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明日へと続く記憶

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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とある飛空士への夜想曲 下 

とある飛空士への夜想曲 下 (ガガガ文庫)とある飛空士への夜想曲 下 (ガガガ文庫)
(2011/09/17)
犬村 小六

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読書期間:2012/8/21~2012/8/28

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
燃え
感動
ロマンス



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 サイオン島には「魔犬」がいる――。ヴィクトリア海海戦より半年後、帝政天ツ上軍の撃墜王・千々石は、神聖レヴァーム皇国軍の飛空士たちにそう呼ばれ恐れられていた。
 しかし、物量に劣る天ツ上の兵士たちは、レヴァーム軍の果てしない攻撃を前に次々と命を散らしてゆく。
 そして、ついに東進を開始したバルドー機動艦隊。迎え撃つべく、空母「雲鶴」に再び乗り込んだ千々石を待ち構えていたのは、最新鋭科学兵器に守られた海の要塞と、あの男の技だった……!
 魔犬と海猫――ふたりの天才は決着を求め、天空を翔る!「夜想曲」完結!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「とある飛空士」シリーズ第三部、完。

圧倒された。
ただそれに尽きます。

魔犬vs海猫、決着。
フルスロットルで翔け抜けた男達の戦いが、ここで一つ幕を閉じます。

運命というものはあまり信じないタチなのですが、この物語ばかりはそんな言葉がよぎってしまいます。
千々石武夫と吉岡ユキが出逢い、魔犬と海猫が出逢う。
二つの点を結ぶことで生まれる直線は、結末までも決めてしまったのではないでしょうか。

ストーリーは、誰もが予想した内容を辿ったものでした。
それなのに、どうしてこんなにも心を揺さぶられるのでしょう。
戦中ならば有り触れた出来事なのだとしても、陳腐だと一蹴は出来ません。
過酷な状況下で輝く命の尊さと、恐怖を乗り越えた感情の強さは、目が離せず惹きつけられます。
作中の表現にあった通り、まさしく「命を絞り尽くして」生きた者たちの物語だからこそ、胸を打つのでしょうね。

エースのエースたる所以。
千々石武夫の信念と実行に移せる実力に惚れ込みます。
確かに普段は古風なまでに不器用な千々石に対して、もどかしさを覚えてばかりで、波佐見やユキが憤るのも仕方がないなと思いました。
しかし、千々石の図太く育った根幹は、一種の憧れを抱かせる力強さがあります。
英雄を夢見る子供はもちろん、大人ですら勘違いして焦がれてしまうほどに。

そして、もう一人の主人公である海猫。
熾烈な戦いが繰り広げられる最中で、美しさすら感じさせたライバル関係。
彼が空を飛び続ける理由が、たった一言文中に登場しただけで、多大なる破壊力がありました。
魔犬と海猫だったからこそ生まれた空中舞踏だったのだと思います。

苛烈を極める戦争描写に遠慮が一切ありません。
形勢が傾き、消耗していく戦力と疲弊する飛空士たち。
それでも引かない、引くわけにはいかない男たちの執念。
お見事という他ありません。

これは果たして浪漫と呼べる代物だったのでしょうか。
戦争のやるせなさを痛感させられ、結果を見れば哀しみばかりが生まれました。
最後に紡がれた歌だけが救いであったように感じてなりません。
ただ一つ確かなのは、紛れもなく傑作だったということでしょう。

愛する人との約束を胸に抱き、宿敵との決戦に挑む男の物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への夜想曲  犬村小六  森沢晴行  評価A- 

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とある飛空士への夜想曲 上 

とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)
(2011/07/20)
犬村 小六

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読書期間:2012/5/19~2012/5/22

【評価……B+
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
ロマンス
燃え
世界観
期待感


 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8



 「美姫を守り単機敵中翔破一万二千キロ」その偉業を成し遂げたレヴァーム皇国軍の飛空士「海猫」の前に立ちはだかった最大のライバルにして、天ツ上海軍の撃墜王・千々石武夫。
独断専行により一騎打ちを仕掛け、海猫に敗れた千々石は、再戦を胸に秘めていくつもの空戦場を渡る。
「出てこい、海猫」激情の赴くままに襲撃を重ねる千々石のその背には、天ツ上の国民的歌手・水森美空の歌があった……。
空前の大ヒットとなった『とある飛空士への追憶』の舞台、中央海戦争の顛末を描く、新たなる恋と空戦の物語。上下巻で登場!

