ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! Extradisc
2012/05/03 Thu 23:52:44 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! Extradisc (ファミ通文庫) (2011/11/30) 田尾典丈 商品詳細を見る |
【評価……B-】
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 設定 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 物語 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 人物 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 文章 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 | ラブコメ SF 燃え | ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 |
大人しい理恵が本気モード全開で誘惑!?『おさななじみとすることぜんぶ』、間違えてFPSを現実に反映させてしまった、ある男の物語『運命歪曲のエクスチェンジ』、世界統合により平穏を取り戻した武紀たち、春海の卒業が近づくにつれ、皆それぞれの進路を意識しはじめ――『それぞれの未来』他、『シルバーブレット』のラストエピソードを含む短編2編を加えた全5編でお贈りする『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』終焉を飾るエクストラ短編集!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」シリーズ、本当に本当の最終巻。
「Extradisc」の名の通り、外伝、番外編、後日談などごっちゃ混ぜにした短編集となっています。
本編最終巻である8巻を読んだ後だと、少々蛇足っぽく感じてしまう内容でしたね。
雑多なため、まとまりを欠くのは置いといても、物語の芯が弱く感じました。
キャラが好きで読んでいる人ならば、おそらく好意的な解釈がとれると思うんですがね。
最も期待していた外伝「シルバーブレット」のエピソードが、あらすじを読んでいるような印象を抱くものとなっており、盛り上がりきれなかったのが痛かった。
武紀サイドの話を飛ばして、秀之サイドのみで展開し、ストーリーをただ追っているだけのような形となっているため、淡々としたものとなっています。
内容も大して量があるわけでもありませんし、これなら本編最終巻に挿入して欲しかったなぁ。
秀之の決意は、並々ならぬものがあり、もっと燃えてもいいバックボーンが確立できていただけに惜しい。
武紀よりも年上だからというわけじゃないですが、秀之はオールドタイプの主人公だなと改めて実感しました。
たった一人の大切な女性のために、自らの身を顧みず貫き通す意志の強さは、男が惚れる格好良さですね。
武紀も決して嫌いじゃないですけど、秀之の方が年齢的にも感情移入がしやすかったです。
「運命歪曲のエクスチェンジ」は、FPS世界を投影してしまった番外編。
ここにきてゲストキャラの主人公とヒロインで短編一本作られてもなぁー。
意欲作だったとは思われますが、個人的にはイマイチな出来でした。
そして後日談を描いた「それぞれの未来」で幕が閉じます。
春海の卒業が迫る中、それぞれの進路を思い浮かべ、歩み出すというお話でした。
超常的な現象と打って変わって現実的な問題に悩む面々を見て、平和になったんだなぁと思いましたね。
相変わらず武紀は気負いすぎている感がありますが、これからはきっと周りのみんながセーブしてくれるでしょう。
出番が少なくて残念でしたが、愛子は特に良いストッパーとなっている気がします。
設定的なフォローも幾つかありました。
ただ、突っ込むといくらでも粗が出てきそうなので、何となくで楽しむのが得策でしょうね。
長かった「ギャルゲヱ」シリーズも、これにて完結。
2,3巻の時点では、ここまで継続して購読できるとは思ってみませんでした。
ブレイクはし損ねましたけど、少なくとも自分にとっては良作だったといえます。
田尾先生の次回作にも期待をして待ちたいなと思います。
▼ | 外伝の最終章と本編の後日談がセットとなった追加ディスク風な一冊 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価B-ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!disc8
2011/11/22 Tue 23:59:45 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc8 (ファミ通文庫) (2011/08/29) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 | 恋愛 SF | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
