楽聖少女
2013/02/13 Wed 23:59:57 [edit]
![]() | 楽聖少女 (電撃文庫) (2012/05/10) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | 音楽 世界観 ラブコメ ファンタジー | ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5 |
高校二年の夏休み、僕は悪魔メフィストフェレスと名乗る奇妙な女によって、見知らぬ世界へ連れ去られてしまう。そこは二百年前の楽都ウィーン……のはずが、電話も戦車も飛行船も魔物も飛び交う異世界!? 「あなた様には、ゲーテ様の新しい身体になっていただきます」 女悪魔の手によって、大作家ゲーテになりかわり、執筆をさせられることになってしまった僕は、現代日本に戻る方法を探しているうちに、一人の少女と出逢う。稀代の天才音楽家である彼女の驚くべき名は―― 魔術と音楽が入り乱れる、めくるめく絢爛ゴシック・ファンタジー、開幕! |
【感想】
19世紀初頭で巻き起こるクラシック・ファンタジー。
魅惑的な悪魔により200年前もの世界へと飛ばされてしまった主人公。
彼は本来の名前を奪われ、文豪ゲーテとして生きることを余儀なくされてしまう。
史実とは異なる世界に困惑しながらも順応する彼は、ある一人の音楽家と出逢う。
その少女の名は、ルドヴィカ・ファン・ベートヴェン。
稀代の天才音楽家は、何故か可憐な女の子の姿をしていた――という導入から始まるストーリーです。
著者の音楽を扱った作品といえば、名作と名高い「さよならピアノソナタ」。
個人的には、キャラクターが肌に合わず、2巻で切ってしまった作品でした。
しかし、音楽の造詣は目を瞠るものがありましたし、音の表現方法も耳を澄ませば聞こえてくるかのような文章が秀逸だったと記憶しています。
不安もありつつも期待を込めて、この作品を手に取ってみました。
一言でいえば、面白かったです。
ただ一つ注文をつけるのであれば、味付けが好みではなかったかなという感じ。
これは「さよならピアノソナタ」ではなく、舞台が変わった「神様のメモ帳」ですね。
まるであえて真似ているのかというぐらい共通項が多いです。
ピンチからの脱却や起死回生の作戦などといった構成も似通っています。
主人公・ユキとヒロイン・ルゥが、「神様のメモ帳」に登場するナルミとアリスそのままです。
一見何も能力を持っていない受け身体質かと思いきや人を纏め上げたり指導することに長けたツッコミ役の主人公と、14歳という幼さを絶妙に残す年齢で傲岸不遜ながらも時々ツンデレを顔見せする口調が「~だよ」「~なのかい」の僕っ子ヒロイン。
キャラの描き分けが出来ない作家さんではないので、意図的なんでしょうね。
いくら好評を得たからと言っても、もう少し変化を見せてくれても良かったんですが。
おかげ様で、大半のやり取りが既視感を覚えるものでした。
本作の売りは、古典派時代の音楽家が意外な形で登場するところにあります。
ベートーヴェンが女の子だったというだけでなく、世界史の教科書に出てくる有名人が妙な設定を付随してゴロゴロと出てきます。
歴史上の偉人を面白可笑しいキャラに仕立てており、シュールかつコミカルな笑いに誘われます。
またタイムスリップ物としても優秀で、歴史を知っている優越感が味わえるのも良いですね。
主人公の知識量に驚かされますが、興味のある分野であれば有り得る話なのかな。
ストーリーのオチは、綺麗だったなと思います。
それだけに盛り上がりどころの異能バトルが浮き過ぎです。
悪魔メフィストフェレスからして何でもありみたいな能力を持っていますけど、だからといってこの作品にバトルは必要なかったのではないでしょうか。
燃える、熱い展開を描きたいのであれば、純粋に音楽で魅せて欲しかった。
それだけの技量も持っていますし、実際中盤では圧倒された場面もありましたから。
岸田メルさんの描くゴシック調のイラストは、作品との相性抜群ですね。
可愛い女の子だけではなく、彫の深い顔の男性も見事に描ききっていました。
▼ | 文豪と作曲家で巡り合うことで生まれる新たな音楽とファンタジー性のある物語 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 楽聖少女 杉井光 岸田メル 評価B神様のメモ帳8
2011/12/14 Wed 23:30:52 [edit]
![]() | 神様のメモ帳〈8〉 (電撃文庫) (2011/09/10) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……A-】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | ミステリー | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
年末年始、四代目を悩ませていたのは頻発する雀荘荒らしだった。なぜか麻雀打ちとして駆り出された僕は、雀荘で奇妙な男と出逢う。雛村玄一郎――なんと四代目の父親! 緊迫する親子勝負の裏で、雀荘荒らしをはじめ、無関係に見えたいくつもの事件が結びついていき、やがてよみがえるのは一年前のあの悪夢。 「あの事件をもう一度、完膚無きまでに終わらせるんだ」 アリスが、テツ先輩と四代目が、そして彩夏までもが、赤い悪夢の残り滓に突き動かされて走り出す――加速するニートティーン・ストーリー、第8弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
ニート探偵物語、第8弾。
アニメ化真っ最中の時期に発売されたのは、偶然ではないでしょうね。
あー、読み応えあるなぁ。
アニメの内容は残念でしたけど、やっぱりこのシリーズは面白いです。
電撃MAGAZINEに掲載された「三代目襲来」に書き下ろしを2編加えた一冊。
各章ごとにある程度話がまとまっているため短編集のようにも感じられますが、最後に収束していく物語の伏線がしっかりと全体に張られているため、長編としても読めなくないですね。