【感想】


「追憶」「恋歌」から繋がる「とある飛空士」シリーズ第三部。
こちらは、上下巻構成の上巻となります。
一応、単独でも読めますが、「追憶」の内容に大きく関わっているので、未読の方は先に読むことをお薦めします。

書き手も読み手も慣れてきた頃合いでしょうかね。
昨今のラノベには見慣れない堅苦しい文章も読み方が分かっていると苦労せず読めます。
最初は抵抗のあった専門用語や単語も気にならなくなりました。
むしろ、やみつきになりつつありますね。

どちらかといえば、スロースターターな傾向があるので、盛り上がるのは下巻からなんでしょう。
舞台の土台作りや説明に徹した内容となっていました。

「追憶」では敵側として描かれた天ツ上のエース・千々石武夫が主人公。
彼の生い立ちから始まり、海猫こと狩野シャルルとの一戦や、レヴァーム皇国と天ツ上の戦争の行方を追った内容となっています。
そして、その裏で人知れず切ないロマンスが繰り広げられています。

「恋歌」ではラノベに寄り添った印象を受けましたが、今作は原点回帰した硬派な作風となっていますね。
粗暴で不器用な男である千々石と、歌手を夢見る快活な少女・吉岡ユキ
幼い頃は、ただがむしゃらに上だけを見続けていれば良かったものが、歳を重ねることで身動きが取れなくなってしまう窮屈さが世知辛い。
時代と社会が許してくれない恋愛は、このシリーズにおける共通のテーマですね。
制限のある中でのロマンスは、もどかしさとなって心の奥底を刺激してきます。

好戦的な性格をしている主人公ということもあってか、空戦描写は増量しています。
大して知識のない自分でも、どこかで聞いたことのあるような戦局ですね。
一つの判断が局面を大きく左右する戦いに自然と手汗が湧きあがってきます。
国内でも随一の腕を持つ飛空士である千々石のエースたる所以を見せつけられました。
まだ前半ですから比較的優位な立場が続くこともあり、余裕はありますけどね。

千々石が海猫を好き過ぎて困る。
……というのは冗談ですが、戦闘中も常に海猫の影を探す千々石は、恋しているようにも見えます。
好意を寄せてくれる女性に背を向けて、何もない空を睨む彼が報われる日は来るのでしょうか。
「追憶」読者としては、海猫にも当然ながら思い入れがあるため、結末が見るのが不安でもあります。

とにかく伏線は仕込み完了。
果たして、これをどこまで仕上げてくれるのか、期待が高まりますね。

空のライバルへの渇望と切ないロマンスが交差する戦中物語

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への夜想曲  犬村小六  森沢晴行  評価B+ 

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とある飛空士への恋歌5 

とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)
(2011/01/18)
犬村 小六

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読書期間:2011/9/6~2011/9/11

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
感動
ロマンス
切なさ



 ★★★★★★★★☆☆ … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★☆☆☆
 … 7




 イスラとの休戦交渉の座に就いた空の一族の要求は、風呼びの少女ニナ・ヴィエントの身柄だった。イグナシオの取りなしにより機会を得たカルエルは、出立の日、想いの丈を彼女にぶつける。
 「このまま逃げよう、クレア。ふたりで。空の果てまで――」
 かつての力を取り戻し、愛すべき人を救った風呼びの少女。革命によりすべてを失い、追放劇の果てにかけがえのない生を得た元皇子。ふたりの選ぶ道、未来は……。
 そしてイスラは「空の果て」にたどり着く。すべての謎が解き明かされる!
 超弩級スカイ・オペラ「恋歌」、感動のフィナーレ!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