「一緒の世界で、共に歩もう」 ヒロイン達とお互いに気持ちを確かめ合った、俺こと都筑武紀。本来の世界と『例外レイヤー』を統合し『現実補正』を使って二つの世界にいる人々の記憶を融合……トゥルーエンドへの道筋は見えている。 しかし、そこに至るにはこの世界に存在しないあるアイテムが必須……。どうする俺!無いものは作るしかないのか?俺が、あの『エターナルイノセンス』を!! 選択肢無限の真世界を奔走する青春ADVノベル、遂に完結! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」シリーズ、本編最終巻。
コンスタントに刊行されたおかげで、2年半ちょっとで11冊も積みあげられました。
当初は一発ネタかと思っていた本作が、ここまで来るとは感慨深いものがあります。
シリーズ途中のテコ入れが成功した数少ない例ですね。
満を持しての最終巻というよりは、ちょっと急だったかなと感じられました。
詰め込み過ぎな面が多々あり、設定や物語の強引さが散見されます。
伏線を無理矢理活用したり、唐突な問いかけがあったりと、不自然さが目立ちました。
テーマや主張は良いんですけど、見せ方が悪かったと言うべきでしょうか。
もう1冊とは言わずとも、もう少しページがあれば、説明も付けられたと思うんですがね。
でもこの作品には、数字では表せられない面白さが内包されています。
欠点が見えやすく、他の要素でカバーしている訳でもないんですが、全て込みで楽しむことが出来ます。
正直なところ、今でもその理由をハッキリとは解りません。
ただ、もしかしたらストーリーの流れが綺麗であることが関係しているのかもしれませんね。
物語上に配置されるキャラとSF設定がパズルのピースのように組み込まれているため、作品の一体感を増大させているように感じました。
材料が別段凄いわけではなく、調理の腕が極めて優秀というわけでなくとも、見事な仕上がりとなったのは、感性の良さと文章的な配慮によるものだったのかなと思います。
主人公・都筑武紀は結局最後まで思考に余裕がないけれど、その必死さは嫌いじゃありません。
幾度となく障害に立ち塞がれ、それでも泥臭く塗れてでも答えを探し続ける根気は、主人公として相応しい姿だと思います。
もどかしい気持ちにさせられた初期と比べると、今では尊敬すらできるぐらいに成長を果たしました。
まぁ、ハーレム願望はないので、そちらは遠慮しますけどw
前回の愛子のターンは、さすがに続きませんでしたけど、時折見せるいじらしさは健在でした。
やっぱりメインヒロインは、愛子で決まりだなー。
表紙にいなかったのが残念でした。
ゆうきの伏線を拾ってくれるとは思いませんでしたね。
正体については、予想は当たっていたのですが考えが浅かったので、半分正解で半分不正解という感じ。
なるほどなぁと感心させられつつも、あっさりしすぎていたのが勿体無くて少々不満。
1冊使っても良かったぐらいのネタだと思うんですけどね。
もう一人の主人公・高橋秀之は、正真正銘デキる男で格好良いのですが、本編での出番は少なめでした。
これは外伝&後日談の短編集でシリーズ本当の最終巻となる「Extradisc」に期待かな。
みんな幸せで終わる大団円を読めることを願いたいと思います。
▼ | 共感は出来なくともハーレムを目指す男と女の子達の幸せを願わずにはいられない本編最終回 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価Bギャルゲヱの世界よ、ようこそ!disc7
2011/08/30 Tue 23:58:40 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc7 (ファミ通文庫) (2011/05/30) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | 恋愛 SF 構成 | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
理恵の世界から戻った俺こと都筑武紀は、かつてない衝撃を受けていた。 死んだはずの両親が生きている!しかも目の前には恋人状態の高橋が!! 『八年前の事故が発生しなかった世界』 ――だがしかし、この幸せで残酷な世界に俺の愛するヒロイン達は存在しない。 そして、事態収拾のため情報を集めようとした俺は、ある人物からもたされた驚愕の真実に戦慄する……まさか、あの事故が!? 選択肢無限の真世界を奔走する、青春ADVノベル、待望の第7弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
ギャルゲーが現実となった世界で生きる道を模索する青春SF物語。
シリーズ通算10冊目の表紙を飾るのは、早くも三回目の登場となる高橋さんが目印です。
フェアリーテールシステムの限界が近づき、「エターナルイノセンス」のヒロインが消滅する危機が迫る。
起死回生のアイデアで難を凌いだ武紀は、今一度女の子達との交流を経て、絆を再確認した。
しかし、直後に待ち受けていたのは、死んだ両親が生存し、愛子が恋人となっている別世界だった……!という凶悪な引きで終わった前回からの続きです。
期待以上の愛子萌えに悶えまくり。
もはや、疑う余地なしといって過言ではないぐらいの正ヒロインっぷりですよ。
これはどう見ても、各ルート攻略後のトゥルールートですね。
他キャラが霞むくらい可愛すぎて困った。いや困らない。ああ素晴らしい。
素直に慣れなくて、でも不器用なりに正面から向き合おうとする彼女の愛おしさったら、もうね。
気のせいか、有河サトルさんの絵も、高橋さんだけ気合が入っているように見えます。
振り袖を着て優しく微笑む表情には、思わず見惚れてしまいますね。
