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明日へと続く記憶

アニメ、ゲーム、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA 

サクラダリセット7  BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)
(2012/03/31)
河野 裕

商品詳細を見る
読書期間:2012/4/27~2012/4/30

【評価……A
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★★★
 … 9
恋愛
透明感
切なさ
構成
完成度

 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9


 「私が将来の夢を失くしたのは、貴方に出会ったからよ」
 能力を失くした相麻菫。
 「私は貴方を、覚えていません」
 能力を失くした春埼美空。
 改変された咲良田で、ケイはひとり、ふたつの記憶――街に能力が存在する本物の記憶と、能力が消滅した偽物の記憶――に直面していた。
 自らの過去に区切りをつけるため、ケイは初めて咲良田を出て――。
 複雑でシンプルな、大人のような少年がたったひとつを祈り続ける物語。堂々完結!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


物理法則に従わない能力を所持する者が住む街、咲良田。
人が能力を使用することの意義を問うシリーズ最終巻です。

とても素晴らしい物語でした。
直感で読み始めた作品でしたが、出会えたことに感謝したいです。

全てを見通した上での構成が、尋常ではない完成度にまで引き上げています。
作者自身公言している通り、これ以上の過不足はないでしょうね。
作品内の雰囲気だけに留まらず、シリーズ構成までもが美しく整っているなんて、相当緻密な設計をしていない限り不可能なことです。
予定通りの巻数で終われるだけの売れ行きがあって、本当に良かったと心から思いますね。

1~6巻までに登場してきた人物、能力のいずれもが関わっていることに衝撃を覚えます。
7巻を最初に書きあげて、その後に辻褄を合せるよう物語を組み立てたと言われても疑わないですよ。
適材適所が見事過ぎて、ある意味でご都合主義に見えてしまうほどです。

しかし、それは使う立場がいてこそ初めて輝くもの。
未来視能力を持った相麻ではなく、人よりも少し記憶力の良いケイが導いたことに驚かされます。

理想論を語る主人公なら数え切れないくらい存在します。
それらの多くは、言葉だけが立派で、蛮勇といってもいいものです。
または己の力を過信し、結果論で語る暴力的な思考によります。

しかし、ケイは違います。
彼は自分がどれだけ聡くて、どれだけのことが可能なのか正しく判断できる人間です。
春埼や相麻が絶対的に信じるのは、彼ほど透き通った心を持った人間がいるとは思えないからでしょう。

誰よりも傲慢なのに、目指すべき境地が夢のように心地良い。
彼の夢に乗っかり、理想に浸っていたい。
中野智樹、村瀬陽香、岡絵里、坂上央介、宇川沙々音。
ケイの周りにいる人間は、一括りには出来ない想いを抱いているけれど、みんな彼に惹かれている。
友情であり、嫉妬であり、憧れでもあるそれを人はカリスマと呼ぶのでしょう。

当たり前のことを当たり前にできるのが如何に難しいことなのか。
完璧主義者でありながら切り捨てる勇気も併せ持つケイの凄みが、坂上の台詞に集約されていました。

無垢というより無味な人格だなという第一印象が嘘なほどに春埼は変わりましたね。
作中でも関わり合いの薄い立場から見ると、春埼は意志のない人間に見えるんでしょう。
でも、ここまで物語を追ってきた読者からすると、ぬりえの前と後くらい別物に感じられます。

ケイを通じることで、相麻菫が如何に非情な立場にあったのかを痛感します。
前回で散々泣いた相麻が、なおも苦境に立たされ続けないといけないことに嘆くことしかできません。
それでも、少しでもケイや春埼が彼女の肩代わりができれば、救いとなるのかなと勝手ながらに思いました。

管理局との対立は、そのままケイと浦地による手札の切り合いと化していましたね。
お互いの手の内を読み合う様は、形勢が頻繁に入れ替わり、読み応え抜群でした。
頭脳的な能力バトルは大好きなので、知略戦には心躍りましたね。
雰囲気を大きく壊すようなこともなく、あくまで物語を構成する一つの要素に留めてくれていたのも良かったです。

散りばめられた伏線は、概ね回収されています。
ケイの名前がカタカナ表記だった理由など明かされないと思っていたので、あのくだりは嬉しかった。

潔癖すぎるぐらい綺麗なお話でした。
余分な成分を一切取り除いた後に残された二つの側面は、どちらも正しく、恐ろしいほどに純真で。
人々の感情を大切な宝物のように扱う彼や彼女たちは、とても素敵な人でした。

口絵のイラストは、最後まで高クオリティ。
椎名優さんの優しくも洗練されたタッチによるイラストが、素晴らしい相乗効果を生み出していました。
また次のシリーズもこのコンビによる作品を読んでみたいですね。

矛盾の中に潜む真実を求めて、少年が我儘に己の世界を求める物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  サクラダリセット  河野裕  椎名優  評価A 

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ココロコネクト ミチランダム 

ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫)ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫)
(2011/01/29)
庵田 定夏

商品詳細を見る
読書期間:2010/2/10
月間マイベスト作品

【評価……A
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★★
 … 10
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
青春
ラブコメ
完成度



 ★★★★★★★★★★ … 10
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9




 「太一とは、付き合えません」
 太一は正式に伊織に告白し――玉砕した。
 異常な現象が起こっていても関係ないと、決死の覚悟で臨んだ想いは儚く散り、その上、重い足を引きずり向かった部室でフられた事をメンバーに知られてしまう!
 部内は騒然となり、稲葉は動揺を隠せない。伊織が場を取りなそうとしたその瞬間、彼女の心と感情が響き渡り……。そして、その日を境に永瀬伊織は変わってしまった――。
 愛と青春の五角形コメディ、岐路と選択の第4巻!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


略称が一向に浸透しないココロコ第4弾。

傑作。

この感想を書くときに、一言目を考えるだけで30分以上かかりました。
様々な感情が入り乱れ、圧倒され、のみ込まれてしまいます。
哀しくて、切なくて、苦しくて、潰れてしまうほどに重くて辛い。
優しくて、暖かくて、眩しくて、妬んでしまうほどにみんな輝いている。

とても一言では言い表せませんが、あえて言うならば。
最高に素晴らしかったです。

前回ラストで覚えた不吉な予感は当たり、物語は冒頭からシリアスに展開します。
またしても<ふうせんかずら>によって、異常現象に巻き込まれることになった文研部の5人。
時間退行現象】と比べると、周囲への影響度は少ない内容だった……はずが、どうも伊織の様子がおかしい。
幾度の危機を乗り越えて強固となっていた絆も、一度ひびが入ると音を立てて崩れていった――という導入です。

同じ内容を繰り返しているだけという意見もあるそうですが、個人的にはそうは思いませんでした。
これまで温めていた伏線を解放させ、更に奥深いところを突いた内容になっています。
ひたすら登場人物の心を研ぎ澄ませることで、洗練された想いが文章に乗せて入り込んできます。
皮がめくれるようにして余分な理屈を落としていった結果、最後に残った剥きだしの感情は、あまりにも当然で、大切で、そしてピュアなものでした。

隠しておきたい気持ちや、伝えるつもりのない言葉がダイレクトに届いてしまう状況は、深刻です。
いかに人がオブラートに包んだ会話をしているか、再認識しますね。
容赦のない言葉がグサグサ刺さり、もう目をそむけたいと何度思ったことやら。
想像以上にキツイよ、これは。

しかし、そんな状態でも日常を続けようとする太一たちの強さに恐れ入ります。
仲間のピンチにも即駆け付けようとしたり、信頼に応えたり、成長ぶりが半端じゃないですね。
太一にしろ青木にしろ唯にしろ、高校生でここまで考えることができれば、十分立派ですよ。

確かに、青臭いにも程があるんだけど、それがもう嫌味でも何でもなく実に爽快です。
浮足立った己の行動に恥ずかしがる彼らを見ていると、こちらまでこっぱずかしい気持ちになります。
異常現象に比べると小さなコトなのかもしれませんが、思春期の高校生にとっての恋愛を含む人間関係というのは、人生の全てだと感じたりするものです。
生々しいティーンエイジャーの苦悩が痛々しく伝わってきて、ほろ苦くて仕方ありません。

