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明日へと続く記憶

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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涼宮ハルヒの消失 

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)
(2004/07)
谷川 流

商品詳細を見る
読書期間:2011/5/1~2011/5/5

【評価……A+
発想 ★★★★★★★★★ … 9
設定 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★★★
 … 10
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
SF
ラブコメ
世界観
完成度
構成

 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8


 「涼宮ハルヒ?それ誰?」って、国木田よ、そう思いたくなる気持ちは解らんでもないが、そんなに真顔で言うことはないだろう。だが他のやつらもハルヒなんか最初からいなかったような口ぶりだ。混乱する俺に追い打ちをかけるようにニコニコ笑顔で教室に現れた女は、俺を殺そうとし、消失したはずの委員長・朝倉涼子だった!
 どうやら俺はちっとも笑えない状況におかれてしまったらしいな。
 大人気シリーズ第4巻、驚愕のスタート!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「涼宮ハルヒ」シリーズ第4弾。

これを名作と言わずとして何という。
シリーズ内最高傑作と呼び声の高い作品は伊達ではありません。
紛れもなく傑作です。

クリスマスも近づいた冬のある日、それは唐突に訪れる。
キョンが異変に気付いたときには、既にハルヒやSOS団の存在が消失していた。
全てがなかったことにされた世界に恐怖し足掻くが、活路を見出せない。
果たしてキョンは何を選択するのか。
ハルヒは何処へ消えてしまったのか。
謎に満ちた導入から展開されるSF要素満載のストーリーです。

初めて読んだ時のインパクトは絶大でした。
それまでのハルヒの長編は、物語の始動が遅く、ダラダラとしているのが欠点でしたが、「消失」は開始早々から強烈な牽引力で引き込んでくれます。

怪しげな組織をバックにつける古泉、未来を知る朝比奈さん(大) 、そして何より絶対的な能力を有し数々の問題を解決へと導いてきた長門の存在は、如何様な事態も収束へ向けてくれる安心感がありました。
だからこそでしょう。
過剰なまでの長門のスーパーマンっぷりを見てきただけに、絶望感は底知れないものとなっています。
頼りになる仲間たちが消失し、孤立に陥ったキョンの焦燥っぷりは、仕方がないでしょう。
心細いというレベルではなく、あまりの喪失感と八方塞がりな状況に諦観せざるを得ません。
いやはや、まんまと作者にやられてしまいました。

まず、ストーリーラインが秀逸。
このために「憂鬱」「溜息」「退屈」の物語を積み重ねてきたと言われても信じるほど。
250ページ程度という、どちらかといえば薄い本にも関わらず、濃厚さは他の長編の遥か上をいきます。

緩急の付け方が素晴らしい。
停滞させるところは重々しく、希望は神々しく見せ、かと思いきや急転直下する状況に目を離すどころか、息をつく暇すらありません。
初読した数年前は、夢中を飛び越えて没頭するように読み耽った記憶があります。

ネタバレになるため多くは語れませんが、「消失」で使用されている設定には鳥肌が立ちました。
個人的な好みを抜きにしても、これでテンションが上がらなければ嘘だろうってもんです。
さりげない話が伏線となっており、ただの情報に過ぎなかった点が繋がった時の爽快さは、思わず声を出してしまいそうになります。
SF展開もギミック、ロジックともに素晴らしく、何より面白い。

キャラクターは、立ち位置まで精密に計算されているかのように完璧。
これまで斜に構えていたキョンが、己を直視して本心を自覚する展開は痺れるほどに熱い。
主体性がなく、ハルヒや他のSOS団員達に流されるまま過ごし、たまに口を出すポジションという傍観者の立場を捨て、自ら飛び込む意志を見せる様は、まさにこれぞ主人公といった姿でした。
キョンにとっては、まさしくここが本当の意味でのスタートラインになるんでしょうね。

各ヒロインたちは、さらにそれを上回ります見せ場が用意をされています。
中でも長門は、消失長門という言葉でカテゴライズされるほど人気が出ました。
今巻で長門派が大幅増となったのは、疑いようがないでしょうね。
事実、自分も転んだうちの一人です。
小動物系の女の子はたまりません。

出番こそ少なめのハルヒですが、存在感は抜きん出ていますね。
時系列でいえば、「溜息」の文化祭以降のハルヒは結構好きだったりします。
明らかに彼女の中に変化をもたらしているのが見てとれるのが嬉しい。
長門とは別の意味で、頼もしさを覚えます。
行動力のある彼女の魅力が存分に出ていました。

再登場を果たした朝倉を始めとした脇役も光りますね。
谷口、国木田もイイ味出しています。

「涼宮ハルヒ」シリーズ……というか、昔のラノベにありがちなことに、イラストの指定が間違っていますね。
まぁ、ある意味ネタバレを避けた形になっているため、ありといえばありですが。
この当時のいとうのいぢさんは、まだ描き慣れていないように感じられますね。
ハルヒが、シャナっぽくも見えました。