さて、内容についてですが、遂に明かされたフェアリーテールシステムの全貌に驚かされました。
風呂敷を広げ過ぎだろうと心配していましたが、どこ吹く風。
詰め込んだ伏線を一気に放出する様は、まさに解答編で一種の爽快感さえあります。
一体どこから考えていたのか分かりませんが、想像できなかったことばかりで衝撃的でした。
正直、細かいところを突っ込めば粗は多数見つかるでしょう。
しかし、それを無視させてしまうぐらいの説得力が凄い。
作中の設定を、そういうものなんだと漠然と思わせることができるのって、なかなか出来ません。
ただし、ちょっと専門用語を出し過ぎたのはマイナス点だったかな。
シリーズ通して読んでいても把握し辛いなと感じました。
ご都合主義も散見されますが、こちらは目を瞑る方向で。
毎回、窮地に立たされる武紀ですが、今回ばかりは規模が違いましたね。
あまりに残酷な選択肢を付きつけられ、どのように打開するのか見ものでした。
作中で出てくる「我が儘な理想主義者」という言葉がピッタリな武紀らしい選択には、腹が立つくらい自己中心的でムカつくけれど、主人公としてはこれ以上ないぐらい正しかったと思います。
武紀本当に初期とは比べ物にならないぐらいに成長したなぁ。
本来の主人公である真田正樹にも格好良い場面が用意されていましたし、愛子の兄である秀之の慌てふためく姿もシリアス展開の中で絶妙なアクセントになっていて面白かった。
最後の最後まで、結局高橋さんが全部持って行っちゃうんですけどねw
次回で完結ってのが寂しいですね。
まぁでも、ちょうど今日が8巻の発売日なので、ネタバレを食らう前に早く読みたいと思います。
▼ | クライマックス突入と同時に開拓された愛子ルートが素晴らしい |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価B+ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! add on シルバーブレット2
2011/06/23 Thu 23:31:02 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! addon シルバーブレット2 (ファミ通文庫) (2011/02/28) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | SF 燃え ラブコメ | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 |
激しい戦いの末、秀之の決意に触れた神藤は、共闘することを決意した。義人に加え心強い仲間を得た秀之だったが、平穏な時間も束の間、自宅PCに電子妖精の天才・寫取から突如ハッキングを受けてしまう! そして、超常的なその攻撃手法に戦慄を覚えつつも退けた秀之は、一つのファイルがあることに気づく。なんと、それは電子妖精支部の所在地が記された文書だった……! 人気作『ギャルゲヱ』の外伝シリーズ、待望の第2巻登場!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」シリーズ、外伝第2巻。
1巻を読んだ時、本編と同じ、またはそれ以上に面白かった記憶があり、2巻も期待していました。
結果としては、面白くはあったんですが、勢いは落ちてしまったかなぁという印象ですね。
もっと「フェアリーテールシステム」の解明に近づくのかと思いきや、何だかきな臭い方向に進んでいます。
SF系バトル小説としての見せ方が、1巻に比べると迫力不足で惜しいですね。
秀之が開発した「能力インストール」は、他のキャラが使用する技を真似るというバトル系漫画にはよくあるパターンですが、状況に応じて色んな能力を使い分ける臨機応変さがドキドキワクワクさせられるため、個人的に好きな設定です。
そんな優秀な能力に制限が判明するわけですが……なるほど、これは厳しい。
覚悟した上で、秀之も使用しているんでしょうが、心に重たく圧し掛かってきます。
想像していた以上に枷は深刻で、物語の今後を考えると鬱展開もありえそうですね。
全ての作品で丸く収まる必要性はありませんけど、この作品はハッピーエンドで終わって欲しいなぁ。
一方で、本編主人公の都筑武紀が関与し始めるエピソードもあって、リンクを楽しむことができました。
まさに本編の裏側で進行していたもう一つの物語って感じで、思惑が入り乱れていて面白い。
特にシスコンの秀之が、愛子に近づく武紀を快く思っていない辺りは、笑いが止まりませんでしたw
本編を読んで薄々気が付いていましたが、マジだから始末に負えないw
それにしても、舞台の規模が大きくなり過ぎているのが、少々不安。
あまりにトンデモ設定にしてしまうと、辻褄合わせが大変ですが、大丈夫なんでしょうかね。
綺麗に畳むつもりがないのではと疑ってしまいます。
先が気になるところで終わっているので、今後の舵取りに期待ですね。
▼ | 大切な家族のために己の身を削って戦う主人公が切なく、格好良い |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価Bギャルゲヱの世界よ、ようこそ!disc6
2011/04/14 Thu 16:14:28 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc6 (ファミ通文庫) (2010/10/30) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 | ラブコメ メタ SF | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