今回の主役である伊織の心情は、物凄く共感できました。
これまでの現象の中で、自分が当事者になるならば最も嫌なものだったということもあり、伊織の精神が壊れていくのも止むなしかなぁと思いましたね。
まぁ、今回の事象についてはキッカケでしかありませんでしたけど。
上辺だけの造形ではなく、一人の少女として掘り下げていて、人間的に非常に好感が持てます。
何となく1巻の頃の、後ろ暗いことばかり考えていた稲葉んを思い出しましたね。

そして、その稲葉ですが……可愛すぎて悶え転げました。
何なのこの娘、萌死させる気ですか、そうですね。参りました。
クーデレだったはずなのに、もはやデレデレで、ニヤニヤを通り越して何だか叫ばずにはいられません。
現象が起きずとも、感情が漏れ出しまくっていて、慌てふためく姿に萌えまくりです。
その一方で、友として伊織の力になりたいと立ち上がる様は、格好良すぎる。
伊織も好きなんですけど、稲葉んの破壊力の前には霞んでしまいそうですよ。
これは惚れる。

時折挿入されるコメディも、笑いのツボを付いていて、完成度の高さに唸らされます。
藤島麻衣子や太一の妹など、脇役のキャラが立っていて、瞬間的にも目が離せません。

ぬくもりが伝わってきそうなイラストも、華があっていい。
雰囲気を表現する口絵は、実にお見事です。
何故かモノクロになると表情が薄くなったりしますけど、絵柄は悪くありません。

5人の友情が素敵で、青春系ライトノベルとしては言うことなしですね。
読了感も心地良く、本当に素晴らしい。
ドラマCDを購入したのも、今巻が良すぎたためです。
漫画も良い出来ですし、今後のメディアミックス展開も期待してしまいますね。

ココロが擦り切れていく少女と、手を差し伸べる仲間達の友情物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ココロコネクト  庵田定夏  白身魚  評価A 

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ココロコネクト カコランダム  

ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫)ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫)
(2010/09/30)
庵田 定夏

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読書期間:2010/9/30
月間マイベスト作品

【評価……A
発想 ★★★★★★★★★ … 9
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
青春
構成




 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8





 終業式、文研部のメンバーは謎の文字を見つけた。「永瀬・稲葉・桐山・青木」、そして「12時~17時」。誰が書いたのか、意図すら分からず、首をひねる五人。だが彼らは12時に、信じられない光景を目にする。子供に戻った伊織と唯、二人は身体と精神が幼くなっていて……!?
 17時にピタリと止まる奇妙な条件、姿を現さない<ふうせんかずら>、そしてただ一人現象が起こらない太一に、謎の影が忍び寄る――!
 愛と青春の五角形コメディ、大波乱の第三巻!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


略称が「ココロコ」に決定したらしい、シリーズ第3弾。
なーんか、しっくり来ないんだけど、でも他に名案もないか。

いいなぁ、このシリーズ本当に素晴らしいわ。

キャラ良し、ストーリー良し、設定良し、イラスト良し。
ラノベとしては隙がないといっても、決して大袈裟ではない高水準の仕上がりとなっています。
素直に面白いという言葉が出てきますよ。

今回は、身体と精神が幼くなってしまう時間退行現象が文研部に降りかかります。
しかし、何故か太一だけが現象を免れていたり、<ふうせんかずら>が出てこなかったりと、いつもと違う様子。
これまでと異なり肉体的に変化が伴うため、他者からの目を今まで以上に気をつける必要があるのだけど、そんなときに限って問題は発生してしまうもので、壁にぶち当たりながらも大切なことに気付いて行く青春ストーリーとなっています。

発想ありきのギミックのため、細かいところは矛盾があるかもしれません。
しかし、この作品においては、そこは重要ではありません。
超常現象が主題なのではなく、巻き込まれた5人の絆と成長がテーマだからです。
異常な状態に置かれることで見えてくるココロは、擦り切れて痛いのだけど、奥底に眠る想いはすっごい熱いんですよ。

テーマがぶれずに一貫して描かれているため、メッセージ性が強く物凄く読みやすいのも特徴かな。
重たい過去に負けず、現在を見つめ直す面々が格好良すぎます。
特に、青木桐山の二人の成長には、鳥肌が立つぐらい痺れました。
背中を押してくれる仲間がいることに感謝し、だけど最終的には自分の力で乗り越えてしまう彼らには、尊敬してしまいますね。
文研部の信頼関係の厚さは、眩しすぎて羨ましくなりますよ。

出番は少なめだったかもしれませんが、太一伊織稲葉の三角関係が随所に見られたのも良かった。
吹っ切れた結果、冷静な振りしてデレる稲葉んの過激な台詞は反則的すぎます。
腹を括った彼女のアプローチは、太一でなくとも刺激が強すぎるわw

興味深いことに、一見複雑そうな稲葉はハッキリしていて、分かりやすい性格に見える伊織が難儀な思考をしているんですよね。
どちらも好きだけど、稲葉はいかにも二次元キャラって感じはする。
伊織がリアルかと言われると、そうでもないんだけどね。
1巻で浮き彫りとなった伊織の性格については、まだまだ根が深そうです。

青木に男として格好良い場面を奪われまくった太一は、前回までの反動か、小休止でした。
主人公無双になるよりも、こういう回があったほうが感情移入しやすいので、悪くないと思います。
前回の欲望解放での反省をしっかりしていて、ちゃんと前進しているのも目に見えましたしね。

白身魚さんのイラストは、作風との融合具合が素晴らしく、脳内再現が容易かったです。
白バックに女の子の表紙が多いラノベで、ちゃんと背景を描き込みつつ、和やかな雰囲気を表現しているのは、もっと評価されていいんじゃないかなと思いますね。
冬場に上着を脱いでいる桐山に寒くないのかというツッコミはしたいところですが。
ああ、それと幼女化した伊織と姫子ちゃんは可愛かったです。

晴れやかな気持ちで終わると思いきや、何やら怪しげな空気が残っていますね。
シリアスな展開になりそうな予感。

助けを請う強さと、自らの殻を破る強さは別物だということを教えてくれます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ココロコネクト  庵田定夏  白身魚  評価A 

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とある飛空士への恋歌3 

とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)
(2009/12/18)
犬村 小六

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読書期間:2010/7/7/~2010/7/12

【評価……A
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
燃え
感動
緊張感
ギャグ


 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
 … 2



 8月の強烈な日射しのもと、過酷な陸戦訓練を続けるカルエルたち。戦闘への不安と焦燥が募る中、それは若き飛空士たちの間に恋愛をも育んでゆく。
 そして、イスラはついに噴き上がる海「聖泉」へ到達する。これより先は「空の一族」が支配するといわれる未知の空域。カルエルたちは、イスラ後方への索敵飛行を余儀なくされるが――。
 「いつまでもみんなと一緒に空を飛びたい」
 ただそれだけを願った少年少女たちが飛ぶ空は、美しいだけでなく残酷で……。王道スカイ・オペラ「飛空士」シリーズ、驚愕と慟哭の最新刊!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


空に浪漫を抱く少年少女の物語、第3弾。

ボロ泣きした。

本を読んで、ここまで涙を流したのはいつ以来だろう。
涙ぐみことはあっても、とめどめなく泣いたことは数える程しかありません。
涙腺が崩壊して、泣き疲れました。

もうね、読了直後はまともに感想文なんて書けないくらい感情に整理が付かなかった。
今、思い返してみても哀しみで胸が締め付けられそうになります。

それぐらい、ツボに入りまくった話でした。
凄すぎて、あまり読みかえしたいとは思えないですね、これは。

こういっては何ですが、ストーリーはフラグや伏線があからさまで、次の展開は常に読めます。
しかし、不安に煽られながら読ませる技術といいますか、文章力が凄い。
脇役一人を取ってみても、切実なる想いが文字通り痛いほど伝わってきます。
名もなき正規兵や指揮官のセリフに幾度も全身を痺れさせられました。