全3章を無理矢理まとめたのではなく、あえて別々の形の話を組み合わせることで一つの全体像を表現してみましたという感じ。
コメディとシリアスのバランスがよく、満足度が非常に高い本でしたね。
原点回帰となる物語には、強烈な牽引力がありました。
終わっていなかったあの事件を今度こそ締めるために、暗中模索ながらも足掻こうとする彼や彼女らの心情が痛いほどに伝わってきます。
正しいことを選択しているつもりなのに、己と大切な人を傷つけ、衝突してしまう。
何もかもが上手くいくなんてことはなく、ただひたすらに悲劇を繰り返す。
それでも、真実を知ることで、過去と向き合い前に進もうとする彼らの姿が目に焼きつきました。
もどかしいほどに、本当にどうしようもなく不器用な人間達ばかりですね。
一人一人のスキルは、カタギとは比べ物にならないのに、頑なまでに心の柔らかいところを誰にも触れさせようとはしません。
いや、だからこそ独りで全て片付けようとしてしまおうとするのか。
そんな人間を繋ぐナルミは、ニート探偵団や平坂組にとって、切り離せない懸け橋となりましたね。
ナルミ自身、根本的な逃げの性格は改善されていませんが、初期のような情けないだけの人間ではなくなりました。
彼の両親と出逢う第1章のエピソードは、四代目の信念と優しさが滲み出るような良い話でした。
ナルミの発想は、強引過ぎるものでしたけど、それが許せてしまえる世界というのが凄い。
あと、想像していたよりも大阪人の血が濃い両親が面白かったですね。
このまま眠らせるには勿体無いキャラだなと思いました。
4巻以降出番が極端に減った彩夏に再びスポットが当てられたことが、何よりも嬉しい。
ヒロイン的なポジションを剥奪され、脇役というかモブキャラに近いものがありましたからね。
しかし、事ある毎に記憶喪失前の彩夏と比較してしまう自分がいます。
同じ人間なのに、一度死んでしまったんだなぁと、しみじみと痛感してしまいます。
ここまで明確なまでに書き分けられる技量は素晴らしいの一言ですね。
毎回楽しんで読んでいますが、そろそろ伏せられたままのアリスの事情が知りたいところ。
もちろん終わって欲しいわけではないんですけどね。
▼ | シビアな現実と向き合い、大切な人との絆を護ろうとする話 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 神様のメモ帳 杉井光 岸田メル 評価A-神様のメモ帳7
2011/10/14 Fri 23:59:23 [edit]
![]() | 神様のメモ帳〈7〉 (電撃文庫) (2011/07/08) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | ミステリー 家族愛 | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
クリスマスが近づき、探偵事務所のそばにあるホームレス公園の改装工事が始まろうとしていた。そんなある日、事務所にやってきた依頼客は、なんと売り出し中のアイドル歌手。子供の頃に失踪した父親そっくりのホームレスをその公園で見かけたのだという。 父親捜しの過程で浮かび上がる、エアガンで武装したホームレス狩り集団。そして、なぜか探偵団を離脱する少佐。 「これは自分ひとりでかたをつける」 やがて――事件が起きる。僕が探偵助手として体験した中で、最も奇怪なあの事件が……戦慄のニートティーン・ストーリー、第7弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
自称ニート探偵、第7弾。
アニメ放送開始直後に刊行されたところをみると、狙って出したようですね。
売り上げは期待したほど伸びなかったようですけども。
今回は、ちょっと雰囲気が違う話。
ニート探偵団と交流のあるホームレスたちの中に、失踪した父親がいるという話が舞い込む。
その話を持ってきたのは現役のアイドルだった。
ナルミは二人の中を取り持とうとするが、そんな時に事件が起こる……という流れ。
これまでと異なるアットホームな温もりと哀しい冷たさを感じる物語でした。
元々このシリーズのストーリーは、スカッとするものは皆無です。
全てが丸く収まるハッピーエンドなんて見たことがありません。
アリスは死者の代弁者と名乗り、墓を暴くことを自虐的に捉える傾向がありますけど、重くのしかかる哀しみの中で、僅かな希望を見出してくれる大事なキッカケだと思います。
救われるとまではいかずとも、しばらく歩みを止めた後、またもう一度歩き出すことが出来るのは、ニート探偵やその助手のおかげでしょう。
ヤクザとか中国マフィアとかクスリといった、きな臭い話が関わっていないのが何とも珍しい。
ニート探偵団で唯一メインを張っていない少佐のターンがやってきましたが、立ち位置が微妙ですね。
父娘の親子ストーリーと、少佐のルートが別々すぎて、溶け込み合っていません。
もう少し積極的に絡み合う物語だと良かったんですけどね。
内容的にも、もどかしさが募るもので、ストレスは感じませんけど、モヤモヤとしました。
心情的に理解は出来ても納得は出来ない類ですね。
それにしても、ナルミの次なるターゲットはアイドルですか。さすがッス。
この天然ジゴロ、着々と人脈を開拓していってますね。
下っ端から兄貴と呼ばれるのも似合ってきたように感じますよ。
岸田メルさんのイラストは、初期から随分とテイストに変化が見られます。
好みの差はあるでしょうけど、今も昔も魅力的な絵だと思いますね。
ただ、アイドルの衣装が古臭いのは気になりましたけど。
▼ | 優しさと残酷さが入り混じる結末に、複雑な想いが胸を埋めつくします |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 神様のメモ帳 杉井光 岸田メル 評価B+神様のメモ帳6
2011/05/03 Tue 23:49:59 [edit]