「なんじゃ、こりゃ――っ!」 雄叫びとともに来襲した従妹の麻衣。中学までの武紀と、主人公道を極めんとする今の彼とのギャップに驚きつつ、その変化を受け入れる彼女だったが…… 「二度とタケにいに近づかないで!」 武紀を想うあまりヒロイン達に残酷な言葉を口にしてしまう。 違うんだ麻衣!わかってくれ理恵、俺の気持ちは――って何故ここに『エターナル イノセンス』がある!? 選択肢無限の真世界を奔走する、青春ADVノベル、待望の第6弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
恋愛アドベンチャーinリアル、第6巻。
思わず唸ってしまうほどに、面白いなあ。
ラブコメからSFへと軌道修正して以来、どんどん良くなってきていますね。
人によって求めているものは違うでしょうが、個人的にはこの展開は好みです。
武紀の従妹・麻衣の襲来。
彼女もまたフェアリーテールシステムにより記憶は補完されているものの、しかし細かい点では齟齬が発生。
不自然にならないよう気をつけながら対応する武紀だったが、いつまでも隠しきれるものでもなく、極めて現実的な思想によりヒロインたちは拒絶されていきます。
これまで武紀を始め、ヒロイン達みんなで幸せになる方法を模索してきて、ようやく辿り着いた結論が、ハーレムルートだったわけですが、これが物の見事に否定されていますね。
当人たちがいくら認め合ったとしても、世間は許容してくれません。
正面からハーレムになる過程を描いているため、ここは避けては通れない問題でした。
正直、どれだけの言葉を並べても、ハーレムの主に説得力は皆無だと思います。
事実、既刊でも何度かこの壁にぶち当たり、そのたびに武紀たちの心情がクローズアップされていますが、読者を納得させるだけの力はありませんでした。
現代の日本で、複数の相手と結ばれるのは、冷静に考えなくともほぼ無理でしょう。
ハーレムをギャグで済ませていないので、引っかかりを覚える要素は多く、しっくりはきません。
それでも、前向きに階段を一歩ずつ登るかのように進む武紀とヒロイン達を見ていると、応援したい気持ちにさせられます。
武紀だけが気負いすぎなところや、高校生ならではの現実を舐めているところなど、問題点は多々ありますけど、真剣に考えているんだということは伝わってきますからね。
フェアリーテールシステムについては、毎回新しい一面を見せてくれますが、今回の展開は面白かった。
ゲームという媒体を上手く利用した設定で、1巻の時のようなメタ的な試みが秀逸でした。
なるほどなぁ、武紀だけが特別というのも良く分かる。
「エターナルイノセンス」のヒロインズや武紀よりも、脇役の方が光って見える作品ですね。
高橋は言うまでもなく、最大の理解者であるゆうき、親友の将也、本来の主人公である正樹、外伝の面々など、魅力的な人物は脇に固まってます。
ヒロイン達とのラブコメよりも、脇役の活躍の方が読みたいと思ってしまいますね。
これだけ練られた設定にも関わらず、何故か触れられていない不自然な点が残っています。
どうして二次元のキャラクターを、三次元として素直に受け止めることができるのか、ということ。
そっくりなコスプレイヤーを見て、二次元キャラが画面から飛び出てきたとは思わないでしょう。
実は、武紀たちが現実だと思っている世界も二次元だったというオチでもない限り、ちょっと浮いている気がしますね。
物語は最後の最後でとんでもないことになってて、次巻が無茶苦茶気になることになっています。
これは期待大ですね。
▼ | ゲーム要素を取り込んだ舞台設定がお見事で、エンターテイメント性の高さがうかがえます |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価Bギャルゲヱの世界よ、ようこそ! Fandisc
2011/02/27 Sun 23:48:16 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! Fandisc (ファミ通文庫) (2010/08/30) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | ラブコメ メタ | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
咲と愛子の友情のはじまり「いつか花咲く、愛もある」。 武紀にゆうきから意外な提案が……「梅雨が明けるころに」。 悩める春姉、危機一髪?「姉のちときどき胸さわぎ」。 どうしても一緒にお風呂に入ると言う夏海に武紀は!?「俺の妹のばあい」。 意外なあの娘とアキバデートっ!「すくぅ~るメイド」。 そして訪れる武紀最大の正念場――奮い起こせ主人公力!!「攻略仕様のアンチノミー」の全6編でお贈りする「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」珠玉短編集!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」シリーズ初の短編集。
外伝の方が先に出ている作品ってのも珍しい気がしますね。
咲・理恵・ゆうきの三人のパジャマパーティーを幕間として、全6編の構成となります。
シリアスなしのラブコメらしい短編なので、気を張らずに読むことができました。
ヒロインズとのラブコメを求めていた人にとっては、待望の本だったかと思います。
