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明日へと続く記憶

漫画、アニメ、ゲーム、音楽、ライトノベルの感想を書いたり、絵を描いたりしています。

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『ブルーピリオド』13巻 感想 



ブルーピリオド」13巻のネタバレ感想です。

罪悪感をテーマにした課題に取り組む大学2年生の八虎。
酷評が続き大学で学ぶことに疑問を持ち始めた時にノーマークスという反権威主義団体に出会う。
耳障りのいい言葉が並び、入り浸っている八虎の行く先はいずこ……といった前回の続きから。

芸術作品に携わるというのは、詰まるところ己を見つめ直すことなのでしょうね。
テーマを抱えた創作を生み出すためには、自分自身から発信する以上避けて通れない道です。

結局、人は自分が都合のいいように解釈して、勝手に期待して勝手に裏切られたと思う生き物なんですよね。
基準は自分の中にしかありません。
それでも、いやそだからこそというべきか、誰かと共感できた時の歓びは言葉では言い尽くせない快感があります。

八虎は見た目派手なだけで人一倍に臆病な性格であるのは読者なら既知のこと。
人からの評価に一喜一憂して、評価に縛られない生き方をしている人を尊敬する傾向がありますよね。
不二桐緒に惹かれる要素は十二分に持ち合わせていました。

一般的に宗教に依存することを悪だと捉えがちな日本人の感性において、ノーマークスは否定されるものなのでしょう。
ただ、作中では一方的な肯定も否定もされませんし、そうであるべきと個人的にも思います。
八虎が辿り着いた罪の有無が解釈の違いであること、それも一つの答えであるはずです。

誰に対しても厳しい意見しか言ってこなかった犬飼先生が手放しで褒めたことが興味深い。
漫画的な面白さとして、主人公が認められた時は単純に気分良くなりますけど、それだけではないですね。
盧生教授の「自分が暴力や被害にあったことがないから言えることだ」とはその通りだと思います。
でも、今の八虎の物差しで制作した作品としては、これ以上ピッタリのものはなかったような気がします。

後半は鬱屈としたノーマークス編も終わり、夏休みに突入したと思ったら妙にサスペンス風味に。
夏休みに公募展に出す作品作りのため、桃ちゃんの実家のある広島で合宿に行くところまでは久々に明るい青春モノだったんだけどな。
八雲たちと共に過ごしていた真田という人物が殺されたのは、直接的な事件なのか間接的な出来事だったのか。
いずれにせよ晴れた気分で読める話ではなさそうですね。

テーマ: 漫画

ジャンル: アニメ・コミック

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『ブルーピリオド』12巻 感想 



ブルーピリオド」12巻のネタバレ感想です。

表紙は新キャラかと思ったら、以前から顔見せしてた犬飼先生ですか。
こんなマッチョな肉体を隠しているとは想像すらしてませんでしたよ。
ああでも、入学式に出てきた学長もムキムキでしたね。
トップレベルの芸術家には筋肉が必要なのでしょうか。

桑名さん、やっぱり彫刻科で受かっていたんですね。
あれだけ磨いてきた油画から転身できるのは凄い。
自分だったら勿体無いと思って足掻いてしまうと思うので、こういう決断できる人は尊敬します。

アルバイトの絵画教室でリフレッシュできたかと思ったら、むしろ美大に疑問を持つようになってしまった八虎。
実直であることは評価されることだとしても、全てを鵜呑みにするのは間違っているので、疑うことが悪とは思いません。
入学当初に教授も物事を疑ってかかれと推奨していたくらいですし。
ただ、八虎の場合は視野が広がったと勘違いしていないかなと心配になりますね。

先生たちが怖いから逃げたくもなる気持ちも分かります。
盧生先生、槻木先生、猫屋敷先生と皆厳しかったですから。
しかし、そんな先生たちが甘かったと言わんばかりに2年担任となった犬飼教授がおっかない。