「とある飛空士への恋歌」最終幕。
憎悪を越えた愛情に気付いた少年と少女の終わりと始まりが綴られます。

怒濤の戦場を描いた3,4巻とは異なり、物語は急激にエピローグへと突入。
遂に本当の意味で相思相愛となったカルエルとクレアだが、残酷な現実は二人を引き離す。
決断に迫られた彼と彼女の選択が最大の見せ場になる――そう思っていました。

しかし、実際はそれだけで留まっていません。
イスラが旅立った本当の目的である「空の果て」に辿り着いた先が描かれています。
恋物語が中心になるかと思いきや、空の浪漫が零れんばかりに詰まっていました。
そして、感動のエピローグへと続いていきます。

心に残る物語でした。
けれども、これは賛否両論になるのも致し方がないかなぁと思いますね。
結末自体に異論を唱える人は少ないでしょうが、最後の最後で焦点がズレた感覚があります。
ここまでカルエルとクレアの悲恋で引っ張ってきただけに、スッキリとしないといいますか。
見たかったものが見れなかったという想いは、少なから残ってしまいました。

でも、これは今後の布石だと思うんですよね。
「とある飛空士」シリーズは、今後も続きそうですし、いつか本当の最終回が読める日が来るのではないかと根拠もなく信じています。

それに、丁寧過ぎるぐらいに長く語られるエピローグは、決して見劣りするものでもありません。
派手さはないけれど、まるでテレビドラマの最終回のような時の流れを感じ取ることができる、素晴らしい終わり方でした。

何だか後半はずっとエンディングテーマが流れているような感覚がありました。
作中で振り返ったり、逆に未来を見据えているため、終わりの雰囲気が随所に出ていたのが原因ですね。
そのため、読了後ではなく、読みながら余韻に浸っているような不可思議な気持ちになりました。
確かに描かれた物語こそ「あれっ?」と首を傾げたものの、内容は非常に満足度の高い仕上がりになっていたと思います。

ヘタレだったカルは、よくもまぁここまで成長したもんだなぁ。
そんなカルを支えた続けたアリエルは、本当に魅力的な心優しい女の子でした。
彼女がいたからこそ、このロマンスは成り立ったんだと思います。

夕焼けが印象的な表紙を初めて見た時に違和感を覚えましたが、なるほど、そういうことですか。
該当するシーンのことを考えると、心が沁みますね。

おそらく珍しいタイプでしょうが、「追憶」よりも「恋歌」の方が楽しめました。
この本に出会えたことを感謝します。

恋歌の旋律が空へと舞い、切なさと穏やかさが感じ取れるフィナーレ

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への恋歌  犬村小六  森沢晴行  評価A- 

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とある飛空士への恋歌4 

とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)
(2010/08/18)
犬村 小六

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読書期間:2011/1/9~2011/1/13
月間マイベスト作品

【評価……A-
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
燃え
感動
緊張感
家族愛
ロマンス

 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
 ★★★★★★★★☆☆
 … 8


 「大好きだから……さよなら」
 級友の死に苛まれていたカルエルとクレアは、思い出の湖畔で思いがけず再会する。お互いの気持ちを確かめるため、正体を明かしたカルエルだったが、クレアには別れを告げられてしまう――。
 一方「空の一族」との戦いで多くの仲間を失い、疲弊した飛空科生徒たちは、悩みと苦しみを抱えたまま、再び決戦の空へ向かうこととなる。仲間の思いを受け継ぎ、潰滅の危機に瀕している大好きなイスラを、大切なひとを守るために……。
 超弩級スカイ・オペラ「飛空士」シリーズ、驚天動地のクライマックスに突入!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


空を翔ける者たちの愛と憎しみのロマンス、第4巻。

震えた。
周囲の雑音が気にならないくらい没頭して読み耽りました。

通常、シリーズ物が途中で急激に評価を上げることは少ないはずなのですが、この作品は3巻4巻で明らかに一つ上の水準に到達しましたね。

戦争という現実の前に、学生たちが甘さを捨てざるを得ない状況になっていくのが見ていて辛い。
しかし、そんな緊迫した中で、一皮むける男たちが何と熱いことか。
「男子三日会わざれば刮目せよ」とは、まさにこのこと。
死への恐怖、逃げ出したい気持ちを抱えながらも、やるべきことを見失わない彼らが格好良すぎる。
ミツオやファウスト、ウォルフガングの勇姿にも涙しましたが、今回も同等の破壊力が胸に来ました。