短編ヒロインは、ゆうき・愛子・春海・夏海・四阿の5人。
まぁ、愛子の話は咲との友情エピソードなので特殊ですが、それ以外は武紀と絡みですね。
イチャイチャってレベルを超えている接触もあり、まるでエロゲーのでした。
ファンディスクというタイトルに偽りなしですが、武紀の行動が度を超えているので、引く人もいるかもしれません。
個人的には、冷静なようで判断力が足りていない武紀の強引なところがウザ格好良いと思っているので、アリです。
しかし、一番面白かったのは各ヒロインの話ではなくて、最後の「攻略仕様のアンチノミー」でした。
ネタバレになるので詳しくは語れませんが、エターナルイノセンスのゲーム的な内容を上手く活用した話で、メタ的な要素が楽しかったです。
武紀がヒロイン勢に問われて困る展開に、ニヤニヤとさせられましたよ。
本編はSFの方向に進みしたけれど、このエピソードは1巻の時のノリに近いかな。
ギャルゲーが現実になったことによる面白い可笑しい点を、ギャグっぽく仕立てていて、終始笑えました。
こちらの和やかな雰囲気の方が、万人に好かれそうな気がしますね。
それにしても、ゆうきは平然と咲や理恵たちとお風呂に入っているけど、これで実は男でしたってことだったら、武紀はどう反応するんだろうかw
ゆうきの正体は将来的に明かされてほしいような、このまま秘密でいて欲しいような複雑な心境だなぁw
▼ | ファンディスクの冠に相応しいヒロインとのエロ寄りのラブイベント多数収録 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価Bギャルゲヱの世界よ、ようこそ! add on シルバーブレット1
2011/01/25 Tue 23:59:12 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! addon シルバーブレット 1 (ファミ通文庫) (2010/06/30) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | 燃え | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
架空の情報媒体を現実に投影する『フェアリーテールシステム』。望めば好きなゲームやヒロインを現実に顕現っせることもできるこの力を巡り、戦い続ける男高橋秀之。卓越したコンピューター・スキルを駆使し、システムの謎に迫ろうと日夜情報収拾も兼ねヒロイン達を助ける彼だったが、この夜はいつもと違った。窮地のヒロインを救うため現場に向かった秀之が見たのは、謎の少女の手を引き逃げる妹の愛子で――!? 人気作『ギャルゲヱ』に外伝シリーズが登場!! |
【感想】<本編1巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
FBonlineで連載中の「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」外伝、待望の文庫化。
web上では読んでいなかったので、初読です。
あれ……?これ、本編より面白くないですか?
ベクトルがまるで違うので比較するのはどうかと思いますけど、予想外に楽しいですよ、これ。
そもそもジャンルも異なっていて、本編が恋愛青春モノだとすると、外伝は異能バトルです。
結構ガチで戦っていて、見応えがありました。
外伝の主人公は、本編でも登場する高橋愛子……の兄である高橋秀之。
26歳の社会人ということもあり、本編主人公の都筑武紀に比べると、考え方が実に大人です。
勢いで突っ走る若さもいいですが、理論的に物事を判断して処理する姿は、痺れるような格好良さがありますね。
個人的に、熱血漢よりも頭脳派タイプに燃えるタチなので、秀之はかなり好みですよ。
妹の高橋さん、というか愛子は、実質的なヒロイン役でしたね。
ひたすらツンツンと尖がっている娘ですけど、根がイイ子だというのが行動や台詞から伝わってくるので、悪いイメージは全くありません。
昨今、兄を嫌いだと罵るブラコンの妹キャラが多い中で、本気で兄をウザがっている愛子は、良い意味で二次元的な要素を排除しています。
まぁ、これでもリアルに比べたら優しい妹なんだろうけどね。
悪ぶっている振りをしていますが、意外と真面目で、そのギャップが何とも可愛いらしいです。
物語は、ギャルゲーを現実世界に投影する「フェアリーテールシステム」の真実に迫るものでした。
こちらが本編なのではないかと疑ってしまうほど、根幹に関わる内容に触れています。
これからの本編を楽しむためにも、外伝は読んでおいたほうがいいでしょうね。
ストーリーの組み立て方が見事で、どんどん読みたい気持ちが高まりました。
謎が少しずつ判明していくため、ワクワク感は確実に本編より上です。
ギャルゲーに出てくる登場人物の能力を借りて戦うという設定は、心躍るものがありました。
何でもありになりかねないところを、巧みにコントロールしていたと思います。
これは次巻も期待せずにはいられません。
しかし、いくら単品で読めるといっても、本編あってこその外伝。
両方読んでいた方が、より一層楽しめるのは間違いないでしょう。
▼ | 本編で明かされない重要な謎が解明されるためシリーズ読者には必見 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価Bギャルゲヱの世界よ、ようこそ!disc5