だからこそ、惜しい。
明らかに浮いている設定や人物がいるのが散見されしまうのが、あまりにも勿体無い。
前半の平和な場面を表現するのはいいんだけど、アリーメンはやりすぎた。
別にギャグが面白くないとはいいませんが、この作品には相応しくなかった。
多分、普通のコメディ作品なら素直に楽しめていたんだろうなと思います。

寮長の存在も異質すぎて、受け付けません。
もう少し、どうにかならなかったのだろうか。
下手すると、それが引っかかって、せっかくの感動が全て消え去りかねませんでしたよ。

そんなgdgd気味の前半を乗り越えた先の後半の第3章、第4章はともに素晴らしかったです。
特に第3章は、完璧でした。
基本的にそれ以上がないという意味になってしまうので、本の感想では出来るだけ「完璧」という単語を使わないようにしていましたが、こればっかりは言わざるを得ません。

「追憶」では、空戦に浪漫を感じられずに熱くなりきれなかったと書きました。
今回これだけ感動させられたのは、中心にあるのが飛空機ではなく人だったからなんだと思います。
のめり込む様に燃えました。

イラストも、挿入するタイミング含めて文句なしでした。
まさか、キャラが登場しない挿絵に打ち震えることになるとは思いもしませんでしたよ。

読了後の脱力感は、言葉で表すのが難しい。
とにかく、心が消耗させられる回でした。
ホント、疲れましたよ……。
こういう話、弱いわ。

平穏な日常の終わりを告げる急転直下な転換期

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への恋歌  犬村小六  森沢晴行  評価A 

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空ろの箱と零のマリア4 

空ろの箱と零のマリア〈4〉 (電撃文庫)空ろの箱と零のマリア〈4〉 (電撃文庫)
(2010/06/10)
御影 瑛路

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読書期間:2010/6/11
月間マイベスト作品

【評価……A
発想 ★★★★★★★★★ … 9
設定 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
構成
ミステリー
緊張感
完成度


 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 「ああ……分かったよ。僕が――僕が、『王』になってやる」
 クローズド・サークル『王降ろしの国』。中世風の職業に就き、一度の面談を介し行われるそのゲームの勝利条件は、他プレイヤーを殺して生き残ること――。つまりこれは、“殺し合い”にまみれた狂気のゲーム。
 その“騙し合い”のゲームから、未だ抜け出せない星野一輝。彼はついに、事態打開のため自ら“王”となるべく動き出す。カギとなるのは、トリックスターである大嶺醍哉。この空間を作り上げた“箱の所有者”はいったい誰なのか、一輝はついにその真実へとたどり着くが……。
 『王降ろしの国』完結編、登場!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


略称の可愛らしさと裏腹に、シビアな展開の連続である「はこマリっ!」第4巻。

これは凄かった。

作者の発想には、いつも予想を超えられるわけですが、今回は数えられないぐらい裏を突かれました。

しかし、少しでも語ってしまうと、ネタバレに繋がりそうなので難しい。
人数や空間が限定され、さらには縛れたルールの中で、どうしてこんなにも二転三転する物語を綴れるのか。
毎度のことながら、作者の腕には脱帽しますね。

このシリーズの感想を書くたびに言っていますが、ミスリードが自然すぎて全く気付けない。
いや、正確にいうと、予想をしたつもりが、作者に気付かされているだけなんですよ。
まさに作者の掌の上で転がされているかのように、右へ左へと揺さぶられます。
だから、いきなり死角から殴られたかのような衝撃を受けるわけなんですよね。
しかも、後から振り返ってみると、ちゃんと伏線を残していて、それが悔しさを倍増させます。
読者としては、当然騙されるたびにハードルを上げて、疑り深くなっているにもかかわらず、その上を行くのが凄すぎる。

醍哉が1つの策略に複数の意味を持たせる手腕見せていますが、これってそのまま作者への褒め言葉にも当てはまりますね。
幾重にも伏線を張ることで、物語に厚みをもたせています。

ここまで騙される理由には、文章の巧さがあるんでしょうね。
設定やストーリーだけで目先を変えても、そうは上手く行かないはずですから。
ライトノベルらしい読みやすさを残しつつ、強調点で文章の面白さを抽出してくれています。
言葉選びのセンスが抜群なので、ある種爽快な気分さえも味わえます。

たった6人しかいない世界で、生死をかけたゲームに挑む関係図が状況に応じて刻々と移り変わっていくのは、見応えありますね。
このメンバーの中では、一輝は決して頭脳では優位には立てないのだけれど、負けてもいないんですよね。
何というか、一人だけ別次元で戦っているかのような印象を受けます。
さすが“○”に興味を持つだけのことはあります。

唯一にして最大の欠点は、プレイヤーキャラ以外はNPCだと認識してしまうことで緊張感が削がれてしまうこと。
前回のラストで醍哉が告げたゲームルールとクリア方法のおかげで、リセット前提で読んでしまうんですよね。
クローズド・サークルとループ物の相性の悪さが出てしまったかなーという印象は拭えませんでした。
そういう意味では、ゲームの面白さは、前回の方が上でしたね。

解決後の「日常」シーンは、色んな意味で反則的な女の子たちばかりだった。
姑息だと思っていても、惹かれずにはいられない男心を弄びやがって……!
もっともっと積極的に誘惑してください、よろしくお願いしますっ。

無から創造し、未だ誰もが思いつかないような発想をもって話を作ることができたなら、もちろん評価されるべきです。
しかし、想像可能なはずなのに、巧みに答えを隠して予想を外させる技もまた同様に、凄い技術だと称賛されていいのではないかなと思います。
このシリーズおよび作者は、もっと評価されて欲しいですね。

幾重にも張り巡らされた伏線と登場人物の行動理由に驚かされます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  空ろの箱と零のマリア  御影瑛路  鉄雄  評価A 

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ココロコネクト キズランダム 

ココロコネクト キズランダム (ファミ通文庫)ココロコネクト キズランダム (ファミ通文庫)
(2010/05/29)
庵田 定夏

商品詳細を見る
読書期間:2010/6/10

【評価……A
発想 ★★★★★★★★★ … 9
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
青春





 ★★★★★★★★ … 9






 “人格入れ替わり”現象を乗り越え、太一たち文研部員はおだやかな日常を取り戻した。そんなある日の放課後、突如稲葉が太一に襲いかかる!さらに唯が見せた、机を叩き割るという過剰な行為。そして太一と伊織には奇妙な感覚が湧きあがった――体が、勝手に、動きだす?そんな矢先、太一は青木と唯が補導されたと聞かされて……!?再び現れた<ふうせんかずら>と新たな試練。それは五人の絆を打ち砕く!愛と青春の五角形コメディ、痛みと涙の第二弾!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


1巻が面白くて、思わず勢いで読んでしまったココロコネクト、第2巻。

これもまた文句なしに面白かったです。

人格入れ替わりは終結し、平和な日常が戻ってきた文研部員たち。
しかし、穏やかな日々は長くは続かず、またしても奇妙な現象に巻き込まれてしまう。
今度の現象は、その瞬間の欲望を抑えきれずに行動に移してしまうというもの。
相手を思いやり心の内側に留めていた言葉を、歯に衣を着せない言い方で放ってしまい、お互いに傷つけあう太一たちは、果たして乗り越えられることができるのか?……というのが主な内容です。

入れ替わりの設定ありきの1巻が終わり、2巻はどうなるのかと多少不安でしたが、杞憂でしたね。
前回で各キャラの悩みを解決させたように見せておいて、それを土台から引っくり返す手法に感心させられました。
うーむ、程度の差で納得させた背景があるため、理性が効かない欲望解放のヤバさがなお伝わってきますなぁ。

特に太一の思考回路の危険性がモロに出たのは良かった。
傲慢とも言える行動に、太一自身が身を持って体験して気付けたのは、幸運だったのではないでしょうか。
頑固な性格だから、痛い目に遭わないと、人からの言葉だけでは耳を貸さないだろうし。
主人公として、彼の成長が見てとれて、嬉しい気持ちになりました。