完成度が非常に高い作品です。
唯一惜しい点は、結末が締めきっていないところかな。
これは、先が気になり過ぎますよ。
出来ることならば、全てを今巻で片づけて欲しかった思いは残りました。

思い出補正がないとは言い切れません。
しかし、名作であるのは間違いないでしょう。
1~3巻をツマラナイと思った人はともかく、微妙だと感じた程度ならば、是非とも「消失」までは読んで判断して欲しいですね。
このカタルシスを体験しないのは、損しますよ。

⇒ <劇場版『涼宮ハルヒの消失』感想

葛藤する主人公が決意するまでの心理を丹念に描いた渾身の一作

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  涼宮ハルヒの憂鬱  谷川流  いとうのいぢ  評価A+ 

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BLACK BLOOD BROTHERS 11-ブラック・ブラッド・ブラザーズ 賢者転生- 

BLACK BLOOD BROTHERS11  ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 賢者転生― (富士見ファンタジア文庫)BLACK BLOOD BROTHERS11 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 賢者転生― (富士見ファンタジア文庫)
(2009/05/20)
あざの 耕平

商品詳細を見る
読書期間:2009/5/20~2009/5/21

【評価……A+
設定 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★★★
 … 10
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
オススメ度 ★★★★★★★★★★
 … 10
燃え ★★★★★★★★★★
 … 10
完成度 ★★★★★★★★★★
 … 10

ジローは進む。星一つ分の死と再生を繰り返しながら。コタロウ、そして――ミミコ。彼の心臓をノックする、大切な存在の為に――。
ついに最後の戦いの火蓋が切られた『九龍の血統』とジローたち。ジローに応え特区へと向かったミミコ、ケインやジャネットら各地の精鋭が特区に到着する中、ジローは九龍王との対決の時を迎える。鍛えなおした銀刀を操り『九龍の血統』を圧倒するジローを前に、追いつめられたカーサたちは、最後の手段に打って出る……!
「ジローさん!お願いっ。諦めないで!」
――大切な、愛する者たち。その為に今、全てを捧げよう。
黒き血の兄弟と一人の少女が紡ぐ、血と絆の物語、ついに完結!

【感想】


BLACK BLOOD BROTHERS」シリーズ、堂々完結。
吸血鬼サーガの幕が下ります。

感無量。

渦巻く切ない想い。
一向に熱が引かない目頭。
息を吐くたび漏れ出す疲労感の心地良さ。

素晴らしかったです。
言葉で表現すると、そのどれもが今の自分の気持ちに当てはまらず、もどかしくなります。
だから陳腐だとしても何度でも言います。
本当に素晴らしかった!

◆ 内容

富士見ファンタジア文庫史上、歴代1位タイのページ数はずっしりと重みを感じる533ページ(あとがき除く)。
膨大な量でありながら、それを全く苦とさせない内容となっていることは保障します。
むしろ、読み終わってみると、よくこれだけ充実した内容を1冊にまとめることができたなと驚くくらいです。

これまで積み上げてきたものが解放されていく快感にアドレナリンが出まくり。
ギリギリの局面で必死に生きる彼らの姿が、熱い『血』の声を読者の胸の奥まで訴えてきます。
揺ぎ無い信念を持つ者の格好良さには人間も吸血鬼も差はありません。

緊迫した展開の連続に、ページをめくる手どころか全身に汗をかきます。
時間を忘れて、ただただ没頭して読みました。

◆ 物語

切なさを越えた先にあったものは、痛みと希望でした。
どうして世界はこうも酷なんだろうと思わざるを得ません。

しかし、覚悟を決めた彼や彼女らは、迷いを抱えつつも不器用なくらい一直線で、それが眩しいくらいに格好良かった。
読者の自分の方が心の整理が出来てないくらいで、避けられない戦いに苦しみと悲しみがいつまでも胸にこびりつきました。

築き上げてきた土台からなる幾つもの伏線が、一つ一つ丁寧に解かれていきます。
それでも、もっと描いて欲しかったと思うのは欲張りでしょうか。
想像で済ませるにはあまりに勿体無い話が残ってしまった気がします。

エピローグは長めで、余韻に浸れる良い終わり方でした。
様々な因縁が収束したのち、これから始まる新たな物語の息吹を感じることができます。

ラストシーンの予想はできなかった……というよりもしたくなかったので考えていなかったのですが、読んでみるとこれ以外有り得ないだろうと思えました。

◆ 総評

この「BLACK BLOOD BROTHERS」という本は、おそらく一生忘れることのない本の一つだと確信しています。
それだけ自分にとって特別であったという想いに今もなお溢れています。

もちろん、作品のレベルの高さは言うに及びません。
自信を持って人にお勧めできます。

この本に出逢えて本当に良かった。
あざの先生、お疲れ様でした。
そして、ありがとうございます!