2011/01/19 Wed 23:57:09 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc5 (ファミ通文庫) (2010/05/29) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B-】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 人物 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 文章 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | ラブコメ | ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 |
『エターナルイノセンス』の主人公・真田正樹はこの世界を去った。愛すべき日常を取り戻し安堵する俺こと都筑武紀だったが、その時はまだ、気付いていなかった。この事件が、新たなイベントのトリガーだということに……そして、咲が誰よりも傷ついていることに! <世界改変>による過ちに苛まれる彼女に俺の声は届くのか?事態は最悪の結果に向けて加速していく――。 選択肢無限の真世界を奔走する、青春ADVノベル、待望の第5弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
恋愛ADVの女の子がリアルに舞い込んできた青春物語、第5弾。
シリーズ初めて前回から引き続いた内容となっています。
本物の主人公である真田正樹が現れ、女の子たちの関係や想い出を奪われた都筑武紀。
何とか取り戻すことに成功し、これで一件落着かと思われていたが、咲だけは元通りというわけにはいかなかった――という展開です。
武紀が熱すぎてウザってぇー!w
前回からスイッチ入りっ放しで、もはや手がつけられない、というか手遅れです。
くよくよすることがなくなったのは成長なのかもしれないけど、振り切れ過ぎだろw
咲が思い悩む理由を解明するために、あれやこれや行動に移すのは立派なんだけどねぇ。
頼もしい半面、少々引くわw
ハーレム物のシリアス展開は、どうにも話の落とし所が難しい印象があります。
冷静に見れば、決められなかっただけじゃねーかと突っ込まれてしまいますからね。
その中で、武紀はまぁ頑張っている方だとは思いますよ。
しかし、「エターナルイノセンス」の女の子たちを差し置いて、高橋が一番可愛いよなぁ。
明らかに作られた設定が見え隠れしているギャルゲーの女の子よりも、自然体なところがイイ。
これは作者の狙い通りなんだろうか?
物語は、今まで謎に満ちていたフェアリーシステムの真相が、ようやく見え始めました。
意味ありげなプログラムコードの羅列は半分ぐらいしか理解できませんけど、ニュアンスで何となく伝わってきます。
ただ、都合のいい展開が多く、説明も中途半端なところは気になりました。
一体何のためにギャルゲーを現実に投影させる仕組みを作り、管理しているのか。
随分と規模の大きな話になってきましたけど、果たして無事完結するんでしょうかね。
そういえば、有河サトルさんのイラスト、随分雰囲気が変わりましたね。
以前は主線を明確に描いていたのが、線引きをぼかして色合いを淡くさせる手法に切り替えているようです。
個人的には、一応こちらの方が好みかな。
エピローグを読む限り、またまた波乱が起こりそうな感じですね。
真面目な展開が続いたので、次回は、もう少しラブコメ要素があってもいいかもしれませんね。
▼ | ギャルゲーの主人公のように行動がアグレッシブになってきた武紀が熱い |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価B-ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!disc4
2010/08/07 Sat 09:55:20 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc4 (ファミ通文庫) (2010/01/30) 田尾典丈 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 | ラブコメ | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 |
俺こと都筑武紀は突如訪れた新たな危機に戦慄していた。幼馴染に起こされ迎える朝、家族揃っての登校、そして校内一の美少女との学園生活。いつもと変わらない、愛すべき世界……のはずなのに、違う。こんなのは……俺じゃない! 自らの手により崩れゆく理想の世界で、なんとか打開策を見出そうとする俺だったが――おい、これでまだ<世界改変>の途中ってことはないよな? 選択肢無限の真世界を奔走する、青春ADVノベル、待望の第4弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
恋愛ADVゲームの設定が投影された現実世界の学園物語、第4弾。
うおっ、なんだこの面白さは。
期待値が低かった反動を抜きにしても、これは良かった。
現時点で、シリーズ最高峰の出来栄えでしょう。
詳しく描くとネタバレに繋がるので言えませんが、この展開は熱かった。
感覚としては、「涼宮ハルヒの消失」に近いものがありますね。
主人公ががむしゃらに動き回るところや、周りの状況など共通項が見られます。
これまで不甲斐なかった主人公の武紀がキモカッコイイ!