しかし、そんな建前が吹っ飛ぶぐらい、稲葉んが可愛すぎた。
そつなくこなす完璧キャラだと思いきや、内面の脆さが乙女チックすぎるわ。
ギャップ萌えの破壊力をまざまざと見せつけられた。
もうね、太一視点のラスト一文には、激しく同意せざるを得ないってもんですよ。

そんな稲葉と向き合う伊織や、唯を救おうとする青木の格好良さにも惹かれました。
仲間同士で傷つけあいながらも、助け合って一緒にいようとする彼らの姿も眩しいのなんの。
いやはや、青春だなー。
楽しい気分を分け与えてもらいつつも、鬱な気分になるくらいに羨ましい。自分で言ってて意味がわからん。

太一と伊織のカップリングが一番好きでゴールして欲しいと思いつつも、稲葉んにも純情な乙女モードを継続してもらいたいと思う自分は、結構酷い人間だと自覚しています。
この三角関係が、どう発展していくのか。
今月末の3巻の発売が待ち遠しいです。

唐突に欲望に忠実になる現象が起こることで、仲間同士で傷つけあうことになる青春物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ココロコネクト  庵田定夏  白身魚  評価A 

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ココロコネクト ヒトランダム 

ココロコネクト ヒトランダム (ファミ通文庫)ココロコネクト ヒトランダム (ファミ通文庫)
(2010/01/30)
庵田 定夏

商品詳細を見る
読書期間:2010/6/9~2010/6/10

【評価……A
発想 ★★★★★★★★★ … 9
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
青春





 ★★★★★★★★ … 9






 文芸部に所属する五人、八重樫太一・永瀬伊織・稲葉姫子・桐山唯・青木義文は、奇妙な現象に直面していた。
前触れなく起こった青木と唯の“人格入れ替わり”。
それは次々と部員全員に襲いかかり、彼らを異常な日常に放り込む。
戸惑いつつもどこかその状況を楽しむ太一たちだったが、心の連鎖は彼らの秘めた心の傷をも浮かび上がらせ……。
平穏が崩れたその時、五人の関係は形を変える!
 第11回えんため大賞特別賞受賞作品、愛と青春の五角形コメディ!!

【感想】


第11回えんため大賞<特別賞>受賞作品。

無茶苦茶面白かった。
今年読んだ作品の中でも、指折りの一冊だと断言できます。

5人の高校生たちが、突発的に人格が入れ替わる事態に巻き込まれる。
思春期真っただ中の彼ら彼女らには、当然ながら他人に言えない秘密がある。
しかし、この現象は彼らの事情など全く考慮に入れてくれず、事態はどんどん悪化していき……という展開。

ラノベに限らずとも、人格入れ替わりは創作の定番のネタです。
それだけ需要があり、好きな人も多いということなんでしょうが、だからこそ書き手は難しいはずです。
作品のオリジナリティを出したり、面白さを引き出すのに苦労するかと思われます。

ある意味定番であるがゆえに難しい設定ですが、この本では青春要素を融合させ昇華させるのに成功しています。
ラノベでは、もっぱらコメディやエロ展開が待ち受けている中で、等身大の高校生らしい悩みをシリアスに描いているところが比較的新しいところであり評価するべきでしょう。
普通に考えてみたら、中身が入れ替わると、日常生活でも問題続出でツッコミどころ満載のはずなんですよね。
作品自体のテーマから外れたり、焦点がズレてしまうため、対人関係ぐらいに留めていることが多いだけですし。

本作も、入れ替わりにおける人間関係が主題なのではなく、各々の苦悩を仲間同士で助け合う青春群像劇となっています。
自分にとっての深刻な悩みは、他人からすると大したことがないというのはよくある話ですが、人格入れ替わりという設定を巧く利用しつつ、説得力のある内容に仕上げているところは素晴らしかったと思います。
異なる観点からみると、真剣だった話が、笑い話に見えてしまうのは凄い。

主要人物の5人が、みんな魅力的で捨てキャラがいないのも良かった。
主人公の八重樫太一が、壊れかけた関係を何とかしようともがく様は嫌いじゃないなー。
自分のことを棚上げにして周囲を助けようとする主人公気質な行動は、確かに作中でも触れられている通り、度が過ぎていてモヤッとしてしまうところもあるんですが、必死に繋ぎとめようとする姿は格好良いと思いますね。

女の子達も、みんな可愛くて非常によろしい。
天真爛漫でノリのいい伊織も好きだけど、クールで知的でありながら腹黒い稲葉が際立ってキャラが立ってますね。
5人のリーダー的存在で、仲間からの信頼も厚い彼女の秘めたココロは、一番共感できました。

挿絵は白身魚さん。
絵柄が、某けいおん!に似ているということで話題になっていましたね。
容姿がムギの名前が唯というキャラがいるのは出来過ぎな気もしますが、雰囲気に合った可愛らしい絵だったので問題ありません。

実に良質な青春物語でした。
「空色パンデミック」といい「ココロコネクト」といい、えんため大賞のレベルの高さには驚かされます。
本作は、まず間違いなく今後のファミ通文庫の看板タイトルになると思いますね。

ココロが入れ替わる現象に巻き込まれた高校生男女5人の青春モノ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ココロコネクト  庵田定夏  白身魚  評価A 

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空ろの箱と零のマリア3 

空ろの箱と零のマリア〈3〉 (電撃文庫)空ろの箱と零のマリア〈3〉 (電撃文庫)
(2010/01/10)
御影 瑛路

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読書期間:2010/1/20
月間マイベスト作品

【評価……A
発想 ★★★★★★★★★ … 9
設定 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ミステリー
狂気




 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8





 「お前、“O”と関わっているだろ?」
 クラスメイト・大峰醍哉が、星野一輝に向かって発したその言葉は、新たな“箱”への入り口だった。
 気付けば一輝は音無麻理亜と共に、“騙し合い”のゲーム――『王降ろしの国』のプレイングルームにいた。中世風の職業に就き、一度の面談を介し行われるそのゲームの勝利条件は、他プレイヤーを殺して生き残ること――。つまりこれは、“殺し合い”にまみれた狂気のゲーム。
 “箱”に願い、この空間を作り上げた“所有者”の正体とは……?緊迫の第三巻!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


キャラクター同士の駆け引きが魅力的な「はこマリっ!」第3弾。
この略称はありだと思う。

いやはや、これは素晴らしい。
……って、この褒め言葉は倫理的にマズイ気がする。
とにかくまぁ、凄かったです、はい。

2巻ラストの引きが強烈で、待ち遠しかった今巻。
序盤は意外にもヌルい日常シーンが続き、それはそれで面白いラブコメ風でしたが、肩透かしを食らいました。
しかし、それも新たな“箱”である“怠惰なる遊戯”に一輝たちが取り込まれてからは、物語は急転。
強制的に参加させられた一輝たちに待っていたのは、殺し合いゲームという過酷なものでした。

密室の中に放り込まれた男女がゲームという体裁で殺し合いをする……というのは、よくある題材です。
かなり好みの設定なんですが、この作品には他ではあまり見られない特徴があります。

それは、登場人物全員が切れ者だという点です。
危機感の足りない人物がやられ役になるのが、この手のタイプではパターンとなっていますが、それがありません。
最初から油断を見せず、隙あらば生き残るために相手を陥れようとするものたちばかり。
レベルの高い駆け引きが、緊張感を伴って非常に面白い。

中盤からは、のめり込むようにして読んでいました。
必死に推理しながらページをめくる様は、まさに没頭中という言葉がピッタリだったかと思われます。
それでも裏をかかれて騙されたのは、1,2回では済みませんでした。
作者のリードの巧さには、惚れ惚れしますね。

キャラの思考を読者に理解させる独特のアクセントのある文章もやみつきになります。
たとえ共感ができずとも、別の考え方を持った人間がいるということを明確に教えてくれるのは何気に凄いことだと思うんですよね。

今回、閉じ込められた6人は全員キャラが立っていて好感が持てますが、その中でもお気に入りは生徒会長の新藤色葉かな。
いち早く特異な状況を判断して行動に移す姿は、個人的には物凄いシンパシーを感じられました。
普段はきっと明るくみんなから好かれる性格なんだろうなぁ。