空戦そのものは、戦艦や戦争に詳しくないため、細かい指摘を上げることはできません。
知識のないものからすると、説明文が的確で分かりやすく、盛り上げどころも押さえていて良かったです。
ラノベらしくない濃厚な文章で、ギリギリの戦いに何度も鳥肌が立ちました。
映像ではなく文章だからこその面白味があって、お見事だったと思います。

あらすじ通り、遂に明かされた秘密。
物語は加速し、息をつく暇もありません。
前巻同様、展開は予想の範囲内なのに、どうしてこう心躍らされるんだろうか。
伏線が見え過ぎていることに関しては気にならないわけではないんですが、これが王道の良さでしょうかね。

過去との決別があっさりと取るべきか、グダグダで情けないと見るべきか、読み手次第かな。
個人的には、周りが立派過ぎるだけで、カルエルのように苦悩するのは当然だとも思うので、適度な塩梅だと思いました。

今回キーマンとなったのは、これまで背景が謎だったイグナシオ
情報がなさすぎたので、急に湧き出てきた印象が拭えませんでしたが、良い役柄でした。
彼が居てくれて、本当に良かった。

イラストのレベルも総じて高く、見応え十分です。
登場人物が多いので、口絵でキャラ紹介してくれていると、もっと読みやすかったかな。
まともに載っているのが2巻しかいないので。

素晴らしい一冊でした。
次回の最終巻、感動のラストを期待します。

臨場感のある空戦描写が圧巻のクライマックスに打ち震えます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への恋歌  犬村小六  森沢晴行  評価A- 

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とある飛空士への恋歌3 

とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)
(2009/12/18)
犬村 小六

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読書期間:2010/7/7/~2010/7/12

【評価……A
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★★★
 … 9
人物 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
文章 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
燃え
感動
緊張感
ギャグ


 ★★★★★★★★ … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★★★★★★★
 … 9
 ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
 … 2



 8月の強烈な日射しのもと、過酷な陸戦訓練を続けるカルエルたち。戦闘への不安と焦燥が募る中、それは若き飛空士たちの間に恋愛をも育んでゆく。
 そして、イスラはついに噴き上がる海「聖泉」へ到達する。これより先は「空の一族」が支配するといわれる未知の空域。カルエルたちは、イスラ後方への索敵飛行を余儀なくされるが――。
 「いつまでもみんなと一緒に空を飛びたい」
 ただそれだけを願った少年少女たちが飛ぶ空は、美しいだけでなく残酷で……。王道スカイ・オペラ「飛空士」シリーズ、驚愕と慟哭の最新刊!!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


空に浪漫を抱く少年少女の物語、第3弾。

ボロ泣きした。

本を読んで、ここまで涙を流したのはいつ以来だろう。
涙ぐみことはあっても、とめどめなく泣いたことは数える程しかありません。
涙腺が崩壊して、泣き疲れました。

もうね、読了直後はまともに感想文なんて書けないくらい感情に整理が付かなかった。
今、思い返してみても哀しみで胸が締め付けられそうになります。

それぐらい、ツボに入りまくった話でした。
凄すぎて、あまり読みかえしたいとは思えないですね、これは。

こういっては何ですが、ストーリーはフラグや伏線があからさまで、次の展開は常に読めます。
しかし、不安に煽られながら読ませる技術といいますか、文章力が凄い。
脇役一人を取ってみても、切実なる想いが文字通り痛いほど伝わってきます。
名もなき正規兵や指揮官のセリフに幾度も全身を痺れさせられました。

だからこそ、惜しい。
明らかに浮いている設定や人物がいるのが散見されしまうのが、あまりにも勿体無い。
前半の平和な場面を表現するのはいいんだけど、アリーメンはやりすぎた。
別にギャグが面白くないとはいいませんが、この作品には相応しくなかった。
多分、普通のコメディ作品なら素直に楽しめていたんだろうなと思います。

