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明日へと続く記憶

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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生贄のジレンマ<下> 

生贄のジレンマ〈下〉 (メディアワークス文庫)生贄のジレンマ〈下〉 (メディアワークス文庫)
(2010/12/25)
土橋 真二郎

商品詳細を見る
読書期間:2011/6/14~2011/6/15

【評価……B
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 なし
ミステリー
サスペンス




 ★★★★☆☆☆☆☆ … 5
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 他人を生贄にして自らの生き得る――
 そんな冷酷な選択を繰り返しがらも、生徒たちは課せられたルールに従うことで精神状態をなんとか繋ぎ止めていた。だがゲームは、生徒たち自らの“裏切り”によって、クラス間での騙し合いへと発展する。
 友人、恋人、血縁――人との“より深い絆”が生き残りの鍵となる中で、鈴木理香という恋人を得た篠原純一だったが……。やがてゲームは最後のステージへ!戦慄のジレンマゲーム、完結編!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「囚人のジレンマ」の設定を日本の高校生たちに適用させたデスゲーム、完結編。

面白かったです。
でも、オチだけは不満が残りました。
「殺戮ゲームの館」でもそうでしたが、この作者は結末が尻すぼみしてしまう癖でもあるんでしょうか。

最終的に、生還できた人間がぼやけているのが、すっきりしないところなんですよね。
素直に読むか、疑ってかかるべきかで、大きく読了感は変わると思います。
ちなみに自分は後者のタイプなので、もやもやしてしまいます。

ゲーム的な面白さは、上中巻を上回るものがありました。
消極的で疑心暗鬼な心理戦も悪くありませんが、積極的なコミュニケーションが発生する場の方が、コロコロと状況が移り変わるためストーリーに引き込まれます。
ここに来て新たな局面を迎えたときは驚きましたが、これまたシンプルで純度の高いゲームでした。
これは、攻略法に気づく前に死ぬ自信がありますよ。

ただ、キャラクターはやっぱりあと一歩のところから抜け出せなかったですねぇ。
主要人物が何だかんだでみんな似たような思想なのと、それ以外の外野を駒扱いするのが最後まで引っかかりました。
深く掘り下げているようで、淡白に感じるのは状況に流され過ぎだからかなぁ。

ゲーム以外の設定が、突っ込みどころ満載なので、細かいことが気になる人にはキツイかもしれません。
これだけの規模の事件ならば、この結末はないと思うんですよ。
リアリティを出せとまでは言わないけれど、放り投げすぎです。
中巻まで展開が遅く、下巻で急激なスピードアップをするのではないかと心配だった点は、上手く舵取りをされていましたけどね。

途中からは先が気になって仕方がない物語だっただけに、消化不良なラストだけが勿体無かったです。

傷つき翻弄されながらも窮地で確かな絆を育むことが出来る人間の強さが温かく感じ取れます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  生贄のジレンマ  土橋真二郎  評価B 

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生贄のジレンマ<中> 

生贄のジレンマ〈中〉 (メディアワークス文庫)生贄のジレンマ〈中〉 (メディアワークス文庫)
(2010/10/23)
土橋 真二郎

商品詳細を見る
読書期間:2011/4/16~2011/4/19

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 なし
ミステリー
サスペンス




 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 生き残るためクラスメイトに投票し生贄を選出するか。それとも自ら生贄に志願し、他者を救うか――
 残酷な選択を前に、生徒たちが思考を停止させる中、やがてルールにある変化が起こる。生贄志願者の“価値の低下”――それは投票による生贄の選出を促すものであり、やがて起こるクラス間での凌ぎ合いを意味していた!
 そんな中、篠原純一は、些細な誤解やすれ違いによって徐々にクラスから孤立していき……。
 ジレンマゲーム第2弾!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


悪質なゲームに強制参加させられた高校生たちが追い詰められていくサスペンスストーリー。
三部作の中巻になります。

いよいよゲーム本編の開始……と言いたいところですが、展開が遅い。
上巻は土台作りのためだと理解できますが、中盤でもなかなか話が進まないのは、どうしたものか。
これが全10巻となる長編作品ならさして問題でもないですが、次巻でラストなのに、のんびりとしすぎじゃないかなぁ。

上巻でも指摘した点が、悉く欠点となっており、改善は見られません。
主要キャラとモブキャラで描写量が異なるのは仕方がないにしても、だからこそ不自然さが浮き彫りになります。
こんな絶望的な状況に陥った高校生が、みんな大人しく縮こまっているとは思えません。
篠原を主体としたリアルな心理描写は素晴らしいんですけど、変に賢すぎますね。
頭脳派だけではなく、考えなしに暴走したり、パニックで壊れたりする人間が出ても不思議じゃない。
例えば、直接生贄の穴へ投げ込むような暴力的な輩がいて当然だと思うんですよ。
この作者さん、一見すると残虐なゲームを描いているので非道だと思われるかもしれませんが、結構優しいですよね。

そんな脇が甘い部分が見えてしまうのが惜しい。
デスゲームの突き詰めた設定により、極限状態における葛藤を生々しく表現できているだけに、なおさら。
教室の空気を重いままで構わないのですが、もう少し緩急をつけてテンポアップしても良かったのではないかなと思いました。