![]() | 神様のメモ帳〈6〉 (電撃文庫) (2011/02/10) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……A-】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | ミステリー 世界観 | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★★★☆☆ … 8 |
高校の文化祭が押し迫る晩秋、ラーメンはなまるにやってきたのは、チャイナマフィアの後継者兄妹。なんとミンさんの親戚だという。ミン父・花田勝の引き起こした事件をきっかけに、なぜか持ち上がるミンさんの縁談。それに憤然と立ち上がったのは、ヒロさんだった。 「おれからの依頼。この婚約、ぶっ壊してくれ」 ヒモのくせして、ついにミンさんに本気!二転三転の結婚騒動を描いた「電撃MAGAZINE」掲載作に、ヒロさんの師匠初登場の書き下ろし短編『ジゴロ先生、最後の授業』を加えた、大ボリュームのニートティーン・ストーリー第6弾! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
ニート探偵第6弾。
帯にてアニメ化が発表され、これから活気づくことが期待される人気シリーズです。
今回は、ニート探偵団のうちの一人であるヒロさん、そしてラーメンはなまるの現店主であるミンさんを主軸に置いたお話……であるのは間違いなのですが、それだけでは終わりませんでした。
冒頭やあとがきで語っている通り、これはある一人の男の物語でした。
熱い、切ない、楽しい……作品を評価する上で、色々な形容詞がありますが、この本の場合、面白いというシンプルな言葉が一番ピッタリときます。
どっぷりと漬かることのできる物語は、読了後の充実感が素晴らしく、とても良い時間の過ごし方をしたなぁという満足感を得られます。
ヘタレ気味のナルミが致命的なミスを犯し、終盤で起死回生の案を提示する流れは、もはや様式美。
今回はミステリー要素は少なめで、伏線が分かりやす過ぎたので、途中で作戦なども予想がついてしまいましたが、最後のオチは死角から殴られたようにガツンと来ました。
ううむ、これは何とも言葉にし辛い。
ニート探偵団を始めとしたキャラクターの立ち具合は、まさにお見事。
登場人物が纏う空気さえも感覚的に伝わってくるほどに、明確に色付けされた描写が凄い。
ナルミなんて、高校生活を送っていることに違和感すら覚えるほどニートが様になってきましたしw
アリスのデレ期がますます加速していて、ナルミに対する挙動が取り乱すことが多くなってますね。
相変わらず犯罪的なまでの鈍感っぷりを発揮しているナルミですが、彩夏推しの立場ということもあって、あまり腹が立ちません。
本人は無意識の天然系ジゴロになりつつありますが、果たしてこれは成長と呼べるんでしょうかw
彩夏をもっと絡めた青春模様が見てみたいなぁ。
今となっては、どちらもほとんど意識していないようで、寂しい気持ちになります。
アリスが妬くような展開になれば面白いんですがね。
書き下ろし短編である「ジゴロ先生、最後の授業」も良かったです。
ヒモも、ここまで来ると屑を通り越して立派に見えるというのが、よく分かりましたw
岸田メルさんのイラストは、塗りが丁寧で惹きこまれます。
微妙にリアルらしさも入り混じっていて、無二の絵師さんだなぁと思わされます。
さて、次は順番で行けば少佐の番なのかな?
アニメ直前に発売されるそうですが、待ち遠しいですね。
▼ | ミンさんの結婚騒動の裏で泥臭く躍動する男達の格好良さに惚れます |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 神様のメモ帳 杉井光 岸田メル 評価A-神様のメモ帳5
2010/07/03 Sat 22:59:23 [edit]
![]() | 神様のメモ帳〈5〉 (電撃文庫) (2010/05/10) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……B+】
発想 ★★★★★★★★☆☆ … 8 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8 人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8 文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | ミステリー 青春 燃え | ★★★★★★☆☆☆☆ … 6 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 |
ニート探偵アリスとその助手である僕は、深刻な事件の合間にも、ばかばかしくてつまらない、けれど忘れられない揉め事にいくつも巻き込まれている。今回はそんな僕らの事件簿から、いくつかをご紹介しよう―― ミンさんを巡るストーカー事件「はなまるスープ顛末」、アリスご執心の酒屋を襲った営業妨害事件「探偵の愛した博士」、平坂組のバカども総勢を巻き込んだ誘拐事件「大バカ仁侠入門編」に、特大100ページ書き下ろしのオールスター野球騒動「あの夏の21球」を収録。 泣き笑いの日常満載のニートティーン・ストーリー、待望の短編集が登場! |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
ニート探偵、初の短編集。
不器用な人間達の甘さとほろ苦さが混ざり合った、味わいのあるエピソードが収録されています。
あー、面白かったぁー。
思わずそう独り言を呟いてしまうほど、満足させられる本でした。
短編ということで、いつもと比べると物語はシンプルかつコメディ寄りなものとなっています。
紙幅が限られていると、裏をかかれることもなく、事件も推理しやすくなってしまう欠点がありますが、それでもなお十分すぎる読み応えがあり、各エピソードの読了後は充実感に浸ることができます。
雑誌掲載した名残で、短編内で初出するキャラに軽い説明が入るのは分かっていてもクドかったけれども。
「はなまるスープ顛末」
ラーメン「はなまる」の店主であるミンさんのおっぱいの話。
……いやいや、語弊はないですよ、ええ!
