円環少女 1 バベル再臨
2012/04/17 Tue 23:59:30 [edit]
![]() | 円環少女 (角川スニーカー文庫) (2005/08/31) 長谷 敏司 商品詳細を見る |
【評価……C+】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 文章 ★★★☆☆☆☆☆☆☆ … 3 挿絵 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 | SF 構成 ロリ | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
幾千もの魔法世界から<地獄>と呼ばれ最も忌み嫌われた場所――地球。なぜんら、本来自然なはずの魔法現象を消滅させてしまう恐るべき力を、人類だけが持っているからだった。 元の世界で犯した罪のため<地獄>に堕とされた一人の少女魔導師・鴉木メイゼル。彼女の受けた刑罰は、<地獄>で敵対魔導師100人を倒すこと――。 <円環大系>の使い手が、誰も成し得たことの無い過酷な運命に立ち向かう!灼熱のウィザーズバトル開幕!! |
【感想】
SFとファンタジーが融合された現代モノの魔法バトル小説、シリーズ第1弾。
コアな人気を誇る作品で、シリーズ完結を機に読み始めてみました。
文章が難儀ってレベルじゃねえー!
ライトノベルに限らず、一般小説でもここまで苦労した覚えはありませんよ。
感覚としては、もはや古文です。
最初は、自分の読解力がないだけかなと思っていました。
単語の選別は、硬質な美がありましたしね。
しかし、それだけでは片づけられないぐらい明らかにおかしな文法が散見されます。
SVO型の文章の方が少ないくらいで、主語と述語が繋がっていません。
おかげで、どれだけ物語が良くても魅力を半減してしまい、非常に残念なことになっています。
そこに加えて設定も難解かつ作品内の専門用語も多用しており、親切心なぞ欠片も見当たりません。
説明が説明になっておらず、幾度となく文章を読み直しさせられました。
せめて文章が一般的なものであれば、理解も深まったんですけどねぇ。
一部の者だけが魔法と数多の異世界があることを知っている世界観は、別段珍しくはありません。
ただ、その魔法大系が独特で、センスを感じます。
特に面白いのが、地球に住む人間には観測するだけで魔法効果を消滅させる力があり、それを嫌う魔導師たちが地球を<地獄>と呼ぶ設定。
一般人が魔法の存在に気付いていないことと、魔導師たちが公に力を発揮できない理由をまとめて論理づける視点が、実に巧妙で納得させられました。
キャラの登場数がやたらと多いのも、混乱を誘う要因の一つですね。
設定も物語にも言えることなんですが、詰め込み過ぎてしまう癖でもあるんでしょうか。
巻数を重ねた後に来るべきクライマックスを、初っ端から持ってきた感じがしました。
おかげで、ストーリーは面白味もあったんですけど、設定ありきで構成が雑な部分もあったり。
おそらく、ある程度ならした後は、敷き詰めた伏線が誘爆するように広がっていくことになると思われるので、シリーズが進めば進むほど楽しめる類の作品なんでしょう。
それと引き替えに、敷居の高さが相当なものとなってしまいましたね。
感情移入するほど没頭は出来なかったのですが、それでもヒロインの鴉木メイゼルだけはキャラが立っていたと思います。
見た目小学生の女の子には重すぎる業を背負っているにも関わらず、辛そうな素振りを見せません。
主人公の武原仁を「せんせ」と呼び慕う、ちょっぴり背伸びしたところが可愛かったです。
まぁ、ロリには興味がないので、個人的にはロマンスは必要ないですけどね。
素材の良さは間違いないと思います。
ただし、調理方法が特殊で、人を選ぶどころか、人が試されるような作品です。
とにかく次から次へと生み出される設定の波にドップリと漬かるか、溺れてしまうか。
「このライトノベルがすごい!2012」で少数の支持者に投票された結果、総合4位に輝いた作品ですが、これはとてもじゃないですけど、万人にはお薦め出来ません。
緻密な作中設定が大好きだという人は、ハマれる可能性があるので、挑戦してもいいかも。
整合性があるかどうかは保証しかねますがね。
330Pの本を読み終わるのに半月も要するとは思わなかったなぁ。
物語的には気になるので、2巻は読むつもりですが、文章が改善されていないと厳しいですねぇ。
▼ | 魔法や舞台の設定が激流の如く書き連ねており、難解な文体が独自の作風を生み出しています |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 円環少女 長谷敏司 深遊 評価C+| h o m e |