寮長の存在も異質すぎて、受け付けません。
もう少し、どうにかならなかったのだろうか。
下手すると、それが引っかかって、せっかくの感動が全て消え去りかねませんでしたよ。

そんなgdgd気味の前半を乗り越えた先の後半の第3章、第4章はともに素晴らしかったです。
特に第3章は、完璧でした。
基本的にそれ以上がないという意味になってしまうので、本の感想では出来るだけ「完璧」という単語を使わないようにしていましたが、こればっかりは言わざるを得ません。

「追憶」では、空戦に浪漫を感じられずに熱くなりきれなかったと書きました。
今回これだけ感動させられたのは、中心にあるのが飛空機ではなく人だったからなんだと思います。
のめり込む様に燃えました。

イラストも、挿入するタイミング含めて文句なしでした。
まさか、キャラが登場しない挿絵に打ち震えることになるとは思いもしませんでしたよ。

読了後の脱力感は、言葉で表すのが難しい。
とにかく、心が消耗させられる回でした。
ホント、疲れましたよ……。
こういう話、弱いわ。

平穏な日常の終わりを告げる急転直下な転換期

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

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とある飛空士への恋歌2 

とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)
(2009/07/17)
犬村 小六

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読書期間:2009/10/6~2009/10/9

【評価……B-
発想 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
設定 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
ラブコメ ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6

――なんて自由なんだろう。
クレアの胸は喜びに満ちあふれていた。青空の下、ひとりで自転車をこぎ、カドケス高等学校飛空科の入学式へ向かう。
たったそれだけのことがたまらなくうれしい。そして今日は「彼」に逢える……。
空の果てを目指し旅立った空飛ぶ鳥イスラで、カルエルたちの新生活がはじまった。各国から選抜された個性的なクラスメイトたちと、彼らとの和気藹々な寮生活。そして飛空訓練。意を決し、クレアにペアを申し出たカルエルだったが――。
希望と不安の狭間でゆれるふたつの鼓動。回り出す運命の歯車。待望の続刊!

【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>


空飛ぶ島に乗りこみ、まだ見ぬ世界を求め旅立つ大空ロマン&ラブストーリー、第2弾。

今回はクレアにスポットを当てらています。
この物語は、さながらダブル主人公の流れで展開するようですね。
両サイドの過去や事情を見せつけられる読者にとっては、当人たちの平和的なやり取りの裏にある哀しい事実に切なさを感じずにはいられません。

1巻でじっくりと下地を作っているなぁと感じましたが、2巻でもそれは変わらず。
丁寧過ぎて、少々スローペース過ぎるかな。
余程の長編にならない限り、準備期間が長すぎるように感じました。
設定やキャラは粒揃いですので、もう少し期待を煽るようなストーリー展開でもいいかも。
文章が上手いおかげでスルスルと読めるんですが、あっさりとしすぎた印象です。

ヘタレ代表のカルエルが、クレアやアリエルと仲良くやっているところをみると、妙な嫉妬みたいなものを覚えます。
お前、なんでもありかよ!とツッコミたくて仕方ないw
今後成長する(はず)と分かっていても、このヘタレっぷりはどうなのよと思わないでもないわけで。
クレアもアリエルもイイ娘すぎて、カルエルには勿体無いなー。

まぁ、全体的に無難な内容だったかな。
雰囲気が重いところ軽いところがハッキリしすぎているのは気になりました。
学園モノコメディは大好きなんですが、ノリがちょっと合わなかったかなぁ。
そろそろ溜め込んだ甘い想いを吹き飛ばすような急展開を期待したいところです。

登場人物紹介に一冊費やした内容で物足りなさを感じます

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への恋歌  犬村小六  森沢晴行  評価B- 

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とある飛空士への恋歌 

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)
(2009/02/19)
犬村 小六

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読書期間:2009/7/28~2009/8/3

【評価……B
設定 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
期待度 ★★★★★★★★☆☆
 … 8