大満足の一冊でした。
これまた気になるところで終わってしまっているので、続きが待ち遠しくてたまりません。

閉ざされた空間で、己の命を賭けた心理戦が熱い

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  空ろの箱と零のマリア  御影瑛路  鉄雄  評価A 

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ソードアート・オンライン1 アインクラッド 

ソードアート・オンライン〈1〉アインクラッド (電撃文庫)ソードアート・オンライン〈1〉アインクラッド (電撃文庫)
(2009/04/10)
川原 礫

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読書期間:2009/5/1~2009/5/3

【評価……A
設定 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
オススメ度 ★★★★★★★★
 … 9
SF ★★★★★★★★
 … 9
完成度 ★★★★★★★★☆☆
 … 8

クリアするまで脱出不可能、ゲームオーバーは本当の“死”を意味する――。
謎の次世代MMO『ソードアート・オンライン(SAO)』の“真実”を知らずログインした約一万人のユーザーと共に、その過酷なデスバトルは幕を開けた。
SAOに参加した一人である主人公・キリトは、いち早くこのMMOの“真実”を受け入れる。そして、ゲームの舞台となる巨大浮遊城『アインクラッド』で、パーティーを組まないソロプレイヤーとして頭角をあらわしていった。
クリア条件である最上階層到達を目指し、熾烈な冒険を単独で続けるキリトだったが、レイピアの名手・女流剣士アスナの強引な誘いによって彼女とコンビを組むことに。その出会いは、キリトに運命とも呼べる契機をもたらし――。
個人サイト上で閲覧数650万PVオーバーを記録した伝説の小説が登場!

【感想】


僕の中で、川原礫さんは名作家の一人だと認定することになった作品。
さすが、ネット上で何年も書いていた小説だけのことはあります。

面白過ぎる!
熱中し過ぎて、読了後は汗をかいてましたよ。

完成された仮想現実内で行われるMMO<ソードアート・オンライン>。
βテストを経て正式サービスが開始された直後、ログインした一万人のユーザーがゲーム内から出られなくなる。
閉じ込められた人々に告げられるのは、ゲーム内での死=リアルでの死という真実。
現実世界へ無事に帰還する唯一の脱出方法は、最上階に潜むボスを倒す他ない。
かくして本物の生死を賭けた冒険がここに始まります。

まぁ、身も蓋もない言い方をすれば、要するにラノベ版「.hack」シリーズみたいなもんです。

最初は好みの設定だなと思い、読み進めていくうちにキャラの魅力に取りつかれ、最後には物語に夢中になってました。
いやー、素晴らしい。
ラストは多少物足りなさを感じますが、きっとそれくらいがちょうどいいのでしょうね。
読み終えて息をついた時の充実感は、何物にも代えがたいものでした。

文章を読ませる技術は、相変わらず凄い。
これは、web公開という形で大勢の目により鍛え磨かれたからこそ身に付いたものなんでしょうね。
スムーズに流れてくる文章には、気持ち良ささえ感じられました。

大満足といって差し支えない内容でしたが、あえて難点を挙げるとするならば、登場人物の動機ですかね。
主人公・キリトの一人称で続く割には、前後の繋がりが甘い所が散見されるのが惜しかった。
これは「アクセル・ワールド」の時も同様だったのですが、キャラの心情が飛び石で進行していて、物語ありきの動かされている感覚がありました。
特にヒロイン役のアスナは、都合の良すぎる駒扱いだった気がします。
まぁ、アスナ可愛いから、それぐらい何でもないけどね!

「アクセル・ワールド」に比べて登場人物の癖はあまりないので、取っ付きやすさはこちらのが上かな。
ネトゲ経験者であれば、すぐに作品内にのめり込めるかと思われます。
精巧に作られた世界で、ほぼリアルと変わらないように見えて、しっかりとゲーム内のシステムにフォローされている描写を混ぜるのが巧いんですよね。
作者は、設定を練り込むのが得意なんだろうなぁー。
いい塩梅に主人公が厨二病(褒め言葉)で、ライトノベルの年齢層には受けの良い作品だろうなと思いました。

web公開限定ではおそらく読むことができなかった者としては、この本に出会えた喜びを感じずにはいられませんね。
綺麗に終わっているので、8月に出るという続編がどのような形になるのかは分かりませんが、期待は止まりそうにありません。

命の重みを実感させられるデスゲームの緊迫感が素晴らしい

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ソードアート・オンライン  川原礫  abec  評価A 

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BLACK BLOOD BROTHERS 10-ブラック・ブラッド・ブラザーズ 銀刀出陣- 

BLACK BLOOD BROTHERS10  ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 銀刀出陣― (富士見ファンタジア文庫)BLACK BLOOD BROTHERS10 ―ブラック・ブラッド・ブラザーズ 銀刀出陣― (富士見ファンタジア文庫)
(2009/04/20)
あざの 耕平

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読書期間:2009/4/18~2009/4/20

【評価……A
設定 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★★
 … 9
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
オススメ度 ★★★★★★★★★★
 … 10
燃え ★★★★★★★★☆☆
 … 8
期待感 ★★★★★★★★★★
 … 10

1997年。アリスやジローと共に香港に滞在するカーサは、リズと名乗る1人の吸血鬼と出会う。自分と同じ“混血児”のリズに衝撃を受けつつも、カーサは彼女にかつてない親愛の情を覚える。
月下で蠢き始めた、新たな“脈動”。アリスとジロー、そしてカーサにとっての百年の夜が、静かに終わりを告げようとしていた。
そして現在――2009年、シンガポール。各国の有力血族を迎えたミミコは、特区奪還の手応えを感じながら、待っていた。
たった一振りの剣。ミミコにとってただ1人の吸血鬼を。
「いつまで経っても、遅刻魔なんだから」
すべての未来を賭けた『聖戦前夜』が、今、最後の幕を開ける……!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


小説に限らず創作物に対して、言葉が出てこないほど感銘を受けることが偶にあります。
内心では、キリがないくらい語りたいと思っているのに、上手く言語化できないんです。
それは、それだけ作品に夢中になっている証拠なんでしょうね。

BLACK BLOOD BROTHERS」は、それが偶にではなく頻繁にあるから嬉しい。
この10巻も、素晴らしく良かったです。

▼聖戦前夜 ― 1997

10巻の内容は前半と後半で大きく分かれています。
前半の舞台は過去の香港。
あの「香港聖戦」が起こるまでの経緯が、カーサの視点で遂に明かされます。

カーサの葛藤が、苦悩が、ありありと綴られています。
もともとただの悪役ではなかった彼女ですが、こんな閉塞感に苛まれる姿を見たら、とても憎めません。
彼女の選択を誰が責められようか。
BBBにおいて、カーサは間違いなく主人公の一人だと改めて確信しました。

▼聖戦前夜 ― 2009

後半は、時間軸が戻って現代。
順調に特区奪還の準備が整いつつあるカンパニー。
しかし、そう簡単には事が進むわけもなく……。

カンパニー勢力は頑張っているとは思いますが、まだまだ先読みが甘いですね。
きっと陣内がいれば、こうも後手後手に回ることはなかったんでしょうけど。
まぁ、他にも役者は揃っていますしね。

我ら『賢者イヴ』の血族、現時点をもって宣戦する

神懸かっている帯のセリフより。
文中のセリフとは若干違うんですけど、実際に出てきたときは全身痺れました。

今回の話は、先がバレバレの展開でしたので驚きこそ少なかったですが、分かっていても燃えました。
ジローが格好良すぎて別人みたいでした。
まるで主人公みたいじゃないか!
ちょっとくらいヘタれている方がジローらしいと思ってしまうんだ、うん。

そういえば、表紙絵のジローもキマってましたね。
居合の構えや鋭い眼光がカッコイイ。
10巻の草河さんの絵はイラストによって質の差が激しかったのが残念ですが、表紙やラストの絵は素晴らしく良かったです。

◆残すところは最終巻のみ!