基本的にミンさんは性格きつめですから、たまに優しくされると惚れてしまいます。
これがギャップ萌えの威力かッ……!
まぁ、普通にイイお話でした。
「探偵の愛した博士」
ミンさんの同窓生が経営している酒屋の酒に異物が混入させられた話。
アリスが酒屋の店主に恋心を抱いていると勘違いするナルミには違和感あったなぁ。
いつもの鈍感っぷりからすると、アリスに対して特別な感情は一切ないと思っていたので。
「大バカ任侠入門編」
サブタイトルの時点でアホな話と思っていました。
予想通り平坂組のおバカな面々のやり取りが笑えたんですが、それだけではなくて、ストーリーとしてもきちんと成り立っているのが凄い。
幸せを築くことがどれだけ難しいことなのかを教えてくれる、いつものニート探偵らしい話でした。
「あの二十一球の夏」
ひょんなことから野球をすることになるニート軍団たちを描いた書き下ろし。
あらすじ通り、懐かしい顔も含めて全員集合となる贅沢な短編でした。
物語の畳み方が秀逸で、爽快感と笑いのあるオチが素晴らしかった。
しかし、ナルミの青春は何故かいつも相手がヤクザだなぁw
今回の短編集で、このエピソードが一番面白くて熱かった。
このシリーズは、作品内の雰囲気を感じるどころか、読書中は、その世界に引き込まれてしまいますね。
自分もナルミを通して、ニートたちの仲間になった気分が味わえるのが魅力的です。
楽しさも緊張感も自分自身が体感しているようで、夢中になれます。
挿絵も、一部ギャグ絵を除き、濃いタッチで良質なものばかりでした。
岩男と電柱の絵がありましたが、ミンさんのおっぱいとは別の意味で頬が緩まされますw
唯一残念な点を挙げると、彩夏の出番が少なかったこと。
アリス好きにはたまらない回でしたでしょうが、彩夏好きには物足りませんでした。
彩夏との甘く切ない青春話が欲しいなぁ。
▼ | 引きこもりやニートが誰かの幸せを守るために奮闘する心温まる短編集 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 神様のメモ帳 杉井光 岸田メル 評価B+神様のメモ帳4
2009/10/20 Tue 01:53:10 [edit]
![]() | 神様のメモ帳〈4〉 (電撃文庫) (2009/07/10) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……A-】
設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8
物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8
人物 ★★★★★★★★★☆ … 9
文章 ★★★★★★★★☆☆ … 8
挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8
オススメ度 ★★★★★★★★☆☆ … 8
ミステリー ★★★★★★★☆☆☆ … 7
燃え ★★★★★★★★☆☆ … 8
あの男が戻ってきた――四代目率いる不良少年チーム・平坂組の、もう一人の創設者、平坂。 折しも四代目は音楽イベントの運営に乗り出し、夏休み中の僕もその手伝いに駆り出される。しかし平坂の指示で動く不良たちが次々に妨害工作をしかけ、やがて平坂組との全面対決に突入する。 四代目は平坂との間になにがあったのかも語らず、僕らの協力を突っぱね、かつての友とひとりで戦おうとする。 「四代目は間違っている。ぼくは今、探偵の禁を犯す」――ニート探偵アリスがえぐり出す、五年前の悲劇の真実とは!? 白熱のニートティーン・ストーリー、第4弾。 |
【感想】<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
ニート探偵第4弾。
3巻で最終巻か?という噂もあったから、続いてくれて良かったです。
まさに隙のない良作。
久しぶりの今シリーズでしたが、クオリティは落ちることなく、むしろ面白くなって帰ってきました。
話が気になって、夢中で読みふけりましたよ。
今回の主役は四代目こと雛村壮一郎。
かつて、四代目と共に組を立ち上げた人物・平坂が戻ってきたところから物語が始まります。
何故か四代目が運営するイベントを潰そうとする平坂と知り合ってしまったナルミは、対立の渦中に巻き込まれていく……というお話。
いやはや、熱いなーこれ。
四代目と平坂の絆、諦めないナルミの想い、そして何より四代目とナルミの信頼関係に胸が熱くなりました。
他のニート達がハイスペック過ぎるだけで、ナルミも相当動ける範囲が広くなったなぁ。
精神的に不安定なところはあるけれど、もうこのまま普通に社会に出ることもできるよ、きっと。
初期の頃はヘタレっぷりに腹が立ったこともありましたが、随分と成長しましたね。
素直にカッコイイと思いました。
しかし、それとは反比例するかのように作中ではナルミの罵られようが加速しています。
みんなで寄ってたかってナルミを口撃するのが酷過ぎて面白い。
素でナルミを追い詰める彩夏やミンさんの毒舌は特に最高。
彩夏、こんなに黒いキャラだったかなぁ……?w