はっきりいって、やっていることは物凄く自己中心的で我が儘です。
不誠実と言われても仕方のないことをやっちゃっています。
だけど、久しぶりに武紀に好感が持てました。
そもそもハーレムを目指す男が好きではないんですが、この吹っ切れ方と努力の方向は素直に凄いと思える。
ここまで確固たる信念を持っているのならば、貫き通す姿を見守りたいと思ってしまいます。
どう考えても正論を唱えているのは、武紀と対立している相手の方ですし、読んでいる時も無茶苦茶っているなコイツ……と何度思ったことか分かりません。
余計に嫌いになったという人がいても、まったくおかしくありません。
冷静に見たらストーカーですもんねぇ。
そんな極端な内容となっているので、賛否両論の激しい回だったようです。
ヒロイン勢では、今や頭一つ分リードしている感のある高橋さんが素敵。
やっぱり、ツンデレはいいよなぁーとしみじみと思わされますw
残念ながら、武紀は鈍いので好意を寄せられつつあることに気付かないだろうけど。
外から見たら気持ちの悪い関係に見えるかもしれないハーレムも、当人達が幸せそうなので、別にいいんじゃないでしょうか。
現実世界とギャルゲーを巧みに融合させていた1巻の頃を思い出させる内容でした。
ギャルゲー設定を随所に取り込んでいて、読み応えがありましたね。
3巻読了時には続巻を買うか迷っていましたが、外伝も含めて追っていきたいと考え直しました。
▼ | 立場を奪われた主人公がハーレムを取り戻そうと奮闘する話 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価B+ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!disc3
2010/05/21 Fri 22:56:04 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc3 (ファミ通文庫) (2009/09/30) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……C+】
発想 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 設定 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 物語 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 人物 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 文章 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 | ラブコメ メタ | ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 |
いつも優しく世話好きな春姉。そして天真爛漫で甘えん坊な妹、夏海。俺こと都筑武紀が<世界改変>によって手に入れたヒロイン――愛する家族だ。 しかし、その二人の様子が近頃おかしい。春姉は隠し事があるみたいだし、夏海の態度もどこか変だ、ぞ?ちょ春姉、その人は誰?え、実の父親!?しかも二人を引き取りたいって……それって都筑家存亡の危機じゃないか!どうする俺――!! 選択肢無限の真世界を奔走する、青春ADVノベル、待望の第3弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
やり直しができない現実世界での恋愛アドベンチャー、第3弾。
表紙とは異なり、今回は春海&夏海の話。
二人の実父が現れ、彼女達を引き取りたいと申し出てきたことで、一波乱が生まれる展開。
ギャルゲーとラブコメの定番をミックスさせた、無難な内容となっています。
うん、そう、無難なんですよ。
面白さはほんのりと感じるのですが、何だか物足りないんですよねぇ。
とはいえ、つまらないとぶった切ってしまうのは、少々早いかなと思いました。
主人公の心意気は伝わってきますが、相変わらず同じところで躓いています。
もっと彼女達に相応しい男になりたいと思うのはいいんですけれど、すぐに忘れてしまうんだよなぁ。
必死になるところが間違っている気がしますね。
似たようなところで嵌り込んでしまうから、成長しているように見えないのが難点です。
ギャルゲーの常識を現実に無理矢理当てはめたことで発生する齟齬が面白おかしいギミックとなり予想外の展開を招くっていうのが、この作品の最大のアピールポイントだと思っているんですけど、少々都合のいい解釈が増えてきて乗り切れなくなってきました。
1巻は限られたページ数で、シビアな描写と全ヒロインの個別ルートを見事に作り上げていたのに、いつの間にかぬるくて甘い設定になってしまっています。
実は主人公の方がギャルゲー世界の住人となったんだと言われた方が、しっくりきますよ。
それぐらい中途半端であり、非現実的な内容です。
本当に微妙なラインだなぁ。
ストーリーやキャラで引き込んでくれる力強い面白さがあるといいんだけど、残念ながらそこまではないんですよね。
高橋は好きだけど、1巻の頃のように、もっとクールでいいと思うんだ。
ギャルゲー現実化システムの仕組みだけは気になるけれど、追い続ける気力が持たなくなってきました。
次巻で大きくストーリーが動いたりしなければ、シリーズ購読をやめるかもしれません。
▼ | 現実世界にて、恋心を抱いた義理の姉妹との関係はどうすればいいのかと悩むお話 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価C+ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!disc2
2009/11/05 Thu 04:00:29 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc2 (ファミ通文庫) (2009/05/30) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B-】
設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
ラブコメ ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