クライマックスへ向けて、とうとうカウントダウンが始まりました。
ジローも、ミミコも、コタロウも走り出したらあとは最後まで突っ走るしかありませんよね。

『九龍の血統』の面々は果たして生き残れるのか。
因縁の対戦カードは、いくつ実現するのか。
そして、カーサは救われるのか。

期待値の上昇が止まらない内容でした。

遂に明かされる過去の経緯に胸が詰まります

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  BLACK_BLOOD_BROTHERS  あざの耕平  草河遊也  評価A 

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アクセル・ワールド1 ―黒雪姫の帰還― 

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)
(2009/02)
川原 礫

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読書期間:2009/2/13~2009/2/15
月間マイベスト作品

【評価……A
設定 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
オススメ度 ★★★★★★★★
 … 9
SF ★★★★★★★★☆☆
 … 8
完成度 ★★★★★★★★
 … 9

どんなに時代が進んでも、この世から「いじめられっ子」は無くならない。デブな中学生・ハルユキもその一人だった。
彼が唯一心を安らげる時間は、学内ローカルネットに設置されたスカッシュゲームをプレイしているときだけ。仮想の自分を使って≪速さ≫を競うその地味なゲームが、ハルユキは好きだった。
季節は秋。相変わらずの日常を過ごしていたハルユキだが、校内一の美貌と気品を持つ≪黒雪姫≫との出会いによって、彼の人生は一変する。
少女が転送してきた謎のソフトウェアを介し、ハルユキは≪加速世界≫の存在を知る。それは、中学内格差の最底辺である彼が、姫を護る騎士≪バーストリンカー≫となった瞬間だった。
ウェブ上でカリスマ的人気を誇る作家が、ついに電撃大賞<大賞>受賞しデビュー!実力派が描く未来系青春エンタテイメント登場!

【感想】 

第15回電撃小説大賞にて栄えある<大賞>を受賞した作品。

最初にあらすじを読んだとき、SF色が強そうで個人的な好みとはかけ離れた印象を受けました。
表紙のイラストが半裸の女の子なのも何だか手に取りづらくて、正直なところ、この本の第一印象はかなり悪かったです。
迷いながらも買うことにしたのは、<大賞>を受賞するくらいなんだから、きっとそれなりに面白いんだろうなーと意図があったからで、あまり期待していませんでした。

ごめんなさい、僕が間違ってました。

メチャクチャ面白かったです!
確かに取っ掛り辛い本ですが、設定を理解し始めると夢中になって、貪るように読んでしまいました。

自分が超高速で思考することができる≪力≫を手に入れたら……と考えたことは男なら一度は誰でもあるんじゃないでしょうか。
そんな男子中高生の妄想をそのまま書き連ねたかのような内容です。

この≪加速世界≫の設定が、自分のモロ好み。
選ばれたものだけが、1000倍の速度で思考できる≪加速世界≫に接続可能というルールに惹かれました。

その力に目覚めるのが、デブで卑屈な性格をコンプレックスとして持っている主人公・ハルユキというのも良かった。
いわゆる、いじめられる側であるハルユキは、実に人間味溢れるキャラで、とても共感できます。
確かに人を信じる心が足りていないところはヤキモキしますが、決して頭が悪いわけではないんですよ。
そんなハルユキが、精神的に成長していく様が見ていると、子どもの成長を喜ぶ親の気分にでもなったようでした。
ただ、この後ろ向きな性格は、イジメはいじめられる側に大きく問題がある、と考える人には合わないかもしれませんのでご注意を。

ストーリーは王道なんですが、文章が非常に面白く読ませてくれるおかげで飽きるどころか楽しさが加速していくばかりです。
ラストの締め方も爽快で、ケチのつけようがありません。

もともと著者はオンライン小説界隈では有名な方だったそうです。
この「アクセル・ワールド」も最初は別名でweb公開していたらしく、電撃大賞で受賞し商業化されるにあたってネット上では削除されたとか。
道理で新人とは思えない完成度だと思いました。

最初は抵抗を感じていたイラストも、読み進めていくと、これしかないと思えるくらいに合っていて参りました。
表紙と同様に挿絵にも無駄にエロティックなところはありますけど、それもまた良し。
ヒロインの黒雪姫先輩が可愛かったです。

時々こんな本に出会えるからラノベ読みはやめられません。
さすがは大賞作品といったところでしょうか。
全力で追いかけたくなるシリーズが、また一つ増えましたね。

一瞬で物事を判断できる力があったらと妄想したことがある人はハマる確率大

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  アクセル・ワールド  川原礫  HIMA  評価A 

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とらドラ9! 

とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)とらドラ!〈9〉 (電撃文庫)
(2008/10/10)
竹宮 ゆゆこ

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【評価……A
舞台 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
オススメ度 ★★★★★★★★
 … 9
リアリティ ★★★★★★★★
 … 9
青春 ★★★★★★★★
 … 9

修学旅行の冬の雪山で思いがけず大河の本当の気持ちを知ってしまった竜児。大河はそのとき事故によって意識朦朧となっており、しゃべってしまったことを覚えていなかった。そんな大河を前に竜児は態度を決めかねるが……。
そして高校二年も残りわずかとなり、竜児は進路をめぐって泰子と衝突。なにかと先の見えない五里霧中の竜児に、一方では実乃梨と亜美が本当のところを見せはじめる――。
超弩級ラブコメもいよいよ佳境に突入。目が離せない第9弾!

【感想】 <前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>

ラブコメ作品「とらドラ!」第9巻です。

だああっ、何だこの重苦しさは!

8巻で僅かに残っていたラブコメのコメディ部分が見事に消え去ってシリアス全開です。

学生時代にタイムスリップしたかのように、切なさが蘇ってきます。
誰しも避けて通ることはできない壁にぶつかる竜児が、昔の自分を見ているようで心が痛い……。
まさかライトノベルで、こんなに生々しい現実的な話と直面することになるとは思わなかったですよ。
何だか、登場人物たちの心情とシンクロしすぎていて、読んでいる間、溜息が止まりませんでした。
こうして感想を書いている間も、9巻の内容を思い出しては胸がえぐられるかのような思いになります。

◆キャラクター別感想

▼ 高須竜児
大河から見ても心配になるくらい終始悩みっぱなし。
恋愛関係だけに限らず、今回は進路の話まで絡んできて、精神的にかなり参ってます。
色んな感情が限界を超えて漏れ出している様は、高2の少年らしさが全面に出ていました。

そりゃあ大人から見ればガキだと一蹴されてしまいかねない物の考え方かもしれないけれど、現実に対して逃げずに真剣に考えようとしている姿勢は凄いと思います。
家事全般などを完璧すぎるほどにこなしている方が異常であって、この姿こそが年齢的に自然だと思うんですよね。
だからこそ、共感できるし、報われてほしいと願わずにいられません。
前向きに生きている実乃梨を見て、自分もそのように同じようになりたいと思うところなんかは素直に偉いなぁと思いますよ。
逃げ出したくてたまらなくて、死んでしまえば楽になるかなぁと馬鹿なことを考えていた自分と比べると、天と地ほどの差があります。

しっかし、進路って難しいですよねぇ。
社会に出てからでないと、どれが正解に近いルートなのかなんて分かりませんよ。
高校生で先を見据えて進むことができる人間なんて、一握りです。

そういう意味でも、竜児は立派だと思うんですけどねー。
泰子の言い分は今巻だけ見ているとあまりに勝手ですが、何となく言いたいことが分かるのは年を取ったからでしょうか。
でも、泰子は言葉が足らなさすぎでしたね。
もっと真面目に意見の交換を設けなければいけなかったと思いますね。


▼ 櫛枝実乃梨
あまりこう評したくはないんだけど、本当に強い娘だなと思います。
陰で泣いたり悩んだりすることはあっても、ひとたび決めたら迷わず突き進む姿は格好良いよなぁ、と。
みのりんの場合は、意志が強いを通り越して頑固者といった方が正しいような気もしますがね。

今回、みのりんが語った決意は全面的には納得できるというものではありません。
彼女にとっては無理な選択だったということでしょうが、両立は決して不可能だったものではないはずです。
みのりんの口から語られた本音には、潔さを感じる反面、読者である自分はそこまで気持ちが追いつけなかったなぁ。