まぁ、確かにナルミが格好良く見えるのは、相対的に平坂組の面々がおバカすぎるという点もありますね。
あの仁侠バカたちが喋るたびに笑えて仕方ありません。
コイツら大好きだ。
逆にアリスは、ナルミに対して好意がだだ漏れ状態で、ニヤニヤとさせてくれます。
ツンデレと鈍感な二人だから、発展するのには時間かかるだろうなぁw
岸田メルさんのイラストは、さらに少し変わってきていますね。
どちらも綺麗な絵で素晴らしいことには間違いありません。
やっぱりこのシリーズは好きだなー。
次は誰の話になるのは今からワクワクします。
個人的には、ミンさんの話が早く読みたいな。
▼ | 隠された優しい嘘を暴く探偵物語 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 神様のメモ帳 杉井光 岸田メル 評価A-神様のメモ帳3
2008/12/08 Mon 06:10:17 [edit]
![]() | 神様のメモ帳〈3〉 (電撃文庫) (2008/06/10) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……B+】
舞台 ★★★★★★★★☆☆ … 8
物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
オススメ度 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
ミステリー ★★★★★★★☆☆☆ … 7
彩夏が戻ってきた。冬の事件の後遺症で、僕との過去をみんな忘れて――。 ぎこちない関係のまま、僕らが昔通りの園芸部の活動を再開した矢先、僕は生徒会長に呼び出される。 「園芸部は廃部にするから」 廃部の理由である、設立時のうさんくさい経緯を調べていくうちに、四年前の不可解な生徒死亡事件が浮かび上がる。その容疑者は、テツ先輩だった。口を噤み協力を拒否するテツ先輩とニート探偵団を敵に回しアリスと僕は捜査を始める。 はたして事件の真相は、そして彩夏と僕の居場所である園芸部の存続は? 緊迫のニートティーン・ストーリー、第3弾! |
【感想】 <前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
ニート探偵第3弾。
世間一般の使われているニートの定義とは、少し異なる若者たちの物語。
久しぶりの今シリーズですが、一時は打ち切りかと残念に思っていました。
「さよならピアノソナタ」が単発物で終わるかと思いきやシリーズ化されましたからね。
さらに他レーベルでも執筆している中、この「神様のメモ帳」も書き上げるんですから執筆速度はラノベ作家の中でも随一ではないでしょうか。
ただ、読む前から一つの不安が自分の中にありました。
「神様のメモ帳」も「さよならピアノソナタ」も2巻にて、主人公があまり好きになれなかったので、もしかしたら作者との相性が悪いのかなぁと感じていたんです。
設定に惹かれるものがあっても、キャラに好感を持てなければライトノベルとしては厳しいですからね。
この「神様のメモ帳」3巻は非常に評判が良かったので、逆にこれでまた合わないと感じたら、これから杉井光さんの本を読むのは躊躇ってしまうなぁと思っていました。
しかし、それは杞憂に終わりました。
声を大にして言いましょう。面白かった!と。
これまでとストーリーの取っ付きやすさが段違いですね。
巻き込まれた非日常の世界の話と違い、今回の話は主人公のナルミ側で起こる話なので動機が明確でイイ。
スッキリと読みやすい文章で、ほとんど詰まることなく読み切りました。
アリスの独特の言い回しも悪くないですが、自分にはこのくらいが適度でいいですね。
彩夏が戻ってきてくれたのが何よりも嬉しいなぁー。
以前までの彼女とは違うけれど、それでも「ラーメンはなまる」に集うニート達にとって彩夏の存在は大きすぎる。
2巻はそれが物足りなかったんですよね。
インパクトに関しては1巻を超えるのは難しいけど、構成に関してはこちらのが上。
まるで最終巻のように綺麗に伏線消化しています。
ナルミと彩夏の話は、見事に完結したと言ってもいいでしょう。
記憶を失ってどのように振る舞えばいいのかと悩む彩夏と、もともと不器用な性格のナルミが、言葉を交わして向き合っていく様は心が温まりましたね。
2巻の感想でヘタレと称した主人公のナルミは、生まれ変わったかのように積極的に動いてます。
彩夏が帰ってきたことに対して、自分自身の感情に上手く整理付けられていないところなんかは、見ていてもどかしかった。
もう一言かければいいと分かっていても、反応が怖くてかけられない気持ちは共感できますね。
あと、とうとうアリスにデレ期が到来したようです。
こんなにも分かりやすいツンデレキャラになるとは。
ロリっ子のデレはいいね。うむうむ。
ロリといえば、イラストの幼児化現象は歯止めが利きませんね。
特にアリスは、1巻の時より明らかに年齢下がっているだろうとツッコミを入れざる得ません。
個人的には、前の方が好きだったかなぁ。
これで完結と言われても不思議ではない終わり方でしたが、これって続き出るのでしょうかね?