「これはきれいに飾り立てられた追放劇だ」
数万人もの市民に見送られ、盛大な出帆式典により旅立ちの時をむかえた空飛ぶ鳥、イスラ。
空の果てを見つけるため――その華やかな目的とは裏腹に、これは故郷に戻れる保証のない、あてのない旅。
式典を横目に飛空機エル・アルコンを操縦するカルエルは、6年前の「風の革命」によりすべてを失った元皇子。彼の目線は、イスラ管区長となった「風の革命」の旗印、ニナ・ヴィエントに憎しみを持ってむけられていた……。
『とある飛空士への追憶』の世界を舞台に、恋と空戦の物語再び!

【感想】


ネット上で評判となり、増刷のかかった「とある飛空士への追憶」の新シリーズ。

とはいえ、前作は一冊完結モノであるので、物語的な繋がりはありません。
同じ世界観というだけなので、今作から手をつけても大きな問題はないかと思われます。
作風は同じでも、作品内の雰囲気は少々緩くなっていて、ちょっと違いますしね。

「追憶」とは異なり、明らかに最初から長編大作を匂わせるような丁寧な描きぶり。
よほど前作が売れて、編集部の期待が高い作品なんでしょうね。
登場人物の心理描写がこと細かく推移していく様が描かれており、書きたいものが書けているんだろうな感じられます。

ストーリーは、ある一人の少年の没落から始まります。
幼き心に大きな傷跡を負った主人公・カルエルは、絶望の中でたった一つ残された小さな光――飛空士になるという夢を見つけます。
数年の時を経て、成長したカルエルは、何の因果か、空の果てを探す旅に参加することに。
そこにはカルエルを絶望の淵に叩き込んだ張本人であるニナ・ヴィエントの姿がありました。
復讐の念を胸に抱きつつ、夢と浪漫に思いをはせる一人の少年の空物語です。

一巻まるまる使ってのプロローグですね。
実に王道的な展開で、安心感を得ながら物語に没頭できます。
幼少時代の背景がこれからの土台となって、運命の歯車が回り始めていく……といったところで終ってしまいます。

完成度という点においては、一冊完結で綺麗に締めている「追憶」には遠く及びません。
しかし、素材は悪くないどころか、かなりいい感じ。
伏線を上手く活用してくれるよう期待したいところです。

あと個人的に、ミリタリー用語が減ったのは読みやすくて嬉しかった。
取っ掛りがつかみづらかった文章も改善されていて、ラノベらしくサクサク読めました。

キャラクターも魅力的なのが多くて好感触。
カルエルのヘタレナルシストっぷりは一歩間違えれば腹立たしいキャラになるところを、義妹のアリエルが読者の代わりにツッコミという名の罵倒をしてくれるところが素晴らしい。

そして、森沢晴行さんの絵はやっぱり可愛くていいなぁ。
ドリクラのキャラデザ担当といえば分かる人もいるんじゃないでしょうか。
イラスト枚数もそれなりにあって、非常に見応えがありました。

刊行ペースが今のところ5ヶ月周期と追いやすいのもいいですね。
「追憶」とはタイプは異なりますけれど、面白くなりそうです。

作者曰く、「天空翔るロミオとジュリエット」

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

タグ: 書評  とある飛空士への恋歌  犬村小六  森沢晴行  評価B 

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とある飛空士への追憶 

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い)とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い)
(2008/02/20)
犬村 小六

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【評価……B
舞台 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆
 … 7
人物 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆
 … 6
挿絵 ★★★★★★★★☆☆
 … 8
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆
 … 7
ロマンス ★★★★★★★★☆☆
 … 8

「美姫を守って単機敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。次期皇紀ファナは「光芒五里に及ぶ」美しさの少女。そのファナと自分のごとき流れ者が、ふたりきりで海上翔破の旅に出る!?――圧倒的攻撃力の敵国戦闘機群がシャルルとファナのちいさな複座式水上偵察機サンタ・クルスに襲いかかる!蒼天に積乱雲がたちのぼる夏の洋上にきらめいた、恋と空戦の物語。