まぁ、これはきっと人によって感じ方が違うんでしょうね。
7,8巻の流れでこれ以上引っ張るのは煮え切らないと感じる人もいるでしょうし。


▼ 逢坂大河
傍若無人な性格だったはずが、いつの間にかに作品一健気なキャラとなっていますね。
好きな人(竜児)を親友(実乃梨)とくっ付けようとせざる得ない立場なので、どうしても際立ちます。

大河の行動は、実乃梨に言わせれば「逃避」なのかなぁ。
しかし、恋と友情を天秤に掛けることはそんな間違いではないと思うんですよね。
確かに実乃梨の考え方は真理だとは思いますけど、そこまで求めるのは酷なのではないでしょうか。


▼ 川嶋亜美
亜美の心の叫びが哀しすぎる……。
竜児に対して、ようやく口を開いたけれど、肝心の自分の思いは未だ伏せたまま。
分かってほしいという気持ちは、決してエゴじゃないと思います。

竜児が鈍感ということもあるけど、亜美も攻撃的な態度しか取れないからなぁ。
お互いが似ているところを持っていると感じながらも、不器用な性格ゆえにもう一歩が踏み出せない二人をみていると、もどかしくてたまりません。
怖くて二の句が継げないは誰しも一緒のことなのにね。

ここに来て、自分の中では一番幸せになって欲しい人物となりました。
もともと芽がなかった亜美ENDも、今回事実上なくなったも同然ですしね……。

せめて、竜児には亜美の想いに気付いてもらいたい。
そして、軽くスルーせずにしっかりと悩んでもらいたい。
実乃梨ほど濃いものでなくてもいいから。


◆総評
本編が228ページ程度とは思えないぐらい、登場人物たちの想いがギュウギュウに詰まった内容でした。
竜児視点で進むにも関わらず、彼だけではなく大河や実乃梨や亜美の切なく苦しい想いが伝わってくる文章には感服します。

肉付けこそライトノベルですが、中身は等身大のキャラクターたちによる青春物語なので、リアリティが半端じゃありません。
高校生に是非とも読んで欲しい作品ですね。
アニメでは感じ取れない微細な心の動きなどが伝わってきますから、原作の方を強く推奨します。

ところで、作品中で一番まともな大人なのって独身(30)ではなかろうか。
あとは兄貴の両親ぐらいしかいないような気がする……。

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とらドラ!  竹宮ゆゆこ  ヤス  評価A 

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ミミズクと夜の王 

ミミズクと夜の王 (電撃文庫 こ 10-1)ミミズクと夜の王 (電撃文庫 こ 10-1)
(2007/02)
紅玉 いづき

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【評価……A
舞台 ★★★★★★★★★
 … 9
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
オススメ度 ★★★★★★★★★★
 … 10

魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。
額には「332」の焼印、両手両足には外されることのない鎖。自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。
願いはたった、一つだけ。
「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」
死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。
――それは、絶望の果てからはじまる小さな少女の崩壊と再生の物語。
第13回電撃小説大賞<大賞>受賞作、登場。

何という……。

なんて優しく、なんて美しいお話なんでしょうか。 


もう手放しで褒めちぎる選択肢しか残っていませんよ。
お見事。

ずっと読みたいなと思いつつも、ライトノベルらしからぬ雰囲気で実際に手に取るまでに時間がかかりました。
読んでみて、評判の良さに納得。
これは本当にお勧めしたくなる、素晴らしい作品でした。
絶賛したくなる気持ちもよく分かります。

正直、読む前までは不安でいっぱいでした。
これだけ各所で絶賛されているのを見ると、構えてしまって心の底から楽しむことできなくなる――いうことは「とある飛空士への追憶」でも経験したばかりです。
そういう例は個人的には珍しくなく、世間一般の評価とズレを感じることが多々あるんですよね。
それに加えて、ラノベとしては明らかに異質な作品というのが分かっていたので、読み始めるのに勇気が要りました。

最初の方は、そこそこ面白いけど言う程ではないなと感じていました。
このブログの査定でいうと、BからB+くらいの評価です。
それが中盤から動き出した物語に夢中になり、見る見るうちにこの世界にハマってしまいました。
読了後は、この話を読むことができて本当に良かったと満足感に浸ってましたね。

内容は、ライトノベル的童話とでもいえばいいでしょうか。
本来は子供に読み聞かせる童話を、大人でも楽しめるように作り、そこにライトノベルの要素(具体的には剣や魔物や魔術といったもの)を仕上げに少量まぶしたようなものです。
それにより小学生から大人まで幅広くお勧めできるため、良い意味でラノベらしくないですね。
これならオタクっぽさも皆無なので、一般人(笑)にもこんな本を読んでいるんだと打ち明けることできますw
逆にいえば、ラノベの毒気がないので、ラノベ読みの人の中には好みから外れていると感じる人がいるかもしれません。

ストーリーは、凄惨な過去を持つ少女・ミミズクと魔物の森を統べる夜の王の心の触れ合いが描かれています。
人間社会で精神がボロボロになるまで破壊されたミミズクは、魔物に食われたい願望を持つようになり、魔王である夜の王に自分を食べてくれと申し出るけれども……といったところからお話は始ります。

ミミズクが人間らしい感情を取り戻していく姿には素直に感動を覚えます。
登場する魔物も人間もみんな優しい心を持っていて、温かい気持ちにさせてくれますね。
驚くぐらいイイ人ばかりで、嫌いなキャラが1人もいません。

物語の捻りに関しては甘いかもしれません。
先の展開や、最終的な着地点などは途中から薄々感じてしまいます。
それでも、最後まで読んで良かったと思えるのは、とても素敵な物語だからでしょうね。

あと、ライトノベルとして異色である点がもう1つ。
この作品は口絵も挿絵も一切ありません。
御影瑛路さんの作品以外では、この『ミミズクと夜の王』くらいではないでしょうか。

唯一あるのが、表紙のイラスト。
独特なタッチに見覚えがあるなと思っていたら、イラストレーターは聖剣伝説のイラスト描いている方でした。
この起用はビンゴで、作品の雰囲気とマッチしていて素晴らしかったです。

発売されてもう1年以上経っていますが、まだ未読の方は是非読んでみてください。
読書が習慣でない人にも読みやすい切り口なので、強くプッシュしておきますよ。

またいつか絶対にもう一度読み返そうと思わせてくれる、素敵な本でした。

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  ミミズクと夜の王  紅玉いづき  磯野宏夫  評価A 

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とらドラ6! 

とらドラ! 6 (6) (電撃文庫 た 20-9)とらドラ! 6 (6) (電撃文庫 た 20-9)
(2007/12/10)
竹宮 ゆゆこ

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【評価……A
舞台 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
オススメ度 ★★★★★★★★
 … 9
ラブコメ ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
青春 ★★★★★★★★
 … 9

文化祭以後、少し距離が縮まったような竜児と実乃梨。一方、学校内には大河と北村が付き合っているという噂が流れる。そんな中、迫る生徒会長選挙でも本命と目される北村は突然……グレた。
それに対して、突き放すような態度をとる現・生徒会長のすみれ兄貴。やたらと攻撃的な幼馴染の亜美。心労で老けていく独身。
竜児と大河は北村がグレた原因を突き止め、立ち直させようと奮闘するが……。すべてが白日のもとにさらされたとき、大河がとる選択は?。
波乱ぶくみの超弩級ラブコメ第6弾!