ああでも、アリスの過去の話については全然触れられていないんで、それを最後に持ってくるのかな。
どちらにせよ、続きが出たら絶対に買いますね。
「さよならピアノソナタ」よりもこちらを優先して書いてくれないかなー。
そういえば、この作品に出てくるニートたちって、人見知りしないですよねぇ。
現実のニートとは大違いだなw
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 神様のメモ帳 杉井光 岸田メル 評価B+さよならピアノソナタ2
2008/10/20 Mon 07:16:45 [edit]
![]() | さよならピアノソナタ (2) (電撃文庫 (1570)) (2008/03/10) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……C+】
舞台 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
物語 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
人物 ★★★★☆☆☆☆☆☆ … 4
文章 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
オススメ度 ★★★★★☆☆☆☆☆ … 5
天才ピアニストにしてピアノを弾かず、人を寄せ付けない蛯沢真冬をギタリストとして迎えた民族音楽研究部は、自称革命家の部長・神楽坂響子の独断と独走により海へ合宿にいくことになる。 海といえば海水浴!と妙にはりきる幼なじみ・千昌、珍しく思い悩んでいる様子の神楽坂、そしてやっぱり部活に馴染み切れない真冬。そんな三人との合宿で波乱がないわけはなく、ナオはすっかり翻弄されるが――。 おかしくて少しせつない、恋と革命と音楽が織りなすボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー、第2弾。 |
<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
恋と音楽と革命の青春ラブストーリー第2弾。
まぁ、革命というのは言いすぎというかあまり関係ないような気がします。
1巻のラストが結構思い切ったところで終わっていましたが、青春の甘酸っぱさを残す綺麗なものだったので、意外にも早く続巻が出たことに驚きました。
どうしたって1巻に比べてボーイ・ミーツ・ガール的要素は薄れてしまうし、恋愛方面にしろ音楽方面にしろこれ以上突っ込んで描かれていても蛇足と感じるんじゃないかな、と。
その予想は半分当たり、半分はある意味外れていました。
ストーリーは、まぁまぁといったところ。
中盤にだるいところもあるけど、一致団結する後半の盛り上がりとか好きですよ。
肝心のシーンの描写が少なめだったことに関しては残念でしたが、構成としてはそんな間違っていないと思います。
1巻と違い、主にバンドと恋愛要素で物語が進むので、多少視野が狭まっているような気がしました。
問題はそこではなく、キャラクターにあります。
主人公のナオの鈍感っぷりが酷過ぎる。
ホントねー、これは駄目っしょw
このレベルは、僕の許容範囲を超えていました。
若いなーと思えればよかったんですけど、正直ムカついて仕方がなかったです。
真冬や千昌の想いをどうしたらここまで気付かずにいられるのか……。ホトホト呆れ果てました。
地の文が三人称だったらまだマシだったのかもしれませんね。
一人称で語られる「よくわからない」という言葉にイラッとさせられることが何度あったか。
確かにラブコメ作品では、ある程度鈍感でないと話がすくに完結してしまいます。
「バカとテストと召喚獣」や「とらドラ!」などを見ても同じですね。
しかし、上記2作品の主人公は個人的に大好きです。
では何が決定的に違うのかというと、ナオは恋という事象を頭の中から排除しちゃってるんですよね。
音楽評論家の真似事をしている思春期真っ盛りの男子高校生が、恋心に疎いというのは違和感ありまくりでした。
続いて、メインヒロインの真冬も微妙。
前回も周囲を振り回してくれる存在でしたが、それが一回りパワーアップしてます。
1巻の頃は、巧い具合にツンデレのデレ部分が見え隠れしていたので腹が立つことも少なかったのですが、今回は殻に籠ることが多くて自分勝手なイメージがついてきてしまいがちでした。
まぁ、半分以上は鈍感なナオのせいではあるんですがね。
そのため、まだ真冬に対してはそこまでいうほどイライラさせられることはありませんでした。
それでもこれは人を選ぶ娘だなぁ。
超がつくほど鈍感なのに「何でそんなことも分からないの?」と勘違いをする主人公。
周りを振り回しておいて自分は逃げてしまうヒロイン。
こういうキャラが地雷という人は少なくないと思います。
そういう人は今シリーズに手を出さない方が無難でしょうね。
それに対して、前回は軽く空気だったサブヒロイン達が掘り下げられていますね。
神楽坂先輩の意外な一面が垣間見れるエピソードや、今回一番頑張っていた千昌の奮闘ぶりなどは良かったなと思います。
題材である音楽は、今回もやっぱり全然分かりませんでしたが、流れで読むことができました。
言葉で音楽の素晴らしさを伝えるのは難しいと作中でも似たようなことをいっていますが、まさにその通りだと思います。
それにも関わらず、自分のような音楽知識がゼロに近い人間にでも共感できる文章は見事ですね。
世間一般の評価は8割が絶賛、残り2割程度が僕みたいに引っかかった人のようですね。
『神様のメモ帳2』でも感じましたが、作者と肌が合わないのかもしれないなぁ。
設定は好みだったりすることが多いのに、ちょっと残念。
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 さよならピアノソナタ 杉井光 植田亮 評価C+さよならピアノソナタ
2008/08/10 Sun 04:13:20 [edit]