とはいえ、ゲームの設定や裏に潜む狙いが、少しずつ見えてきました。
ただし、それが正解なのかどうかは誰にも判断がつかず、刻一刻と変化する状況に振り回される彼らが、居た堪れなくなるほどに痛々しい。
集団の中に生きるために本音をひた隠し、建前で正義を振りかざす心情が卑怯に見えてしまうのは、基本的に善人のキャラから見た視点で描かれているからだろうか。
現状のままでは駄目だと理解していても、孤立を恐れる気持ちは苦々しくなるほどに分かります。
人間の心の美しさを醜さは、表裏一体なのかもしれませんね。

じれったいところは多々ありますが、面白いのは確か。
思わぬ人間関係の繋がりに驚いたり、遂に動き出した後半の展開が特に良かった。
解決編(?)となる下巻の締めくくりが、どうなるのか非常に気になりますね。
大どんでん返しがあると嬉しいけれど、さすがにそれは期待しすぎかな。

全貌が明らかになるにつれて、悪意に満ちた空気を吸い込んでいるような嫌な気分になります

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  生贄のジレンマ  土橋真二郎  評価B 

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生贄のジレンマ<上> 

生贄のジレンマ〈上〉 (メディアワークス文庫)生贄のジレンマ〈上〉 (メディアワークス文庫)
(2010/09/25)
土橋 真二郎

商品詳細を見る
読書期間:2011/2/22~2011/2/25

【評価……B
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 なし
ミステリー
サスペンス




 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7





 「今から三時間後にあなたたちは全員死にます。ただし生き残る方法もあります、それは生贄を捧げることです」
 卒業を間近に控えた篠原純一が登校してみると、何故か校庭には底の見えない巨大な“穴”が設置され、教室には登校拒否だった生徒を含むクラスメイト全員が揃っていた。
 やがて正午になると同時に何者かから不可解なメッセージが告げられる。最初はイタズラだと思っていた篠原たちだが、最初の“犠牲者”が出たことにより、それは紛れもない事実であると知り……。

【感想】


卒業間際の高校3年生が、巨大な陰謀に巻き込まれ学校に閉鎖されるサスペンスミステリー。
提示された情報が限りなく少ない状態で、少年少女たちが生き残る方法を模索する話です。

細かいルールは存在するものの、主なものは表紙にも書いてある以下の通り。
・志願にしろ他薦にしろ、生き残るためには生贄が必要。
・生贄を出さなかったクラスは、全員死ぬ。

シンプルが故に抜け道がなく、事実上間接的な殺し合いとなりますよね、これ。
厭らしいことこの上ない設定です。
これは、引きつけられます。

上中下の3巻構成となっているため、今回は序章の意味合いが強く、導入までが結構長めです。
進展が遅くて多少やきもきしますが、登場人物の心理描写については読み応え十分ですね。
同作者の「殺戮ゲームの館」が面白いと感じた人なら、似たタイプの話なので楽しめるかと思います。

舞台が大きくなり、ゲームに組み込まれた人数も増えたことで、長所と短所が生まれています。
長所は、やはり大局的な演出ができることでしょう。
恐怖を植え付ける上で、本物の死が重要となりますが、人数が絞られていると、それもままなりません。
学校内の同級生と一緒に閉じ込められているので、登場人物の間の交友関係も深く、伏線があちらこちらに張り巡らされています。

しかし、それ以上に残念ながら短所が目立ちますね。
その中でも顕著なのが、全員の思考が似通っているところです。
例えば、もっとパニックに陥ったり、察しの良い人間がいたりして当然だと思うんですよ。
これだけの人数がいながら、行動や思考に差が見られないのは、違和感バリバリです。

何て言うか、みんないい子ちゃんすぎるんですよねぇ。
精神的に追い込まれているのは、丁寧に描かれた文章で息をのむほどに伝わってくるんですが、もう少し打算的に動く人間がいてもいいと思います。
集団行動による安心感の描写は素晴らしいの一言なんですがね。

局所的に見れば面白いんですが、全体的には不自然さが残ります。
一学年ではなく、一クラスぐらいの人数に収めておくべきだったのではないかなぁ。
まぁ、まだ上巻ですから、作者の力量を信じて続きを読むしかないですね。

心理描写に定評があるという著者紹介文の通り、恐怖感の表現は胃が痛くなるぐらいです。
気付けば、すっかりとこの世界の中に飲み込まれており、先が気になって仕方なくなります。

この手の物語を読むたびに、自分が同様の状況に陥ったらどうするかと考察しますが、このゲームの難易度は半端じゃないですねぇ。
冷静な立場から考えてみると、生還は絶望的な状況です。
背景は全く見えないけれど、とてつもなくデカい何かということだけは分かります。
たとえ、生き残ったとしても、安息の日々は戻ってこないでしょうね……。

時間を稼ぐために生贄を要する残酷なクローズドサークル

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  生贄のジレンマ  土橋真二郎  評価B 

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