龍盤七朝 DRAGONBUSTER 01
2008/10/01 Wed 06:16:10 [edit]
![]() | DRAGONBUSTER 1 (1) (電撃文庫 あ 8-13 龍盤七朝) (2008/05/10) 秋山 瑞人 商品詳細を見る |
【評価……B+】
舞台 ★★★★★★★★☆☆ … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
文章 ★★★★★★★★★★ … 10
挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
オススメ度 ★★★★★★★★☆☆ … 8
世界観 ★★★★★★★★★☆ … 9
期待感 ★★★★★★★★☆☆ … 8
虐げられる民“言愚”の青い目を持つ涼孤は似顔絵描きと構武所の下働きで糊口をしのぐ。かつて胡同の闇の中で、素性の知れぬ老婆より剣を習い、双剣を授かる。 卯王朝、第十八皇女の月華は屋敷を抜け出しては市井を探検する。感情が高ぶると地団駄を踏みながらぐるぐる回る癖がある。 涼孤はどぶ川の畔で双剣を持ち“龍を呑む”。月華はそれを目撃し―― 「妾も剣をやるっ!」 鬼才・秋山瑞人が贈る、剣をめぐる物語。古橋秀之とのコンビによるシェアワールド企画“龍盤七朝”第一弾登場! |
「ミナミノミナミノ」以来、約3年半振りとなる秋山瑞人氏による新作。
個人的には「イリヤの空、UFOの夏」の4巻以来となるので、実に5年振りぐらいに著者の本を読んだことになります。
もう何というか、「流石!」の一言に尽きますね。
最初の数行を読むだけで、著者の独特の文章の癖を思い出させられました。
この圧倒的な文章力は、現在のライトノベル作家で右に出るものはいないんではないでしょうか。
次元が一つ違っていて、比べるのがそもそも間違っている気さえしてきます。
中華風の世界が舞台のお話。
意味どころか読み方すら分からない漢字が山ほど出てきますが、それを苦とさせません。
そもそも漢字が象形文字ということもありますが、大体把握できてしまうんですよ。
言葉選びのセンスが抜群。
これも卓越した文章力のなせる業でしょうね。
秋山節に慣れていない方だと、冒頭の取っ付きにくさは辟易してしまうレベルかもしれません。
しかし、そこは少しだけ我慢して読んでもらいたいところ。
序章を読み終わる頃には、どっぷりとこの世界観に引き込まれるはずです。
ストーリーは、まだまだ序盤ですね。
全2巻予定の割には、出会いと今後の伏線ぐらいしか描かれていません。
この意図的なスローペースの展開は、次巻の急展開を予感させますね。
淡々と物語が進んでいるだけなのですが、キャラクターが作中で踊るように生きている様が生々しく伝わってきて退屈しません。
まるで隣にいて見ているかのように肌で空気を感じ取れます。
挿絵はなく、あるのは口絵のカラーページのみです。
秋山作品には珍しくないことですが、今までの作品と違って絵がないことに意味があるような気がします。
挿絵を挟んでしまうことで作り上げている世界観を限定してしまうのを嫌ったのかもしれません。
これだけ読者の頭の中に世界を構築できるだけの力があるのであれば、必要最低限の絵だけで事足ります。
その観点からすると、これはもうライトノベルと言えないのかもしれませんね。
中華風ファンタジーの要素がかろうじてラノベの雰囲気を残していますが、カラーイラストさえ省けば一般小説として十分通用してすると感じます。
イラストの出来は作品内容に合っていて、決して邪魔な存在ではないんですけどね。
僕が今まで読んだライトノベルで「イリヤの空、UFOの夏」が一番好きな作品です。
なので、ハッキリ言って作家に対する入れ込み具合も半端ではありません。
しかし、この「龍盤七朝 DRAGONBUSTER 01」への評価は決して過大評価ではないと断言できます。
キャラクター、ストーリー、設定……これら全て秋山瑞人氏の腕だからこそ書きあげられた作品です。
期待していた以上に面白かったです。
それだけに、果たして次がちゃんと発売されるのか、それだけが心配w
筆不精で有名な作家ですからねぇ。
「ミナミノミナミノ」だってそれを見越して手をつけていませんでしたし。
できれば1年で……いや2年ぐらい待ってもいいから、2巻を出してください。
ホントお願いします。
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 DRAGONBUSTER 秋山瑞人 藤城陽 評価B+E.G.コンバットも忘れないで
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