![]() | さよならピアノソナタ (電撃文庫 す 9-6) (2007/11) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……B】
舞台 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
物語 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
人物 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
文章 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
青春 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
「六月になったら、わたしは消えるから」 転校生にしてピアノの天才・真冬は言い放った。彼女は人を寄せ付けずピアノも弾かず、空き教室にこもってエレキギターの超速弾きばかりするようになる。 そんな真冬に憤慨する男子が一人。 大音量でCDを聴くためにその教室を無断使用していたナオは、ベースで真冬を“ぶっとばす”ことにより、占拠された教室の奪還を目指す。民族音楽研究部なる部活の創設を目論む自称革命家の先輩・神楽坂響子とナオの幼なじみ・千昌も絡みつつ、ナオと真冬の関係は接近していくが、真冬には隠された秘密があって――。 恋と革命と音楽が織りなすボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー。 |
『神様のメモ帳』シリーズの杉井光と、人気イラストレーターの植田亮のタッグでおくる音楽を題材にしたボーイミーツガール。
音楽評論家の息子であり何かと諦めがちな少年・桧川ナオと、天才ピアニストの名を欲しいままにするツンデレを絵にしたような少女・蛯沢真冬が出会うところから始まる物語です。
ほとんど主人公とヒロインの2人でストーリーが展開していきます。
そのため、脇役もスポットライトを浴びせればメインに立てるくらい個性が強そうなのですが、あまり目立ちません。
主人公とヒロインのキャラに抵抗があると最後まで楽しめないことになってしまいますね。
主人公のナオは、『神様のメモ帳』の主人公・ナルミと似ていますね。
ヘタレ気味だけど、決めるところは決める。……と見せかけてやっぱり駄目だったりするところとかw
違いといえば、ナルミより等身大の高校生に近いかなというところでしょうか。
ヒロインの真冬は、ツンとデレがコロコロと入れ替わる娘です。
一歩間違えれば都合のいいことばかり考えている女の子と見られてしまうところを、要所要所で可愛らしい一面を見せてくれるので、憎み切れない存在となっています。
ハルヒとかシャナとかルイスとかのように、いかにも若者に好まれそうなキャラですね。
音楽のジャンルは、主にクラシックの知識が求められます。
僕のクラシック知識は中学の教科書をうろ覚えしている程度なので、分からない用語も1つや2つじゃ済みませんでした。
しかし、知らなくても感覚で読めるようになっていて、文章で音楽を体感することができます。
おかげで、特に読み辛かったという印象を持つことはありませんでした。
とはいえ、結構な頻度で音楽に関する説明的文章が挿入されているため、詳しい方だとニヤリとできてより楽しめそうですね。
ストーリーはほぼ直球の青春モノで、まさしく杉井光版ボーイミーツガールといった感じ。
恋愛要素は意外にもそこまで濃くはなく、若々しい雰囲気があっさり風味で楽しめます。
一言で言うと、青春してますなぁ。
個人的には脇役のキャラが濃い『神様のメモ帳』の方が好みでしたが、これはこれで楽しめました。
コメディ要素もいい塩梅で混ざっていて、笑わせてくれる箇所もそれなりにあったのも良かったです。
ライトノベルにも多くのジャンルがありますが、そのうちの一つを体現している一冊だと思いますね。
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 さよならピアノソナタ 杉井光 植田亮 評価B神様のメモ帳2
2008/02/18 Mon 06:07:06 [edit]
![]() | 神様のメモ帳 2 (2) (電撃文庫 す 9-5) (2007/06) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……B】
舞台 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
挿絵 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
オススメ度 ★★★★★★☆☆☆☆ … 6
春休みのある日、NEET探偵事務所に駆け込んできた依頼主は、変にテンションの高いタイ人の女の子だった。 失踪した彼女の父親が残したバッグに入っていたのは、二億円もの大金。 彼女の依頼は、「お父さんを、助けて」 ひきこもりパジャマ少女の《ニート探偵》ことアリスと、その助手である僕は、ニート探偵団のテツ先輩、少佐、ヒロさんの力も借りて調査を始める。街の不良を束ねる四代目まで巻き込んでやがて事件は思わぬ方向へと転がり始めるが―― 情けなくておかしくて、だけどほんの少し勇気がでる、青春ニートティーン・ストーリー第2弾。 |
<前巻までのネタバレがありますので、ご注意ください>
ニート探偵第2弾。
今回は、ヤクザの世界に足を突っ込むと大変だよって話。
まぁ、まだこの程度のものはぬるいくらいだとは思いますがね。
1巻で活躍したニートメンバーがもれなく登場。
それぞれニートとは思えない特技を駆使して事件を解決に導いていくのも前回同様ですが、あまり勢いがありません。
最初から割と真面目に探偵業務をする展開だったので、コメディ要素が少なかったのが原因かな。
あれだけキャラの個性が強かったアリスもパッとしませんね。
唯一輝いていたのが四代目。