⇒ 【 「BLACK BLOOD BROTHERS11 -賢者転生- 」簡易感想 】


熱く、切なく、そして深さを感じる重厚な物語が余韻を強く残します



以下、ネタバレ感想です。
最終巻まで読んだ方のみ開いてください。
-- 続きを読む --

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  BLACK_BLOOD_BROTHERS  あざの耕平  草河遊也  評価A+ 

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BLACK BLOOD BROTHERS 9-ブラック・ブラッド・ブラザーズ 黒蛇接近- 

BLACK BLOOD BROTHERS9  ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 黒蛇接近― (富士見ファンタジア文庫 96-15)BLACK BLOOD BROTHERS9 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 黒蛇接近― (富士見ファンタジア文庫 96-15)
(2008/06/20)
文庫

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【評価……A+
舞台 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
オススメ度 ★★★★★★★★★★
 … 10
燃え ★★★★★★★★
 … 9
期待感 ★★★★★★★★
 … 9

「人と吸血鬼は共存することができると思いますか?」
ミミコは問いかける。
もしそうならば。手を取り合うことができるならば。いや、そんな未来が来ると信じるからこそ。頑張れる。たとえひとりぼっちでも。明日はきっと、ひとりじゃないって信じてるから。
十年前の香港で。今このシンガポールで。再び蘇る赤き血と黒き血の戦い。特区ではリンスケやバドリック、そしてサユカが、絶望的な状況の中、戦いを続ける。そんな中カーサたち『九龍の血統』は遂にシンガポールに上陸。狙いは今や『乙女』として世界の要となったミミコ!ミミコの危機にジローは間に合うのか!?

<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


やべえ!面白すぎる!

十分過ぎるほど身に染みていたはずなのに、もう凄すぎて笑うしかないね。

そんなBBBシリーズ第9巻です。
全てを網羅したわけでもないのに、現在続いているラノベシリーズ物でこの作品以上のものはないんじゃないかなと思えてしまうくらいクオリティが頭二つ分くらい飛び抜けてます。

7巻でSランクをつけたときに、今後7巻を超えるようなものは書けないんじゃないかと言いましたが、そんな心配もどこ吹く風。
やっぱりこの作者、スゲーわ。

1巻こそ掴みが微妙でしたが、それ以降は最初の1ページ、1行を読むだけで力強く物語に引き込んでくれます。
今回は、カラーページ1ページ目がそうでした。
開いてみた瞬間、ゾワッと体が震えましたよ。
本屋で見たとき、「他の本を悠長に眺めている場合じゃねえ!一刻も早く帰って読みてえ!」という気持ちになりました。

ストーリーは予想できそうで全然できません。
本来、血を吸ってしまえば転化させることができる『九龍の血統』は、小説的には非常に書きづらい要素のはずです。
何故なら、こういう一撃必殺の能力を持っていると、それだけで情勢を大きく変えることができるため、作者の観点からすると安易に乱用することができないはずなんですよ。
それに加えて、最終的には主人公側が勝つだろうというある種の安心感を持って読者は本を読んでいるため、実際に主人公サイドのキャラが危険に陥っても、心の底では大丈夫だろうと腹を括っていて、緊迫感が欠けてしまう――なんてこともあります。
そうなってしまったら、物語は盛り上がりません。

しかし、このBBBは違います。
本当にどう転ぶのかが分からないんです。
既にセイが『九龍の血統』の牙の前に倒れてしまったこともあって、誰がやられてもおかしくないという認識にさせられてしまっています。
安心感なってあったもんじゃありません。いつでもハラハラドキドキしっぱなしです。

逆からいうと、予想したくないという思いも強いですよねぇ。
この作品が、傑作として完結するためには、中途半端なエンディングはあってはなりません。
でもそうなると、どう足掻いても哀しい未来、いや、乗り越えないといけない現実が待っているわけで……。
どれだけの血がこれからも流れることになるのかと考えると、鬱になりそうで目を背けたくなってしまいます。

前回は、再出発の回だったことでバトルがほとんどありませんでしたが、今回は痺れる戦闘がありました。
血が流れるごとに、心揺さぶられました。。

いつものようにキャラ語りをすると片手では数えきれないくらいいます。
その中でも特に挙げるとすると、ジロー尾根崎会長でしょうか。
二人とも今巻で漢を上げ過ぎですよ。
この間やったBBBキャラソートは、この9巻が大きく影響してます。

ああ、カーサの存在を忘れるところでした。
サブタイトルにもあるように、カーサにとっても大きな局面を向かえた回でしたね。
彼女の深い因縁と複雑な想いに、哀しみを覚えずにはいられません。
あぁ、いつになったらカーサは報われる時が来るんだろう。

他にも短編の「BLACK BLOOD CHRONICLE」に出てきた吸血鬼たちも登場します。
ファンであれば、思わずニヤリとしてしまう演出がニクイ。

あと、今まで微妙だと感じていた絵が気合を入れなおしたかのように描かれていて嬉しかったです。
これくらいは描ける方だというのは分かっていましたので、手を抜いていたわけではないでしょうが、ようやく本腰を入れて描いてくれたか、という感じですね。

読み応え抜群のこのシリーズも、どうやらあとがきによるとあと2冊で終わりらしいです。
終わりのクロニクル』みたいに最後は1000ページとかでも大歓迎ですよ!

テーマ: ライトノベル

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