味だった文章は改善されていました。

刊行ペースは決して早くない作者だけに、次が待ち遠しいですね。

大切な人の代わりとなる切なく哀しい人形物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  カミオロシ  御堂彰彦  さらちよみ  評価B+ 

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豚は飛んでもただの豚? 

豚は飛んでもただの豚? (MF文庫J)豚は飛んでもただの豚? (MF文庫J)
(2011/12/21)
涼木行

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読書期間:2012/2/4~2012/2/6

【評価……B+
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
恋愛
青春




 ★★★★★★☆☆☆ … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8





 元不良でこの春から高校生になる真宮逢人は、バイト先から逃走する食い逃げ犯を追いかけていた。逃げられそうになったところを、ポニーテールの美少女・藤室綾の純白の……――ではなく、ハイキックに助けられる。真宮はその日から、綾のことをなぜか忘れられずにいた。高校の入学式当日、真宮の席の目の前には、見覚えのあるポニーテールが揺れていて、思わぬ再会を果たす。さらに、バイト先には綾の妹・瑞姫までやってきて、新しい日々が始まる予感。そんなある日、真宮は瑞姫から「綾姉のこと気になるんでしょ?」と言われて――。
 第7回新人賞〈最優秀賞〉受賞作・元不良の少年と美少女三姉妹が織り成す、青春×初恋×ぽんこつストーリー堂々開幕!!

【感想】


恋心に疎い男子高校生が、初恋に戸惑いながらも己の気持ちに正面から向き合う青春物語。
「まよチキ!」「変態王子と笑わない猫。」に続いて、第7回MF文庫Jライトノベル新人賞の<最優秀賞>に輝いた受賞作品となります。

MF文庫Jらしからぬ清々しさ。
隙あらばエロハプニングを挿入する風潮のあるレーベルにおいて、ここまでサービスシーンを排除しているのは珍しい。
穏やかな日常の中で、ほんのちょっぴりほろ苦さが入り混じる青春模様に惹かれました。

主人公・真宮逢人は、物事の関心が薄いために親しい友人もおらず、バイトとボクシングに明け暮れる日々。
ある日、バイト先から逃亡した食い逃げ犯をハイキックで仕留めた藤室綾と出会う。
高校入学後に綾と再開した真宮は、フランクな彼女の性格に心地良さを覚え、次第に惹かれていく。
そんなおり、綾の妹でバイトの同僚である藤室瑞姫に綾への恋心を指摘された真宮は、初めての恋に困惑し、瑞姫に教えを請う――というラブコメの王道的な展開です。

ストーリーは、今更言うまでもなく有り触れたもので、目新しさはないと思います。
協力者である立場の瑞姫と真宮が親しくなるのも当然の流れと言えるでしょう。
でも、こういう三角関係は大好物なので、何度似たような作品を読んでも楽しめてしまいますね。
まだ当事者たちは意識していないんでしょうが、着実に火種を蒔いていっており、将来的な波乱が末恐ろしくなります。

あとは物語的に、どこまで話を展開させて見せるのかの違いなんですけど、投稿作品だったとは思えないぐらい進行がジックリで、長編の1巻にしか見えません。
単作だと思って読むと、オチの弱さが気になるかもしれませんね。
まだ本格的な物語は、始まってさえいませんから。

現時点で、明確なメインヒロインを確立していないのも、どちらに転ぶか分からないので面白い。
綾のざっくばらんな人柄は、親しみやすさと頼もしさを感じます。
瑞姫もまた、くだけた言葉使いに優しさが包容されていてるのが非常に魅力的です。
個人的な好みでいえば、ポニテ姿の綾はポイント高いんですが、内面的には瑞姫に軍配が上がります。

藤室三姉妹の長女・綾と三女・瑞姫と比べると、次女・藤室雲雀の出番は少ないですね。
三つ子という設定は、今のところ必要性皆無ですが、これは後々活かされてくると思います。
雲雀だけは、三つ子の幼馴染みである神指風太郎に惚れられているので、カップリング的には外部になりそうですがね。
ところで、動けるデブこと風太郎が「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の平野コータに見えて仕方なかったのは、自分だけでしょうか。

白身魚さんのイラストに釣られて購入しましたが、正解でしたね。
絵の雰囲気と作風が一致していて、甘酸っぱさが増幅されていました。

ラノベ的な色付けは希薄で、味気ないという人もいるとは思います。
派手な展開を望み、萌えを願う人にとっては、地味な話だと感じたかもしれません。
しかし、一見すると平たい話に見えるからこそ、心の機微を感じ取ることが出来るんだと思います。

面白かったです。
ただ一つ苦言を呈するのであれば、タイトルが微妙だということ。
作品の核となる部分が遠過ぎるのではないかなと思うのですが……いつか伏線回収するんでしょうか。

無愛想な男子高校生が初恋と男女の友情の間で揺れる青春物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  豚は飛んでもただの豚?  涼木行  白身魚  評価B+ 

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