芸術の分野において優しさは甘えになると理解はできます。
限界まで研ぎ澄ました鉛筆のような精神でしか描けないものがあるのでしょう。
でもそれは同時にポキッと折れてしまうと元通りにはできない恐ろしさでもあります。
そこまで追い込まないと生み出せない作品っていうのは、果たして称賛されるべきものなんでしょうかね。

自分を評価してくれる場というものは居心地良いものでしょう。
批判されたことに憤ってくれて、頑張った努力を誉めて貰えるのは心が傾くのに十分です。
ノーマークスのフジさんがやっていることって宗教的というか洗脳のように見えてしまいます。
意図的かどうかは定かではありませんが、カリスマ性を持った人物なのは間違いないかと。
正義と悪で区分けするようなものでもないですけど、不穏な空気が漂っているのは気のせいではないのでしょうね。

美大入学後からずっと悩み続けている八虎の頭がスッキリとするような展開がそろそろ欲しいところです。

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『ブルーピリオド』11巻 感想 



ブルーピリオド」11巻のネタバレ感想です。

受験から筆を走らせ続けた八虎が、藝大の美術から距離を置くために選んだバイト先が絵画教室でした。
結局のところ、絵から離れられない人種なのでしょうかね。

子供達がメインの絵画教室で心身ともにリフレッシュ……という展開にならないのがこの作品。
常に上辺だけではないずっしりと沈み込んだテーマが根底にあります。
今まで八虎が苦悩してきたものとは別種の重さがありました。

見た目は可愛い小学生達が絵を通して悩みを抱える姿を見せられるのはなかなかにしんどいですね。
和気あいあいと自由気ままに絵を描かせてあげたいのに、環境に敏感な子供達は簡単に揺さぶられてしまう。

どんどん病んでいく小枝ちゃんの顔つきは見ていられません。
あんなにも笑顔が眩しくて可愛かったのに瞳に光がなくなっていく姿は堪りませんでした。
親は善良で無自覚の人と評されていましたけど、読者視点からすると嫌悪感が酷い。
父親が了承もなしに絵を半分に切り取ろうとした時は、ぶん殴ってでも止めて欲しいと思ったのは自分だけではないはず。
合作の提案も含めて、本当に橋田がこの場にいて良かったと思いました。
最後の描き下ろしで匂わせていましたけど、本人の意思で改めて絵を描こうとしているのなら喜ばしいことですね。

それにしても佐伯先生は本作随一の癒しの存在だなぁ。
八虎もこの先生がいたからこそ美術の道を歩むことになったわけですし、人をその気にさせるのが上手すぎますよ。
また再登場してくれると嬉しいな。

再登場といえば、ラストの桑名さん。
合格したみたいで良かった。
2年目のキャンパスライフも波乱がありそうで、これからも目が離せません。

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『ブルーピリオド』10巻 感想 



ブルーピリオド」10巻のネタバレ感想です。

息苦しさこそ生きている証と言わんばかり。
不器用な八虎と世田介を見ているとそう思わざるを得ません。

心を剝き出しにして、もがき続けることで辿り着ける境地がある、というのは何となく分かります。
自分自身が好きなことさえ理解するのが難しいのに、他人の好き嫌いを察することができるのか。
それなのに自分の本質を理解して欲しいと思うのは、人間ってのはエゴなものです。
基本的にボタンの掛け違いのような八虎と世田介ですが、時々でいいので嚙み合ってくれればお互いにとって救いになるんでしょうね。

オール明けの渋谷を映す世田介の目が青く染まっていたことに、八虎同様言葉にならない喜びを感じました。

これにて大学1年生編はほぼ終わり。
高校・予備校編と比べると、内面ではなく外的要因によるエグさが増しているので、読んでいて楽しいという気持ちは明らかに減りました。
しかし決してそれは面白くないというわけではなく、美大生たちの葛藤に惹かれるモノがあります。

本当に良い作品です。
アニメ化されるようですが、この作品の良さを映像化するのは難易度高そうですね。

奇しくも大学合格という明確な目標がなくなったことで宙ぶらりんとなった主人公と同様に読者も作品のゴールが見えないので、今後の展開が読めず興味がそそられます。

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