<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>

やられた。

……という一言がため息とともに出る、とらドラ!第6巻です。
こんな胸が熱く焦がれるほど怒涛の展開を見せられるとは想定外でした。

正直、読んでいる途中まで舐めていました。
いや、もちろん面白いなーと思ってはいましたが、中盤まではノンビリした雰囲気で進んでいたので気を抜いてました。
それまでのだらけ気味のムードが、記憶の彼方へと飛び去るくらいに終盤の畳み掛ける展開は凄かったです。

どうして、人って不器用なんでしょう。
思春期の学生は特にそう。
もっと上手く立ち回りたいと思っているのに、どうしてそのように動くことが出来ないんだろう。
読了直後は、そんなことを考えずにはいられない精神状態になります。
心が、胸が、息苦しくなるくらいに切ないです。

誰もかもが迷い悩み生きているというのに、自分だけが苦しんでいるかのように錯覚する。
恋はエゴの塊というけれど、それに気づいた時は自己嫌悪に陥る。
誰が正しくて、どの選択が正しくないのか――そういった話ではないのを知りながらも正解を探そうとして、でも当然ながら答えは見つからなくて。

まさにそんな青春時代の、胸が張り裂けそうなくらい痛い想いを、これでもかと思い出させてくれる素晴らしい本でした。
久々ですよ。この感覚。


■ 物語
さてさて、大絶賛な今回の感想を仕切り直し。
今まで主役たちの中において、地味な存在だったと言わざるを得ない北村にとうとうメインの座が舞い込んできた回です。

まさか北村の話でここまで盛り上げてくれるとは思わなかったです。(←失礼)
いやぁ、だってあの露出狂だよ?シリアス似合わないじゃんw

そんな感じで読み進めて、途中までは予想通りに話が進みました。
「とらドラ!」って、ストーリーに意外性はあまりなく「登場人物の心情を段階を踏んで丁寧に描くラブコメ」という認識なので、良くも悪くもいつものノリで面白いなと思っていました。
それが油断だったんです。
まさか、残りページ数が少なくなってきた段階で、あそこまで魅せてくれるとは。

後から冷静に考えれば、十分予想できる展開だったと思います。
しかし、それをさせないだけの勢いや、盛り上がりの強弱の付け方が秀逸で、考えさせる暇を与えていません。
多少強引すぎるように感じる人もいるかもしれませんが、これまでのキャラクターの動きを見ていたら、それぞれの行動は深々と頷けるほどに納得がいくものだと自分は思いました。


■ キャラクター
登場人物たちがこれほどまでに熱い想いを抱いているのを見ると、羨ましくなりますね。
それこそ夜空に輝く星のように眩しいくらいに。
この6巻を読んでいる間、たびたび高校時代を思い出してしまいましたよ。

竜児も大河も、本当に「いい奴」だよなぁって思います。
友達のために泣くことができて、友達のために行動に移すことができるところが素敵です。
若さゆえに多少の過ちは犯すときもあるけれど、それは純粋な心を持っているが故にだと思いますね。

純粋な心を持っていたのは北村も同じですね。
何でもそつなくこなすイメージがありましたが、年相応の優柔不断な一面もあったことに親近感が湧きます。
北村やすみれ兄貴だって、まだまだ未熟な高校生であることを痛感しました。
とても自分には、二人を責められません。
どんな時にでも現実に立ち向かっていける人なんて、一握りしかいないんですから。

今回は、どちらかというと出番の少なめだったみのりんは、その代りに伏線が多く張られてましたね。
竜児への微妙な想いが漏れ出しているのを見ると、みのりん派としては嬉しいものがあります。
ただ実乃梨自身は、大河との兼ね合いもあって、それを素直に受け止めたくないんでしょうね。
これが初恋だと、恋に臆病になってしまうのも致し方がないよなぁ。

亜美の損な役回りレベルがさらに上昇していて、見ているこちらまで辛くなってきます。
前巻で竜児や亜美自身が言っていたように、一人だけ先に大人の階段を昇っている姿がよく目に止まりました。
彼女がいなかったら、いろいろな大切なモノがもっと早くに壊れてしまっていたでしょうに、そのことに気付いている人物が少なすぎる。
それでも完璧超人ではないために時に見せる綻びが、さらに彼女を苦しめていて、誰か手を出し伸べてやってくれと思わずにはいられません。
できれば、それが竜児だといいんですが……そこまで周り見えてないからなぁ。


■ 総評
中盤のgdgd感も「望んだとおりにならないのが人生」というのを表していて、最終的にはプラスに感じられたのは良かったと思います。
締め方が酷く切ないもので、読了後も余韻がしばらく残りました。

もはやこれはラブコメではなくなりつつありますね。
コメディパートも面白いけど、それ以上に恋の行方が気になって仕方ありません。
青春モノとしては、今一番熱いシリーズでしょう。
もしこれ以上にホットな作品があるのであれば、教えてほしいですね。読みたいのでw

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とらドラ4! 

とらドラ! 4 (4) (電撃文庫 た 20-6)とらドラ! 4 (4) (電撃文庫 た 20-6)
(2007/01/06)
竹宮 ゆゆこ

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【評価……A
舞台 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★★
 … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
オススメ度 ★★★★★★★★
 … 9
ラブコメ ★★★★★★★★☆☆
 … 8
青春 ★★★★★★★★
 … 9

夏休み、みんなで亜美の別荘に行くことになった竜児と大河。この機会にそれぞれ好きな人との距離を縮めたい二人だが、共倒れを避けるため一方は完全サポートにまわることに。それを賭けて二人は勝負するが――。
そして舞台は海辺の別荘へ。場所は違えどもやっぱり暴れる大河、はじける実乃梨、真意の読めない亜美。そんな中、竜児と大河はとある作戦を敢行するが、はたしてその顛末は……?
絡まりはじめた互いの関係に要注目。大好評の超弩級ラブコメ第4弾!

<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>

とうとう奴の出番がやってきた。
彼女こそ櫛枝実乃梨、通称みのりん
というわけで、みのりんのピースサインがビシッと決まった表紙が目印の「とらドラ!」第4巻です。

何という青春ッ……!!

この甘酸っぱくも切ない物語は、ただのラブコメと油断していると一杯喰わされますぞ!
こんな青春を送りたかったと思わない人は……リア充ですね。そうに決まってます。

3巻のラストで予告していた通り、今回は「夏休み・別荘旅行編」です。
高校生だけで男女混合の旅行なんてけしからんことをしておいて、何も起こらないはずもなく……。
そうでなくても、このメンツだといつ何が勃発してもおかしくありません。

誰が何と言おうと、今回は激しくみのりんのターン!ですよ。
今まで要所でしか登場することのなかったみのりんの魅力がたっぷりと描かれています。

みのりんのように天然を装いつつボケて自分の本心を隠すタイプの人間って、実際にいますよね。
そのためか、今回のみのりんはすごくリアルに感じられました。
自分の中で、櫛枝実乃梨像が固まったような気がします。

「幽霊」の話は、思わずしんみりとさせられました。
言われてみれば確かに今までの態度もそのように感じられますが、みのりんはそんなことを考えていたんですねぇ……。
また文章的にも上手くて、今巻の中でも最も印象的なシーンとして記憶に残りました。

伏せられていた心情を垣間見ることができるのはみのりんだけではありません。
亜美も竜児に対してメッセージを投げかけています。
みのりんと比べると直接的なその問い掛けは、竜児を通り越して読者の心にまで届きます。
寂しいと亜美自身は考えていないからこそ、亜美の孤独さに悲痛な思いを感じてしまいますね。

竜児と大河とその他キャラという分類が可能だった前回までと違い、みのりんと亜美にスポットライトが当たった今回から、主役が2人ではなく5人の物語に変わったと言えますね。
登場人物を限定させることで、キャラクターを深く掘り下げて描かれているのは良かったと思います。
北村だけがちょっと浮いちゃっているところがありますが、大河との関係は1巻の時点で決着がついちゃってると言えなくもないですし、致し方がないですね。

また、イラストが巻を重ねるごとに明らかにレベルアップしているのもポイント高し。
みのりんの赤いカラーと、亜美の青いカラーが対照的に映えていていい感じでした。

もう既に現時点での最新刊8巻まで読了済みなんですが、『とらドラ!』にここまで完璧にのめり込む形となったのは、紛れもなくこの4巻を読んでからですね。
みのりんと亜美とっては、振り返ってみると転換期だったと言えなくもないかな。
個人的にも、二人の好感度が急上昇した内容でした。

最後に、ニヤニヤさせてもらったお気に入りのセリフを反転して置いておきます。

「きゅ……きゅしえだぁ!」
「なんだい!たきゃすきゅん!」

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