昨日は彼女も恋してた
2012/07/21 Sat 23:59:28 [edit]
![]() | 昨日は彼女も恋してた (メディアワークス文庫) (2011/11/25) 入間 人間 商品詳細を見る |
【評価……B】
発想 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 設定 ★★★★★★★★☆☆ … 8 物語 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 人物 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 文章 ★★★★★★★☆☆☆ … 7 挿絵 ★★★★★★★★☆☆ … 8 | 恋愛 構成 期待感 | ★★★★★★★☆☆☆ … 7 ★★★★★★★★☆☆ … 8 ★★★★★★★★★☆ … 9 |
小さな離島に住む僕。車いすに乗る少女・マチ。僕とマチは不仲だ。いつからかそうなってしまった。そんな二人が、なぜか時空を超えた。 はじめは二人はどこにいるのかわからなかった。島の景観なんて、十年やそこらじゃ変化しないから。『過去』に来たと分かったのは、向こうから自分の足で走ってくる、『小さなマチ』を見たからだ。 僕は驚き、そして思いつく。やり直すことができると。ずっと後悔していたことを、この、過去という『現在』で。『明日も彼女は恋をする』と上下巻構成。 |
【感想】
すれ違いにより不仲となってしまった幼馴染みとの関係を回顧させるタイムスリップ作品。
上下巻構成の上巻にあたります。
ちなみに下巻は「明日も彼女は恋をする」というタイトルです。
舞台は、500人前後の島民が暮らす小さな離島。
とある過去の衝突が原因で、余所余所しくなってしまった若い男女――大学生の青年・ニアと車椅子の女性・マチは、時間旅行の実験に付き合い、9年前にタイムトラベルしてしまう。
思いがけず仲の良かった頃の自分達と出逢い、過去の想いと今の内面を見つめ直すことで、二人の関係が微妙な距離感になっていくラブロマンスとなっています。
これは良かった。
ただ、上巻だけでも面白かったですけど、下巻があってこその本だと思います。
それほど前に、最後の展開が凄まじかった。
予想していた展開のうちの一つとはいえ、本当に起こると衝撃的でしたね。
ズルいぐらいに先が気になります。
癖の強い文章を書くことで有名な入間さんですが、本作では比較的落ち着いた文体で読みやすくなっています。
ニアとマチの視点を交互に描写する構成は、一人称に長けている著者の長所を売りに出来る良いアイデアでした。
緩やかに綴られる心情が、徐々に解れていくココロを表していくかのよう。
無邪気にじゃれあう自分達を見ることで、いがみ合っていた対立が緩和していく展開は素敵。
素直になれないために、子供相手に問いかける彼らがもどかしいのなんの。
幼き己らを緩衝材としなければ、まともに幼馴染みを名前で呼ぶことすら躊躇う。
そんな二人が時間移動の果てに見つけた境地は、とても意義のあるものだったと思います。
ニアと祖母のエピソードが、柔らかい陽の光みたいに優しくて、地味ながらも好きでした。
いいなぁ、このあったかい感じ。
SF要素に関しては、あくまで舞台装置の仕掛けであって、主題ではなさそうですね。
少なくともこの上巻では。
それでも、ニアやマチが過去に残した跡は、大きな変化を生むことを予感させる伏線がばら撒かれています。
下巻で、どこまで拾ってくれるのか楽しみですね。
▼ | 仲違いのキッカケが生まれた過去の瞬間にタイムスリップを果たした男女の恋物語 |
テーマ: ライトノベル
ジャンル: 小説・文学
タグ: 書評 昨日は彼女も恋してた 入間人間 左 評価B| h o m e |