イラストも多めなので、四代目ファンには嬉しい内容だったんじゃないでしょうか。
物語の方はというと、ニートとか関係なく普通の探偵ものっぽくなっています。
安定というか、無難というか、とにかく悪くはないんです。
でも、どうしてもインパクトに欠けてしまいますね。
1巻では彩夏のあの出来事や終盤の屋上シーンなど、今でも印象深かったりしますけど、今回はそういった心が揺さぶられたり感動したりするところは残念ながらなかったです。
そして、今作の一番の減点ポイントはナルミのヘタレっぷり。
1巻のレビューを書いた時にも指摘した部分ですが、前回はヘタレてしまうのも仕方のないような話だったので十分感情移入できたし、それでも前進しようする姿に感動さえ覚えました。
今回は、あの時の成長は何だったのかと言いたくなるような言動や行動が目に余ります。
人に対しては厳しいのに自分には甘くて、それゆえに自己嫌悪に陥っているのだから困ったもんです。
主人公補正で最後は頭が異様に冴えているのはいいんですが、前半のダメダメっぷりを見ているとその差が激しすぎて一瞬別人のようにも感じました。
ニート予備軍の高校生としてリアリティがあるとも言えるので、この辺りは主人公の好みの問題もあるかもしれません。
総じて見ると、彩夏の存在の大きさを如実に感じられる結果となってました。
自分が彩夏好きってことを置いといたとしてもねw
ナルミにはアリスのような罵倒により発破をかけてくれる相手よりも、彩夏のように強引にでも手を引っ張ってくれる存在の方が必要なんじゃないかなぁー。
何だか随分と酷評のように見えますが、完成度は高いので楽しく読むことはできましたよ。
1巻に比べて、インパクトが弱かったり、ニート探偵団のメンツが活かしきれていないのが気になるとはいえ、場面を想像しやすい文章は終始安定していますし、新キャラのメオもいい味出していて決して評価が低い作品というわけではありません。
ヤクザの世界には詳しくないですが、妙な本物っぽさを感じるところもありました。
探偵物として読むならば、確実に1巻を上回っていると言えるんじゃないでしょうか。
しかし、少し時間をおいてレビューをすると、読了感の良さに対して思ったよりも印象に残らなかったというのも事実。
惜しい……というべきなのかなぁ?
ラストは続きがあるようで、これで完結のようにも見えますね。
次があるのなら、好きなシリーズですので盛り返しを期待したいところです。
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 神様のメモ帳 杉井光 岸田メル 評価B神様のメモ帳
2007/10/16 Tue 04:06:50 [edit]
![]() | 神様のメモ帳 (電撃文庫 す 9-4) (2007/01/06) 杉井 光 商品詳細を見る |
【評価……B+】
舞台 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
物語 ★★★★★★★★☆☆ … 8
人物 ★★★★★★★★☆☆ … 8
文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8
オススメ度 ★★★★★★★☆☆☆ … 7
「ただの探偵じゃない。ニート探偵だ。世界を検索し死者の言葉を見つけ出す」 路地裏に吹き溜まるニートたちを統べる《ニート探偵》アリスは言った。 高校一年の冬に僕と同級生の彩夏を巻き込んだ事件、都市を蝕む凶悪ドラッグ《エンジェル・フィックス》――すべての謎は、部屋にひきこもる少女探偵アリスの手によって解体されていく。 「真実はきみの平穏を破壊する可能性がある。それでも知りたいかい?」 僕の答えに、普段は不真面目なニートたちが事件解決へと動き出す! 情けなくておかしくて、ほんの少し切ない青春を描くニートティーン・ストーリー。 |
あらすじと最初の1ページ目だけ読んで買った今作は、見事に僕の予想を超える良作でした。
ニート探偵という単語が、興味を惹かれた第一要因です。
神宮寺三郎のような渋くてダンディな探偵が可愛らしいロリっ子と一緒に事件に巻き込まれながらも解決に導いていく、という想像は、かすりもしてませんでしたがw
奇抜な設定かと思いきや、主人公はそこら辺にいる一介の高校生。
前半は、予想に反して、よくある学園青春ドラマ主体に話が進みます。
広義的にニートである若者たちの日々は、少し羨望の目で見てしまいそうなくらい楽しそうに見えます。
だからこそ、中盤から後半のシリアスな展開には、前半との落差に衝撃を受けました。
ニートですらないただの高校生が、もがき苦しみ、ボロボロになって、ようやく進むべき道を見つけ出す姿は感動します。
一歩間違えればヘタレと思われそうな主人公のナルミに、感情移入している自分がいるんですよね。
確かに、鬱な展開が続くんで、その気持ちは分かります。
でも、それだけではなく、文章の導き方が上手いおかげで、同調しちゃってるんだろうなぁと感じます。
他の登場人物も、反感を買う恐れのある要素を、逆に魅力に転じさせています。
この辺り、作者上手いです。
キャラクターのインパクトとして一番強いのは、やはりニート探偵であるアリスかな。
ロリなボクっ娘のツンデレ風味がお好きな人は、アリスに萌えられるかと思いますw
しかし、誰が何と言おうと、僕は彩夏が一番好きですけどね、ええ。
やっと、お薦めできるラノベかなって思う。
全体的にバランスがよく、しっかりと世界が作られているため、イメージしやすく、話を把握しやすいですね。
終わりの見せ方にも、僕は満足できました。
この調子で2巻にも手を出したいところなんですが、微妙に評判が悪そうなのが気になっています……。
1巻だけでも、綺麗にまとまっていると感じますし、蛇足っぽくなっていなければいいのですが。
まぁ、それを自分の目で確認するためにも、そのうち買ってきて読もうと思います。
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 神様のメモ帳 杉井光 岸田メル 評価B+| h o m e |