メタ ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
<世界改変>のエラーのお陰で愛するヒロインたちを取り戻した俺こと都筑武紀。みんなを幸せにする!――誓いを胸に激甘なハーレムライフを送る俺だったが、近頃学校では奇妙な噂が流れていた。 「伝説の木で恋愛成就」? ちょっと待て、そんなゲームなかったか?まさか誰かが<世界改変>を!?そして、このタイミングでリアル幼馴染との再会なんてイベントも発生!!どうする俺!? 選択肢無限の真世界を奔走する、青春ADVノベル、待望の第2弾!! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
リアルの世界にギャルゲーの女の子が現れたラブストーリー、第2弾。
1冊完結でもおかしくない内容でしたが、好評だったようで続きが出ました。
んー、悪くはないけれど1巻の完成度に比べると見劣りしてしまうかなぁ。
途中いくつか引っかかる点はあったものの、そこそこ面白く読めましたし、続きを想定していないような終わり方だった割には頑張ってたと思います。
設定は上手いところがあると同時に、突っ込みどころも多いですね。
おかげで、凝った内容も話の面白さに変換できていない感じして勿体無い。
活かしきれていない、とはまさにこのことでしょうね。
物語のリードが前巻とまるで異なるため、話の楽しみ方も変わっています。
前回は、現実世界にギャルゲーの設定が無理矢理組み込まれたために起こる齟齬や差異などが醍醐味でした。
まずギミックの面白さが前提にあり、それを巧く活用したストーリーも綺麗にまとめられていました。
しかし、今回は謎を主体とした展開で、それこそギャルゲーのシナリオのような作りとなっています。
これが読んでいて非常に分かりづらい。
オチを読ませないようにしたかったのかもしれませんが、この作品でミステリーをそこまで強く意識する必要性はないと思うんですけどね。
それにしても、武紀は成長したと思ったのに相変わらずヘタレ……というか、はっきりいって馬鹿だなぁ。
ヒロインの女の子たちを呼び戻すと決めたら、もう少し頭を使って行動するべきなのに配慮がなさすぎる。
せっかく株を上げたと思ったのに、同じようなことをされると興醒めしてしまいますね。
そんな主人公思想に取り憑かれた武紀に対して、現実的なツッコミをする高橋が一番魅力的です。
まぁ、高橋も読者からすればすっかり二次元の女の子になってしまっているのは問題ですが。
何だか、全体的に辛めの評価となってしまいました。
うーん、時間が経ってから冷静に考えてみると、面白かったというよりも穴が多かったという印象が残っていますね。
▼ | 元々少なめだったコメディ分がさらに減り、シリアス方面に傾いています |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価B-ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!
2009/05/15 Fri 06:40:02 [edit]
![]() | ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! (ファミ通文庫) (2009/01/30) 田尾 典丈 商品詳細を見る |
【評価……B】
設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
挿絵 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
ラブコメ ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
メタ ★★★★★★★☆☆☆ … 7
ある日突然に世界改変の機会を得た俺は、躊躇なく願望を具現化した。 そう、全ての選択肢・イベント・キャラの台詞まで記憶するほど愛したゲーム『エターナル イノセンス』の現実化である。 目指せメインヒロインルート――と思いきや、まさかの複数同時攻略ルート突入! しかもゲームにはないイベント発生! はたして俺と愛するヒロイン達はトゥルーエンドを迎えることができるのか!? 選択肢無限の真世界を奔走する第10回えんため大賞優秀賞受賞作!! |
【感想】
ネット上で評判が良かったので購入した一冊。
いかにもな表紙とタイトルですが、これがなかなか面白かったです。
ギャルゲーにハマったことのある人間なら、誰しもが一度は想像する「自分がギャルゲーの主人公になったら」という妄想が現実世界で具現化した話。
そんな夢のような奇跡が起こった現実の主人公・都筑武紀は、最初は困惑するも、突如現れた理想の美少女たちに囲まれデレデレする日々。
しかし、事はそんな単純に進まない。
ゲーム内ではごく当たり前のことであっても、それが現実に当てはめると極めて不自然な事象がイッパイ。
それが元で、通常のゲームルートから大きく逸れていく有様。
誰もが救われるためにはハーレムエンドを目指すしかない!ということで、問題解決のために武紀が奔走する……という展開。
既にプレイ済みのギャルゲーが現実化したため、武紀にとってはいわゆる「お約束」のイベントが起こる予測が付くのが面白い。
ゲームの主人公と同じような選択肢のセリフを言ってみたりするところなど、メタ的表現が色濃く出てますね。
最初はヘタレ全開でしたが、中盤からギャルゲーのご都合主義に真っ向から立ち向かおうとする武紀の姿は、結構カッコ良かったです。
ヒロインキャラクターは、作品の性質上いかにも「これなんてエロゲ?」みたいなキャラばかりです。
才色兼備の学園のアイドル、世話好きな幼馴染、義理の姉と妹、寡黙な転校生……と、テンプレ的なラインナップ。
どのキャラもギャルゲーの記号的な要素を全面に出しているため、好みのキャラはいませんでしたが、強いて言えば義姉の春海ですかね。
ええ、姉属性持ちですが何か。
エピローグに関して、賛否両論があるようですが、個人的にはどちらでもありかなと思いました。
きっと、これが小説ではなくゲームであれば途中で分岐点があってエンディングが2種類に分かれていたんでしょうねw
▼ | ギャルゲー好きなら一読の価値あり |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 田尾典丈 有河サトル 評価B| h o m e |