今年刊行されたラノベの中でも随一の評判の今作。
各所で大絶賛で非常に気になり手を出してみました。

大筋は、二つの大国が戦火を轟かせる中、敵本国付近にある領土から本国へ次期皇紀を無事に届けるために、単機で敵包囲網を突破するというもの。

うーむ、何というか感想を書くのが難しい本だなぁというのが読了後の印象ですね。
感情はいろいろと渦巻いているのですが、言葉にし辛いといいますか。
ある程度安定した面白さはあると思うので「つまらなかった」という人は少ないかと思います。
しかし、これを傑作だと手放しで誉めるには、一つ条件を満たす必要性がありますね。

それは「空戦」に浪漫を感じられるかどうか。

漢なら当然だろう!と言われそうですが、戦争モノに食指が伸びない人間なんですよねぇ自分。
熱いバトルは大好物ですけど、戦闘機やら機関銃やらの設定などは正直なところ興味が持てないんです。
残念ながら、そんな人間でも燃えさせてくれるほどの内容ではありませんでした。
むしろ、いかにもな用語が多くて場面を想像するのが難しかったです。
まぁ、自分が戦争モノを読み慣れていないだけかもしれません。というか、きっとそうなんでしょうね。

逆に、戦火の激しい中、単機敵中翔破するというシチュエーションに燃えられる人にとっては、至高の逸品になるんじゃないでしょうか。
敵機の大群から放たれる機銃弾を間一髪のところで避け続けるスリルにゾクゾクできます。
ライトノベルでここまで濃厚に空戦を描いたものというのは少ないように見受けられますね。

ストーリーは、オーソドックスで一本道。
良くも悪くも安定しているので、展開が読みやすくて意外性は少ないかと。
最後がどう着地するのかが最大の注目点でした。

物語の性質上、登場人物は限られます。
ほとんど主人公・飛空士シャルルヒロイン・次期皇紀ファナの二人だけで話が進みます。
どちらも芯が通った真っすぐなキャラクターで、好感のもてる造形ですね。

階級の底辺に属するシャルルと、ピラミッドの頂点に位置するファナの身分違いの恋物語は見ていてヤキモキされられます。
心の奥では互いに求めあっているのが分かっているのに、時代がそれを許さないことに胸の苦しさを感じます。
そう単純な問題ではないというのは読者の観点からでも分かるんですが、それでも結ばれて欲しいと願わずにはいられません。
結末は……うん、これで良かったと思います。
切なさが残る読了感があり、あとがきがないこともあってしばらく余韻に浸りたい気持ちになりますね。

表紙の凛々しい表情のファナもいいですが、口絵にある可愛らしい笑顔も素敵です。
カラーイラストにある水着姿にも目を奪われます。
挿絵も素晴らしく、個人的にはかなり好みの絵ですね。
だからこそ、絵が見たい場面で挿絵がないことが多かったのは、ちょっと勿体無かったかな。

文章は硬めで、説明文が長いのが特徴的。
僕はこれに面を食らっちゃいまして、序盤は読むのが辛かったですねぇ。
本を開いた左右の2ページにセリフが1つもないということが珍しくなく、長文がギッシリと詰められているのにはいささか息苦しさを感じました。
ストーリー的には本を読まない人に薦めたくなるようなものですが、文章の難解度がネックになってきてしまいますね。

総合的な評価としては、面白かったといえます。
ただ、期待し過ぎた反動で若干評価が落ちちゃったところがあるのは否めませんねー。
絶賛する人がいるのは十分理解できるなと思いつつも、自分の趣味からは外れていたなというのが結論ですかね。

ところで、これも各所で指摘のあったことですが、雰囲気が『ラピュタ』や『紅の豚』といった以前のジブリに似ているところがあります。
もし映像化されたら、今以上の評判になるだろうなーと思いますね。
小説ではハマりきれなかったですが、この作品を映画で観たら大絶賛しそうです。
ラストシーンは是非アニメで観てみたいなぁ。

あと続巻の話があるそうですが、これはこのまま終わらせておくべきだと思う。

テーマ: ライトノベル

ジャンル: 小説・文学

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